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第八十六話 この子ありてこの親あり

「うむ、ラングよそうであったか……アルスロットが、そなた達二人の息子がのう」


「さすがだね、アルスロット殿がそこまでの力を。シエルナーザは意外だったな~ギルヴァルトとは似合いと言うべきなのか……」


「ジェレントよ、シエルナーザが決めたことじゃ。あの子も王族としてオリアの復興を、それに剣聖のようにモンスターの矢面に立ち城壁を守り切ったんじゃギルヴァルトを認めてやるのじゃ」


「はい、先ほどは失言でした……」




アルスロットが報告を終えた後には、長蛇の貴族たちの謁見の列が出来たが驚いたことに魔法貴族たちの態度が180度変わってしまっていた。


そして剣聖である俺と氷結の魔女であるライラが、オリアで起こった本当の詳細をアスハブ陛下の私室で報告を行っていた。


「大したものね……ラングあなたの息子は何者なの?」


「トリミアティナちゃんっ!それは秘密よっ!私達も良くは分かっていないけど……」


「ライラ……いくら私の弟、ラングの伴侶と言えども私にちゃんは無いだろうに……私は君の義理の姉なんだぞ?」


「うっ、ごめんなさい~。でもアルちゃんの事は秘密よ?何者かをアルちゃんに訪ねるのはトリミアティナ様でも、聞いたら私怒っちゃうもんねっ!!!」


「まったく……それは分かったからそんなにぷく(・・)れるな……可愛い顔が膨れキノコみたいだぞ」


膨れキノコは触れると丸く大きく膨らみ爆発して様々な毒をまき散らす厄介なモンスター菌種であるが、触れなければ爆発する事が無いので炎や氷魔法を得意とする者達からはラッキーモンスターとも呼ばれていた。


「むーーむむーーーー」




「それで、ラングよ今後はオリアに留まるのじゃな?」


「はい、SSSランクのモンスターを取り逃がしてしまったからには……私は生涯をかけて脅威を取り除く為に行動いたします」


「いいのか? ラング……グリナダスを離れるという事は剣聖の地位を捨てることになるが? それに私の顔に泥を塗ることになるのだぞ?」


「はい、姉上……トリミアティナ様には推挙と剣貴族を纏めていただいたのに、申し訳ありません……」


「わかった……今の所、次期剣聖は育っていない飾りを用意するしかあるまいな」


「そうじゃのう……トリミアティナが復帰する事は、不可能じゃしのう……」

チラッとトリミアティナの顔を見る陛下は本当に残念そうにそうつぶやく。


「陛下、私は自分の息子を育てるので精いっぱいです」


「そうじゃのう……アルスロットを剣聖にはだめかのう?」


「陛下、アルスロットは冒険者になると私に連れられ冒険者ギルドへと足を運びました。そこから今のグリナダスの数々の問題に関わってきましたのであの子には剣聖を務める心は無いかと……」


「それに、アルちゃんは自分のパーティーがあるわっ」


「そうだったのう……あの子は本当に次期剣聖にはピッタリなのじゃが残念じゃ」


「陛下お言葉ですが……剣聖の地位はあの子の行動を阻害してしまいます。それはグリナダスに良いかかわり方とはならないかと思われます」


「その通りじゃ、仕方ないが次期剣聖は欠員とする。そしてラングは辺境都市オリアにて大森林の監視を命ずる」










「あ~~~久しぶりに貴族の務めをすると疲れちゃうわっ。それにしても魔法貴族たちの態度の変化には驚いたわ~」


「ああ、アルがグリナダスの食を完全に牛耳ってしまって。魔法貴族の頭だったゾンガが魔族となり死んだ。完全に魔法貴族は資金力を無くし統率も出来なくなっていたからな」



「ふふっ、全部アルちゃんのおかげねっ!! アスハブ陛下にあんなにぺこぺこと頭を下げてたしっ!!!」


「まあな、いつもなら陛下のお言葉が終わればさっさといなくなる魔法貴族が長蛇の列を作ったのだからな……アルのおかげで変わったものだな」








「チャトラ~いる~?」


「おっ! ライラっ。アルちゃんは元気かな?」


「うん、とっても元気よ~今日はラングのアーマーを修理してもらいに来たのよ」


「修理? ラングのアーマーを?」


剣聖になってからは、ほとんどアーマーの修理を請け負っていないためどうしたの?と言う感じで驚くチャトラに。


「オリアで久しぶりに激しく戦闘を、チャトラまた君のアーマーで命拾いしたよ……」


そんな説明を受けながら袋から取り出されるアーマーを見ると……。


「ラングあなた何を相手に戦ったのよ……うんっこれはもうだめだわっ」

激しい打撃と切り傷でプロテクターは中の芯までボソボソに破損しており、軽く手で折り曲げるとそのままバリバリと割れるほどの損傷を受けていた。


「あーやっぱりダメか……愛用品だったんだけどな」


「それに、例の機能を使ったでしょう?凍結防止の……実はアレあんまりアーマーに優しくないんだ。一度使っちゃうともうダメなのよ」


「うっ、チャトラごめんなさい」


「ううんっいいのよ。私の服とアーマーがあなた達の命を助けたのなら本望よっ!!それに、良かったライラはまた魔法が使えるようになったんだね」


「ええ、アルちゃんが私の魔力炉を返してくれたのよっ。は~まさかまた魔法を自由に使うことが出来るようになるなんて思ってもいなかったわ」


「何言ってるのよ。あなたの魔法が使えなくなったって聞いた時は私泣いたんだよ……」


「ふふっありがとうっ。<シルバーコート>っ!!ねっこの通りっ!!!」


「うん、良かった。ふわ~やっぱり、ライラの魔力は優しくってふわっふわっしあわせ~~~~」


チラチラと輝き揺れる魔力のコートに、抱き着くチャトラは久しぶりの幸せを感じていたのだった。






「じゃ今度のラングのアーマーはマジックレイヤーアーマーを基礎にして作るから。例の氷結防止機能は魔力をどんなに流しても大丈夫な素材だから完璧な物が作れるはずよ」


「ああ、チャトラ頼んだよ。まだまだ君のアーマーは俺に必要だからね」


「ふふっじゃあ新しいアーマーをお願いねっ!これから冒険者ギルドにもよらないといけないからまたね~」




と、冒険者ギルドにやってきたのだが……。


「あらっ?入り口まで人があふれてるわっ、珍しいわね?」


「そうだな、時間的にはもう少しで夕方になるから帰還者が帰ってくるころだが。それにしても……」


そんな、訝しむ二人が冒険者ギルドの入口へと近寄ると。




「おいっ!!! 剣聖だっ剣聖ラングが来たぞ……しかも、あっああっ氷結だっ!! 氷結の魔女も一緒だっ皆道を開けろっ!!」


ベテランの一人と思われる冒険者が二人を見つけ大声で入り口から左右に道を開けるようにと大声を出していく。


「あら~、私達を待ってた? のかしら~。でも、冒険者ギルドを訪ねるなんてどうやって知ったのかしら?」


「ん? 特に連絡はしていないぞ?剣聖として訪ねるときは連絡を入れるが今は冒険者としてカード更新に来たんだしな??」


訝しながら左右に奇麗に割れる冒険者の中を、ギルドカウンターまでの道を進む。


「すげーかっこいい……おれっ初めて剣聖と氷結の魔女見たっ!!」


「わああああっ、氷結の魔女さまっ……魔法学校で習った通り魔力のコートがすごく奇麗……」


「おらっ!!ちゃんと道を開けろっ!!!」


そんな声に手を振り振りしながら。ライラは正体がばれないようにチャトラの店からシルバーコートを発動していて、今は顔までを魔力で作られたチラチラと光り輝く美しい雪の結晶で覆っていたのだった。









「ラングに氷結……久しぶりね。これは、必然なのかしらね?」


「アルカ、久しぶりだね」


「わ~アルカちゃんっ久しぶりっ!!」

くるっとその場でターンをしてシルバーコートを翻し輝かせる氷結の魔女に周りの冒険者達は大きな歓声をさらに大きくする。


「まったく、氷結の魔女……貴方は変わってないわねえ」

普段、副ギルドマスターであるアルカはカウンターから一番奥の机で大量の書類と報告と格闘しているのだが、この二人がやってくる前にアルスロットが起こした冒険者ギルドを揺るがす事態に業務はすっかり停止してしまっていたのだった。


「それでこの騒ぎは、どうなっているんだ? まさか俺たちが来るから集まったなんて事じゃないよな?」


「んっこの騒ぎ? まあ、あなたたちが冒険者ギルドに来てるって知れ渡ればすぐにこの状態にもなるでしょうけど。違うわよ?」


「えっそれじゃまたどこかのダンジョン遺跡から古のモンスターが目覚めたとかかしら?」


「はあ~、氷結っいくら何でもそう何度もそんな事は起きないよ」


「う~、それじゃあ何なのよ~」


「アルスロット君よ?」


「わっ!!・・・・・(アルちゃん)?今は何処にいるの?」


「あ~なるほど、イオスギルドマスターの所にいるんだね?」


「そうね、さっき担当のアシェルがあの子の冒険者カードを更新した時に問題が起きたわ……あなたたちの冒険者カードを更新してから話しましょう」

アルカは二人に視線を送り冒険者カードを受け取ると、すぐに慣れた手つきで真っ黒な魔道具の中へと押し込んだのだった。





「Sランクモンスター36030体……SSランクモンスター8体……合計36038体の討伐」


『SSランクの雷帝が判定されました』


「Sランクモンスター23564体……SSランクモンスター7体……合計23571体の討伐」


『SSランクの氷帝が判定されました』


「やっぱりね……あの子があるのはあなた達があるからなのね……」


またもや魔道具から流れる声に、人であふれ返る冒険者ギルドは時間が止まり……一寸後には、それまでの止まった時間を取り戻そうと爆発的な加速した熱狂と大歓声がその場を支配したのだった。




「わ~奇麗ね~冒険者カードは色が変わるだけだと思っていたけど違うのね~」


アルカから返してもらった冒険者カードには、ラングは雷が天から落ちる模様が……ライラには雪の結晶が舞い散るように透かしが入っていたのだった。


「これが、アルにも?」


「ええ、あなた達よりも派手に光って……アルスロット君はSSSランクで雷氷の魔神と判定されていたわ」


「SSSランクで雷氷の魔神……か」


「すごいすごいっ!!ねっ・・・・・・(アルちゃんは)は天才よっ!!!」


ラングの耳にアルちゃんとささやいた後には天才よっ!!!と爆発するように嬉しい魔力を冒険者ギルドからグリナダス中に走らせると、落ち行く夕日に優しい雪の結晶が輝く幻想的な世界を作り出しそれを見た民たちからは何事かと大騒ぎになっていたのだった。













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