落し物のケータイ。
道を歩いていて、落し物を見付けることがある。
目の前でぽんと落とされた物を、落とし主へ返したことがある人も多いだろう。
そして今、俺の目の前には落し物がある。
それも、携帯電話。少し古いと思われる機種のガラケーだ。スマホではない。
交番へ届けるべきだろうと思う。
そう思って、ガラケーを拾った。
交番の方へ向かって歩いていると、ピリリリ! と、ガラケーが着信音を響かせる。
「わっ、え? どうしよ・・・」
鳴っているが、これは他人の落し物。勝手に出ていいものか悩む。そうこうしているうち、着信音が鳴り止んだ。
「あ、切れちゃった」
少しホッとしたところに、ピリリリ! と、また電話が掛かって来た。おろおろして、ガラケーを開くと、自宅と表示されている。
もしかしたら、落とし主がこのガラケーを落としたことに気付いて電話を掛けて来たのかもしれない。
少し勇気を出して、電話を取る、
「はい、もしもし?」
『ああ、よかった。拾ってくれたんですね』
「あ、はい。このガラケー、落ちてました」
『すみませんが、取りに行きたいので待ち合わせをして頂けませんか?』
「わかりました。どこで待ち合わせをしますか?」
『そうですね・・・では、その道を真っ直ぐに行ってください。その後で、お会いしましょう』
「? 真っ直ぐ、ですか」
指示に従って歩き出そうとしたら、
「なにしてんだ、お前」
そこに幼馴染が通りがかった。
「え? あ、今ガラケー拾って、その落とし主から電話が掛かって来たところなんてだ」
「・・・お前、それ貸せ」
幼馴染が、バッと俺からガラケーを奪い取り、
「ふざけンなクソがっ!?」
と、怒鳴ってガラケーを地面に叩き衝けて踏み潰した。
「ちょっ、なにしてるのっ!?」
「あ? 引っ張られてンなっての。このバーカ。おら、見ろよ」
「は? へ・・・?」
幼馴染が足を退けると、地面にはなにも落ちていなかった。
「ったく、性質悪ぃぜ全くよ。おい、あんまぼさっとしてっと、変なのに持ってかれンぞ。もっと気ィ付けろ」
「ええっ!?」
幼馴染に手を引っ張られる。
俺の幼馴染は、視える人だ。
読んでくださり、ありがとうございました。