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メイドなる参謀~それは女子高生~  作者: 石山乃一
大変な方々
30/32

いびりよりもやりたいこと優先

守るというマーシャの言葉に私は嬉しく思いました。

日本だったら守るって何から守るんですか的なもので終わる言葉ですが、実際に何度も助けてくれているマーシャから言われると…本当に守ってもらえるだろうという信頼感が湧きあがってきます。


私はにじにじとマーシャににじり寄り、マーシャに触れるか触れないかの距離までそっと身を寄せました。マーシャはあっちを向いたままですが、それでも体が強ばっているのを感じます。


「マーシャ様が私を守ってくださるように、私もマーシャ様を守りたいんです。ダメですか?」


「…う、…あ、そ、その…」


あっちを向いたマーシャの耳までもが真っ赤になってうつむきつつあります。


「はいはい、サキ様。色仕掛けもほどほどに」


パンパンと手を叩いてラッセルがやって来て、マーシャはヒュバッと立ち上がって私から離れました。


「色仕掛けなんてしてませんが」


私がそう言うとラッセルはハッと鼻で笑い、


「自覚がないうちに国王を操ろうとするなど恐ろしい限りですなぁ」


「誰も操られてない!勝手な事をぬかすなラッセル!」


マーシャは顔を真っ赤にしてラッセルを睨み、ラッセルはそんなマーシャを見て、いやはや、と首を横に振りながら、


「俺が乱入しなければなし崩しにサキ様の要求をのみそうに見えましたが?」


「むしろ人の部屋にノックもなしに勝手に入って来るな!」


「しましたがお二人とも話に夢中で俺には一切気づきもしなかっただけですよ」


「あ、そうだったんですか。それは申し訳ございません」


ノックの音なんてちっとも気づきませんでした。私が謝るのを特に気にせずラッセルは続けます。


「そろそろ引き離し時かと思いまして来た次第です。今の続きはまた明日どうぞ」


ニヤニヤ顔のラッセルがマーシャを見て、マーシャはこの野郎とばかりの顔です。


一応私とマーシャはお互い結婚していない未婚の身の上なので、あまり夜遅くまで同じ部屋にいるのはいかがなものかとある程度の時間になったらお迎えが来ます。


…というより大体このような時はメイドが迎えに来ていたのですが、なぜわざわざ大臣であるラッセルが…?そうなれば答えは一つでしょう。


「何か私たちに伝えたい内密の事でもあるのですか?」


そう言うとラッセルはマーシャを小馬鹿にする笑みを引っ込めて、マーシャもラッセルを睨み付けるのをやめて国王らしい表情になります。


「マリー様とメリー様のことですが」


二人の名前が出てきてマーシャは妙な緊張感を孕ませ黙って聞いています。


「お二人も気づいているでしょうが、お二人はサキ様が国王妃になるのが気に入らないようでして」


「知ってます」


私も頷きながら話を促すと、ラッセルはわずかに顔をしかめました。


「俺にサキ様を城から追い出す打診をしろと言ってきました」


…おう…。


「断りましたがね。有益な人材をみすみす逃がすなんて愚の骨頂だと、女嫌いのマーシャが見初めるほどの女など後にも先にも現れるまいと説得しましたが…。向こうは感情論でかかってくるので論理的な話し合いには至りませんで」


マーシャは額を手で押さえ、


「なんで…そこまでしてサキを…」


「マーシャが取られると思っているんですよ、きっと」


姑が嫁を嫌う理由と多分同じなんでしょう。


自分の可愛がって育ててきた息子(お姉さんたちにからしてみたら弟)が見ず知らずの女に優しくして一緒になりたいと言っている…。

今まで可愛がってきた息子を預けるにふさわしい女なのか、本当にその女で大丈夫なのか、むしろ他にもっといい女がいるのでは、それより今まで自分に向けられていた愛情がその女に向けられている…。


憎い、息子の愛情を奪ったこの見ず知らずの女が憎い…。


「…という所から発生する一種の嫉妬ですよ」


前に母が見ていたドラマで嫁をいびる姑の心情を上げ連ねると、マーシャとラッセルはなるほど…とかすかにお姉さん二人の意地悪する感情的な気持ちがかすかにでも理解できたようです。


「俺からしてみたら馬鹿くさいがな…」


マーシャはそう言いながらラッセルをふと見上げ、


「お前の婚約者の…リナはどうだ?そのような目には遭っていないか?」


「わざわざリナの心配をありがとうございます」


ラッセルはひとまずお礼を言ってからわずかに肩をすくめ、


「俺の母は俺と同じ性格ですからね。嫌味の連発をかましそうで多少心配していましたが…」


リナはラッセルの母と初対面の時、薄ら笑いを浮かべた母に、


「あら、随分とおっとりした口調のお嬢さんだこと。そんなにおっとりしていて大臣の嫁なんてつとまるのかしら」


と嫌味を言われると、


「やだ、ラッセル様が二人いるみたい~」


と照れ照れと身をくねらせ、ラッセルの母もその一言で体の力が全て抜けたようで…。腹の立つ娘ですねと言われつつ何だかんだで気に入られたようで、関係は良好なのだそうです。


「…つまりラッセルさんもそのお母さんのようにリナ様に毒気を抜かれて十年以上の年月をかけて口説きおとしたと…」


ラッセルはわずかに口をつぐみ、私から顔を逸らしてマーシャに視線を移しました。


「ところで先ほどのお話ですが」


ああ、話を逸らされました。せっかくなので困惑か照れているかの表情をあぶり出したかったです。


「何の話だ?姉の話か?」

「サキ様が剣を持つ話です」


その話になるとマーシャはわずかに面白くなさそうな顔に戻りますが、ラッセルは続けました。


「悪くないと俺は思いますよ。サキ様は魔法は使えませんし、ある程度自身の身を守れるに越したことはないでしょう」


「…だが…」


「感情的になった者に急激に襲われる可能性もなきにしもあらずです」


マーシャの眉がピクッと動き、


「どういうことだ?」


とラッセルを睨みますがラッセルはすぐに言葉を続けました。


「国の歴史は殺人の歴史でもあります。気に入らないのなら殺してしまえばいいという短絡的な考えに到達しやすいのでしょうね、特に地位があれば格段に見逃される悪事もあれば、表沙汰にできないこともある」


ラッセルはわずかに真面目な顔になってマーシャを見ました。


「血縁同士だからこそ殺めようと動くこともあるのですよ、分かっておいででしょう?」


「ラッセル、サキの前で…!」


マーシャが押し留めようとしましたが、今の言葉だけで私は十分に理解しました。


そうか…これは単なる嫁姑…いえ、嫁小姑問題ではないんです。

国の頂点付近に居るということは日々の嫌がらせでは収まらず命を狙われる可能性も大いにあるということ…。


「参りましたねぇ」


私の言葉にマーシャがズルッとこけて、ラッセルも力が抜けたのかわずかに表情が呆れたものになりました。


「お前本当に分かってるのか」


ラッセルも思わずため口になっています。


「まあ分かっているつもりですが…」


私はマーシャに目を移しました。


「いくらあのお二方が嫌がらせをしてこようが、マーシャはお姉さんたちのことを悪く言われたらムッとなりました。マーシャがそのような反応をするんですから本当に悪い人たちだとは思えません」


それにスープをすする話に行儀が悪いと言いつつ、それは文化だと言われると黙りこんだのを見てもただ感情のみで動く方々にも思えませんし。


「よっぽど私が目に余る行動を取れば確実かもしれませんが、ある程度常識的な振る舞いをしていたら基本的に大丈夫だと思います。あとは少しずつ溝を埋めていけば…」


そこで私は口をつぐみ、


「でもお姉さんとは関係なく剣でも習いたいのですけど…せめて護身程度に」


「…」

マーシャはしばらく悩んでいましたが、面白くなさそうな顔で好きにしろと頷きました。


* * *


「えっ、剣を習いたい?」


ダンケが目を丸くしましたがすぐに笑顔になって、


「いいよ。俺でいいなら手取り足取りじっくり教えてあげる」


「お前言い方」


サランが即座に突っ込みます。


まずは剣を教えられる人物を探しにきました、そうなれば一番頼みやすいのが騎士団の副団長であるダンケだと頼みに来た次第です。そして午後からは医者の方々の手伝いに行く予定です。


ちなみにマーシャもこちらが気になっていましたけど、国王であるので忙しいんです。戦後処理とか戦後処理とか戦後処理とか…。


「ちなみにこれが模造剣、練習用」


ダンケはそう言いながら手に持っていた剣をヒョイと渡してきたので持ってみると…。


「重い…」


武士好きとしては模造といえど剣も好きです。

ちなみに刀は片刃、剣は両刃ですね。刀は切るのに特化していますが、剣は突き刺すのを主としている…と聞いたんですけど合ってますかね?


まず模造剣を軽く振り回してみますが、どうにも重すぎて自分の体が振り回されます。


「わぁ、剣に振り回されているサキ可愛い!非力!」


私は侮辱かとキッとダンケを見ると、ダンケは慌てて口をつぐみ、


「でも本物の剣より模造剣の方が重いんだよ、練習の時の方が重かったら実戦で軽くなるでしょ?」


なるほど…。


「しかしサキは剣の腕前などはどうなんだ?多少でも身に覚えはあるのか?」


サランの問いかけに私は首を横に振りました。


武士好きの私としては剣道や弓道などやってみたいものはありました。

それでも運動部に入られたら色々と面倒だから部活をやるなら文化部に入れと両親に止められて道場に通うのも良い顔をされなかったので渋々と諦めたんですよね。


「でも運動は苦手です、特に走るのが」

「苦手って…どれ程のレベルで?」


ダンケの質問に私はかすかに口をつぐみました。


「投げたボールが真っ直ぐに飛びません、百メートル走ると息が上がります、ラケットにボールが当たりません…」


「…」

ダンケが百メートルの所でわずかに笑顔がひきつりました。


「…でもまぁ、自分の身を守る程度ならそんなに走れなくてもいいから…とりあえず軽ーく手合わせでもしようか?」


ダンケはそう言いますがサランが、


「だが模造剣は振り回せないんだろ?それで手合わせなんて…」


「ここであーだこーだ言ってるよりなら手合わせした方が早いよ、さ、おいで!」


ダンケは他の人をから受け取った模造剣を手に取り下段に構えてこちらを楽しそうな顔で見てくるので、ともかく私も見よう見真似の剣道の構えをして…。


「ふっ」


ダンケは下段から大きく剣を振り上げると一瞬で私の剣を弾き飛ばしました。弾かれた衝撃で手がビリビリとしびれて、


「おお…」


とダンケの力強さとあまりの実力差に言葉を失います。


むしろ魔法使うんですから剣の腕なんてそんな大したことないのではと思っていた所もありましたが…。そんなこともありませんね。


「やっぱり握力と力がなぁ…。女の子の兵士居ないから軽い剣も無いし」


「…」

それははっきり言わずとも弱すぎて話にならないというレベルでしょうか…私が顔をうつむけましたが、ふと顔を上げて周りを見渡しました。


ここは騎士や兵士たちの演習場、そして壁を見ると剣の他にも槍が大量に立てかけられています。


「槍、ありますね」

「ん?うん」


ダンケはそう言うと、


「剣じゃなくて槍使ってみる?」


と聞いてきますが私はそれに答えず、


「ちなみにここの武器などはどこでどのように作っておられるのでしょう?」


「城下町に専属の加治屋が…」


「試しに武器を作っていただくなどはできますか?模造でも木製でも構いません」


「どんな?大体のものはここに揃ってると思うけど…」


私は首を横に振り、


「私の国で女性が主に扱っていた武器です」


そうです、剣と剣で男性とまともにやり合おうとするから力負けするんです。リーチの差を生かし、なおかつ遠心力も加わりかなりの威力になるあの武器、


「薙刀ならまだなんとかやりあえるかもしれません!」

子供のころ、当時の友人がお姫様の絵を描いてる中、私は薙刀の絵をひたすら描いていました。

子供のころ、当時の友人が某ジャニーズの下敷きを見て、「あごの所に黒い点があるの、きっといちごを食べたんだね❤」と盛り上げっているのを見て、それはヒゲ…と思っていました。


結果、私にスイート脳要素が皆無で、ある日別の人を連れて来て、

「ごめんね、あなたと親友やめてこの子と親友になるね、最後にアマリリス演奏するね」

と目の前でリコーダーでアマリリスを演奏されてる時にはナニコレと思いました。むしろ私たちは親友だったのか。


でも大人になった今でも思う。薙刀ってかっこいい。

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