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第八十三話 100年のたね

「アル、一度パーティーハウスへ戻って睡眠をとろうかね……さすがに疲れたよ」


「う~~ん、そうねっ!アル君もいっぱい魔力使ったでしょ?」


「んっ……んっ……」ピョンと俺に飛びついてきたルーチェさんは疲れ切ってしまったのかダラーんと首を垂れてそのまま寝息を立てる……。


「アルお兄ちゃん……私も魔力を使いすぎて、もう……」アリアちゃんも限界だったのかルーチェさんの姿を見たとたんそのまま崩れ落ちるように眠ってしまう。


「危ないっ……アル様さすがに皆の疲れも限界ですわ……」アリアちゃんの横にいたカトリナ様が崩れ落ちる寸前に腕をつかみ……。


「アリアは私が抱っこするよ……」スッとカルマータさんがアリアちゃんをカトリナ様の腕から抱き上げる。


「ヴァルは全然平気なのじゃ~」今は夜中と言うこともあってヴァンプ族には一番いい時間帯みたいだ。


「俺も魔力疲れは全くないかな、俺の中にあったライラお母さまの魔力炉をお返ししてから一気に自分の魔力炉が成長したみたいで使ってもすぐに魔力が回復しちゃうみたいだ」


「アルちゃん凄いわね~あれだけのスキル技と魔法を使ってもう魔力が回復しちゃってるのねえ~」


「アルスロットの力は、見るごとに強くなっているな……あれはパパのスキル技とママの魔法を威力では完全に超えてたかな」


「まったく、アルは毎回とんでもない力を出すねえ……」


「へ~アルは私の弟の癖に強いのね?」


「アルちゃん、すごいんだねっ!!」


「SSSランクのモンスターをいつかは倒さないといけませんし……この先には力はいくらでも必要になると思われますよ」


「ああ、そうだな……」

そう言うと、大森林へと逃げてしまった自身では手に負えないであろうSSSランクのモンスターを一瞬睨めつけるかの様に眼を鋭くした後、虚栄の都市へと虚栄の門をくぐったのだった。








「あああああっヴァル姫様っ!!!やっとお帰りに……」

ブルブルと震えながらヴァル様に物凄い美女が詰め寄る。


「バーバ?どうしたのじゃ~?」


「ひっ姫様……バーバラですよっ!!!それよりっポーチをずっとお待ちしていたんです……もう、待ちきれません何処にあるんですか?それらしきものを手に入れたと言ってたじゃないですか」


「バーバ……後じゃダメか~?」


「すまないがバーバラ、私らは疲れ切っててね……今日は遠慮してくれないかい?」


「あうっ……しかし100年ぶりのポーチ……私が最後に見たポーチはハズレだったんです……やっと、新しい種が手に入るかもしれませんのにっ!!!」


「まったく……アル後は任せたよ、私らは先にパーティーハウスで休ませてもらう」

そう言うと、指輪を持つ者しか見えないグリナダスのパーティーハウスに繋がるドアタイプの門が開き、俺とバーバラさんにしがみつかれているヴァル様を置いて皆疲れ切った足取りで目の前から消えて行く……。





「あの……ポーチってなんですか?」


「あなたは?あっ!!!カトラ様の魔法で見たアルスロット様!!!」


「えっ?見た?」


「アルスロット様が王城で戦ってるってポーチの話をしている時に……その後、皆様向かわれて……今までお待ちしていたんですよ~~~~」


「そうだったんですか……で、ポーチってすみませんが俺にはなんとことやらさっぱりなんですが……」


「あっそうでした……申し訳ありません、100年ぶりのポーチらしきドロップに待ちきれなくて……ポーチは我がヴァンプ族を支えてきた大事な種を手に入れる唯一のアイテムです」


「種ですか?という事はヴァンプ族の貴重な香辛料などは全部ポーチから手に入れた種から?」


「はい……ポーチはヴァンプ族の宝、この暗闇の中でも育つのはポーチから手に入れた特別な種から成長した物なんです」


闇の中でも育つのか……日の光を浴びて光合成でエネルギーを作り出して成長するんじゃないのか……あっでもモヤシなんかは暗闇の中で育てるんだっけ?栄養があれば一応育つのか。

俺は前世の記憶を思い出すが、この異世界では前世の記憶の当たり前は全く当てはまらない……。


「アル~エルヘイブに行くときに倒したオークアーチャーがドロップしたポーチがバーバが欲しい?みたいなのじゃ~」


「えっ!!いただけるのですか?アルスロット様っ!!!是非、100年ぶりにヴァンプ族に新しい種をっ!!」


ヴァル様から今度は俺にしがみつくバーバラさん……目が血走った美人はものすごい迫力がある……。

「あっあの、分かりましたから……。ヴァンプ族にはとてもお世話になって居ますし新しい香辛料や食材はとても魅力的ですし、周辺国家の食を支えてきたのがヴァンプ族だって言うのは理解しているつもりです」

バカ貴族のせいで高価すぎる香辛料系が手に入らなくて一般市民は味の濃いうま味を知らずに暮らしてきたが……それでも、一番安い黒塩はそれなりに行き渡ってた。

あ~でも黒塩はどうなんだ?黒くて不純物が多いから岩塩なのかな?あとでどうやって黒塩を取っているのか聞きたいな……。

俺は、しがみつくバーバラさんをチラッと見ながら神の宝箱からゴブリンアーチャーからドロップしたポーチを手の上に取り出す…………。


「ポーチ……すごい、こんな大きいなんて……」


「これ、大きいのか~?」ヒョイと俺の手から20㎝四方のポーチをつまみ上げる……。


「ぎゃああああああっ!!!姫様と言えどもポーチは大事に扱ってくださいっ!!!つまみ上げるなんてっ!!!!」


「んー、しっかりした皮のような物で出来たポーチ?ですが……なんていうか、可愛らしくはありませんね」


「なんか、ばっちいのじゃ~」


「見た目は只の皮で出来たポーチなんですが、これはその中でもかなり大きいです……小さめのカバンと言ってもいいかも……もう使えないのですが歴代のポーチはこんな小さなものなんです」

そう言いバーバラさんは代々受け継がれてきたポーチを胸元から取り出すと、10cmも無い位の小さなポケットに細い長いひもが付いたものが出てきた……。


「100年ぶりと言ってましたけど、3つもポーチが今もあるんですね?」


「あっいえ、これはもう使えなくなったポーチ達なんですよ。そしてこの一番小さいのが100年ほど前にハズレで一つも種を出す事が無かったものです」


しょぼ~んと、首を垂れながら100年前の事を鮮明に思い出したのか一番小さなポーチをなでながら涙をポロリと落とすと……強烈にポーチが輝きボロボロと崩れ去る……。


「えっえっ?私の大事な……大事なポーチが……」

崩れ去った後にはポーチだったものは砂となり……真ん中には大きな種が淡く光り輝く種が現れていたのだった。


「あっ種っ!!バーバ種が出たのじゃ~」


「うそっ……ハズレのポーチじゃなかったの?種が光ってる……なにこれ……?」


「新しい種ですか?」


「だと思います……新しい種は植えて実を付けたりするまでどんな食物になるのか分からないのですが。こんなに大きくて光る種は聞いたことがありません」


俺はこの不思議なポーチにニュースサイトのアンサーをかける。

「「ポーチとはなんだ?」」


@@@@@@@@@

ポーチの秘密


ポーチはオークアーチャーが落とすレジェンドレアドロップ品である。

ポーチは種類によって手に入る物が様々であるが見た目は薄汚い皮のポーチの様な物であり、武器屋、雑貨屋などの片隅に使い方が分からずハズレとして打ち捨てられたポーチがたまにあるので見つけたら入手する事をお勧めする。

魔力がキーになっていることが多いが、中には1分~100年の使用サイクルが必要なものがあり使用するにも個々の個体ごとに特殊な使い方があるために中には何も起きずハズレと勘違いされてしまう物もある。

@@@@@@@@@


という事は……ポーチは別に種を出すアイテムじゃない?


「どうやらポーチはそれぞれ個体ごとに使い方があるようですね……大体が魔力を流して使うようですが、中にはそれだけでは使用することが出来ない物もあって丁度その100年前にハズレとされた物がそうだったみたいですね」


「すごいのじゃ~バーバが100年かけてポーチから種を出したのじゃ~」


「100年の種か、バーバラさんの100年の思いと涙がカギだったのかな?」


「100年の種ですか……植えて育ててみないとどの様な者が育つのか分かりませんが楽しみです」


「ん~?わかんないのか~?アルが見てもダメなのか~?」


「えっ!!!もしかしてアルスロット様は……あっじゃあ先ほどの説明は、何かしら調べるお力で?」


「そうですね……じゃあ気になるでしょうからその種を調べてみます。「「100年の種とは?」」」

俺はニュースサイトのアンサーをバーバラさんが大事そうに両の手でそっと包み込む崩れ去ったポーチの砂と共に淡く光る種を見ると……。


@@@@@

生命の樹


この樹が植えられた土地には必ず豊穣が約束される。原始の樹の一つでこの世界の創世される時に神により贈られたのだが……世界が育ち忘れ去られたころにはモンスターに蝕まれ姿を消してしまった。


@@@@@


「この種は……生命の樹という神が世界を創世する時に贈られる原始の樹の一つで……この樹が植えられた土地には必ず豊饒が約束されるそうです」


「生命の樹?この種が?失われた原始の樹の一つ……世界が……私は夢でも見ている……」


自分の手にしている種が……世界を変えてしまうそう理解したのかバーバラさんは放心状態でその場にしゃがみ込んでしまうのだった。


まずいな……この生命の樹をこの世界に植えるわけにはいかない、グリナダスから続く土地、大陸がどれほどの広さなのか分からないが殆ど交流が無い国や別の大陸があったとすると必ず豊作を約束された生命の樹を植えたこの大地は狙われることになるだろう……。

あと、所有者がバーバラさんだという事だ説明をして納得してくれるといいんだけど……。


「バーバラさん大丈夫ですか?立てますか?」


「あっえっええ……あまりの重大さ、重圧に崩れ落ちてしまいました……」


「それはバーバラさんの100年の思いが詰まった生命の樹の種です。何処にその種を埋め育てようと最終的にはバーバラさんに決定権があると思うのですが……。敢えて聞きますがその種を何処に?」


「何処に……アルスロット様……何処に植えたらいいのでしょう?」バーバラさんは不安と重圧で今にもまた押し潰されそうだった。


「バーバっ!!!アルに任せればいいのじゃ~!!絶対にいい考えがあるのじゃ~」

ヴァル様は少しでも安心させようとバーバラさんの首に飛びつき。


「ヴァル姫様……ふう……姫様が信じているアルスロット様に任せます」いつも奔放で明るいヴァル様だがこの時、バーバラさんに向ける目だけはとっても澄んで真剣だったそうだ。


「ありがとうございます。と言っても簡単な事ですバーバラさんが心から信じるヴァル様が虚栄の水晶のマスターであるこの虚栄の都市に生命の樹を植えるんです。この土地はグリナダスの台所のエルヘイブを鏡の様に映しとった都市で成長する都市でもあります。ヴァル様、虚栄の水晶は毎日虚栄の門を人が通るごとに経験値をためてレベルアップしているんだよね?」


「そうなのじゃ~毎日レベルがドンドン上がって映しとったエルヘイブの都市より外にも空間を広げることが出来るようになってたのじゃ~」


「たぶんですが、この虚栄の水晶で作られた虚栄の都市は……いえ、それはいいか……。ヴァル様が拡張で農業地を設定すればこの虚栄の都市は豊作を約束された別の世界の都市となります」


「ええ……ええアルスロット様それなら何も問題は出ないと思います……私もグリナダスの地にこの生命の樹を植え、必ず豊作となった後の事が頭に浮かび強烈な重圧となっていましたが……この別の世界である虚栄の都市なら農業地も必要なだけ増やせるならこんな安全な場所は他にありませんっ!!」


「それに、俺の考えている虚栄の都市にはこの約束された豊作をもたらす生命の樹は絶対必要でした」


「アルは皆にお腹いっぱい美味しい物を食べさせてあげるのか?」


「ははっ、エルランダ教国みたいな悲惨な国や都市は無くしたいと思ってるよ。各国や都市に門で繋がることができ、そして奪うことが出来ないこの虚栄の都市にその樹はあるのがいいと思う」


「アルスロット様、素晴らしいです。まさにこの虚栄の都市は理想郷となりこの世界に幸せを運ぶことが出来るでしょう」





さてと、どうするかな?虚栄の都市で生命の樹を植えるのにふさわしい場所は……やっぱりこの大通りが交差する虚栄の門が集まる大広場の北側にある城内に植えるのが妥当だけど……カトリナ様に城内を案内してもらうのが良いだろうな。


「という事で、今日はポーチの事が少し分かったので、もう深夜を回ったか……今日の夕方頃に虚栄の都市を映しとったエルヘイブの城主であるカトリナ様に案内、生命の樹を植えましょう。その後、残りのポーチも使ってみましょう」


「申し訳ありません、人族の方には眠りの時間でしたね我々ヴァンプ族は日が出ると眠りにつくので……アルスロット様もお疲れの所ありがとうございました」


ヴァル様はこのままバーバラさんとヴァンプ族の集落の方へと向かい、大貴族である父上と母上に今回の報告をするとの事でここで別れ夕方に合流する事となった。



ヴァル様とバーバラさんが虚栄の門をくぐりヴァンプ族の集落へと消えていった後、俺もパーティーハウスへとつながる小さなドアの前にと来る……。

エルヘイブはグリナダスやオリアと違い農業都市で大通りが2つの都市ほど広くなく、それでも50mほどの幅があるのだが……大広場は市が開けるように同じように広いんだよな。

そのおかげで虚栄の門の設置も特に問題なく出来ているし……俺の姿を模したガーディアンの巨像も苦も無く動くことが出来る、ちなみに巨像は荷運びの補助も手伝っている働き者で今もヴァンプ族が運んでくる荷車を運び先の門へと押し込んでいるのが見えていた。

もう少ししたら、指輪を持つ者のドアタイプの虚栄の門は城の中へと設置するようにしないと問題が出てきそうだと考えながらドアを潜りぬけパーティーハウスの虚栄の門を設置する専用の部屋へと帰ってきたのだった。



「アルスロット様、お帰りなさいませ。今日は2階のアルスロット様のお部屋にベットメイクをしてありますのでそのまま直ぐにお休みになってくださいませ」


「メリダさん、こんな時間まで……オリアは何とかなりましたよ。さすがに疲れました」俺は言葉少なにマリアちゃんとカレナちゃんのオリアへの食事支援のお手伝いの説得のお礼をし今日は2階の自分の部屋へと向かった後は気絶するようにメリダさんがシワ一つないメイクしたベットへと眠りについたのだった。












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