第八十八話 集まりて
「ラヴィちゃんは迷子だったわね?」
「そうなんでちゅっ!! ラヴィはまいごなんでちゅ」
ヴァルとの空の飛行を楽しみ、アルスロットが冒険者ギルドに居ることが分かるとすでに迷子になったことも平気なラヴィであった。
「たしか……ガンブルグにバルキリエだったかしら。迷子のこの子を連れて来たのはあなた達なのだからちゃんと責任をもって冒険者ギルドに報告をしなくてはね?」
「あっ、そっそうですっ!! 報告……ガイルっ!!! あんたが最初に見つけたし一緒に報告しないとっ!!」
「あっああ、そうだが……こんなにギルドがこんでちゃあ」
氷結の魔女が入り口まで出てきたことでそれを見つけた冒険者たちがさらに集まりだし、ガイルがぼやいた通り冒険者ギルドの中から外までさらに騒がしくなっていたのだった。
「大丈夫よ、私について冒険者ギルドの中に入りなさい」そう言って入り口に背を向けカウンターの方に一歩を踏み出すと左右に人が割れカウンターまでの道が出来ていたのだった。
「すごいでちゅっ!!! さっと道が出来たでちゅっ!!! がいるおじちゃんいくでちゅっ!!」
「あっああ、こりゃあすごいな……」
「いつもの冒険者ギルドじゃないみたい……すごく、見られて変な感じ……かも」
夕方の冒険者ギルドは混み合うが、カウンターで冒険の成否の報告とドロップ品の買取でごった返すといった具合で、こんなに注目を浴びながらカウンターに進むという初めての経験にガンブルグとバルキリエのメンバーは委縮してしまって中には躓く者さえいた。
「さっ、今は業務が止まってるから副ギルドマスターのアルカちゃんにね」
「えっ!? 副ギルドマスターが?カウンターに?」
「私じゃ不服かしらね? これでも剣聖ラングと氷結の魔女の担当をしていたこともあるのよ?」
「あっ申し訳ありません。光栄ですっ!!」
「それで……あら~可愛いわね~何歳かな~?」
ティタに抱きかかえられるラヴィはアルカに可愛らしい指を4本出して……。
「4つでちゅっ!!」
「ふふっ、4歳なのね可愛いわね~どうしたのかしら迷子かな?」
「ああ、この子はラヴィと言って冒険者ギルドに向かう途中に迷子になっているところを俺が見つけて。丁度一緒だったバルキリエにあやしてもらいながらここへ連れて来た」
「どうやら、この子はアルスロット君の知り合いみたいで。あのう、アルスロット君は?」
「そうだったのね、アルスロット君は今はイオスギルドマスターと大事な話をしていると思うわ」
「それと、この冒険者ギルドの騒ぎはいったい……わっ剣聖ラング様も……私っ大ファンなんですっ!!わ~すごい宝剣のロングソードもとっても奇麗っこんな近くで見ることが出来るなんて……」
「おいおい……ティタ感動しすぎだぜ? それで騒ぎの原因は剣聖殿と氷結の魔女殿がいるからなのか?」
「それは違うわ、SSSランクとSSランクの冒険者が誕生したのが原因よ」
「はっ? はは……」剣聖と氷結の顔を見るが特にうれしそうな顔や態度はしていなかった……それに氷結の魔女は魔法で顔には仮面のようにチラチラと輝く雪の結晶が瞬いていて顔色をうかがう事は出来なかった。
「この二人はSSランクよ、Sランクとは違いSSランクからはどうやら二つ名を冒険者カードに判定されるみたいよ。まっそれで、冒険者ギルドは業務は止まってこのありさま。この後、イオスギルドマスターから正式に発表があると思うから野次馬で今日は仕事にならないわね、どう驚いたかしら?」
「あっああ……Sランクより上のランクがあるなんて……しかも冒険者カードに二つ名が……」
「これは、私の想像なんだけど……Sランクまでは定期的にモンスターを倒さないとランクダウンする事から冒険者カードシステムとしては修行や鍛錬のランクみたいな物ね。SSランクからは二つ名が判定されて、ホントのスタートはココからなんだと思うわ……とても残酷だけどね……。まあ、そんな事をギルドマスターと話し合ってるんじゃないかしらね?」
「すごいでちゅっ!! ラヴィも冒険ちゃになってみたいでちゅっ!!!」
「あらっ、嬉しいわね~でもラヴィちゃんはまだ早いかな~最年少冒険者の記録は隣にいる剣聖ラングなんだけど確か6歳だったかしら?」
「ああ、子供の頃の嫌な記憶だが……父に無理やり連れられてオリアの冒険者ギルドで魔道具の上に手を置いて登録したんだったな……」
「そうだったのね……さすがにラヴィちゃんは4歳だしね~もうちょっと先じゃないと冒険者カードの魔道具も反応してくれないんじゃないかしらね~」
「これに、手をおくんでちゅか? やってみちゃいでちゅっ!!」
ペトっとつるつるで真っ黒な冒険者カードの魔道具の上に小さなラヴィの手を置くと……。
「うそっ……魔道具が反応したわ……」
「できたでちゅっ!! ラヴィにもできたでちゅよっ?」
大喜びするラヴィにカウンターのアルカの前には魔道具からラヴィの冒険者カードが排出されていたのだった。
「あらっこれは……」そして、手に取ったアルカにはラヴィの冒険者カードが普通のとは全く違う物だと言うのが瞬時に分かったのであった。
「ラヴィも冒険者になったのか~?」
「ん~そうねえ……これはヴァルちゃんなら分かるのかしら?」
アルカからラヴィの冒険者カードを受け取り見る、目の前には虚栄の水晶の設定画面が立ち上がりマスター項目の下に。
「アドミン……。ラヴィはアドミンになったのじゃ~、でもアドミンって何か分からないのじゃ~」
「ヴァルおねえちゃま、ラヴィはアドミンなんでちゅか?」
「アルに聞かないと分からないのじゃ~」
「あらっ、そういう事ならアルスロットちゃんの所に行きましょう」
「氷結まった。その前にガンブルグとバルキリエの冒険者カードを更新するわ……」
アルカはすぐにガンブルグとバルキリエのメンバー全員の冒険者カードを更新するとそのまま返さずに皆を引き連れてイオスギルドマスターの執務室へと階段を上がっていったのだった。
「やあ、皆そろってなんだか下が騒がしいようだね……それに子供もいったい?」
「あっアルおにいちゃまっ。ラヴィでちゅっまいごになっちゃったでちゅよっ!」
俺はイオスギルドマスターにオリアで起こった事の報告をやっと終え、SSランク以上のランクの詳細をニュースサイトでアンサーにかけSSランクからは二つ名の判定とSランクまでは修練のランクだという説明を終わったところだった。
「あれ?ラヴィちゃんこんな所に……えっと迷子になっちゃったの? どうしてまた……」
「ん~と、おちょらがきらきらときれいなんでちゅ。みてたらまいごなんでちゅ」
「あら~、ラヴィちゃん私の魔力の結晶を見上げてはぐれちゃったのね~ごめんね~ごめんね~寂しいわね~」
「うきゅう~ふわふわでちゅ~だいじょうぶでちゅラヴィにはアルおにいちゃまがいるでちゅっ!!」
ライラお母さまはシルバーコートをまとったままで自身が放出した魔力がラヴィちゃんの迷子の原因になってしまったことに、一人で寂しい状況にもなんともないと言う健気さに二人とも抱き着きあってキャッキャし始めると……。
「ずるいのじゃ~ヴァルも仲間に入れてくれなのじゃ~」
「んっ~~~~~~~~」
「あっ私も抱きついていいですか?」
セラフィムのチビッ子三人組もいつものように抱きついていたのだった。
「それで……SSランクとSSSランクの発表はするとして。問題は虚栄の都市と門の事なんだが……これを冒険者が使うことができるのかい……?」
「ヴァル様の冒険者カードを更新した時に虚栄の都市へと入ることが出来る冒険者を自動的に審査し選び出す機能が追加されたんですが。今の所、自由に行き来できるのは虚栄の水晶の指輪を持つ者とヴァンプ族のみです。そして虚栄の門はエルヘイブの中央大広場、旧初心者ダンジョン・ヴァンプ族集落入り口、グリナダスのパーティーハウスの屋敷、エルランダ教国の南の衛星都市へと繋ぐ門の横、辺境都市オリア・バリアン城内訓練場にと設置されています」
「すばらしいねっ!! そこを自由に行き来することが出来たら冒険もはかどるし、もしもの時は冒険者を各都市へと送り出すことが出来るっ!! それで、冒険者は誰でも虚栄の門を使うことが出来るのかな?」
「それですが……俺は虚栄の門を今まで秘密にしてきました。ですが、冒険者カードの魔道具にはヴァル様の権限で虚栄の門を使うことが出来る人物の審査をする機能が追加されてしまったんです」
「そうなのか……じゃあアルスロット君は冒険者たちに虚栄の門を使わせるのは反対なのか……」
「そうですね……今はまだ早いとは思っています。虚栄の門は王国からしたら脅威となるからです、今は人同士の戦いは無いようですが」
「ん~、でもこの虚栄の都市と門はヴァル・フレイア様が管理されているんだよね?それは、人同士の戦争や何か脅威になってしまうような管理なのかい?」
「あっえっ……確かにヴァル様が出入りできる人物を管理している……俺はアスハブ陛下の事を思いすぎたのか?」
「ああ、確かにこんな門を設置し支配しているアルスロット・カイラスという存在を人々に知られるとアスハブ陛下にはまずいかもしれないね~。食を商業ギルドを支配し、冒険者を支配し……ん~この門が使えるのなら冒険者は君に首を垂れるだろうね国王のようにね。しかし、それはアルスロット・カイラスがというのを知られていることが前提だ」
「なるほど、少し胸の重荷が軽くなりました。これは冒険者ギルドの冒険者システムの恩恵という事で選ばれた者のみ使うことが許されるなら……それは、いいのか。それならアスハブ陛下にも迷惑は掛からない?それを知った知らない国からこれを奪いになんてことは無いでしょうか?」
「あはははっなるほどっアルスロット君はそこまで心配するんだね?それはアスハブ陛下が心配する事だね、もちろん大々的にこの門の事は広めたりはしないが……もし、トヴァリス帝国の遥か東の先……遠い砂漠を越えてこの事が広まったら奪いに来る国がいるかもしれないと心配なんだね?」
「はい、グリナダスの周辺国家は大丈夫そうですが?もっと遠く知らない国でこの事が知られたらと心配しています」
「アル、グリナダスの周辺国家は大丈夫だよ。アルタナシア魔国はこのちんちくりんのルーチェが支配しているしあの国は力の強い者の言葉は絶対だからね。それとトヴァリス帝国は私の故郷だ、これでもトヴァリス帝国では巨人族を束ねる大貴族・ギガンテ家の当主だよ」
「そうでしたね、それにエルフィン王国のテネシア女王もオリア城主のアルタス様も話の分かる方でした」
「まあ、そういう事だねアルスロット君。確かにアスハブ陛下の心情は察するけどね~誰かにも言われたはずだよ?これは王の門だと、そして魔道具に選ばれたのはヴァル・フレイア様で支配するのはアルスロット・カイラス……君だ」
「俺の心次第でどうにでもなる、正しく使えばいいだけの事なんですね……」
「アルおにいちゃま、おはなしはおわりましゅたでちゅか?ラヴィの冒険ちゃかーどもみてほしいでちゅっ!」
はいっと背伸びをしてラヴィちゃんは俺に先ほど登録が出来てしまった冒険者カードを見せるのだった。
「待たせてごめんね、これがラヴィちゃんが登録できちゃった冒険者カードなんだね……?」
渡された冒険者カードには、通常の冒険者カードとは違う項目が幾つか並び背景には虚栄の水晶が3つ並ぶ透かし模様が入っており、俺は思考でニュースサイトアンサーに質問を渡す。
『このカードはなんだ?ニュースサイト』
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虚栄の門・冒険者限定管理者と冒険者カードのハイブリットカード
マスター権限を持つヴァル・フレイアに認められた虚栄の門・冒険者限定管理権限を持つことを示す冒険者カードとのハイブリットカード。
冒険者ギルドに設置されている冒険者カードの魔道具に連動しており、マスター権限を持つヴァル・フレイアと冒険者限定管理者であるラヴィのみがすべての冒険者ギルドに冒険者専用の虚栄の門の設置設定を行うことが出来る。
門の開閉時間や、大きさ場所などが設定でき。門を通るのに相応しい人物の選定も冒険者カードの魔道具の選定よりも上位の権限で決定することが出来る。
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「このラヴィちゃんの冒険者カードは……冒険者用の虚栄の門を管理する権限を持つことを示すハイブリットカードだそうです。ヴァル様とラヴィちゃんが冒険者ギルドに冒険者専用の虚栄の門を設置し管理することが出来るそうです」
「かんりってなんでちゅか?もんは知ってるでちゅよっ!!お母ちゃんとこけっこのたまごをかいにいくところがおっきな門でちゅよっ!!」
「あっはは、うんそうなんだけどね……ラヴィちゃんは冒険者ギルドに虚栄の門を設置する事が許されたんだよ、それと虚栄の門を使うのに相応しい冒険者の選定もね……」
「ん~よくわかりまちぇんが、ラヴィはおてつだいはできまちゅよ?」
「そうなると、ラヴィちゃんのお父さまとお母さまと相談をしないといけないかな?」
「ふむ、どうやらラヴィちゃんは冒険者ギルドにとって大事な人物になってしまったようだね……選ばれたからには冒険者用の虚栄の門なのかな?設置を是非してほしいね」
「あのう、少しいいですか?オーチャコ神孤児院では小さなラヴィちゃんと同じ年の子でも朝早くから起きてお手伝いをしています。ラヴィちゃんがやりたいと言うのなら、その門の管理をやらせてあげたほうがいいと思いますっ」
「カトラちゃん、そうね~でももうちょっとお姉さんになるまでは誰かが付いていないといけないと思うわ。やはり、ラヴィちゃんの両親に相談かしらね?」
「あっそうなのじゃ~ラヴィにはビジットリングを上げるのじゃ~」
「そうですわね、冒険者用だけの門の管理者ということはそれ以外の門は使うことが出来ないですわね」
「ラヴィちゃんも普通の門が使えたほうがいいと思います。身体強化もまだ使えないでしょうから移動が楽になります」
「アリアおねえちゃま。ラヴィは基礎魔法をこのまえおぼえまちゅたっ!!しんたいきょうかもできるでちゅよっ!!!ん~~~~~~<しんたいきょうか>」
その場で身体強化を唱えたラヴィは天井までジャンプをしたり、壁までとんでもない速さで移動し踵を返すとアルスロットに向かって飛びかかっていた。
「うっわっととっ……ラヴィちゃん、すごいよ完璧に魔力コントロールが出来てる」
「いっぱい、れんちゅうしたでちゅよっ!!アルおにいちゃまびっくりしましちゃか?」
「なるほどね~これなら冒険者カードが発行されるわけね……」
「はははっこれは素晴らしいね、4歳でこれほど身体強化を使いこなせるのは冒険者に向いているよっ!!」
「安定した魔力供給と戦闘レベルの力強い魔力が必要だから基礎魔法の身体強化はすこし手こずるものだが今の動きなら合格だね」
「カルマータおねえちゃま、ごうかくでちゅかっ?ラヴィはごうかくなんでちゅやりましちゃっ!!」
万歳をするラヴィはとても元気よく喜ぶが、問題は冒険者専用の虚栄の門の管理者に選ばれたことだった。
「能力的にラヴィちゃんは初心者冒険者として合格ですが……カウンター業務のお手伝いをして将来は受付嬢にというのはどうでしょうか?そして管理者なのは隠し、問題が起きたときにコッソリと門を閉じたり開けたり問題を起こした冒険者の門の使用停止などをしてもらうと言うのは」
「ふむ、それがいいね朝の6時より夕方の16時までをお手伝いをしてもらうのはどうかな?もちろんお給料はしっかりと払うからね」
「ラヴィはやってみたいでちゅっ!!おとうちゃんとおかあちゃんにらくをさせてあげるんでちゅっ!!」
「ふふっ、ラヴィちゃんは偉いわね~」
「よしっ!!!決まりだねっ!!今日は冒険者ギルドにとって最高の日だっ。さっそくランクの事を発表するよ。そして冒険者用の虚栄の門は……そうだねえ各都市の冒険者ギルドに設置後はラヴィちゃんがお手伝いに来てくれる時間までを開門時間としないかい?」
「とりあえずはそれがよさそうですね、ラヴィちゃんの両親の許可はこれからですが」
「ああっそうだったね、ラヴィちゃんのご両親に許可を……あっと迷子でここに居るんだったね」
「それなら、私がラヴィちゃんの両親が今は何をしているか魔法で見ましょうか?」
「ああ、それがいいね。カトラ頼んだよ」
「ラヴィちゃんもいいかしら?私の魔法でラヴィちゃんのお父さんとお母さんを探すんだけど」
「カトラおねえちゃまはそんなすごいことができるんでちゅか?みてみたいでちゅっ!!」
「じゃあ、ラヴィちゃんはお父さんとお母さんの事を頭の中で考えてねっ」
「わかりましたでちゅっん~~~ん~~~~~~~おとうちゃんとおかあちゃん……」
目をつぶり、声を出しながら両親の事を必死に考えるラヴィにカトラはそっと魔力を収束させた手をおでこに当ていつもの私だけの特別な呪文を指でなぞりながら唱える。
「□っ×っ!!」
カトラお姉さまの□魔法のスクリーンに映し出されたのは、ラヴィちゃんの両親が薄暗い光の中で身を寄せ合っている、思いもしなかった姿であった。




