第38話『挨拶ですね』
黒衣の集団は、銀之丞達の攻撃によって粉々に砕けた祭壇の欠片や破片を掻き集め、必死に組み合わせようと泣き喚いている。清月の奪い取ったネクロノミコンの事すら忘れ、祭壇を元の姿に直そうと動き回っていたが、集団の一人が苦しみ始めたのを見た瞬間、狂ったように笑い始めた。──次の瞬間、銀之丞と清月の二人は見知らぬ体育館の様な場所に佇んでいた。右を向き、左を向き、後ろに振り返っても葉月達の姿が見えない。
「せぇげつぅ…みんなが、みんなが…!」
「落ち着け、ゆっくりと深呼吸するんだ。それと、俺達と睦月達は分断されただけだ」
五回ほど深呼吸を繰り返しながら清月の話に耳を傾け、分かったと伝えるために一度だけ頷いてみせる。観客席と言うべきか。その場所に顔の見えない二人組が座っていた。
「なんだ、この前の小僧達では無いのか」
「そんなの、誰でも良いじゃない。それと女の人は私が相手するから…邪魔しないでね?」
「心配するな。お前の邪魔しない」
雑談しながら観客席から飛び下り、私達の事を眼前まで飛んできた不思議な二人組を見詰める。
「私の名前はシュブ=ニグラス。愉しくて過激に遊びましょう?」
「あ、これは御丁寧に。私は村雲銀之丞と申します、宜しくお願いします」
突然の自己紹介に戸惑いつつ、銀之丞は頭を下げながら自分の名前と挨拶を返した瞬間、強い衝撃と一緒に後ろへと吹き飛ばされた。そう、蹴られたのだ。日常的な挨拶を行っていた筈の相手に、驚愕より強烈な印象に唖然としていると挑発しているのか。手招きを繰り返している。
「このっ!」
「おっほおぉ~ッ!」
地面を殴り、反動を利用して突進すると高出力のエネルギーを左の前腕部から放出させ、シュブ=ニグラスへと強烈な左フックを叩き込み、壁際まで殴り飛ばす。
名前:シュブ=ニグラス
「黒き豊穣の女神」「万物の母」「狂気産む黒の山羊」等の異名を持っており、ヨグ=ソトースの妻である。男女問わず交際関係を持とうとする変神、痛め付ける事や虐められる事に快感を来す変態。




