第七十一話 辺境都市オリア 先見
アルタス様を先頭に王城の訓練場へと早足で向かう……。
「それで、アルスロット殿……門はすぐに閉じてしまうのか?」
「はい、王都グリナダスから兵が移動したらすぐに閉じます。今から言うことにはならないと思いますが……もしもの時は再度、門を開き全ての人を避難させますのでご安心ください」
「うむ……ありがとう、それを聞けて安心した」
王城には避難してきた民たちと、エルフィン族が……もちろん訓練所も……。
「これは……エルフィン族で一杯だ、アルスロット殿すまないがここでは無理だケガ人もいる。この者たちを追い出すわけにはゆかない……」
「今の戦況は、モンスターたちを抑えてはいるんでしたよね?」
ここは、セラフィムの皆を呼んでケガ人の回復を中心に動いてもらおう……その後に、王城の外に門を作るしかないな……かなりの人に見られてしまうが仕方がない……。
「まず、僕の仲間をここに連れてきます。その後、王城の外で門を出す事にします」
「いいのかね? 門を見られても……」
「良くはありませんが……仕方がありません。とにかく仲間を呼ぶために部屋をお借りしたいのですが」
「この状況ではベットなどがある部屋は全て民やエルフィン族に解放されているから……倉庫でも良いか?」
「はい、それで構いません」
アルタス様は訓練場に設置された掘っ立て小屋のような物置へと案内をしてくれる……。
「中は訓練場の整備に使うものが色々と入っているが、本当に良いのか?」
「ええ、仲間を呼ぶだけですので少しの間だけ見られない場所が必要だったんです」俺は物置へとすぐに入ると虚栄の水晶の指輪を使い小さなドアを……拠点都市へ、そして俺のパーティー屋敷へと向かったのだった。
「アル君っ!!オリアに無事到着できたのねっ!」
「カトラお姉さま屋敷からのドアの設置有難うございました。はい、降りるときに誤射をされましたが……アルタス様にも無事お会いすることが出来ました」
「まあ、アルタスおじさまはお元気だった?」
「陛下よりもとてもお若い方でビックリしました……今は皆を呼びに物置小屋から俺がドアを繋いだんだ」
「そうかい、アルご苦労だった……それで私たちはオリアで何を?」
「カトラお姉さま、アリアちゃん、シエルナーザ様はオリアの城に避難してきているエルフィン族のケガ人を見てほしい。カルマータさん、ルーチェさん、カトリナ様、ヴァル様は俺と一緒にモンスターの大群と対峙する」
まあ、俺とカルマータさんにルーチェさんが前線に……後方で遠距離支援をカトリナ様とヴァル様にかな……剣聖ラングが参戦すればすぐにでもモンスターは駆逐されるだろうしね……。
「さっ、この後すぐにでもオリアに門を開かないといけないからみんな直ぐにドアを潜って。それではメリダさん行ってきますっ」
「アルスロット様行ってらっしゃいませ……皆様の無事な帰還をお待ちしてますわ」
メリダさんに見送られ俺たちはすぐにドアを潜りオリアへと戻ったのだった……。
「あっ、戻ってきたのじゃ~アル~、カルマータ~、ルーチェ~、カトラ~、カトリナ~、アリア~…………」
「ヴァル様……シエルナーザ様ですよ……」
「シエルナーザ~、皆会いたかったのじゃ~」
まだグリナダスから飛び立ってから30分ほどしかたたないにも関わらずヴァル様は一人一人に抱き着いてゆくが最後のシエルナーザ様の名前を忘れてたのは……仕方ないよね。
「カトラお姉さま達はエルフィン族のケガの回復をお願いします」すでにカトラお姉さまはドアを潜る前に正体が分からないように仮面を被ってもらっている……〇×△□魔法は目立つからね……。
「アルタス様、城内を自由に動き回っても?」
「ああ、ケガ人を治療するためなら特に制限はすることは無い」
アルタス様から城内を歩き回る許可を頂いたカトラお姉さま達にエルフィン族の治療を頼む。
「アル君っ治療が終わったら合流するねっ」
「アルお兄ちゃん、気を付けてね……」
「アリア様、大丈夫ですわ……カルマータ様とルーチェ様も付いています」
アリアを妹のようにかわいがるカトリナ様と、頭をなでながらヴァル様が安心させる。
「アルタス様、城の外へ行きましょう」俺は門を設置するため民とエルフィン族でごった返す城を出る事にした。
「…………」
ふと立ち止まり後ろを振り返り上を見上げ固まるヴァル様……。
「ヴァル様どうしたの?」
「うん……アル~門に門を作っちゃダメか~?」
「門に門…………あっ!! ヴァル様もちろんだよっ!! それでいこうっ!!!」
俺は人の目をごまかせる、こんな簡単な事をヴァル様に教えてもらうまで全く気づくことが出来なかった……。
王城の巨大な門に、虚栄の水晶の門を重ねて出せば……近くで見ても気づくことは無いだろうね……ははは、こんな簡単な事が思いつかないなんて……。
「じゃあ、ヴァル様。王城の門に重ねて虚栄の門を出して……移動後には消すからね」
「うんなのじゃ~、う~~んう~~~んう~~~~んっ」3分ほどヴァル様は唸ると瞬時に目の前に王城の門とは違う虚栄の門が出現する……そしてヴァル様が触れると……巨大な扉がゆっくりと開いていったのだった。
「アルスロット殿……これが……?」
口をパッカーンと開けたまま俺に問いかけるアルタス様は、半信半疑だったのが現実に目の前に門が現れ……小さな子供のようなヴァル様が触れると巨大な門が開かれてゆく光景にオグスと共に、ただただ固まって棒立ちするのであった。
「アルタス様……アルタス様……」
「はっああすまん……あまりに目の前の門に圧倒されてしまって……しかも私の目の前にいるのはアスハブ兄上っ!!! 兄上っ!!!」
門が開いた先にはアスハブ陛下や王の剣の二人に俺のお父さまの剣聖ラングにガンダー、カトリナ様のお父さまでグリナダス王国軍将軍ギンド・ファイスが立ち並びその後ろには訓練場一杯に兵たちがひしめき合っていた。
「ふう、アルスロットご苦労じゃったのう……。アルタス久しぶりじゃ、出来ればオリアが平和の時に会いたかったのう……それでいきなりじゃが現状を教えてくれぬかの?」
先頭に立っていたアスハブ陛下は門の横によけた俺たちの方へと話しながら移動し……以下兵たちは門をくぐり一糸乱れぬ隊列でオリアの幅広な大通りへと進軍していく……。
「はい、エルフィン族はケガ人が多数出ておりますが大森林が逃げるときの助けとなり一人もかけることなくオリアに避難を終えています……。そしてモンスターが城壁を取り囲むように隙間なく押し寄せており現在はオリアの兵たちが必死に押しとどめておりますが、時間がたつごとにケガ人と疲れでいつ崩壊してもおかしくない状況です……」
「そうか、だがワシらが来た。しかも剣聖ラングもおる」アスハブ陛下はアルタス様の肩に手を置き一つ間違えばオリアが崩壊していた事態によく耐えたと労う……。
「はい……こんな心強い援軍がすぐにでも到着するなんて……アルスロット殿に感謝をしなければなりませんな」
「ふむ、先ほどシエルナーザをアルスロットに嫁がせたばかりじゃがのう」
ニヤリと俺に笑顔を見せるアスハブ陛下に、アルタス様はまた目を見開き驚きの顔を俺に見せる……。
「ほうっ!!! あのシエルナーザが?行き遅れてしまってて私も心配はしていたんです。有力そうな男どもの姿絵をいくら送ってもダメだったのに……そうか、アルスロット殿かうむうむっ」
アルタス様は陛下と一緒に俺を見て何度もうむうむと首を縦に振る……いや、すでに嫁ぐのが決まったんです?
「アルスロット……良くやったな、ママから俺も虚栄の水晶の指輪という物を貰ったよ。これでいつでも一つだけ扉を作り虚栄の都市との行き来が出来るんだな?」
「そうですね……お母さまの指輪で自宅と虚栄の都市を繋ぎ、お父さまの指輪でオリアと虚栄の都市を繋げばいつでも行き来が出来ます。注意する点は門を消してしまうと又オリアまで今度は徒歩で来る必要がありますので扉を消すときには気を付けてくださいね」
「なるほど……しかし、素晴らしく便利なものだな。ここオリアは俺の故郷だ……この力が無かったら全力で駆けても数時間かかる距離だ。たぶんオリアは……だめだったろう」
俺の頭をなでながらお父さまは久しぶりのオリアの大通りを見て懐かしんでいたが、緊急速報が立ち上がり城壁へと止めどもなく押し寄せるモンスターの大群にどうやら城壁が落ちる時が来たようだった。
「緊急速報 オリア落ちる」
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緊急速報 オリア落ちる
今から約6分後、オリア西城門が破られモンスターの波に飲み込まれたオリアは夜明けを待たず落ちる事となった。
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6分か……お父さまの部隊なら間に合うだろうか?
「お父さま……今から約6分後に西城門が破られます。破られた場合はそのままモンスターに飲み込まれオリアは落ちるでしょう……」
「大丈夫だ……すまないがアルはこの事をカトリナ様のお父さま、ギンド・ファイス将軍に伝えてくれ……頼んだぞ」
そう俺に託した後には、王国軍剣聖部隊は剣聖ラングを先頭に西城門へと身体強化を全開にし向かって行った。
「行ってしまいましたわね……それでは私のお父さま、ギンド将軍にこの事をお伝えいたしましょう」
「うん、カトリナ様……その」
「なんだい?アル??もしかしてカトリナの父上に合うから気まずいのかい?」
「んっ?」
「あ~そのう、正式にご挨拶をしてないので緊張しちゃいますね……」
「大丈夫なのじゃ~ヴァルが付いてるのじゃ~」
「ふふっ、わたくしのお父さまはお優しいのですのよ……ただ、将軍として今は行動中ですので、もしかしたら私も知らない面があるかもしれませんわね」
ちょっと意地悪い顔でそう解説するカトリナ様……それを聞いて俺は更に緊張してしまうだけだった……。
「陛下はこの後、門を引き返しグリナダスでのもしもの場合の防衛の指揮をお願いいたします」
「アルタスにギンド将軍、後は任せたぞ。剣聖ラングがいれば大丈夫だと思うが、もしもの時はアルスロットがまた門を開き全ての民を虚栄の都市へと避難させてくれるはずじゃ……」
出来ればあの門は……あまり目に触れさせたくはないがのう……。
「兄上、お任せください誰も死なせることなくオリアを守って見せます」
「陛下、この場には私の娘カトリナがおりますからな絶対に守り抜いて見せます」
「おお、そうじゃのう。ギンドは娘のカトリナに将軍としての姿を見せねばのう、ふぉふぉふぉ」
「お父さまっ! アル様がお父さまにお話があるそうです」
私の目の前には私の娘と連れ立って現れたアルスロット・カイラスが立っていた。
「どうした? 軍の移動が終了するにはもう少し時間がかかるぞ?」目の前に少年は……そんな俺の言葉とピリピリとする態度に臆することなく……。
「お話し中失礼いたします。現在、王国軍剣聖部隊がオリア西城門へと緊急で向かったと剣聖ラングよりギンド将軍への伝令を任されましたのでお伝えに参りました」
「なるほど、了解した……。軍の移動終了後にはそれぞれ東西南北の各門へ分散して兵を送り都度伝令を回しモンスターの動向を見ながら兵力の適切な分散をしていくつもりだ。そして、我らが城壁でモンスターどものを完全に抑え込んでいる間に剣聖部隊が中心となって駆逐させるつもりだったが……」
「もう、今頃だと思いますが西城門では剣聖部隊が強化されたアーティファクトモンスターと対峙していると思われます。先に西城門だけ王国軍兵を向かわせ瓦解しないように城壁の守りを強化するのが良いかと愚考いたします」
この、小さな子供から出る言葉に俺は驚愕していた……まるで見て来たかのように戦況を把握して俺の考えに補足を適切に入れてきていた……。
「それは、まるで見て来たかのような……だがアルスロット殿……君はいま剣聖ラングの所にいたのだな? どうやって戦況を知った?」
「それは……」
ふむ、カトリナの婿になるこの子供には色々と秘密がある様だな……俺はチラリと愛しの娘の顔を見るとプクリと真っ赤にホホを膨らませているのが分かった……。




