第七十八話 辺境都市オリア カイラス
「アル君……気を付けて……」
「心配なのじゃ~」
「二人ともありがとうね、ここはラングお父さまとライラお母さま……それに俺が何とかするよ。皆は城壁内で王国軍のサポートをお願いするよ」
復活したラングお父さまは剣聖らしく激しい戦闘を再開していた。そして上空で魔弓アルテミスを撃ちまくっていたヴァル様をカトラお姉さまと一緒に戻るように促す。
「分かったわっ!私は重症の人たちの回復を頑張るねっ」
「心配なのじゃ~……」
ヴァル様はさっきから心配を繰り返して、うん……その姿は小動物のようにとても可愛らしかったが……。
「ヴァル様には虚栄の門を見てもらわないといけないからね。また緊急事態になった時にオリアの人たちを逃がすためにね」
「分かったのじゃ~アル気を付けてなのじゃ~」
俺は抱き着いてくる二人を安心させようとしたが、周りを所狭しとモンスターに包囲されて……やはり中にはどう見てもアーティーファクトを取り込んで強大化している奴らも見て取れていた。
「アル君っ後でねっ!!怪我してたら私が〇魔法ですぐ治してあげるからねっ!!!三人一緒に戻ってきてねっ」
そう、早口でまくし立てるとヴァル様とカトラお姉さまはマジックドアの向こうへと消えていったのだった。
「さてと、アルちゃんもモンスターをやっつけちゃっおうね?」
先ほどからラングお父さまは大剣に姿を変えたゼフィラスを、ライラお母さまは……特に何もしているようには見えなかったが。
「フム、我も今度は力を貸すぞ」
「そりゃそうだろ、さすがにここでカーンが力を貸してくれないなんてひどすぎるよ……」
「主よ一つ勘違いしている、先ほどはフェリンのピノが暴走寸前の所だったのを我が交渉してあのような戦闘になったのだ」
「おかしいと思ったら……お前」
「フンッ、主の成長を願ったまでだ」
「そうねえ……アルちゃんの魔力はママぐらいあるけどそれを使う技術が付いてきてないわ……」
「はい……」ここまで素晴らしい魔法技術を見せてくれたお母さまからの言葉は、俺の心に重く響く。
「さっ、アルちゃんも魔法を使ってみましょう~と言いたいけど……。魔法は事象を理解しなければ頭に呪文が浮かんでくることは無い……ん~まだ0歳のアルちゃんには経験値が足りないかしら……スキル技の方は戦闘中に浮かんでくるモノなんだけど、魔法はどうしても普段の生活と経験、知識が……いるのよね」
ライラお母さまは困ったわ~とした顔で考え込むが……すぐにパッと顔を上げて。
「ふふっ♪教えればいいわ~アルちゃんどうしたら氷が出来るか分かるかしら?」
電子レンジだと電磁波を当てて分子を振動させて温めてるんだっけ?分子を動かしたり止めたりするのを魔法に……。
「えっと……分子の振動を停止させることでしょうか?」
「えっ?分子?アルちゃんな~にそれ?」
「物質を構成する最小単位の事です……その運動が活発だと熱くなり、ゆっくりになると冷たくなります」
お母さまに説明をしていると……呪文が頭に浮かぶ……。
「あっ!お母さま呪文が浮かびました」
「えっ?まだママが教えてないのに?」
俺の頭の中には熱魔法と思われる呪文と……冷却魔法がずらりと浮かんできていた。
「はい、いくつか浮かんでるんですが。熱を発することが出来る魔法に、ライラお母さまのような冷却をする魔法らしきものも」
「きゃああああっ!!!アルちゃん凄いわっ!!!ママがまだ教えてないのにっ!!!赤ちゃんの時から思っていたけど、やっぱりアルちゃんは魔法の天才ねっ!!!」
あまりの嬉しさに、ライラお母さまにぎゅうぎゅう抱き着かれてしまうが……問題は苦手なスキル技の方なんだよな何とかラングお父さまから盗まないと……。
抱き着かれながらも激しく戦闘をしている剣聖ラングを見ると……大剣に姿を変えたゼフィラスを一振りするごとに数体が砂と変わり……アーティファクトをいくつか取り込んでしまったと思われる個体には……。
「<ライジングスラッシュ>っ!!!」稲妻のような光と衝撃波をまき散らしながら左右に両断していた。
「すごい……」鼓膜に強烈な振動を伝える剣聖ラングのスキル技はすさまじい威力だった……。
「フム、見事だな剣聖は宝剣を持っているようだが形状変化だけのようだ。後は自身の力だけであの技を繰り出している」
ふふっふふふっ、と突然笑い出したお母さまが今お父さまが繰り出したスキル技の誕生秘話を教えてくれる。
「アルちゃん面白いのよ~あのスキル技はね~やめておけばいいのに雨の日に大きな木の下で……ふふっ……素振りの練習していたパパに……ふふふっ木に落ちた雷がパパに伝わって、ビリビリ~って痺れながら出来るようになったスキル技なのよ~」
「雷が……」雷だったらあの光の中は数万度の温度に……ぞっとしながら剣聖ラングが何度も繰り出す光の轟音をマジマジと見つめてしまっていた。
「主よ、見ての通り剣聖と氷結の力でもこの広大な平原中のモンスターを倒すのは至難の業だが?」
「そう、だね。ラングお父さまの剣技の一つ一つは凄まじい威力だけど大群には向いていない……そしてライラお母さまの魔法もこのモンスターの数では動きを鈍らせるのが精いっぱい見たいだ」
俺はこの状況にいつかは倒せるが、剣聖と氷結が永遠に戦えるわけではないと二人の顔を伺う。
「アルちゃん……ママはアルちゃんの魔法を信じてるわ」
「アルっ!!!パパのスキル技をっ!!」
よく見ると、やはり二人はこの大群相手に放出する莫大な魔力に目に見えない悲鳴を上げていた。
「カーン、力をかせ……今から無茶をしてみるよ。神の宝箱のレッドダイヤモンドの使い方をニュースサイト」
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三種の神の宝箱のレッドダイヤモンドの使い方
赤いレッドダイヤに触れながら軽く魔力を流しダイヤル1へと回す。
人物設定が行われ、三種の神の宝箱のレベルの使用者の年齢を捧げる乗の数の質量を持つコピーを作り出すことが出来る。
年齢を捧げる時の人物の状態がコピーに反映される。
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「フム、主よ我にはこれが意味する事が良く分からぬのだが……」
「神の宝箱のレベルに俺の年齢乗の数だけ、質量を持った俺が出てくるんだよ?たぶん」
「という事は、アルスロットの軍隊が出来るという事か?」
「ん、まあそんな感じなのかな?この平原中に集まるモンスター達の数を超えることが出来るといいのだけど……神の宝箱のレベルは?ニュースサイト」
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神の宝箱のレベルは
現在のレベルは3
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3レベルか……俺の今の年齢が8歳だから3の8乗で……3x3x3x3x3x3x3x3=6561と地面に計算し始めるが……。
「主よ何をやっておるのだ?」
「何って、計算だけど……聞けばいいんだった。神の宝箱のレッドダイヤモンドの機能で、この平原中のモンスターを倒すのに必要な俺の年齢は?」
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この平原のモンスターを倒すのに必要な年齢
この平原のモンスターの数は155万体。
それに必要なアルスロットの年齢は最低13歳、体が成長した16歳で発動するのが好ましい。
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「主の年齢が足りぬな……?」
「ああ、全然足りないね……俺の今の年齢は8歳だからねっ!!<成長>っ!!!」
次の瞬間には俺の年齢は倍の16歳まで成長によってコントロールされたのだった。
「アルちゃんっ!!!まあっまあっ!!!ラングよりかっこいいわっ!!!!」
莫大な魔力を必要とするフロストを維持コントロールするライラお母さまに余裕はすでにないのだが、突然大きく成長する息子に驚きを止めることはできなかった。
「あっやばいっチャトラアーマー……あ~プロテクターが流石に小さいや」体が大きくなったのに合わせて繋の部分は伸びてくれたようだった。
「フム、主よ用意は出来たようだな」
俺が成長するのを見届けるとカーンはゾンガを倒した時のように全ての神像のコアを自分の折れた刀身へと収束させてフルドライブ状態へと変化をしていた。
「おいっ!!フルドライブにする言葉を言ってないのにっ!!!」
「フッ、センワルス神だぞ?」
「くそ~~~俺っからかわれたのか?」
「力を出すきっかけにはなったのだから、悪くはないと思うがな……我も恥ずかしかった。許せ」
「カーンっ!!!ぶっつけ本番だっ神の宝箱を始動させるっ!」俺は赤いレッドダイヤモンドに16歳ぶんの年齢を捧げる……。
俺は天を見上げていた……剣聖であるお父さまのように高く高く。
そして氷結の魔女であるお母さまのように莫大な魔力をカーンから天に放出していた。
「アルちゃん……」ライラお母さまは俺をそっと抱き上げる。年齢を捧げ赤ん坊になってしまった俺が見上げた先には……空高くから光る稲妻を背に平原中のモンスターにスキル技<ライジングスラッシュ>を振り下ろす数えきれないほどの成人した姿の俺だった。
「アルたちは大丈夫かねえ……」カルマータの言葉にいつものようにルーチェが心配そうに「んっ」と答えるが……。
「アル様はきっと大丈夫ですわ、それに剣聖ラングに氷結の魔女ライラが側についているんですもの」
「二人はとっても強いのじゃ~」
「そうだったね、グリナダス王国の最強が二人そろって……」
そのカルマータの安堵の言葉が終わる前には、オリアの西平原全体に変化が訪れる……。パキパキパキと不気味な音がした後、ライラが放ったフロストより更に凶悪な冷気が走りぬけ……空気まで凍り付いたような静寂が訪れた後には、すべてが光の閃光に包まれ爆発的な音が空気を振るわせてこの城門に押し寄せていたのだった。
「うわっ……つうう、なんだ手が」
ライラが氷柱を出しラング達の元へと合流した後は完全に城壁へのモンスターの侵攻は止まっており武器を持って臨戦態勢のまま動向を見守っていたのだが……突然の凍り付くような冷気に手に持った武器が手に張り付き、取れないっと思った瞬間には今度は熱を持った閃光が走りぬけ耳がおかしくなるような爆音の後には武器を取り落としていたのだった。
「モンスター達が……消えた?さっきまでひしめき合ってこの平原中を埋め尽くしていたのに……」
「ああ……信じられないが……たすかったのか?」
取り落とした武器を拾い再び西平原へと目を向けると、信じられないことに先ほどまで死を覚悟しながら戦っていたモンスター達の姿は一切消えていたのだった。
「あっアルなのじゃ~」
「まったく……心配は必要なかったようだね……何をしたんだか、あのモンスター達が一瞬で消えてしまうなんて……」
「んっん~っ!!」ルーチェがピョンピョン飛び上がりながら指をさす先には、アルスロットを先頭に剣聖ラングと氷結の魔女ライラの寄り添って歩く姿が見えていた。
「なっなあ……あんたら、その……あそこに歩いてくる人たちの仲間なのか?」
「あの方たちがモンスター達を?」
「ああ、そうだよ。剣聖ラングが瓦解した西城門から先陣を切り、あの二人……いやカイラス家がオリアへと進行するモンスターを殲滅したんだよ。それに、もちろんだが今日この城壁を守った全ての兵士たちがオリアの住民を守り切ったんだよ」
「ああ……俺たちは守り切ったんだっ!このオリアをモンスターの侵攻から守り切ったっぞっ!!!!」
その声を皮切りに伝染するかのように城壁伝いに大きな喜びと歓声が広がっていったのであった。
「アル君っ!!!終わったのねっ!?」
「はい、カトラお姉さま」
これを皮切りにいつものチビッ子3人に3方向から抱き着かれる……うぐっ、うんありがとうね……。
「それで、アル何をやらかしたんだい?」
カルマータさんにはいつものように何かしでかしたのかの問い合わせに。
「えーと……ライラお母さまの魔法とラングお父さまのスキル技の真似をしたんです」
「真似……が、さっきのモンスター達が一瞬で消えたのかい?」
「そうです……ね、アブソリュートゼロ・絶対零度の魔法を上空に放ち強力な雷を発生させて剣聖ラングがライジングスラッシュを習得した時と同じように雷をその身に受けて……」
「絶対零度に雷?……全く分からないねえ。それをするとどうなるんだい?」
「えーと、説明は難しいのですが……絶対零度の空間で上空で細かな氷を数えきれないほど作り出し雷の最大威力を発揮できる空間を作り出して……上空から落とした雷でモンスターを瞬時に爆散蒸発させました……砂とドロップ品にアーティファクトの欠片は通常通り残ってましたので安心しました」
「ふふっアルちゃんはパパとママの力をしっかりと受け継いでくれたわ、ありがとうねっ!!」
「そうだな、パパのライジングスラッシュを真似てくれたんだろ?」
「はい……その……お母さまからお父さまがどうやってあの凄まじいスキル技を覚えたのか教えてもらったので……」
「うっそうだったのか……。それにしても聞いただけで使えるようになるとはなあパパはたまたま体験してやっと使えるようにだからなあ」
二人は満足そうに、カルマータさんは理解できないと言う感じで……チビッ子3人組はすごいを通り越して俺はもみくちゃにされていると……城壁を守っていた兵士の中から一人の若いが装備から指揮官らしき人物がこちらへと歩いてきていた。
「失礼、私はギルヴァルト・アーク・オリア。この城壁防衛の前線指揮を任されていたのだが……君たちがあれだけいたモンスター達を倒してくれたのかな?それに……氷結の魔女殿が帰ってきていたのですね、なるほど……進行してきたモンスターの殲滅は氷結の魔女殿が?」
まだ、チラチラと煌めくシルバーコートを解いていないライラお母さまを見て、驚きつつもなるほどと言う顔をする。
「えっ?ん~そうねえ、私の力だけではオリアは今頃無くなっていたわね~。まず、今まで城壁をモンスターの侵攻から守り通した兵士たち……そして、グリナダスから駆け付けた王国軍兵の助け。西城門の崩壊時に間に合った王国軍剣聖部隊に……冒険者パーティー・セラフィムと、色々な助けがあったお陰よ?」
西城門の前に集まる俺達を見渡すギルヴァルト様はフムと納得した後。仮面を被って顔全体が見えないように扮装したカトラお姉さまを見つけると。
「そうだったね……グリナダスの王国軍兵が来てくれてなければ西城門が崩壊後は、オリアの兵だけでは支えきれなかった。それに聖女様でよろしいかな?重症人と戦闘に支障が出るほどのケガ人の回復をしてくれたのはとても助かった」
「中には命が散る寸前の方もいらしたので、間に合ってよかったです。それと、私だけでなくこの子……アリアちゃんも回復魔法を頑張ってくれたんですよっ!」
カトラお姉さまの指摘に、俺に抱きついてはしゃいでいたアリアちゃんは急に名前を出され恥ずかしそうにちょっとうつ向いてしまう。
「そうかっ、こんな小さな子が回復魔法をモンスターのケガはどんな小さなものでも油断をすると死ぬこともある、それをすべて回復してくれたそうだね」
「はいっ、皆さんの傷の回復を頑張ってしましたっ!!」
そんな元気なアリアちゃんの声を聞きながらギルヴァルト様は皆と握手をして行く……そして、ある一人の前に来ると……。
「えっ?シエルナーザ……君が何でここに?」
「久しぶりね、もちろんオリアの危機を聞いて駆けつけたのよっ。ギルヴァルトが先頭に立って城壁を守っていたのね……」
「ああ、今はホントにモンスター達の進行を城壁で防ぐことが出来てホッとしているところだよ」
「きゃっ!ギルヴァルト?」
ギルヴァルト様はそのままシエルナーザ様の手を取ると、真剣な顔に変わっていたのだった。




