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第八十四話 報告と美味しい忠誠

んっ……朝か、俺がアスハブ陛下から下賜されたパーティーハウスは北の城壁に面する一角にあり。城壁を越えると深い森が隣接しているため新鮮な森の空気と、カーテン越しの柔らかな朝日が部屋中の白い壁に柔らかに反射しとても心地よい目覚めを迎えることが出来たようだ。


「はあ……さすがにアスハブ陛下から下賜された屋敷……」素晴らしく上質な部屋の作りは体の疲れをすべて癒やしていたのだった。


今日は……冒険者ギルドへ行く必要があるか……大量にモンスターを倒したから冒険者カードを更新しなきゃいけないし。1つのクエストや冒険ごとに冒険者ギルドへの失敗と達成の報告が義務となってた。故意に報告をしなかった場合はランクダウンから冒険者カード剥奪までと厳しい処分があったっけ……それと担当のアシェルさんにも迷惑がかかるだろうな……。



「アル~おはようなのじゃ~」突然開いたドアからはヴァル様がいつものように元気いっぱいで首に飛びついてくる。

そして、いつものように血を少し吸われてしまうのだが……。


「あっやっぱりなのじゃ~アルの疲れが取れてるのじゃ~」


「はは……ヴァル様、俺の健康状態が分かるんですか……」


「そうなのじゃ~、もう大人の姿になるには十分だけどつい吸っちゃうのじゃ~ん~ちょっとまってなのじゃ~」


「えっもう十分なの?」そう言えばヴァル様に会ってから首にいつも巻き付かれていた気がする……ヴァル様は大人に体が成長するには伴侶の血が必要だと言うから血を吸ってもいいよとは言ってたけど……。

ほんの刹那そんな事を考えながら視線をそらしたのを戻すと……。



「ほら、どうじゃ?アル……私の大人の姿は」


「ぶはっ!!ヴァル様?いつの間に大人の姿に変わったんですっ!!!しかも裸……」


「ふっ……幼いヴァルの服なんぞ着ておったら大きくなったとたんに破けてしまうではないか」


「それはそうですが……」大人の姿になったヴァル様は全部服を脱ぎ散らかしており俺のベットのシーツを体に巻き付ける姿はとても美しかった。


「アル……ベットを借りるぞ……すまぬがカーテンを閉めてくれなのじゃ。ふわ~それじゃ後は頼んだのじゃ……」


「ヴァル様は今から寝るの?」


「う~ん……そうなのじゃ~~~……」


俺のベットにヴァル様はぽふんと倒れ込みそのままスウスウと寝てしまうと、元のチビッ子ヴァル様に戻ってしまっていた。このまま夕方ぐらいまでは起きないから、冒険者ギルドにはヴァル様だけ冒険者カードを預かって更新すればいいか。


左右にアーチ型に伸びる豪華な階段をゆっくり下りて行くと、巨大なエントランスが広がっておりいつもながら圧倒される……これが貴族の屋敷なんだよなあ真ん中には若いころと思われるアスハブ陛下の胸像に吹き抜けの天井には昼間は日の光を取り入れ輝き、夜には種火の魔力を充填することで光り輝くなんとも豪華で巨大なシャンデリアがつり下がっていた。

転生する前も生家のカイラス家の家も普通の民と遜色のない作りの家だったからここまで豪華だと一瞬だが現実なのか夢なのかと足が止まってしまうほどだった。

そしてこの巨大な屋敷はメリダさんたちの管理負担を軽減するため左側を来客用に食堂がある右側を皆の部屋を割り当てている。

そして、俺の部屋が一番大きくてそれだけで生家の2LDKのカイラス家より広いんだよねえ……。


1階の右側には食堂、談話室、虚栄の門の出入りをする部屋とあり一番奥まったところにある食堂には50mほどのながさの廊下を歩かなければならなかった。





「アル君っ!おはようっ!!!」食堂に入るとカトラお姉さまの元気な声が一番に「アル様おはようございます」落ち着いた感じで顔は瓜二つなカトリナ様がわざわざ立ち上がって俺が座る一番真ん中の席の横まで移動すると……。


「さあ、アル様お座りになってください。今日はマリアとカレナが朝食を用意してくださったのですよ」椅子を引いて見た目は8歳の子供の俺の補助をかいがいしくしてくれ……カチャカチャとせわしない音の方を見れば……。


んっんっ!!(うまっうまっ!!)」ぷく~とリスの頬袋の様に頬っぺた一杯に食べ物をこれでもかと詰め込むのは、巨大ハンマーのトールを振り回し昨日のオリアでの城壁での防衛では暴力的な魔力を巨大ハンマーのトールに注ぎ込み瓦解した城門から押し寄せるモンスターをぺっちゃんこにする荒々しい技を繰り出していたのだが……見た目は只の可愛い小さな女の子だ。


「ほらっ!!!ルーチェそんなに急がなくてもっ!まったく……」その横では対照的な背が高く女性的な魅惑の体の持ち主カルマータさんが相方のいつもの食べっぷりにため息をついてるのだった。


「皆、おはようございます。カトリナ様有難うございます」俺はそんな光景を眺めながらカトリナ様にお礼を言いながら椅子に座ると……メリダさんがワゴンに今日の朝食を乗せ持ってくる。


「アルスロット様、おはようございます。今日の朝食は昨日オリアで出された野菜スティクにコケッコ鶏のオムレツに虚栄の都市に昨日から入荷したウルムというGランクモンスターのサイコロステーキ、味付けはマヨネーズソースとコク樹の汁?と言ってましたかしらね?パンだけはいつもの酵母入りのフワフワパンですわ」


「ん~まだ、アスハブ陛下に献上してないので名前を付けていなかったか……コク樹の若芽の汁を絞ったものは、しょう油という名前にしようと思っています。甘草の汁と煮詰めたりすると甘しょっぱく、レーモンなんかも少しいれるとサッパリしたソースになってとっても美味しいんですよ」


「あっそうだっ!!!ヴァンプ族の串焼き屋台のガザムって人がコク樹の若芽汁、しょう油って言うの?使いたいって言ってたわっコケッコ鶏の串焼きにとっても合いそうだって」


屋台の人からもう引き合いがあるのか……すぐにでも商業ギルド登録できるようにしょう油をマヨネーズと同じようにアスハブ陛下に献上し商品化しないとな……ドレッシングになるし何につけても旨いからなあ……。

「あっ冒険者ギルドの前にアスハブ陛下にオリアの報告をしないと行けなかった……しまった、疲れきってたからすっかり忘れていた」


「アル様、大丈夫ですわ報告の連絡ならメリダが済ませていますわ」


「はい、昨夜にカトリナ様の簡素な報告書と共に口頭にてアスハブ陛下にお伝えいたしましたので。アルスロット様は疲れを取った後に謁見をとのご指示を頂いておりますわ」


「そうでしたか……フォローをありがとうございました。オリアの報告とコク樹の若芽汁の献上をついでに済ませてから皆で冒険者ギルドに行こうか……あれ?そういえばアリアちゃんは?」この場にいるのはカトラお姉さま、カトリナ様、ルーチェさん、カルマータさん、カトリナ様のお付きであるメリダさんだけで……ヴァル様は俺の部屋で夕方まで熟睡中でアリアちゃんだけこの場にいないのだった。


「ああ、アリアだったらエルランダ教国に朝早くお勤めに出かけたよ。なんでも教国民の基礎魔法の習得が急務でエルランダ教国の首都を取り囲む六つの衛星都市を一日ずつ順に回るといってたねえ」


アリアちゃんは俺がエルランダ教国民が見守る中、初の基礎魔法を習得した一人だった。それまでは神像に祈り基礎魔法を習得するシステムだったが……長い年月の間にシステムは故障しある程度の年齢が過ぎ神像の前で祈れば良かったはずの基礎魔法システムはランダムにほんの少数の者達だけに授けられるという欠陥神像となってしまっていたのだった。


「初めてエルランダ教国を見た時には目を疑ったからな……そこら中に糞尿と悪臭を放つごみが散乱していて。建物の陰ではお腹を空かせて動けなくなっていた子供たちが沢山いた……」


「ええ、でも今は教皇様が身寄りのない子供たちはグリナダスの様に基礎魔法を覚えさせ奉仕の対価として教会に住まわせ暖かな食事を与えると言ってたわっ」


「そうだったね……アリアちゃんの基礎魔法が必ずエルランダ教国を変えることになるよ」


ん……(おなかいっぱい)」話をしてるうちにルーチェさんのお腹はポンポンに膨らみ背もたれにもたれ掛かりお腹をさすって苦しそうだ……。


「ルーチェ……あんた……どれだけ食べたんだい」


テーブルの上にあったパンはすべてなくなり……新しくエルランダ教国から入荷したウルムというGランクモンスターのサイコロステーキの山も全て無くなっていたのだった。









「アルスロット・カイラス、辺境都市オリアより帰還いたしました」


「ご苦労であったアルスロットよ、さっそくじゃが辺境都市オリアでの出来事をここに集まる皆の者に聞こえるように報告を頼む」


朝食の後、俺だけで辺境都市オリアでの出来事を報告するため謁見の間へと参上していた。俺の正面には玉座に座るアスハブ陛下、その隣には次期国王になるジェレント様に帯剣した鋭い感じの美しい女性が控え玉座に上る数十段の階段の手前には王の剣の二人が立つ。

そして俺の右真横には玉座に近い方から大貴族がずらりと並ぶが、今回は主要な上級中級貴族までが呼び出されておりいつもは広いはずの謁見の間は狭く窮屈に感じたのだった。


「どうした?早く報告をせよっ!」どんな時でも考え込んでしまう俺の悪い癖に待ちきれなくなったのか大貴族の知らない一人からヤジが飛ぶ……あっ昼間なのにヴァル様の父上であるドノヴァ・フレイア様が目に入る。するとニッコリと女性の前で見せたら100人中100人虜にしてしまうような魔性の笑顔が俺に向けられる……。


「失礼いたしました。まずは辺境都市オリアはモンスターによる侵攻の脅威から解放されたことをご報告いたします」


「ふむ、オリアより早馬が届いた時にはエルフィン王国は一夜にして壊滅しオリアの城壁を埋め尽くすほどのモンスターに覚悟はしておったのじゃが……よくぞ、モンスターどもを跳ね返してくれた……」


「なにっ?そっそれは……本当なのか?我は魔法部隊を束ねる大貴族のマユスだが……大規模殲滅魔法も無しに?」


「ふむ、そうじゃな……してどのようにオリアに隙間なく押し寄せるモンスターどもを殲滅したのじゃ?」


「はい、まずはこの報告にはアスハブ陛下とジェレント様以外にはお伝えすることが出来ない部分があることをご承知ください」


「もちろんじゃ、この場での報告は話せる部分だけでよい」


よし、アスハブ陛下からのお許しが出た……魔法貴族からも特に文句は飛んでこない中心的なゾンガが死亡してからはだいぶおとなしくなったようだ。


「アスハブ陛下よりの勅令書を預かった冒険者パーティーセラフィムは、ヴァンプ族の助けを借りオリア城主アルタス・アーク・オリア様の元へ、その後王国軍剣聖部隊がオリア西城門が瓦解する事を察知し先行、瓦解してしまった門を体を張り守り。剣聖ラングは瓦解した城門へ押し寄せるモンスターの圧力を下げる為に単騎で突撃いたしました」


「それは……なんということだ。それで剣聖ラングは?」


「Sランクを超えるモンスターがひしめき合う大群の中、単騎奮闘しますが……どうやらアーティファクトを取り込んだモンスターが多数おり……砂となり散らばったアーティファクトを大量に取り込んだ数匹がSSSランクのモンスターとなり取り逃がしました」


「何という事だっ!!!そもそも単騎で打ってでただと?その結果がSSSランクのモンスターを作り出したのであろう?」


「はい、その通りですが。西城門は駆けつける剣聖部隊の目の前で瓦解し、押し寄せるモンスター達から民を守るには単騎突撃しモンスターの圧力を下げる必要があったのです」


「これだから、我が魔法部隊であれば門の代わりに魔法障壁を直ぐにでも展開できたものをっ!!」


「魔法障壁?失礼ですがそれはどの様な魔法でしょうか?」


「ははっ、これだから魔法もろくに使えない奴は無知で困るわっ!!陛下この者に我が魔法を見せるお許しを……」


マユスは得意げにそう宣言すると、アスハブ陛下が何も言わずうちに魔法をつかってしまう。


「ははははっどうだっ!!!我が魔法の障壁は盾よりも広範囲にどの様な攻撃も防ぐ障壁を展開するのだっ!!!」


マユスの前には縦2m横2mほどの、それなりに大きな障壁が水が飛び散るように汚く展開されていたのだった……。


「どうだっこの巨大な障壁に驚いたかっ!!!まだまだこんなものじゃないぞ私は最大3メートルの障壁を作り出すことが出来るのだっ!!!」


どうみても、このスカスカの魔力障壁にSランクのモンスターが混じるオリアの城門の代わりになれるとは到底思えない……。


「そうじゃな、どうじゃ?アルスロットよマユスの作り出したこの魔法障壁でオリアの城門のかわりになるかの?」


「陛下っもちろんですともっ!!!私の魔法障壁は剣さえ通さない固い障壁ですぞっ!!」


これ……破ってもいい物かと迷っていると……ジェレント様からとっととやってしまえと目くばせが……。


「それでは……オリアに押し寄せてきたアーティファクトを体に取り込みSSランクモンスター(・・・・・・・・・)と思われる攻撃をマユス様の作り出した魔法障壁にぶつけさせてもらいます。アスハブ陛下よろしいでしょうか?」


「よいが……アルスロット手加減をしてやるのじゃぞ?」


俺は目をつぶると……オリアでのアーティファクトを取り込んだモンスター達を思い出す……。ははっといってもピノのあいつのデカい肉球パンチにはまいったよな~どう逃げようと捉えられて神の盾を模したイージスを使ってようやく防ぐことが出来たんだったな……。

目を開けて自分の手を見る……チャトラアーマーで手の甲まで編み込まれた特殊なケーブルスパイダーの糸が織り込まれていてとても美しい……瞬時に戦闘レベルまで魔力を高め右手にSランクモンスターを倒すのに必要な魔力を……すると、いくつかのスキル技が頭をめぐり俺が選び出したのは……。


・グラビティハンド

・ダブルファング

・フェリンクロウ

・ロケットパンチ


中にはネタ的な物が混じっていたが……一番派手だろうと思われるフェリンの爪……ピノは肉球で俺を小突いただけだったが……。

「幻視せよっ!!<フェリンクロウ>っ!!!」

何も持たない右手を軽く振りぬいた後には巨大で超高密度な魔力の爪が5本、マユスの作り出した魔法障壁を紙切れの様に引き裂く……。


「うひゃあああっ!!!」


マユスの情けない声と共に強固なはずの謁見の間の石畳には、キュイアアアッと耳障りな嫌な音が響き後には5本の爪のような跡がクッキリと付いてしまっていた。


「げほっげほっ、焦げ臭い……」


「これは……煙?……砂か?」


アスハブ陛下に言われた通りに手加減をして軽くフェリンクロウを放っただけだが……単に魔力で作られた巨大な爪と言う訳ではなく

超振動を起こし接触したモノは瞬時に切り裂きながら振動破壊して塵のように空気中に飛び散ってしまったようだった。


「アルスロットよ見事であった。マユスよこれで剣聖ラングが瓦解したオリア西城門より単騎でモンスターの中に突撃した理由が分かったかの?」


「はっいえっ、そのっもちろんでございますっ!!」自慢の魔法障壁は俺のフェリンクロウの前には何の役にも立たずに敗れ、しかも謁見の間の床に深い傷までつけてしまっていては大人しく黙り込むしかなかった。





「なるほど……オリア兵たちの城壁での奮闘と剣聖部隊の的確な行動に単騎決戦を仕掛けた剣聖ラングと氷結の魔女がオリアを救ったのじゃな……しかし、SSSランクのモンスターをどうするか」


「それについては後程、アルタス様より早馬での書簡が届くと思われますが……大森林に逃げ込んだモンスター達はエルフィン族が大精霊エントに語り掛け迷宮化し閉じ込め、剣聖ラングは辺境都市オリアに残る……との事です、詳細はアルタス様の書簡でご確認をお願いいたします」


「ふむ、そうであったか……とにかくご苦労であった。今回の事では後々にどのような結果となったとしても一切の処分などはするつもりはない事を宣言しておこうかの」


その言葉に、貴族たちはざわつくがアスハブ陛下の鋭い視線が飛び一瞬で押し黙ることとなる。それに先ほどの俺のスキル技に簡単に魔法障壁を破られた魔法貴族の者達は完全に沈黙してしまっていたのだった。







「アスハブ陛下、わたくしから新しいソースの献上をいたしたいのですが。すでにヴァンプ族の串焼き屋台では使ってみたいとの声を頂いており商業ギルドに登録後に直ぐにでも商品化したいのですが」


「おお、アルスロットの献上するモノはどれも素晴らしい物じゃ新しいソース是非味見をしてみたい」


俺の新しいソース発言に陛下の食いつきはもちろんいいのだが、周りの貴族たちもそれを聞いて騒めき始める。


「また、あの小僧に……私の高級食堂はマヨネーズソースを導入した屋台や庶民の食堂に全ての客を取られ来月には閉めるつもりだ……」


「香辛料も、安くうま味たっぷりのマヨネーズソースに押され売り上げが激減、更にヴァンプ族からの新しい販路が出来たために以前の高値では売ることが出来なく私の香辛料専門店は風前の灯だ……」


新しいソースの事を持ち出した途端、大貴族たちからは俺への恨み節が漏れ始め鋭い視線と殺気で謁見の間は不穏な空気に包まれる。


「ふむ……だれにも新しいソースや調味料は作る機会はあったが……アルスロットの様にワシの前に出すことは無かったのう」


「それはっ!!新しいソースという物など今までにない形の調味料など誰が思いつきましょうか……」


「ほれっ思いついた者は目の前にいるんじゃがの?」


「うぐっそうでございました……」


「それでは、発表させていただきます。これは存続では香辛料として乾燥させ砕いた物か炒めて和えると言った使い方でまろやかなしょっぱい味がする物なのですが……僕はもっと他の食材に使いやすくするためエキスを取り出し液体状のソースとし、調理した物にかける又は煮詰めるとコクのあるうまみを引き出すソースをコク樹の若芽から作り出しました。また香辛料として使っていた時との違いは濃密な香りと濃縮された強烈なうま味です」


「ほう、それは楽しみじゃなコク樹は若芽は確か乾燥した物を肉などに振りかけてあるのを見るのじゃが……味の存在感はあまりないのう……その濃密なコク樹の若芽じたいの味はどの様なモノなのか味見をさせてもらおうかの」


俺はすでに王宮料理長にコク樹の若芽から作り出したしょう油と、マリアちゃんから教えてもらった甘草の汁から不純物を取り水あめを作り出し渡していた。


俺が手を上げると、謁見の間の巨大な扉が開き中級貴族の上級メイドたちがワゴンに乗せ運び込んでくると……ふわ~と甘いしょう油の香りが一瞬で謁見の間に広がり……。

静かに見守る貴族たちの方からぐぅうううう~~~~と遠慮ないお腹が鳴る音が響いてきたのだった。


「ふぉふぉふぉ、これは皆の者も我慢できないようじゃのう」


「一口程ですが皆様にも味見が出来る量はご用意できていると思いますので。まずはアスハブ陛下の御試食をお待ちください。陛下、これはコケッコ鶏のモモ肉をソテーしコク樹の若芽から作り出した新しいソースであるしょう油に、甘草から不純物を取り除いた水あめを絡め煮詰めレーモンを軽く絞りました」


「うむっテカテカと黄金色に輝き、甘しょっぱい香りとレーモンのさわやかな香りが……何という事じゃ、よだれが止まらぬ……」


俺は上級メイドに肉の切り分けを指示し一口大にしてもらい、皿の中央に乗せ周りには茹でたニンジンとブロッコリーを放射状に添えてもらい玉座の横に設置した小型のテーブルへ。


「まずはコケッコ鶏をお召しください。その後付け合わせのニンジンとブロッコリーもコケッコ鶏に絡んでいたソースをつけて食べてみてくださいきっと美味しいですよ。もし、もう少しパンチが欲しい場合はスパイシーの実か、さらにマヨネーズを付けていただいてもまったりとした濃密なうま味を楽しむことが出来ると思います」


「うっうむ……」シーンと静まり返る謁見の間にアスハブ陛下のつばを飲み込む音が聞こえてくる……先ほどからヨダレがと呟いていたので口の中は大変な事になってそうだった。


大貴族から上級中級貴族まで、ほとんどの者がお腹が突き出した者達だ……中にはドノヴァ様の様にすらりとした者もいるがこの中では少数派だ。


「あっアルスロット……素晴らしい味じゃ……甘しょっぱいというのか?ワシも子供の頃によく甘草を調理場から持ち出してはかじってたものじゃが……肉にスパイシーの実や黒塩以外の物がこんなに会うとは思いもしなかった……」


「陛下……その肉は甘いのですか?」


「うっうむ、甘いと言ってしまうのは間違いじゃが……とてもコクのあるうま味と上品な甘みと香り……しょっぱ甘いというのか……ふむ素晴らしいソースじゃ」


どうやら、アスハブ陛下にはあまりの旨さに呆然と呟く事しかできない未知の味だったようだったが。


「なっ何という旨さだっ!!!おいっ我らには一口だけなのか?」


アスハブ陛下が口にし感想を述べた後には我先に未知の味であるコケッコ鶏を口へと放り込みあまりの旨さに上級メイドたちにお代わりを要求し始める始末であった。


「これっ!!皆の者落ち着くのじゃっ!!!アルスロットよしょう油は王宮料理長にある程度渡しておるのだろう?」


「はい、もちろんです。しょう油が入った小樽を1樽お渡ししましたので色々な料理に使って研究すると言って居りましたよ?」


「それは喜ばしい事じゃ、そしてオリアもモンスターの脅威から解放された。今夜は晩餐を開くもちろんアルスロットが献上したしょう油を使った新しい味の料理をたっぷりと出す事を約束するっ!!!」


そのとたん乱れた姿勢を一斉に正した貴族たちはアスハブ陛下への忠誠心を今一度心に呼び覚ましグリナダス王国と陛下の名を唱和したのであった。


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