第九十三話 なをさずけるもの
ドンッ!!!!マユスの作り出した火炎剣とカーンの欠けた刀身に氷の名を与えられた魔刃クリュスタッロスが接触した瞬間に俺の目の前が大爆発を起こし物凄い爆圧にミチミチミチっと体からは嫌な音が盛大に聞こえる。
「……主よ、無理に爆発を押さえ込んだな?」
「身体強化の上位魔法・リーンフォースのおかげで俺の体も頑丈だろ?ははっでも体中がすごく痛いや、また刃を合わせるのは無理かも」
今ここにはカトラお姉さまは居ない、ラヴィちゃんと向かってきてはいるけど……と、突然体がホンワカと温かく痛みがどんどんなくなっていくのが分かる。
「アルお兄ちゃんっ!!大丈夫?私の回復魔法で今治療してるよっ!!」
「あっアリアちゃん?そんな事も出来るの?」
「うんっ、オーチャコ神様が教えてくれたんだよ。魔声って言うんだってどんなところにでも魔力の声が届いて、回復魔法も声のように届けることが出来るんだよ」
「ずっと<かぜのこえ>で俺達の声を聞いていたんだね。おかげで助かったよ、もうすっかり痛みは無いよありがとう」
「今の大きな爆発音で皆がガーラン家の屋敷に目を付けちゃったから。出来るだけ早く戦闘を終わらせないと皆が到着しちゃうかも」
「うん、分かったよアリアちゃん」
炎に相反する氷では剣を交えたときに大爆発してしまう……アリアちゃんの魔声が届く範囲で回復してくれて助かったけど。
「カーンの魔刃の名を一覧表示しろ」ニュースサイトのアンサーにまだ分からない神像のコアの刀身の名を一覧表示してもらうと。
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魔人剣カーンの魔刃
元は魔人剣となる前のカーンの折れた刀身が7つに分裂した神像のコアが魔刃となるために必要な名。
魔(魔力吸収)マギア
炎(火)フロガ
氷(水)クリュスタッロス
気(風)アエル
鉱(土)オリクト
闇 アモルゴス
光 ファオス
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「カーンお前っああっセンワルス様が使っていた時と比べてたら、もしかして全く力がないのか?」
「オーバードライブは我の以前の力の一かけらを再現した姿だ、主の魔力を無尽蔵に使っても大した力はないな。それに、人造魔族の時にコアを刀身にしたが大した力にならなかったであろう?主は文句を我に垂れたのを忘れたか?」
そうだ……あの時、煙を出すとか木を茂らせるとか眩しい光を出すとかでもっと強力な力を出せないかと文句を言ったんだっけ……オーバードライブは魔力枯渇するまで魔力をつぎ込んで魔族化したゾンガをやっと倒したんだったなすっかり忘れてた。
「じゃあ、この名を与えて復元した魔刃は?」
「この姿は主が我に与えてくれた姿だどれほどの力があるのかも分からんな」
炎を抑えるにはどうしたらいい、あれは原始の炎で魔力吸収のマギアはでは吸収する事は出来ない。かといって氷の刃はぶつかり合っただけで大爆発だ……風のアエルじゃ炎に力を与えるだけだろうし、土のオリクト……どんな刃になるのか想像もつかなかった。
「たぶん説明をニュースサイトで聞いても使って理解しなきゃダメだ」
「別に一つが答えではあるまいて、色々と試してみるのだな」
「カーンっ風の名を与えるその名は<アエル>っ!!」
今度は白い神像のコアが刀身へと取り込まれ白い髭のような爪がチョロっとサイドから生える一風変わった魔刃が生まれる。
「主っ!!!」
魔刃アエルが展開し終わり目を上げるとすでに上段から二本の火炎剣を左右から振り下ろすユングが、俺は咄嗟に前に突き出すように、そして少し荒く魔力を魔刃へと流してしまうと刀身から左右に飛び出す白い髭の刃がユングの火炎剣を受け止めていたのだった。
「フム、風では炎を打ち消せないまでも押さえ込むことはできたな。それにしてもなんとも変わった刃だな主よ」
「あぎぐぐっ、受け止めるのに魔力でだよこれっ!!」
「魔刃なら魔力の供給が必要だな。だいたいが我は魔剣だぞ?」
俺は魔力全開で受けている刀身をフッと魔力を抜き体を火炎剣の剣先ギリギリまで退くと盛大に体勢を崩したユングは二本の火炎剣を地面深くへと差し込んでしまうが、一瞬でマグマのように灼熱の溶けた地面が吹き上がる。
そして、俺に灼熱の噴き出した土砂が襲い掛かると脳裏に新しいスキル技が浮かぶ。
「<パリイ>っ!!!」魔刃アエルを手首を返してその場で噴き出す地面と俺の間の大気を切り裂くとそれに沿ってマグマは左へと反れてボシュボシュと焼けこげる嫌な音をさせて落下する。
「はふ~助かった……あんなのを体中に浴びていたら危なかった。それにしても、この白い髭みたいな刃はすごいな」
俺は手を伸ばし触れてみるとサラサラと筆を触るようなコシのある感触であの燃え盛る火炎剣を受け止めていたのが信じられなかった。
「主よ、その白い髭は自在に伸びて相手をからめとることが出来る様だな」
「どうやらそうみたいだなっ!!!」
ドンッと魔刃アエルを後ろからその勢いに任せ真っすぐ前にへと突き出すと、白い髭がマユスを絡め捕りに襲い掛かかり、頭からつま先までがんじがらめに……魔法ローブ・ガーランから噴き出す炎は所々から漏れているがほぼ抑え込まれる姿に俺は先ほどから炎があふれる中心らしきローブのボタン部分へと魔刃アエルを突き入れたのだった。
「主よこれがアーティファクトのコアだと良く分かったな」
「へっ?カーン知ってたの?はあ~たまたまそうじゃないかなって噴き出す炎の感じで分かったけど知っていたんならちゃんと教えてよ~」
前留めで止められていた魔法ローブのボタンはカーンの魔刃アエルに貫かれ半分に割れて地面に転がっていた。
そしてユングはアエルの白い髭の拘束から解くとすべてが燃えてしまったようで真っ裸だった。
「まいったな、カーンこれどうしたらいいと思う?」
「我は知らぬな、その辺に置いておけばよいだろう」
「嫌な奴だったけど、そんなことできるかよっ!!そうだっ貴族だし執事がいるはずだ」
屋敷の周りを見渡すが、屋敷の壁にもたれ掛かりほぼ気絶状態の警備兵たちと……殴られていたライドさんは目を真ん丸にして俺をじっと見つめていた。
「ライド様、良かった目が覚めていたんですね?」
「あっああ、だいぶ前から目が覚めていたよ。君のそれは魔剣かい?切り替わり纏う美しい魔刃の姿に目を奪われていたよ」
「とても、気難しい奴ですけどね俺の愛剣ですから見るだけですよ?」
「そうなんだろうな……とても素晴らしい者を見せてもらったよ。おっと……ユング様をどうにかしないといけないね……まさかユング様がここまで強大な力を持ってるなんて」
「それで、ガーラン家の執事は知っていますか?」
「ああ、もちろん知ってるガーラン家の執事は俺の兄がしているからな。だが、おかしいなこれだけ騒ぎが起こってユング様も倒れたのにこの場にいないなんて……そもそも君は何のためにここに来たんだ?」
「ああ、それはこのガーラン家に知り合いの子の両親が軟禁されているのが分かったからなんですよ。それが発覚した切っ掛けはその子が迷子になっていた所を冒険者が保護をしたからなんです」
「なんだと?ガーラン家に軟禁?……名前は?その軟禁されてる両親の名は分かるかい?」
「えーと、ムラクさんとコトリさんだったかな。娘の名前はラヴィちゃんと言うんですが」
その名前を聞くとライドさんは、また目を思いっきり見開き固まってしまう。
「はあっ、そうだったのか……。たぶん軟禁しているのはガーラン家の執事である俺の兄だ、たぶん急遽開かれる事となったアスハブ陛下主催の晩さん会に間に合わせる為に髪切り師と髪結い師を連れ去るようにこのガーラン家に連れて来たんだと思う」
どうやら、ラヴィちゃんのご両親は貴族の髪をセットする髪切り師と髪結い師としてとても有名らしく、急ぎ開かれるアスハブ陛下の晩さん会に間に合わせる為にライドさんの兄であるガーラン家の執事が急いで連れ去るようにこの屋敷へと連れて来てしまったというわけだ。
「ユング様もまだ目を覚ましませんし。ラヴィちゃんのご両親と一緒にいるであろうライド様のお兄様の所に行きましょうか、軟禁されているところは執事室でしょう?」
「ああ、たぶんだが一般の者が招かれる下級客室には案内されていないはずだ……」
ライドに案内され執事室の前に行くと扉は内側からカギがかけられていた。
「兄さんっ!!アラン兄さん、ライドだっ直ぐに開けてくれっ!!!」乱暴にドアをノックしながら呼びかけるが開く気配はなく……。
「執事室の中の様子はどうなっている?」ニュースサイトのアンサーに渡してもしもが無いように万全を期す。
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執事室の中の今の様子は
部屋の主であるアランはマユスに起こったことにショックを受け部屋の隅で泣いている。
ムラクとコトリは無事に椅子に座って不安そうにじっとその様子を見ている。
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「ライド様、扉を壊して入ります。どうやらお兄様は部屋の片隅で泣いておられるようですので」
俺はそう告げると、身体強化にリーンフォースを重ね貴族屋敷の重厚で頑丈な扉を軽く押し開けたのだった。
「はあ~良かった、ムラクさんコトリさん無事ですね?」
「アルスロット君……なぜここに?」
「ラヴィちゃんを冒険者が保護した後に、ムラクさんとコトリさんがガーラン家に軟禁されていることが分かりましたのでここに来ました」
「良かった、ラヴィは無事に保護されているんですね。それだけで私たちは満足です、アルスロットさん何度も私達を助けていただき本当にありがとう」
俺と、ムラク夫妻と喜びながらしゃべっていると……。
「なぜだ……なぜ、こんな事に……私はこの髪切り師の夫婦をマユス様の晩餐を間に合わせる為にここへと連れて来ただけなのに。なぜ、マユス様があんなお姿に……ああああああっ我が家は終わりだデスターク家は俺のせいで終わりだ……」
「兄さん……何度も言っただろう?貴族は民を守るものだと。この後、このご夫婦の娘さんを連れた冒険者たちがここに押し寄せてくる、そうなったらガーラン家ごと終わりだよ」
「ひいいっそんなっそんなああああああぁぁ、ライドっお前は俺の弟だよなっそうだっデスターク家の当主はお前だっお前にしてやるだから助けてくれっ!!!おねがいだよおおおっ」
ライドさんにしがみつく兄のアランは涙と冒険者がここへと押し寄せてくることから完全に平静な心を失っていた。
「あの、アルスロットさんどうにか穏便に治めることは出来ないでしょうか?」と、コトリさん。
「わたくしども夫婦はこの通り、少しの間この部屋に待機していただけですし。ラヴィも冒険者さんたちに無事に保護されていますし」とムラクさんも、俺に穏便にと口にする。
「私からも……どうか穏便に、このまま冒険者とガーラン家が衝突すれば……」ライドさんも最後は言葉にならず口をつぐむと下を向いてしまう。
「ん~そうですね、今後はこのような事が無いように王国民の為に貴族たることをアスハブ陛下に誓うのなら何とかしますよ?」
「あああっ、ちかうっ!!!当主は弟のライドに譲り私はその下で王国民の為に貴族たることをアスハブ陛下に誓うっ!!」
「分かりました、それでは直ぐにマユス様を王城の晩さん会に出席できるようにムラクさんとコトリさんがここへと連れてこられた理由を達成するだけです」
「しかし……マユス様はあんな状態だぞ?」
窓の外を見ると、この執事室は1階の入り口ホールの隣部屋で右斜め前方を見るとマユスは素っ裸で頭は魔法ローブ・ガーランのせいかチリチリのモジャモジャになっているのがここからでもわかったのだった。
「ああああっあんなお姿ではっ!!!無理だっアスハブ陛下が主催する晩餐など出れるはずがないっ」
「まあ……メイドを総動員して晩餐用の上質な貴族着に、後ですねムラクさんにコトリさんこんな髪型を聞いたことありませんか?パーマと言うんですが」
俺の言葉に二人ともパーマ?と疑問を返しながら、慌ただしくラヴィちゃんを引き連れた冒険者たちが到着する前にマユスを晩餐会へと出席しても恥ずかしくない姿へと変身させるのだった。
「よしっ、チリチリでどうしようもない髪はカットしたよ……後は」
「アルスロットさん、ホントにこんな油で?何とかこの髪が整うのでしょうか?」
「ん~イメージ的にはピッチリしウェーブした髪が後ろに流れて悪くない感じになる予定なんですが……」
「あっそうなるのね……油をしっかり馴染ませれば……」と髪結い師のコトリさんがマユスの頭に油を付けながらまずはなじませ、櫛で後ろへと流すとモジャ髪はウェーブをし艶々の髪が見事にセットされていたのだった。
「これはっ!!!凄いっ!!!艶のあるウェーブした髪が後ろに流れるように見事にセットされている」
「あああっ助かったっ!!!ライドっああああよかった良かったよう……」
どうやら中級貴族であるこの二人から見てもマユスのモジャモジャパーマ頭はムラク・コトリ夫妻のおかげで恥ずかしくない髪型へと激変することが出来たようだった。




