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第七十九話 辺境都市オリア 祝福

「えっあの……ギルヴァルト急にどうしたの? 皆の目がある前で……手を……どう見られるか分かってるのかしら?」


人の目がある所で堂々と手を取る、そして振りほどかなければこの方にと周りからは見られるのだ……すこし厳しい顔をしながら問いかけるシエルナーザ様に……その場で突然膝まづくギルヴァルト様……。


「シエルナーザ・ギルン・グリナダス……その………………」


少しの沈黙が続くが……周りを取り囲む兵士たちは物音一つ立てずにその動向を見守る……が、少し気が短いシエルナーザ様が爆発する。


「もうっ!!! なんですのっ? オリアを飲み込むモンスターには立ち向かえたのにっ!!! か弱い一人の女の前では怖いのですかっ?!!」


「くっ!! 突然だが貴女に……共にこの先幾多の困難な道があるであろうオリアへと……ギルヴァルト・アーク・オリアの元へと嫁いで来てくれないかっ!!!」


「あっえっ、でっでも……私はその行き遅れで……私なんかでよろしいですの? あっそれに……」


チラリと俺の方を見て困ったような顔をするシエルナーザ様は黙り込んでしまった。


「シエルナーザ……知ってると思うけど君と同じ歳なんだよ……行き遅れ同士どうかな……はは……ダメかな?」


「もうっ!!! 何ですのっ!!! もうちょっと気の利く言い方はできなのですかっ?!!」


「わっ!!! 悪いっつい私も父上からいい加減、相手を見つけろとねオリアがこんな事になってホッとした時に、その君がいたんだ……こんな最前線に何時命を落としてもおかしくない状況に君は居た……」


「ええ……とても怖かったし私は何もできませんでしたわ……こんな小さなアリアでさえ回復魔法やアル様の状況や足りない伝令兵とは別に遠くに声を伝える魔法でその代わりを果たしてましたわ……本当に私は何もできませんでした……」


「これからの困難に立ち向かえる女性は、そんな状況でも最前線へと足を運ぶシエルナーザしかいないと思ったんだ。それに……もう覚えていないかもしれないが子供の時に……その、君と夫婦になろって約束したんだよ」


「もうっ!!! そんなの子供の時のままごとではありませんか……本当に覚えていらしたのですか?」


「うっ……実はさっき君を見たときに思い出した……その時これは運命だと思ったっ!!! もう一度言うよ、シエルナーザ・ギルン・グリナダス……オリアへ私の所へと嫁いで来てくれないか? 最前線へと向かい民と兵士たちを案じるそんな素晴らしい心の持ち主の君に運命を感じたんだっ!!!」



その言葉に、またもシエルナーザ様は硬直してしまうシーンと静まり返る中でアリアちゃんが魔法を使い話しかけてくる。

「「アルお兄ちゃん、今魔法<かぜのこえ>を使って話しかけてるよ。シエルお姉ちゃんとギルヴァルト様以外が口を出すのは無理だから私の魔法でシエルお姉ちゃんにアルお兄ちゃんの声を届けるから助けてあげて。シエルお姉ちゃんは魔族化の事が心配で返事が出来ないんだと思うよっ!」」


アリアちゃんの魔法<かぜのこえ>は遠くにいる人と会話できる魔法だったが特定の人だけに聞こえるようにコントロールもできる様だ。

「「シエルナーザ様……驚かないでそのままで、アルスロットです。アリアちゃんの魔法で話しかけているので他の人には声は聞こえませんのでそのままでお聞きください。シエルナーザ様のアーティファクトによる魔族化はすでにカーンが浄化を完全に終えていますので安心してください。今日ここまでシエルナーザ様をお連れしたのは俺も何かしらの運命の一つだと思います」」


「「アル様……私は素晴らしい力を持つ皆様を見て正直嫉妬しておりました。そして、その嫉妬は力を欲し知らずにとはいえアーティファクトで魔族化してしまう事態を引き起こしました……。ですが、短い間外へと出て……今にもモンスター達に飲み込まれそうなオリアを見て最後まであきらめず自分ができる事を全力で成し遂げようとする人たちを見て気が付きました……。私は王族の一人、モンスターを退けた後もエルフィン族と大森林の問題を迎えてこれからいろいろな困難が待ち受けるオリアで……ギルヴァルトと共に歩んで頑張ってみたいと思います」」


「「シエルナーザ様……お幸せにっ!」」


「「ふふっ、アル様ありがとう」」


その言葉を最後にアリアちゃんの魔法は途切れ……。


「私で本当に良いのですか? ギルヴァルトあなたならいくらでも若い上級貴族から……」


「シエルナーザ……君はとても魅力的だよ? 子供の時のままごとで君の夫役は誰にも譲らなかったよね。実は君が見て無い所で取っ組み合いの喧嘩をすることもあったんだよ? 何度、父上からゲンコツを貰ったことか」


「ふふっ、そうだったのですね。確かに私の夫の役はギルヴァルトだけでしたわ……」


「父上の公務を手伝うようになってからお互いあう事もなかったけど……今日、この場にいるシエルナーザを一目見て何度も言うけど運命だと思った君しかいないと……」


「もうっ分かったわっ!!」


そう答えると、シエルナーザ様は手を振りほどいて膝まづくギルヴァルト様へと抱き着き。全ての者達からの祝福の声で埋め尽くされていたのだった。






「ギンド・ファイス様よりこれより王国軍が城壁・城門の警戒を代わり、ギルヴァルト様並びにオリア兵士は即刻、中央大広場へと集まるようにとの事です……」


「伝令ご苦労、すぐに王国軍と警戒任務を代わり大広場へと赴くと返礼を」


はっ!と一言発した伝令兵は馬に乗り一気に大通りを中央に向かってかけて行く。


「父上……アルタス・アーク・オリアから民に向けての演説があるはずだ……が」


「ギルヴァルト様、この場で起こったことは王国軍剣聖部隊に王国軍の援護……そして剣聖ラングと氷結の魔女がオリアへと進行するモンスターを一掃したとご報告をお願いいたします」


「んっ?それは何故だ?君は少なくとも剣聖ラングと氷結の魔女殿と一緒にモンスターの殲滅を手伝ったはずだ……それにセラフィムというのか?パーティーとしても城壁を支えるのに多大な功績を上げていると認識しているのだが……」


「そうですね……アルタス様にもご承知を頂いていますが、僕らの事は基本的に秘密にしていただきたいのです」


「父上も……秘密にか……色々と事情があるのだろうな、シエルナーザがここに居る理由も……」


「アスハブ・ギルン・グリナダス陛下からは僕たちの事について全て秘密にせよとの勅令書が出ています」


「国王陛下から……そうだったのか、それであれば私は一切口を開くことは無いよ……だけど残念だ……兵士たちと共にこのオリアを守ってくれた君たちに何かしらの褒賞に民には英雄の一人として紹介したかったんだが……」


「ギルヴァルト……残念だけどそれは出来ないわ、もちろんそれは何故? と聞かれても私も教えることはできないのよ」


シエルナーザ様からの言葉に、そうかと返事をした後にはすぐにオリア兵と王国軍兵との警戒任務の交代を終え大通りの凱旋を始めるのだった。









「諸君っ!!! このオリアを脅かすモンスターの進軍の脅威はここに無事凱旋したオリア兵たちが城壁より一切通さずっ!!! そしてっ!! 王都グリナダスからは王国軍剣聖部隊を先頭に王国軍が駆けつけっ!!! そして……この辺境都市オリアの窮地に我が都市の英雄である氷結の魔女殿が駆けつけてくださったっ!!!」


今、俺達はオリア王城の演説用バルコニーの陰からアルタス様の演説を聞いているが……ライラお母さま……氷結の魔女はこの辺境都市オリアの英雄として昔から数々の苦難を解決していたそうで……名前が出ると氷結の魔女のライラお母さまは、冷気の魔力を星屑の様に散らしシルバーコートを指でつまみ上品に呼び出しに応えると尋常じゃない歓声が広がる。


「うわ~~~うわ~~~ライラさんすごい……昔、一つ目のゴライアスっていう古の巨人の一つが封印から目覚めちゃったんだけど。それをたった一人の力で氷漬けにして封印しちゃったのよっ!! そこから氷結の魔女って呼ばれる英雄に……魔法学校で習ったわっ!!!」


「ええ、わたくしもその時の事を国王陛下から聞いた事がありますわ……。なんでも城壁の2倍ほどの背の高さの巨人だったそうですわ……今はこのオリアの地下深くに氷漬けで封印されているそうです……氷結の魔女の力で……」


「ああ、それは私も聞いた事があるよ。辺境都市オリアはルーチェとイオスのパーティーを組んでいた時に何年か滞在していたけど……ここには古の巨人が地下の奥底で氷漬けで封印されているってね」


「んっんっ」おーきいジェスチャーに、カッチーンと凍った仕草をして倒れるルーチェさん……いや、ルーチェさんはチビッ子ですしそんな可愛らしい巨人は居ません……。


「古の巨人なのかあ~ヴァルも見てみたいのじゃ~」「うんっ!!! ヴァルお姉ちゃん私も見たいっ!!」あの……変なフラグ立てないでね二人とも……まあ、もしもがあっても緊急速報で分かるしこのメンツだからな。



「そして、今回のモンスターの侵攻には我らの友、エルフィン王国が一夜にして飲み込まれたが女王テネシアの力により全てのエルフィン族がここオリアへと逃げ延びることが出来た。これから、このオリアは新しい友を受け入れ大森林と言うエルフィン族にしか制御できない森との戦いが待ち受けることになるだろう……だがっ!! 今日のモンスターの大侵攻を防いだように我らは協力し合いいつしか以前の姿を共に取り戻そうっ!!!」


この宣言により、辺境都市オリアはエルフィン族を民として受け入れ共に大森林のコントロールとモンスターからエルフィン王国を奪還する……長い戦いの始まりであった。












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