第九十八話 虚栄の城 できる事
「ひゅわ~すごいでしゅっ!!!おっきな門でしゅよっ」
ピノを胸に抱っこしながら巨大な虚栄の門を見上げるオフェリアはのけぞりながら驚くと、テネシアの服をつかみ開くのかと聞いてくる。
「ええ、これは……虚栄の門と言うのですよ。アルスロット殿がエルフィン族とオリアの民の為に設置をしてくれたのですよ」
「アルスロットおにいちゃまがでしゅか?ここを開くとおにいちゃまがいるんでしゅか?」
「そうですね、アルスロット殿の屋敷があるグリナダスにも繋がっているとは聞いていますよ」
それを聞いて、アルに合えると飛び上がりながら喜ぶオフェリアにピノも喜びの鳴き声をキャウキャウと上げる。
「お母しゃま、はやく開けてくだしゃいっ!!」
「仕方ありませんね、アルスロット殿との約束を破ることになりますが……」
開けと思いながら扉に触れるとゆっくりと左右にと開いていく、そしてその先には漆黒の夜空に輝く星が瞬き大通りには不思議な光る街灯が一定間隔で並ぶ広場へと出たのだった。
「ひゅわ~ピノっとってもお空がきれいでしゅよ」
「これは……想像以上に、こんな巨大な都市が門の向こうにあるなんて……」
周りを見回すテネシアの目には漆黒の夜空に瞬く星々、そして一定間隔で設置される街灯にはとても明るい光が街を照らしていたのだった。
「でも、だれもいないでしゅ……」
「おかしいですね、アルスロット殿の話では夜でもヴァンプ族の者達が働いていると聞いていましたが」
二人は黙り込み少しの物音を聞き逃さないように長い耳を神経を集中するが……。
「風の精霊も踊っていませんね」
「あっ!ピノだめでしゅっ!!またまいごになりましゅ」
オフェリアの腕から飛び降りキャンと吠えた先には虚栄の城があり体と目を向けると異様な光景が広がっていたのだった。
「主よ、無理だな。魔刃を展開するのは先ほどテネルトーナが抑え込まれたことからやめた方がいい、どうなるか責任は持てない」
「そうだよな……威力があって唯一、剣技じゃないスキル技はフェリンクロウだけ上手く行くか分からないけど連続でふさがる前に生命の樹の根を削り取って前に進んでいくしかないかな」
「まあ、そうであろうな。折れた状態の我では大した力はない」
「そうだっ!私の細剣・カルリダーナもカーンと同じように力を押さえ込まれちゃうのかな?」
カトラお姉さまは自慢の美しい細剣を鞘から天に向けて抜き放つ、星空の光がチラチラと刀身に煌めいてとても美しいが……。
「むう~~~~ヴァルの魔弓・アルテミスもだめか~?」
カトラお姉さまの美しいカルリダーナを見ると対抗心が沸いてしまったのか小さな肩掛けポシェットから短剣の柄だけを取り出し同じように天に向けると、漆黒の夜空のような弓が柄の左右から伸び形成される。
「フム……試したいのは分かるが、やめておくんだな。それに、覚醒が浅すぎてろくに力も出せて無いだろうに」
カーンから二人の宝剣、宝弓の覚醒が進んでなく大した力がないと言われ二人ともしょぼくれてしまう。
「四人とも下がって、もしもの時はカルマータさんとルーチェさんに知らせてよ」
「アル様分かりましたわ……無茶をされると思いますがお気をつけて。オーチャコ神の神像の台座はこの先を真っすぐに進んだ中庭の中心に設置されています」
「アル君、私が△魔法で戻ろうとする根を少しでも止めて見せるわっ!」
「アルお兄ちゃん気を付けて、なんか嫌な予感がしてます……だから……」
「アリア~大丈夫なのじゃ~アルはいつも平気だったのじゃ~」
俺は皆の声援を受けながら、<身体強化>さらに上位の身体強化魔法<リーンフォース>をカーンは鞘に納めたまま両手に魔力を集中させて高める、カトリナ様には台座の場所は真っすぐだと聞いているがニュースサイトにマップを表示させて最短距離の道しるべがVR表示により目の前に浮かぶと一気に魔力を爆発させフェリンクロウを生命の樹の根へと叩きつけたのだった。
「ダメだわ……私の△魔法でも少しの間しか根を止めることはできなかった」
「カトラお姉ちゃん大丈夫だよっ!!<かぜのこえ>でアルお兄ちゃんの声は聞こえてるから、今も必死にスキル技を放って一歩ずつ進んでるよ」
「それにしても、見えないと言うのは不安ですわね……」
「根っこでもう見えないのじゃ~……」
アリアちゃんの<かぜのこえ>を皆にも聞こえるように調整をすると、アルスロットが必死に魔力をフェリンクロウに乗せ生命の樹の根を削る激しい音がする。
「はあっはあっ、くそったれっ手がすごく痛い……何度も連続で使うスキル技じゃないんだなこれって……」
「フム、高密度に収束した魔力を手のひら全体から放つスキル技か……フェリンの手ならいざ知らず、人族の体では負担が大きいのだろうな。歯を食いしばってリーンフォースを手に集中させることだ」
「俺はステータス上では人族では無くて日本人らしいがなっ!!!」
掘り進めて直ぐに俺の後ろ、退路はふさがれ目の前は真っ暗にそして狭い空間でフェリンクロウを炸裂させると爆発するような勢いで樹の根の欠片が俺に襲い掛かり閉ざされた空間内ではフェリンクロウの超振動が粉塵と鼓膜を破壊する音の暴力が襲い掛かっていた。
「ゲホッゲホッ粉塵で息が出来ない……」
思わず片方の手で口元を押さえて激しくせき込んでしまうが、この状況を何とかして打開しないといけない……。
「カーン、三種の神の宝箱を俺のニュースサイトみたいに使うことが出来るか?」
「…………無理だな、拒否された。アルスロット・カイラス以外の命令は受け付けない」
「くそっ、三種の神の宝箱は片手で機能に沿ったボタンを魔力を流しながら触れる必要がある……手がふさがったら……手が……手が?手がふさがるのならっ足だっ!!」
魔力を足に、フェリンクロウを使う時のように収束させると……。
・縮地
・靴飛ばし
・インパクトガード
「残念だが、攻撃系のスキル技はリストにないな」
「相手との死角や間合いを取る縮地に?、冗談なのか?靴飛ばしとか……インパクトガードはガード技か?」どれも、フェリンクロウのような攻撃するスキル技ではなかった……靴飛ばしはそもそも俺の体にはチャトラアーマーで足は靴を履いたまま着る鎧だ、靴なんか飛ばせない。
「主よどうする気だ?このままでは……」
「ああ、死ぬかもしれないな……今更だけど緊急速報が立ち上がったよ……」
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緊急速報 アルスロット生命の樹に飲み込まれる
8分後、フェリンクロウを繰り出すが粉塵による呼吸困難と破壊する生命の樹の根に徐々に自由な空間を奪われてしまう。
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俺が強くなってしまったせいなのか、生命の樹の根の中に飲み込まれてから発信される緊急速報に完全に俺の行く先は死に近づいていたのだった。
「どっどうしよう……アルお兄ちゃんが、死ぬかもしれないって……」
「アル死んじゃうのか~?」
「だっ大丈夫ですわっアル様がアル様が……。そうですわっカルマータ様とルーチェ様をすぐに呼んでっどうにかなるんですわきっとっ!!!」
「アル君……きゃっ!!なにっなにっ?」
呆然とアルスロットの名をつぶやくカトラの足元には小さな丸っこいものがまとわりつきキャンキャンと吠え、そして声をかけてきたのは辺境都市オリアで出会ったエルフィン族の女王テネシアとオフェリアの二人だった。
「ピノっめっでしゅよっ!!」
オフェリアの叱りの声も無視してキャンキャンと吠えるピノはカトラの足元をグルグルと回りやめることは無かった。
「突然申し訳ありませんね、このピノがどうしても騒がしくこの子の吠える声にここまで来てしまったのです」
「もうっ!ピノちゃんっとっても驚いたわっ」
「カトラお姉ちゃんっ!!!アルお兄ちゃんが苦しそうっ!もう息がほとんどできて無いよう……」
<かぜのこえ>から聞こえてくるアルスロットの声はゼエゼエと変な呼吸音だけとなっており、その音はとても苦しそうに必死に息をしているのが明白でアリアとヴァルはそんな様子に涙が止まらなくなっていた。
「どうしたのです?アルスロット殿がいませんが……それに、この樹は生命の樹……なぜこれがここにあるのですか?」
「そっそれは……あの根の中にアル君が、閉じ込まれたバーバラさんを助けにそして魔力を欲して暴走している生命の樹を安定させるために」
「アルスロットおにいちゃまは、あの中で迷子になってるでしゅか?」
「オフェリアそうではないのですよ……アルスロット殿はあの中に閉じ込められてしまったのです」
「そうなんでしゅか?ピノのの時みたいに聖女しゃまが、まじゅっくどあでアルスロットおにいちゃまのところにいけましぇんか?」
「「「「あっ!!」」」」
「□っ○っ×っ、アル君っ間に合ってっ!!」
アルスロットを思いながら作り出したドアをカトラが魔力を流しながら開け放つと樹の根の粉塵と共に転がり出たアルスロットは樹の根の地獄から脱出することが出来たのだった。
「げほっげほっ、げほっげほっ、ひゅーひゅーじょ<浄化>……」
汚れてしまった肺の中まで奇麗になるようにと思いながら基礎魔法の浄化を使うとスッと呼吸が楽になり体中にまとわりついていた樹の根の粉塵は洗い落とされていたのだった。
「主よ、今回は危なかったな。カトラお嬢ちゃんがいなければ終わりであったぞ」
「はははっ、もうだめかと思ったよ。カトラお姉さま本当にありがとう」
「アル君っ、あんな状態になったら引き返さないとダメだよっもうっ」
俺が無事だったのかいつものようにプリプリ怒るカトラお姉さまに、カトリナ様はホッとした顔にアリアちゃんとヴァル様には不安と怖い思いをさせてしまったのか涙があふれて顔はクシャクシャだった。
「どうやら、ピノが吠えたのはアルスロット殿がピンチだったからみたいですね」
「キャウ、ペロペロペロペロペロペロペロ」
「うわっぷ、ピノお前が俺のピンチを?ありがとうな」
「アルスロットおにいちゃまっ、オフェリアもでしゅよっ!!」
丸っこい子犬のようなピノには飛びつかれ顔をべちゃべちゃになるまで舐め回され、オフェリアちゃんもカトラお姉さまにマジックドアを出すようにとピンチを救ってくれていたのだった。
「アル様の苦しそうな声を聞いて、私達はパニックになってしまっていたようですわ……カトラ様のマジックドアの事さえ思いつきませんでしたわ」
「カトリナ様、そもそも俺のミスですね進む前に途中で引き返すことも出来なくなった場合を想定しなかった……カルマータさんがいたら、こんな事にはならなかったでしょうね」
「ふふっそうねっ、カルマータさんならピンチになるほど冷静に対処できたし。たぶん、入る前にマジックドアで……いえ、遠視魔法で見てたかな」
「反省も良いですが……バーバラという者が閉じ込められているのではないですか?それに、生命の樹をコントロールしなければなりませんよ?」
「はい……えっ?コントロールできるのですか?」
「そもそも、これは魔力が足りないための生命の樹の行動ですよ?アルスロット殿、魔力を与えると語り掛けながらその根に触れてみなさい」
俺は、テネシア様に言われた通りに魔力を与えると心の中で語り掛けながら根に触れると……メキメキメキときしむような音をさせながらオーチャコ神の台座の前まで樹の根のトンネルが出来上がっていたのだった。
「こんな、簡単な事で……テネシア様ありがとうございます」
「いいのですよ、そもそもこの生命の樹はエルフィン族が創世期に神から与えられコントロールをしていましたからね」
「わーーーーーっアルスロット様~~~~バーバラはもう魔力が限界でございますっ!!!早く来てくださいませ~~~~~っ!!」
樹の根がトンネルのようにバーバラさんの所まで繋がった後には、なかなか来ない俺達を呼ぶ声が聞こえてきたのだった。




