第九十話 アリア
私はアリア、アルスロットお兄ちゃんとオーチャコ神の神像の前で厳かに伴侶となる誓いをすることをいつか夢見ている。最初の出会いは……女の子としてはあまりいい物じゃなかった。なんせ私の体は垢にまみれ、体はがりがりにやせ細り悪臭のする街角の隅で死を待つだけの状態だったから……。
「大丈夫かな?食べれる?」
気絶状態だった私を優しく抱き上げると、すぐに温かな優しい塩味のコケッコ鶏出汁スープを口元に。あまりに良い香りにパッと目が覚めた私は勢いよく飲みすぎて咽て最初の一口は吐き出してしまっていた。
「あっ、だめよっゆっくり飲まないと。それが飲めて大丈夫そうなら小麦団子の具沢山スープにマヨネーズソースをからめたコケッコ肉を挟んだ小麦焼きがあるんだからね?」
私は食べ物があるのと?目で探してしまっていたが口元には優しい塩味のスープがありごくごくとあっという間に飲み干してしまっていた。
「アル様、どうやらあまり心配しなくてもすぐに食べれるだけの元気はありそうですわね」
「ある……さま?」
「あっ、名前を名乗っていなかったね。俺はアルスロットで最初にスープを渡してくれた髪が短いお姉さんはカトラ、今俺の名前をアルと言った髪が長いお姉さんはカトリナと言うんだ。そしてあっちの屋台で小麦焼きを焼いて赤い髪色に背の一番高い女性がカルマータ、その横の色々な具材を挟んでいる水色の髪色の女性がルーチェに蒼黒い髪色の女性はヴァルだよ」
私は紹介された人達を一人一人目で追うと、なんとも言えない優しい目で私を見つめ返してくれる……そんな目を見た私はすぐに助かったのだと理解する事が出来たのだった。
「アルスロット様……私はアリアです」
私も名前をと思ったとたんに自分のあまりにもな状態に、パニックになる……女の子としてはとてもじゃないけど男性の前に立てるような状態ではなかったのだが、すぐに私のパニック具合に察したのか。
「あっと、エルランダ教国では基礎魔法は無いんだったね……すぐに、きれいにしてあげる……<浄化>」
司祭様たちのようにアルスロット様は魔法を使い私の垢にまみれ泥だらけの体を一瞬でなんとも言えないいい香りのする清潔な状態へと変化させてくれていた。
「あっもうっ!!アル君っ突然に魔法を他人にかけたらだめよ?ほらっアリアちゃんがびっくりしちゃってる」
「わっいたっ!!!カトラお姉さま……なにもゲンコツしなくても……」
「むうっアル君分かってないわねっ!!もう一度、ゲンコツがほしいのかしら?」
「そうですわ……いくら何でもいきなり魔法をと言うのはマナー違反ですわ」
「あっあっ、でもすっかり奇麗になりましたっ!!アルスロット様ありがとうございます」
私もアルお兄ちゃんもこの時の事が後々あんなに大事な意味のある事だったなんて知る由もなかったんだけど。教皇様から教えていただいた時はとてもびっくりしたのと……ずっとずっとアルお兄ちゃんと一緒に居られるんだと、とてもとても幸せでいっぱいな気持ちになったんだったね。
「俺の方も突然魔法を掛けてゴメンね、それと俺に様はいらないからねアリアちゃん」
「あっでっでも……」
「さっ、アリアちゃん元気がすっかり出てきたようだし美味しい食事をお腹いっぱい食べましょう。それに元気になった人たちにはまだ食べ物を口に出来ていない人たちに配るお手伝いをしてほしいなっ」
「うっうんっ!!カトラお姉ちゃんっ!!!」
「ふふっ、元気でいいですわね。アル様もそのようにお呼びすればいいのですよ」
「うんっ!!カトリナお姉ちゃん」
「俺はアリアちゃんを屋台に案内するよ。カトラお姉さまとカトリナ様は引き続き食事の案内をしながら動けない人たちを助けてあげて」
「わかったわっ!」
「それでは参りましょう」
二人の顔がそっくりなお姉ちゃんは、周りの人に声をかけながらそして倒れている人には見たこともない強力な回復魔法を使いながら大聖堂に続く大通りには徐々に大きな祭りのような騒ぎとなって。
基礎魔法……アルお兄ちゃんの事がもうあの時には、ううんっ浄化の魔法を掛けられてびっくりした時からずっと目から離したくなくて、食事を運ぶ間も。
そして勇気を出して教皇様にとっても美味しい小麦焼きを差し出して、意地悪な大司祭様達が出て来た時にはびっくりしたけど。どんなに神像に祈っても覚えるのとが叶わなかった魔法が基礎魔法がアルお兄ちゃんから授けられた時には……本当の家族を得られたような不思議な感覚が胸いっぱいに広がっていたんだっけ。
「アリアさま……アリア様?」
「わっえっ?!」
「お着換えが終わりましたよ。真っ白な法衣に大司祭の肩マントと付けさせていただきました。これで教国民の前に立っても恥ずかしくありませんね」
「あのっ私はこんなものは無くても……」
「まあっそれはいけませんよ?貴方は大司祭なんですから、確かにまだ未熟な子供である部分もあるのでしょうが……本当に、教国民のすべてが大司祭である貴女を尊敬し敬い、そして基礎魔法の母だと思っているのですから。それに相応しい姿をしなければなりませんよ?」
私は、グリナダスのパーティー屋敷から虚栄の都市を経由してエルランダ教国へと門をくぐり、ひっきりなしに荷馬車が行き来するようになった大通りを真っすぐ進んだ大聖堂の中にある一室で着替えをさせられていた。
それと言うのも、エルランダ教国民全員に基礎魔法を覚えさせる為にエへラン教皇陛下から各衛星都市を回り教え広めてほしいとの要請を受けていたのだった……それにオーチャコ神の神像、どうしようアルお兄ちゃん絶対に忘れちゃってるよね……これから私は大聖堂前の大広場前に設置された壇上へと上がり基礎魔法を教えるのだがその前に名も分からない神像が祭られていた台座の下へと来ていたのだった。
「名も分からなかった神像……台座以外消えちゃってる」毎日お祈りに来ても私には魔法は授けていただけなかった……うん、だけど今はもうアルお兄ちゃんから基礎魔法を授けてもらった。
この後、まだ基礎魔法の習得が出来ていない教国民に私が教える事となる、ほとんどの教国民はお祈りをしていたはずだから魔力の循環は出来るはず……後は私は皆に聞こえるようにアルお兄ちゃんに教えてもらったようにするだけだよね。
そんな事を思いながら、スッと魔力を体中に循環させながら台座に触れる……台座にも特に装飾や神の名が記されているわけでもなくとても簡素だが。
『よいですねっ!アリアと言いましたか?そのまま台座にあなたの魔力を流しなさい』
「きゃっ!!!」
『びっくりさせてしまいましたか?私はこの世界を統べる事となったオーチャコですよ』
「はわわっ!!オーチャコ神さまですか?グリナダス王国の礼拝堂に祭られている……」
『ふふっ、残念ながら王都グリナダスと辺境都市オリアに農業都市エルヘイブだけですけどねっ』
「そうだっアルお兄ちゃんにっ!!あっでもまだきっと寝てるしこの後はすぐに教国民の皆に基礎魔法を教えないと」
『ええ、そうですね。アリアあなたはアルスロットが作り出した神の空白地帯……このエルランダ教国の新たな神を決めなければなりませんが……今、台座に魔力を流して触れたことにより私だけが呼び出され今あなたに話しかけています』
「あっ、神の台座に勝手に触れ……しかも魔力まで申し訳ありません」
『ふふふっ、そんなにかしこまなくても良いのですよっ!それとアルスロットはここに私が降りるよう動くコマですしね』
「コマですか?」
『ん~、ちょっとひどい言い方だったかしら?もし気を悪くしたのだったら許してねっ。でもあなたはアルスロットとは別、オーチャコ神である私のコマ……じゃなくてっそうね~使徒になりなさい』
「私はまだ子供です……オーチャコ神様の使徒だなんて自信がありません」
『あ~大丈夫大丈夫、使徒といっても私がこの世界を円滑に運営できるように各都市へと神像の設置とその邪魔をする者の殲滅をしてほしいだけよ』
「はわわっそんな凄い力は私は持っていません……アルお兄ちゃんから授かった基礎魔法と皆に届ける声の魔法と軽症のケガを治す回復魔法だけです」
『うふふっ、それはとてもすごい事なのですよ?魔力の声を届けることが出来るという事は目に見えない場所にも魔法を届けることが出来る。そしてこのエルランダ教国ではそのような現象を神の声と言うのですから』
天より降り注ぐように声を届けることが出来る私の魔法<かぜのこえ>が神様と同じ……なの?
。
『それと、天より届く声で回復魔法を使えば?それは奇跡の力となるのですよ』
「でも、そんな魔力は私にはありません……」
『ですから、オーチャコの使徒とあなたはこれからなるのですよ。私の力が届く場所ではあなたはきっと素晴らしい力を使うことが出来るのですよ。さあ、オーチャコの使徒となるならこの神の台座に今一度、魔力を流しなさい』
その言葉を最後にオーチャコ神様の声は聞こえなくなると、大聖堂の広大な空間は怖いほどの静寂が訪れこの後、私は台座にオーチャコ神のお姿を想像しながら魔力を流た後にはエルランダ教国民の前に立ち大聖堂前大広場から真っすぐに続く大通りを埋め尽くす教国民だけではなく6つの繋がる衛星都市にまで私の魔法の声は降り注ぎ、そしてアルお兄ちゃんから受け継いだ基礎魔法を伝えたのだった。




