スマホでググっただけなのに~呪われました
アナタは呪われました
ビブビブビブビブビブビッブっ♪
「クソが!!」
あの某有名RPGソフト「ドラゴ〇クエスト」の呪われた時のBGMに俺は毒づく。
ボタン、ボチャン
時にトイレで用足しの最中なので「モノ」がモリモリ応えてくれる。(下品で申し訳ない
◇
俺、田口 優は「アカネコ トマトの宅配便」のドライバーをしている32歳独身彼女無しオタクだ。(彼女居ない歴年齢。ま、ま、ま、ま、魔法使い?だだだだダイジョぶ、まだジョブチェンジしてないから!!)
仕事が終わり家に帰ると何時もの通りテレビを点け、東京〇XTVにチャンネル、PCを立ち上げ、「小説家になろう」のサイトに跳ぶ。
最近は「~遅い~後悔させる」系にも食傷気味で短篇系を探索するようになってきた。
そんな中、気になった題名をクリック。
『ナポリタン「アイツは私の偽物、ナポリタソよ!!」なんだって~~~~!!』
何だこりゃ?作者ぜってーアタマおかP
四月咲香月?
他にどんな作品書いてるんだ?
『深夜のメシテロ食ハラ「香月亭」~異次元食堂』
『大陸からの刺客~麻婆豆腐~』
『番外編ー米沢「牛肉道場」』
『親子丼を作ったのに三つ葉が無いと言ってももう遅い!!三つ葉がないならパクチーを使えばとマリーアントワネットの真似され他人丼に変更され後悔しろ!!もう遅いって今頃か!!』
『彼女の性癖』
『ロリコンって彼女120歳なんですけど!!~ロリハイエルフと性神官(チョトマテ』
『ロリコンって彼女120歳なんですけど!!~ロリハイエルフと性神官(チョトマテ~これが噂のテンプレ展開ってヤツですか?』
『「ブタ汁だろうとトン汁だろうと。」ネタんで豚汁疎んじる』
『魅惑のオムライス』
『地上最強の餃子』
『焼そば?何それ美味しいの?』
『朝、起きたら一目惚れした歌姫を腕枕していた件』
やべぇ、マジイカレテルw
どんなヤツなんだと興味も沸いたが、なんだか催してきたのでトイレにスマホを持ち込む。
スマホの電源を入れグーグルマークをタップする。
四月咲香月
検索GO!
で、最初に戻る
呪われました・・・・・・・
ビブビブビブビブびっぶ♪
◇
名前検索しただけで呪われるって、ナニ?
マヂで呪われたの?ウイルスなん?ただのいたづら?
便座に座ったまま俺は微妙な気分でフリーズしている。
ちょっと待て、こんなんで呪われる訳ねーべさw
なに下らねーこと気にしてんだよ、俺。
気を取り直してトイレから出ようとする。
ゴンっ
「がはっ」
皆さんご存じの足の小指をドアにぶつけるアレ・・
その場に蹲りぶつけた足を抱える。
「ふっ・・ふっ・・ふぐっぅぅぅ」
「おーまいがっ!」
痛みで何も考えられない!畜生!
何分か解らないが幾らか痛みがマシになって、PC前に移動して椅子に座る。
余りに勢いよく座った弾みでリクライニングが起動。そのまま窓ガラスに後頭部を痛打。跳ね返ってアタマを抱え腹筋運動のようになりデスクのコーヒーカップに頭突き、残りのまだ熱いコーヒーを頭からかぶり俺は意識を手放した。
◇
朝に気が付いて時計を見ればもう7時。
何時もなら5時に起きてネトゲとお気に入りなろう作家さんたちのチェック。寝てる間のアニメの録画状況の確認とムッチャ忙しい。なのに7時とか有り得ない!!
頭からコーヒーかぶっているので急いでシャワーを浴び、歯を磨いて着替えて出勤せねば!
営業センターは自転車で10分。
リュックを背負い、パンを咥えて「遅刻、遅刻〜〜!」とかやってる場合じゃない。
駐輪場の自分の自転車の所に来て見ればなんかチガフ•••
サドルが緑色でボコボコしてる••••••(汗)
俺の自転車のサドルはブロッコリーだったっけ?
急がねばならないのに思考停止のボクちん。
営業センターには間に合わないのでタクシーで急ぎ、階段を上がってタイムカードへ向かう。
と、そこで美人ではないが愛嬌ある立ち振る舞いで人気の『矢口小百合』ちゃんが何時ものドジっ娘ぶりで何も無い場所で躓く。
危ない!と抱き留めようとすると倒れてきた彼女の頭が見事に鳩尾にクリーンヒット!
ぐはっと頭を下げたところに小百合ちゃんが俺の鼻にヘッドバット!
何これ必殺コンボにまたしても意識が暗い海へと沈んでいく。
◇
「ゴメンナサイごめんなさいゴメンナサイ」
俺のそばで謝り続ける矢口小百合嬢。
俺の初めてを奪ったんだ、当然か。初めてってあんなに痛いのね、あんなに血も出て。
「そんなに謝らないで、大丈夫だから」
そう言うとホッとした表情を浮かべ下を向く。
ソバカス顔だが色も白く肌が滑らかできめ細かく綺麗だ。
ちょっとぽっちゃりだか、それがまた良い!!
背もそんなに高くない150センチくらいか?何よりその所謂「胸部装甲」の厚さが、スゴい!!
間近に見ると尚更凄さを実感する。
後でアイツに写真を貼らせる。確認してくれ!
COM3D2にて作成。矢口小百合。画像二回クリックで拡大可
俯いていた小百合タンが俺のスマホを見ていた。
キュっと俺の顔を見詰めると
「四月咲香月さん、知ってるんですか?」
「あ、ああ」スマホでググったら呪ってくれた疫病神のクソ野郎さ、そう口にしようかとしたら小百合タンの怒涛のマシンガントークが開始する。
「あのっ、あたしっ、香月さんの作品大好きで初めて読んだのは『ナポリタン「アイツは私の偽物、ナポリタソよ!!」なんだって~~~~!!』ではじめはナニコレだったのに「なろう」で珍しく写真張ってて・・次に読んだのは『彼女の性癖』で読み始めてえっちぃのかなって思って、それでそれで・・処女作だっていう『朝、起きたら一目惚れした歌姫を腕枕していた件』では・・それで・・んとね・・それがね・・」
◇
それが終わる頃、俺は魂が抜け燃え尽きた薪が真っ白な灰になって砕けているようになっていた。
それと同時に何か言いようのない気分になる。
同じ「なろう民」でオタク臭プンプン・・
なのに別の人物のことで夢中、これが世に言う「シット」「ゼラスィ」?
なんだか悶々する。
「田口さんは香月さんの作品は好きですか?」
不意に「アイツ」の話題を振られ、ちょっと戸惑う。あの呪いをかけた疫病神、いい気はしない。
「あ、いや。アレは変な題名付ける奴だなって思ってさ」
俺は正直に「呪われる前」の気持ちを吐き出す。今は、聴きたくもない名前NO、1だがな。
「では、是非読んでください。それで感想を話しましょう?」
ぐ・・か、かわええ・・この笑顔一人占めしたひ・・これはチャンスか?チャンスなのか?
「ああ、解った。仕事終わったら読んでみるよ」
「はい!!それじゃまた後で♡」
なんだこの笑顔・・なんかハートマークが見えた気がした。
クソっ!むかつくが約束は約束。後で読んでみよう。
◇
約束通り、仕事が終わって読んでみれば意外に読める。
テンポもよく、所々でボケる突っ込む漫才みたいだ。
まあ、そこそこやるって感じだが・・
いいや。小百合ちゃんとのネタにはなるかな・・
この日は早めにPCを閉じた。
ベッドにゴロリと横になると天井を見上げながら今日の出来事を振り返る。
怒濤の一日だった。
遅刻するは、普段からカワイイと思っていた小百合ちゃんと趣味合いそうなことが判明するは、彼女には初めて貰うわ(笑)
あんなに、デカイとわ!!
良い娘だし可愛いし、趣味合いそうだし、トニカクカワイイ!!
付き合いたいなぁ、彼女になって欲しいなぁ。
一人妄想し悶々する。
ちょっとマテ
いつの間に俺のティッシュの銘柄「シコッティ」になったんだ?
これが噂に聞く「孔明の罠」?
◇
昨日は新作
『表題でボケようとするのヤメようよ!そんな事言ってももう遅い!大好きなモツ煮込みだから寝かせて貰えると思うなよ!そんな事言ってまたあの娘の所に行くんでしょ!愛してるもつ煮結婚してくれ!ヤダもうプロポーズ』
とかいう表題だけボケたもつ煮レシピ回。それを今日は小百合ちゃんとのネタに利用しよう、不本意ながら。
まあ普通にドライバーの俺は営業所に着くときに二三言話すくらいしかないので仕事終わりに近くのカフェで待ち合わせる約束をする。うーん、デートみたいやないかいw
そして夕方に待ち合わせの小さなカフェでアイツの小説もどきの感想を話す。それを起点に色々なアニメや漫画小説などに話がとび彼女の好みのものが推察できるように成る。お?意外にアイツ俺の縁結びに役立ってる?
◇
なんのかんのもう一週間、仕事終わりにデートってかカフェでおしゃべりしてから帰るのが日課になってる。
それで今日、日曜日。休みを合わせて映画と食事のちゃんとしたデートだ。
この歳まで32年、彼女とかできたことが無い。ちゃんと好きになったことが無い。でも今回は違う。小百合ちゃんだけは違うんだ!ホントに好きだ好きなんだ!
この歳でおっさんで初恋なんてアホらしいがホントの恋が何だか分かった気がする。
だから今日このデートで告白する!
結果なんかどうでもいい。俺が彼女が好きだと伝えられれば。
小百合ちゃんとの巡り合わせのきっかけになった四月咲香月。
アイツをググって呪われたのがきっかけだった。
疫病神だと罵ったが、実は縁結びの神なんじゃ?
そんな気まぐれに俺はまたアイツの名前をググる。
ああ!!そうだよな!!
お前の作品はみんなそうだよ!!
俺は見出しを整え、玄関のドアに手をかける。
スマン、四月咲。疫病神なんて言ってよ!必ず、小百合ちゃんのハートをゲットするよ!!
きっとあの時もそうだったんだよ、見間違いだったのさ!
スマホに表示されているのは
『あなたは祝われました・・』