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第九十九話 虚栄の城 豊穣なる生命の樹

「良かったでございますよ~~~~、突然に樹の根が動き出してトンネルが出来た後に皆様の声が聞こえてすぐに来てくれるものと思ったら~~バーバラの魔力はもう限界です~」


どうやら、樹の根のトンネルが声をしっかりとバーバラさんの元まで届けていたようで俺たちのやり取りを聞いていたが一向にやってこない上に魔力が限界に達してしまったようだった。


「バーバ良かったのじゃ~無事だったのじゃ~心配したのじゃ~」


「ヴァル姫様……私が我慢できなかったばかりにこんな事態に、アルスロット様も危険な目に合わせてしまいました」


オーチャコ神の台座の前で項垂れるバーバラさんは魔力をかなり出し尽くしてしまい顔も青ざめて冷や汗を垂らしふらつきながらも謝罪するのだった。


「アルスロット殿、すぐにでも魔力を生命の樹の葉の方へと注ぎ込むのです。バーバラが持ちこたえたおかげか今ならまだ豊穣の樹へと成長することが出来るはずですよ」


俺はエルフィン族の女王テネシアにサポートをしてもらいながらオーチャコ神の台座の上に高さ20㎝程と、小さいが見た目は大人の大きな樹と変わらない横に枝葉を伸ばす葉へと太陽の光を注ぐように魔力を手のひらから優しく降らせる。


数十分は経ったのだろうか、ふと横を見るとピノを胸に抱きあげたオフェリアちゃんにテネシア様、カトラお姉さま、カトリナ様、ヴァル様、アリアちゃん。それに魔力炉が大きいと言っていたバーバラさんもすでに回復して、俺が魔力を手のひらから注ぐ様子をじっと見つめていたのだった。


「根が……」


誰の声か分からなかったが、根がシュルシュルと短くなっていき代わりに20㎝ほどだった樹の幹がグングン伸び始め、ほんの少しの間に俺の身長を越え虚栄の都市の漆黒の夜空に届きそうなほどの大きさへと成長していったのだった。



「アルスロット殿……もう、大丈夫ですよ。アルスロット殿の魔力で生命の樹は豊穣を約束する樹へと成長しました」


「アル君っすごいよっ、小さかった生命の樹がこんなに大きくっ!!」


「なんでしょうか、なんとも爽やかな風が?」


「ちょっと見てくるのじゃ~」

すでに、乾いた漆黒の様な青い髪から羽に代わり闇の魔力を大きく吸い込み一度羽ばたくと漆黒の闇夜のなか巨大な樹となった生命の樹の周りを飛び回り始める。


「サラサラと樹の声が聞こえてきます……」

アリアちゃんはオーチャコ神に祈るように目をつぶり胸の前に手を合わせ耳を澄ます。


「ヴァルおねえちゃまはしゅごいでしゅっ!!!お空をとんでましゅっ!!!」

辺境都市オリアでもアルスロットを空に飛ばした時にヴァルが飛んでいるところ見ていたはずだが……キャンキャンと喜び吠えるピノと一緒にはしゃぎまわり。


「これが、豊穣を約束された生命の樹なのですね……アルスロット様」

100年越しの種に、創世期には神より与えられた原始の樹の一つ生命の樹の息吹に上を見上げるバーバラは涙を流していた。






「アルスロット殿、この生命の樹がこの虚栄の都市にあると言うのであれば……エルフィン族もこの都市への自由な出入りをお願いしたいのですが」


「アルスロットおにいちゃま、だめでしゅか?」


エルフィン族……最終的には全ての人たちをこの虚栄の都市へと迎え入れる気はあるけど……。


「アルスロット様、是非にお願いいたします。エルフィン族との共同での様々な植物の育成に成功すれば、新たな調味料が簡単に手に入るようになるやもしれません」


「分かりました……ヴァル様っ!!」


上空を気持ちよさそうに飛んでいるヴァル様を呼びつけ、目の前にいるテネシア様、オフェリアちゃん、ピノ、バーバラさんにサードリングとエルフィン族の虚栄の都市への入退場の許可を出してもらう。


「ん~むむん~、出来たのじゃ~エルフィン族は虚栄の都市に出入り自由なのじゃ~」


「そうだっ、マスターであるヴァル様が設置する巨大な門は城前広場に、指輪を持つ者が設置したドアの門はこの生命の樹の周りに設置されるようにお願いできる?」


「ちょっと待つのじゃ~、うむむ~」


少し待つと設定が終わったのか目の前に2m程の高さのドアがすうっと出現し、ドアにはつながる場所も書かれていたのだった。


「しゅごいでしゅ、ドアがいっぱいでしゅよっ!!あっアルスロットおにいちゃまのお屋敷に繋がってるドアでしゅっ!!!」

オフェリアちゃんがバンっと勢いよく開けると、殺風景な室内に天井には魔法の種火で光る丸い水晶なものが設置されている部屋が見える。


「アルスロット様?お帰りでございますか?」


「アルスロットおにいちゃまはまだでしゅよっ!!オフェリアでしゅよっ!!!」


「えっえ??オフェリアさま?失礼いたします」


オフェリアちゃんが思いっきりドアを開けたため、帰りを待っていたメリダさんが音に気が付き虚栄の都市へとつながるドア門を設置する専用の部屋へと駆け付けドアを開け、目を見開き見つめる先には4歳ほどの幼女に丸っこい子犬が顔をのぞかせていたのだった。








「ふわ~とっても良いかおりでしゅ、メリダおねえちゃまが入れてくれた紅茶はとってもおいしいでしゅ」


「そうでございますか、ピノにはヤクウの乳ですよ」

ヤクウは大人しく貴重なGランクモンスターで俺の屋敷で大事に飼われている、乳を取ることが出来るモンスターはこれ以外にいなくアスハブ陛下からも大事にしてくれと言わせるほどの希少さだ。


「それで、カルマータさんルーチェさんの姿はいったい……」


「はあ……アルたちと別行動をしたのは、ザイムがアルタナシア魔国のキャラバンと接触したのが分かったからなんだが。まあ、荷運びの他にもアルタナシア魔国の王であるルーチェとの連絡を取ると言うのが大きな目的なんだがね。今回は大きな問題が起きた、その内容がルーチェが魔族化する程のものだったんだよ」


俺がルーチェさんに目を向けると、可愛らしい顔つきが噴き出す魔力を纏いかなり端正な顔つきとなっており……バチバチとスパークするような魔力は少しでも触れればただでは済まないことが容易に想像できるほどだった。


「アル……見ないで……」


「カーン、ルーチェさんの魔族化を解いてあげて」


「フム、これでは動けなかっただろうな」


ルーチェさんの魔族化した力はカーンの制御もあり尋常じゃない力を出す事に成功していた……少しでも動けば屋敷を破壊してしまいそうで。俺が帰ってくるまでナーダが魔国より持参した魔人剣である魔剣ルビアンテで押さえ込んでいたそうだ。


「ルーチェお姉ちゃんが魔人化してしまったためにアルお兄ちゃんがピンチでも駆けつけることが出来なかったんだ?」


「ああ、共有で分かっていたが動くことが出来なかったんだよ」


「ん……・・・・・・(もう大丈夫)


カーンがルーチェさんの噴き出す魔力をすべて吸収すると、カルマータさんよりも成長していた魔力の体はスッと消え去り元のちんちくりんないつもの可愛らしいルーチェさんが戻って来るのだった。



「さあ、オフェリア……闇の精霊王が天を染め終わりましたよ、オリアへと戻りますよ」


「あふ……光の精霊がおきましゅたらピノとアルスロットおにいちゃまのお庭で……かけっこするんでしゅ。今日はおとまりするんでしゅ……」


談話室のオフェリアには大きすぎる椅子に体を預けて、くてんと糸の切れた人形のように呟きながら寝てしまう。


「あの、よろしければ部屋はいくつでもありますので泊って行ってください。それに、夜も更けましたし……この時間を虚栄の都市を経由するとはいえ歩いて帰るのは心配です」


「そうですね、今日はアルスロット殿の提案に甘えるとしましょう」


「メリダさん、最高の部屋をご用意してあげて」


「はい、王族用のお部屋がちゃんとご用意できますのでご安心くださいませ」


テネシア様はオフェリアちゃんを抱き上げるとメリダさんに案内され談話室を退出する。



「それで、アルの方はどうだったんだい?生命の樹は無事に種から?」


「あはは、それがですね……」待ちきれなくなったバーバラさんが植えた生命の樹の種は魔力を欲して大地を枯らす生命の樹になりかけたことを話す。


「まったく……アルがいなかったら虚栄の都市は使い物にならなくなっていたんだね」


「カルマータ様もうしわけございません……」


「カルマータ~、バーバを許してあげてなのじゃ~」


「まあ、終わりよければすべてよし……だけど、毎回上手く行くとは思わないことだよ」


「はい、その通りでございました……」


「それで、生命の樹は誰が管理をしていくんだい?」


「それは、バーバラさんとエルフィン族に任せることにしました。テネシア様が言うには今まで育つことのなかった種は生命の樹のおかげですべて成長するそうで、最近では見られなくなった作物も復活するということです」


「アルスロット様、是非にバーバラにお任せくださいませっ!!ヴァンプ族の知恵袋として必ず後世に残ってゆくように管理して見せます」


すでに、深夜を回りヴァンプ族のヴァル様とバーバラさん以外は限界を迎えていた。


「すうーすうーすうー」


「アリアちゃんがいつのまにか寝ちゃってるね……それじゃあ皆ご苦労さま、俺はアリアちゃんを部屋まで運んだ後、自室で眠るよ……おやすみなさい」


「アル君っ私は孤児院の自分の部屋に戻るね、皆お休みっ!」

さっとマジックドアを出すとオーチャコ神孤児院の自分の部屋に繋がったのかさっとくぐりドアが閉まるとスッと消える。


「んーーー・・・・・・(疲れた寝る)


「ナーダ、話はまた明日だ。一度寝て頭をサッパリさせるよ」


「そうでございますね、あっ!ルーチェ様お待ちくださいませナーダがお世話させていただきます」


すでに、談話室から出て行こうとしていたルーチェに気づきすぐに後を追いドアから出ていくと、小さな声が聞こえてくる。


「んっ、・・・・・・・・(もう子供じゃない)


「ああっ、やっぱりでございますっ!!あれほどベットで眠る時には眠り着にお着換えくださいませと小さき頃から申し上げていますのにっ!!!」


「やれやれ……それじゃあ、おやすみ」

カルマータさんは開け放たれたドアをため息をつき、俺を見ると微笑みながらお休みの挨拶を。


「それじゃ、ヴァル様たちは虚栄の都市へ?」


「バーバと色々とやる事があるのじゃ~」


「そうでございます、今まで植えても芽を出す事のなかった眠りについた種を宝物庫から探し出さないといけません」


「じゃ、メリダさんアリアちゃんを部屋まで運ぶのでその後はお願いします」


「はい、お任せくださいませ」


こうして、生命の樹は豊穣を約束する樹として無事に成長しルーチェさんが魔族化するほど怒る事態となったアルタナシア魔国の今後の話は、眠い頭をすっきりさせた後に話し合われる事となったのだった。



































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