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第七話 寝る子は

「あむっ・・・あむっ・・・あむっ・・・あだあっ(美味しいっ)」俺はお母さまが作った愛情たっぷりのコーンスープを頂いていた。


「アルちゃん~美味しいですか~、ゆっくりあむあむしてね~」


味は薄いけど、美味いパンもひたひたにして少しずつ口に運んでくれる。



「今日はねっママの昔からの親友が来るのよ~。は~楽しみだわ~、アルちゃんが生まれる直前が最後だから9か月ぐらい前かしら?チャトラって言ってね王都一の服飾店を営んでいるのよっママの自慢の親友なのっ」


お母さまは、ふふふっと笑いながら幼馴染でもある親友との思いでを話し始めていた。


「もうっ服の事になるとねっ、ふふラングが・・・あっパパなんだけどね昔はとってもズボラでいつも一緒の服を着てるような人だったのよ~本人はこれには訳があるんだとか言い訳してたんだけどチャトラにかかったら一発で服を脱がされて色々と言われてたわね~。それで、チャトラが作った服を着たパパはかっこよかったわ~ママが惚れた原因の最初の一つを作ったのはチャトラだったのよね~」


チャトラさんはいつぐらいに来る?


最新記事を表示させようとするが・・・あら表示されない・・・。今すぐに来るって事じゃないのかな?


「は~い、美味しかったかな~」


コーンスープを食べ終わった俺はお母さまにゲップが出るまで抱っこされると、そのまま眠りについた・・・。










「おーいっ!!ライラ~いるかーい?チャトラだよーおーいっ!!」


私は久しぶりに友人に会いにカイラス家の門の前で声をかけていたが・・・なかなか人が出てこないよ~もうっ貴族なんだからメイドの一人ぐらい雇ってもいいのに・・・。

何故か親友の夫婦は一般市民と変わらない生活を送っている貴族という変な夫婦だった。


「すう~」と、もう一度と息を吸い込んだところで親友の一人が家から出てくるのが見えた。


「チャトラっいらっしゃいっ!!!今ねアルちゃんの朝ご飯が終わって眠ったところなのっ。抱っこしてたものだから出迎えるのが遅れちゃったわごめんねっ」


「あ~そうだったのか~、もしかして留守なのかとちょっと思っちゃったわ。それでアルスロット君だっけ?寝ちゃってるの?」


「うん、今さっき寝ちゃったわ~と言っても私は1時間ぐらい抱っこしてたんだけどね~。ご飯食べた後だからゲップの後にそのまま寝ちゃって、ふふっ」


「あら~、まっそうよねえ今は可愛いもんねえ。それにしてもメイドは雇わないの?アルスロット君のお世話はライラがやればいいけど、家事とか私みたいに来客があったときに大変じゃない?」


「んーそうねえ、でも自分で何かするのは楽しいのよとっても大変だけどねっ。それに私もラングとの生活を守るのアルちゃんもいるしねっ」


そんなこと言う親友は、今がほんとに最高の幸せなのという顔をして私に惜しげもなく見せてくる。はあ、まっ私も人の事は言えないか・・・服の事を話す私はもっと激しいだろうしね~。


「じゃ、まずは~ライラご自慢の息子アルスロット君を見せてもらおうかな~寝てるのはザンネンだけど~とっても可愛いんでしょ?」


「ふふっ親バカだけどとっても可愛いわっ。チャトラも一目見たら大好きになっちゃうんだからっ」


私は「あ~はいはい」と適当に返事をしながらライラに案内されアルスロット君の寝室へと行くのだが、その時にはすでに・・・なんであの時、門で長話をしたんだろう・・・なんであの時と・・・。


ぼ~然と立ちすくむライラの後ろ姿に先ほどのライラの幸せな顔が脳裏に焼き付いていた私は、胸の真ん中あたりが喪失するような経験したことのない苦しみに支配されていた。









「わっ私がちょっと目を離したらっあっアルちゃんがいなくなっちゃって・・・アルちゃんが・・・」


私達はすぐに家じゅうを探し、狭い家だ・・・すぐにアルちゃんがいない・・・誘拐されたんだとの結論に直ぐにたどり着いていた。


「ライラっしっかりしなさいっ。あなたは目を離したんじゃないわっ、親友を出迎えるために家の門まで出迎えていただけよっ。それに悪いのは誘拐した奴らよっ直ぐにラングに知らせましょうこのまま私達で探し回るのは時間が過ぎていくだけだわっ。いい?あなたは家で待ってて私がすぐに王城まで走ってラングに知らせてくるわっ」


私は泣き崩れるライラを椅子に座らせると、走って王城へとラングの元へと向かったのだった。


「アルちゃん・・・私にほっぺたプニプニさせてね・・・」王城までの大通りを全力で走りながらの私の呟きは風に流れて雑踏の雑音の一つとなり消えていった。









「父さんっ誰か来たっ」


息子のチンピに門側を見張らせていた俺はすぐに振り向くと若い小さな少女が大声でライラと叫んでいた・・・。


「どうやら、ライラ・カトラスの客人のようだ・・・よし、チンピはここで見張っているんだ。俺はこのまま塀を超えてさらってくる・・・すまんなこんな事をさせて・・・」


「ん?なんで、俺は父さんの手伝いをするんだっ」


「すまない・・・悪いが門から誰か家の中に入ろうとしたら口笛で合図をしてくれっ」

少しでも短時間で済ませようと俺はすぐに背丈より低い塀を乗り越えカイラス家の敷地内に侵入する。

なにもないな・・・あまり大きくない質素な家に庭だけは平らで広めで・・・これが貴族の家なのか?まあ俺のボロ屋に比べようもないが・・・グースの豪華絢爛な悪趣味なでかい屋敷を見慣れている俺の目には普通の市民の家に訓練ができる広い庭が付いてるだけの貴族の屋敷?と言えないような家だった。


これならすぐに見つかると開いている窓を覗くとそこには対象の赤ん坊がスヤスヤと眠っているのが見えた。






「はあーはあーっはあっ」

赤ん坊・・・俺はチンピが生まれてきたときの事を思い出していた・・・。笑顔を浮かべる女房に、小さな小さなチンピ・・・幸せだった・・・。

だけど今は・・・チンピは俺のとてもまともじゃない仕事の手伝いをさせている・・・、そして今日は・・・赤ん坊の誘拐の手伝いだ・・・俺は・・・あの時の小さなチンピの姿がこのスヤスヤと寝ている赤ん坊を見た瞬間重なり体は硬直していた。



「う゛~」





硬直していた俺は赤ん坊の声に反応して、最後の一線を踏み超えてしまった。


「チンピ帰るぞ・・・」赤ん坊を誘拐した俺の心の中は冷え切っていた・・・この赤ん坊が眠る命獄の宝石を握りしめグース・ブヒクの屋敷へと戻っていった。




「グース様・・・ラング・カイラスの息子を命獄の宝石に誘拐してまいりました・・・」俺はこの心が冷え切る卑劣な仕事の報告をしていた・・・。


「うはははっ、初めて役に立ったなっシーンよよくやった。これで拾ってやった恩が少しは返せたな」


ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら手を出すグースに俺は・・・赤ん坊が眠ったまま閉じ込められた命獄の宝石を渡す。


「おおっなんとも、閉じ込められた人というのも美しいなっ!!フヒヒッこんな物を持っているのは私だけだっ国王でも持ってないぞ・・・フヒヒヒヒッ」


俺はもう命獄の宝石を見るグースの醜い顔に堪えれなくなり・・・その場をそっと退出した。





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