第七十七話 辺境都市オリア 守る者達
「アルっあれは不味い……ラング殿はアーティファクトの回収が出来ていないよ……」
カルマータさんの指摘に此方へと帰還するお父様はどう見ても……アーティファクトの回収をしていなかった……ああ、やっぱり……気が付いた時には緊急速報が立ち上がる。
「緊急速報 七の厄災」
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緊急速報 七の厄災
エルフィン族の大森林に七の厄災が散らばったようだ。
数多の魔石と融合したアーティファクトにより推定SSSランクのモンスターはそれぞれの自己を持ち散っていった。
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「遅かったみたいだ……七の厄災が大森林に散らばってしまったみたいです。推定SSSランクって……」
「アル……それはホントかい? SSSランクって冒険者ギルドではそんなランク聞いたことが無いんだけどねえ……」
「はあ、それが本当でしたら……剣聖ラングの立場がまずいことになりますわね。魔法貴族から一気に殲滅しなかったせいだと叩かれる材料にきっとなってしまいますわ……」
「シエルナーザ様のお力ではなんともなりませんか?」
「カトリナ……それは難しいわ……アル様やセラフィムの能力の情報は秘密ですから不確かな情報として曖昧にするぐらいしか無いでしょうね……それでも、魔法貴族たちからの糾弾は避けられないでしょう……」
「そんな……」
「さあっ皆っ!! 今はこのオリアに進行するモンスターを殲滅するのが先決よっ、ラングの事はまた後でアスハブ陛下がお決めになってくれるわっ」
ライラお母さまは、それよりもオリアへの進行をどうにかしますよと皆にはっぱをかける。
「それで、お母さまは先ほどからその……殲滅と言っていましたが……そんな事が可能なんですか?」
「ん~~~~~アルちゃんがママの魔力炉を元に戻してくれたから調子がいいのよね~」
そう、先ほどからライラお母さまの魔力が揺らめき……魔法シルバーコートが徐々に凶悪な冷気を発し始めていたのだった。
「もうっラングっ遅いっ!!!」大森林との境目付近で戦っていたお父さまは未だ城門まで半分ほどの距離だった。
「さっアルちゃん行きますよ~<アイシクル>」ライラお母さまの気軽な感じで唱えた魔法は城壁からお父さまが駆ける手前、平原の真ん中あたりまで巨大な氷柱の道を作り出す……もちろんその下にいるモンスター達を巻き込むが氷に閉じ込められたまま砂と化していた。
「アルちゃん? どうしたの?」
「いえ……そのお母さまの魔法が凄すぎて驚いてたんです……」
「ふふっ!! アルちゃんもびっくりしちゃった?」
「えっええ……たぶん皆も……それにお母さまの姿が、その……変わっています……」戦闘レベルまで高めた魔力のせいなのかお母さまの姿は……チラチラと空気中の水分が氷結し……すべてが銀色に様変わりしていた。
「あっ久しぶりだったから忘れてた。これシルバーコートの戦闘態勢なのカトラちゃんの仮面みたいな物ね。ママも素性がばれるとほら、良くない方たちが寄ってきてうっとおしかったのよね~でも、ラングが弱っちいのにいつも助けてくれて……いつの間にか剣聖にまで上り詰めていたわね~」
へえ……ラングお父さまも最初から強いってわけじゃないんだな……そりゃそうか。それにしてもお父さまを弱っちいって……。
「ん~~~~っ!!!」「ふわ~ライラさんとても奇麗です……」「すっごいのじゃ~雪の精霊様みたいなのじゃ~」
「ライラさんの魔力に無駄がない、今出した氷柱……あれだけの事象に干渉するのには莫大な魔力を消費しても……無理かも」
「カトラ様、刹那でしたわ……莫大な魔力が瞬きする間に放出されこの事象変化を作り出しましたわ……」
「あらっ!! カトリナちゃん正解よっ!!! 魔力はね~こ~んな風に収束~収束~収束~ってやって、瞬きするうちにパって使うのよ~ほらっ!!<フロスト>」
お母さまの指先に収束した莫大な魔力は一瞬で事象を動かし、平原中が一瞬で氷点下まで空気が凍り付く……。
「すごいっ!! モンスターの動きが鈍ってるっ!!!」
「これは……地獄だね……」カルマータさんが地獄と表現したように、地面からはミシミシときしむような音が……そしてモンスターの足元は白いモヤが漂っていた。
「ふふっこれは敵の動きを遅くする魔法なのよ~、あっちなみに魔法で干渉するから触れた瞬間に体の芯から冷たくなって動きが鈍っちゃうんじゃないかしら~?」
「お母さま……あっあの……」
「アルちゃんどうしたの?」
俺は一番の疑問に直ぐにでもお母さまに確認をしないと行けなかった。それに……緊急速報が立ち上がっちゃったよ……。
「あの……ライラお母さまの魔法は素晴らしいのですが……先ほどのフロストでラングお父さまが巻き添えになってやしませんか?」
「はっ!!!! そうだわっラングっ!!!! きゃああああああっ、大変だわっ!!! アルちゃん~どうしましょう~」
とりあえず……緊急速報を開いて記事を見てみる……。
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緊急速報 ラング・カイラスの災難
調子に乗った氷結の魔女ライラが広範囲殲滅魔法フロストを放った模様、オリアへのモンスターの侵攻を抑える為に平原へと打って出たラング・カイラスがこれに巻き込まれる。
はあ、またかとラングは動きが止まるモンスター達を見ながら自身もフロストに巻き込まれながらも幼馴染チャトラの作った特殊なアーマーのおかげで動く事は出来る様だ。
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「ラングお父さまが装着しているチャトラさん特製アーマーがどうやら助けてくれているようですが……あまりいい状況ではなさそうです」
「あっ!!! チャトラが氷結耐性の特殊機能をラングのアーマーに付与してくれてたんだったわっ!!!」
はあっ、良かった……でもお母さまの魔法は強力だ、しかも動きを止める魔法と言ってたけど……緊急速報では広範囲殲滅魔法フロストと出ているのが心配だった……。
平原全体が眩しいばかりに輝いていた……。新手の目つぶしか? モンスターの中にそんな攻撃をしてくる奴は記憶には無かった……目は見えなくても不自由はないが、すぐに目が慣れた後には西城門が復活しているのがはっきりと見ることが出来ていた……。
「あれは……虚栄の門? だろうな……」アルスロット達が西城門に到着したんだろう、ここが引き時だと判断した俺は撤退を始める。
「んっ? なんだ?」バキバキバキッと地面から生えてきたのは氷柱……。「これは、はっ? あっ!!!」平原の真ん中あたりにたどり着き懐かしい氷柱を目にした時には、凶悪な魔力が平原中に広がる……。
「うわっ!!! やばいっ!!」俺はこんな時の為に幼馴染であるチャトラが作り出したアーマーに特別な機能を付けてもらっていた……。
「ラング~大丈夫か~まっかっかなのじゃ~。モンスターはまっかせるのじゃ~アルテミス~」
「………………」空中を自在に飛ぶことが出来るヴァルちゃんが俺を心配して一番に駆け付け、ダンジョン産の宝と思われる弓を出して頭上から迫り寄るモンスター達を片っ端から魔力の矢の餌食に……するのが見える。
その光景を見ていると……モンスターが倒れ砂になった個体が目の前からことごとく姿を消す……どうなっているんだ……俺はガタガタと体を震わせながら何とか氷柱の下まで体を寄せるのが限界だった。
「ラングごめんなさい、つい久しぶりで……」
「ああ……ライラ……魔力が……魔力がまた自由に使えるようになったんだね……」
「ふふっアルちゃんが私の魔力炉を返してくれたの……しかも、とっても調子がいいのよっ」
「ああ、また俺は君を守ることが出来るんだね……」
「うん……うん…………」お父さまのその言葉にお母さまは涙をぽろぽろと流しながら優しく抱きしめる。
うーん……カトラお姉さまは西城門で回復の作業の為ここにはいない……ヴァル様にお父さまを連れて?いや、それはお父さまは拒否するだろう。
お父さまを見るとやはり体の芯まで冷え切っているみたいでガタガタと震えている。チャトラさんのアーマーが真っ赤に発熱していたみたいだけどお母さまが抱き着いた時に解除されてしまっていた。
「アル……アルお兄ちゃん、聞こえる?」
「アリアちゃん? あっ魔法で?」
「うん、そうだよっ! でもアルお兄ちゃん共有で今の状況を皆に知らせてくれれば良かったと思うよ?」
「あー、そうだった……はは、自分の能力なのに……」今のニュースサイトは情報を纏め皆と共有もできるんだった。
「もうっアルお兄ちゃんらしいけど……もう忘れちゃだめだよ? 今からカトラお姉ちゃんがマジックドアでラングさんを回復させに行くって」
「そうか、ありがとうアリアちゃん助かったよ」
「ふふっ、私もアルお兄ちゃんの役に立ってよかったっ! あっ、もうドアが開くと思うから魔法を解除するねっ!!」
すっとアリアちゃんの声が聞こえなくなった後にはカトラお姉さまのマジックドアがお父さまの横で開いていた。
「もうっ!! アル君っ!!! ラングさんの状況がこんなに悪いなら皆に知らせてくれないとダメっ」
「はい……その通りです、自分の能力をすっかり忘れていました……」
カトラお姉さまはプリプリ怒りながらも〇魔法をラングお父さまに……。
「カトラちゃん、ありがとう。もう、すっかり動けるよ」腕をグルグル回し体の具合を確かめるお父さまは……すっかり大丈夫そうだ。
「ふふっ、とっても面白いわ。まるで昔のラングねっ!!」
「ライラ……それは言わないでくれ……」
ラングが回復した時には、広範囲殲滅魔法フロストの中でも動けるモンスター達によって背中にそびえ立つ氷柱以外を完全に囲まれていたのだった。




