植え込み。
帰り道。
植え込みの影で、がさがさとなにかが動いていた。
猫か犬でもいるのだろうと、気にしなかった。
気にしてなかった筈なのに、歩いていると、道沿いの植え込みががさがさと音を起てる。
俺は歩いているのに、先程の植え込みは既に途切れて、別の植え込みの前を歩いているのに・・・
がさがさ、がさがさ、がさがさ・・・
植え込みの近くを通る度に、植え込みががさがさと音を起てて揺れる。
なにかが、俺について来ている?
そんなことを思うと、怖くなってしまい、とうとう足が竦んで動けなくなってしまった。
けれど、植え込みはがさがさと小さく揺れている。
「なにしてンだ? お前」
「っ!?」
幼馴染が通りがかった。
「あ、あれが・・・ついて、来るから」
俺が植え込みを指差すと、
「ああ・・・お前、あんなのが怖いの?」
呆れたような眼差しが向けられた。
「だって、アレがさっきからついて来るから」
「しょうがねぇな? ったく……」
溜息を吐いた幼馴染が植え込みの方へ歩いて行き、ダンっ!? と強く足を踏み鳴らして怒鳴った。
「おらっ、どっか行けこの野郎っ!?」
「っ!?」
瞬間、ガサっ!? と植え込みが大きく揺れ、止まった。まるで、なにか小動物が植え込みから逃げ去ったかのように。
俺もちょっとびびったし・・・
「ほら、帰ンぞ」
「あ、うん。ありがとう」
幼馴染と二人、歩き出す。
「・・・ねぇ、なんだったの? アレ」
「ああ、ちっさい猫。いやいや、まさかあんなちっさい猫にビビる奴がいるとはな? チョーうけるんだけど?」
俺には、植え込みの中にはなにも見えなかった。
「あ、憑れて帰ればよかったか?」
「はあっ!? なに言ってんのっ!?」
「だって、家ペット禁止だし。生きてない」
「絶対ダメっ!? 皆まで言わせないからねっ!? アウトだからっ!? っていうか前も言ったでしょっ!?危ないことしないでよってさっ!?」
「やれやれ、ホントお前は仕方ない奴だな?」
「いや待ってっ!? なんで俺が妥協されてる感じになってるの? おかしいのは君なんだからねっ!?」
「は? お前が恐がりなだけだろ」
「それはそれ! これはこれなの!」
「はいはい。さっさと帰ンぞ」
俺の幼馴染は視える人だ。
そしてやっぱり、変な子でもある。
読んでくださり、ありがとうございました。
これで一旦終わります。