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第七十話 辺境都市オリア 降り立つ

「シエルナーザ様……今から俺はヴァル様と一緒に辺境都市オリアへと飛びますので俺の屋敷で他の皆と待っていてくれますか?」

魔剣カーンをまだ魔族化の浄化が必要なシエルナーザ様へと預ける……。


「ふふっ……アル様は本当は俺なんですね、僕なんて言ってたからもうちょっと可愛げがある方だと思っていましたが。あなた様は見た目では測れなのですわね……」


なんだか、大人の女性の目線で見られてぞくぞくしながら……俺は王城の陛下の私室のバルコニーへと出ると、ここから見える訓練場にヴァル様が虚栄の門を設置し終わったところだった。


「じゃあ、みんなは俺のパーティーハウスでっ待機していてくれっ!! ヴァル様っ!!!」


「ハイなのじゃ~っピューンなのじゃ~」


俺を抱きかかえたヴァル様はものすごい速さで上空へと上昇する……速い……ヴァル様を見ると物凄い魔力が羽に注がれているのが分かる……。

ヴァル様の羽は普段は髪の毛と同化して畳まれていてパッと見は羽があるようには見えないが、飛ぶときになると髪の毛のように同化している羽が変化して横に開くと漆黒の闇の様な美しい羽がバッサバッサと羽ばたいていた。


「アル~下を見るのじゃ~」


上昇を終えヴァル様はその場でホバリングして制止を……そして言われた通りに下を見る……。


「すごい……」


俺の足元にはオーチャコ神礼拝堂を中心とした王都グリナダスの城壁都市が広がっていた……残念ながら夜に差し掛かっており細部までは見ることはできない、そして首を動かし西を見ると薄っすらと明るい点が見える……。


「アル~あっちの明るい所がオリア~?」


ヴァル様に体を向けられ問われると俺は大声で向かってくれと指示を出していた。









「ラメルダ様……グリナダスで手に入った駒たちでございます……」


グリナダスの大通りの宝石商には……アーティファクトにより魔族となった者たちが集まっていた……。


「これだけかい? アーティファクトに耐えられる素体が少ないねえ……人族は軟弱だね」


「はい、まさかこれほど適合する者がいないとは……ほとんどの物はモンスターのような魔族とも言えない怪物に……そしてこの3名が魔族の力をアーティファクトより自分の物に出来た者達でございます」


そう紹介されるラメルダの前には男二人と少女一人が立ち上がっていた。


「いや~ん、こわ~いっ!! そんな鋭い目で見られたらおしっこちびっちゃうわ~」くねくねと身をよじらせる仕草をするが、もちろん漏らしてはいない……。


「はんっ、ションベンタレのガキが何でこんな所にいるんだっああ?」

口の悪い男は横でくねくねと身をよじらす少女をなじる。


「…………で、貴方が我らを統率する御方か?」

もう一人の男は冷静に目の前にいる自分よりも格上の存在に問いかけていた。


「少し、分からせる必要があるようだ……」ラメルダの言葉の後には、青い魔族の姿となった三人の者達に尋常じゃない強大な魔力が叩きつけられる……。


「あっああああああ、うそ…………ごめんなさいラメルダ様っ!!」


「ちっ!! 力を手に入れたのに……俺の力は残りカスにもならねえ……」


「素晴らしいな……これほどの魔力は魔人族? でも出せまい我ら人族が素体では弟が言うように残りカスのような存在か……」


ラメルダの前に並ぶ三人は強大な魔力の前に自分の立ち位置をしっかりと理解したようだった。


「ヒヒヒッ、ラメルダ様に逆らう事は許されない……それにアーティファクトをお前たちに与えた御方でもある。どのみち発動した限りはラメルダ様には牙を向けることはかなわんよ悪く言えばお前たちは奴隷だ」


「その奴隷となった俺たちは何をするんだ?どのみち俺はこの力をもらえなければ地下牢で獄死するまで繋がれる身だった、何でもやるぜ?」


「わたしわ~剣聖ラング様といちゃいちゃしたいな~この前は一瞬で気絶させられちゃったのっ!! もうっひどいと思わないっ? 挨拶もしないうちに気絶よっ?!!」


「そうだな、俺の居場所はこの王国にはない……あなたに従いついてゆこう……」


「ウング……奴隷は言い過ぎだ……私はお前たちを使うそれを拒否する事は許さん」


「ヒヒヒッ!! ラメルダ様はお優しい。お前たち今日からこのお方の為に働くのだぞ……」


「それで、西の辺境はどうなった? エルフィン王国を潰し大森林を暴走させグリナダス王国を飲み込ませる計画なんだが、今はどのあたりまで進んでいる?」


「それもうっヒヒヒっ大成功いたしました。すでにエルフィン王国はアーティファクトモンスターの波に押しつぶされ壊滅しているはず……その勢いのまま西の守り辺境都市オリアも時機に落ちるでしょう。今更向かっても王国軍が到着したころにはオリアはモンスターの巣と化しています。グリナダスの魔法研究所の愚か者たちが作り出したモンスター抑制剤を流出させたおかげであちらの計画は邪魔されることなく上手く行きました」


「そうか……ご苦労だった。我らはこのまま東へと向かう……この宝石商は足がつくのも時間の問題だろう廃棄するっ!」


「ヒヒヒッすでに馬車の用意はできております。さっお前たちは魔力を抑え肌の色を変えるんだ」


「ちっ分かってるが……上手く出来ねえ」


「ぷっ! へたくそちゃんっ!! 私を見て~スッと変わる~」


「お前は力みすぎだ、魔力が途切れ途切れになってる……」


そんな、グリナダスを混乱させた者達は東へとアルスロット達とは逆の方向へと姿を消していった。









10数分だろうか……上昇後に一気に西の辺境都市オリアへと落ちるように滑空する俺たちは目の前に広がる絶望的な光景に目を疑う……。

辺境都市オリアは……城壁全てをモンスターに取りつかれモンスターの赤と黒に染まっていた……。


「アル~モンスターだらけなのじゃ~」


「ヴァル様っ!! 上昇っ!!!」


緊急速報でこちらに向かって矢がいられることを知った俺の声の後には、すぐ下あたりを何かが通り過ぎる……下を見ると、緊急速報通りオリアの兵士たちに間違って矢を射られたようだった……。


「むっ!! むむむ~~~~~~~ん。矢が飛んできたのじゃ~ヴァル達は敵じゃないのじゃ~!!」


お怒りモードになったヴァル様は急上昇した後には垂直に急降下し矢を放った者の前に降り立っていた。




「ぎゃっ!! なんだっ?!」


「ヴァル達に矢を放ったのはだれじゃっ!! メッなのじゃっ!!!」


ヴァル様は今までにないお怒りで俺達に矢を放ってきていた者を激しくメッ!! をしていた……なんだろ見上げるように怒るヴァル様は可愛いだけだな……。


「なんだあ? 飛行タイプのモンスターだと思ったら……しゃべりやがる煩いガキとはどうなってやがる」


「ヴァルはガキじゃないのじゃっ!!」更にお怒りになったヴァル様は兵士らしき人間を蹴ったくってしまっていた。


「クソガキっ!!!」


もちろん逆上した兵士はヴァル様を殴りにかかるが俺はニュースサイトの緊急速報で把握(・・)しているためひょいと兵士の手首をつかみ捻りあげる。

「<身体強化>…………先にモンスターと間違えて攻撃してきたのは貴方です……しかも俺の大事な人に暴言と暴力を振るのは許しません……」


「いってえええっ離せっ!!!」


すでに、周りには大勢の兵士たちが取り囲みモンスターにも囲まれているせいか手をひねりあげる俺に向けられる視線はとても冷たい物だった。


「何をやっているのだっ!!!」


そんな俺たちはものすごく目立つ……持ち場を混乱させている兵士たちに怒鳴りつけながら指揮官クラスの人間がこちらへと向かってきていた。


「私はこの場の指揮を任されているオグスだ……子供? すまんが少年そろそろ手をひねるのを許してやってくれないか?」


手をひねっている兵士を見るとやりすぎたのか口をパクパクさせブルブルと震えていた……。


「そうですね……」パッと手を放すと膝まづいた姿勢のまま必死に這って兵士は指揮を任されているオグスと言う人の方へと逃げていった。


「お前の処分は後だっ!! すぐに交代の時間が来るスムーズにできるよう休憩しながら待機するんだっ分かったかっ!!」


ギロリと周りの兵士たちを見渡したオグスは、こちらを見据えて俺たちを誰何してきた。


「それで……君たちは逃げ遅れた市民でもないだろうね? そもそも君たちの格好は冒険者だね? それもかなりの装備だな……」


俺の装備は漆黒のチャトラアーマー、ほぼ全身を覆うアーマーだその辺の子供が装備できるようなレベルの装備ではないことは近くで見れば本物の質感に直ぐに分かってしまうようだった。

ちなみに、安物の全身アーマーの中には木を張り付け墨で黒く塗りたくった粗末な物も意外と初心者冒険者の間では流行っていた。


「オグスさんは、ここの指揮官ですか? 騒ぎを起こしたことは謝罪いたしますが……先に俺達にモンスターと間違えて攻撃をしてきたうえに謝罪もなく。俺の大事な人に暴言と暴力を振るおうとしましたので先ほどの兵士には謝罪はする気はありません」


「あっああ、それは構わない。君の言う通り此方に非があるようだ、それで君たちはいったいここで何を?」


俺は、アスハブ陛下より渡された封蝋をしてある勅令書を見せると……一瞬にしてオグスの顔色が変わる……。


「そっそれは、国王陛下の紋章の入った封蝋……まさか?」


「ええ、アスハブ・ギルン・グリナダス陛下の勅令書です。俺たちはこれをアルタス・アーク・オリア様に渡しに来ました。お忙しいでしょうが、アルタス様への謁見を今すぐにお願いできませんか?」


「…………使者殿、大変失礼いたしました。今すぐオリア領主アルタス様の元へとご案内いたします」


どうやら、国王陛下を表す紋章が入った封蝋に閉じられた勅令書が聞いたのか一瞬でオグスの態度は180度に過度に丁寧な物へと変わって周りの兵士たちも硬直し引きつるほどの緊張が一瞬で広がっていたのだった。







「こちらの指令陣地にアルタス様がいますので、取次が出来るまで申し訳ありませんがこの場でお待ちください」


そう言うと目まぐるしく指令を受け取った兵士がひっきりなしに行きかう指令陣地の隅っこで待たされる……、飛び交う言葉に赤い特殊なモンスターと怪我をしたエルフィン族に回復魔法士が足りないなどの声が飛び交っていた……。


「早く謁見が叶うといいんだけど……エルフィン族の回復もカトラお姉さまがいれば重傷者でも一瞬で完治することが出来る……」


「ヴァルが門を開けばパッと皆が助けに来てくれるのじゃ~」


流石に直ぐにとはいかなくて10分ほどは待たされただろうか……。


「使者殿っ!! お待たせいたしました。こちらの天幕にてアルタス様がお会いになるそうですので」


「ヴァル様行こうか……」


「ハイなのじゃ~」


天幕をくぐると……アスハブ陛下をほっそりさせてだいぶ若くした40代の壮年の終わりを思わせる感じの方が護衛と思わしき者に囲まれながらこちらを見ていたのだった。


「君が……使者殿か……アスハブ陛下よりの勅令書を持参しているとの報告を受けたが……本当なのか? 早馬は昨日の深夜に王都へと向かったばかりだが……」


一番速い馬でも1日ほどかかる距離だから、今頃には王都へエルフィン王国とオリアの窮地が伝わっているころに俺が陛下からの勅令書をしかも子供が持ってきたことに、顎をこすりながら怪しんでいた……。


「まあ……気持ちは分かるけどね……」



「きさまっ!! 何という口をっ!!!」


「よいっ! 使者殿の名と陛下からの勅令書を見せていただけるかな?」


「僕は、Fランク冒険者のアルスロットです。横にいるのは僕のパーティー・セラフィムのメンバーのヴァルです、見ての通りヴァンプ族の飛行能力を使い王都より緊急にアスハブ陛下の勅令書を持参いたしました。陛下よりアルタス様が勅令書を読まれた後、早急に事を成すよう仰せつかっております」


俺は一歩前に進みその場で膝まづき陛下の勅令書を上に掲げ差し出すと……アルタス様自ら手に取り封蝋を確認後に勅令書の中身を読み始める。


「なっ……こんな事がありえるのか?」


ブルブルと震える手で勅令書の中身を何度も読み返し、最後は俺とヴァル様を厳しい目で凝視するアルタス様に周りの者も激しく緊張し、何を思ったのか腰の剣に手をかけてる者さえいるし……。


「はは、アルスロットと言ったな……君は本当にここに書かれていることが出来るのか?」


「はい、アルタス様のお早い決断を陛下も願っています。情報漏洩を許さず許可を頂ければそこに書かれたことを直ぐにでも実現いたします」


「分かった……オグスっ!!! 付いてまいれっ。他の者たちはこのまま現状を維持させることに全力を傾けよっ私はアスハブ陛下より下された言をこれからこの者たちと実行するっ!!」


そう宣言すると、すぐに俺たちを連れて王城へと向かうのであった。





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