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第六十六話 さめる夢

「んっ」ちみっこいルーチェが指をさす先には地表に丸く大きな穴が開いていた……。


「なんだい?ほんとに生まれたばかりなんだね……」


「まずいね~これだけ新しいと、入ってる途中でダンジョンが様変わりする可能性があるね~」


ダンジョンは生まれてすぐは不安定で危険なために通常は安定するまで封鎖するのが常識だった。


「グリナダスの剣聖はそんなダンジョンを攻略しているが……かなりやばいらしいよ?」


「あんたはグリナダスの出身だったのかい?」


「あれ言ってなかったっけ? 俺はグリナダスの冒険者ギルドに籍を置いてますよ~」


イオスはトヴァリス帝国とアルタナシア魔国との間にある小国群国家の小さな国で出会った男だったが……。

そんな、入り口の前まで行くと魔国の兵士たちが入り口に仮設の建物を建てている最中だった……。



「んっ」ルーチェがこいこいと手を振り上げる。


「ルーチェ様っ!!! 全員っ手を止め集合っ!!!」

すぐに隊長らしき男からの号令で魔国の兵士たちがルーチェの前にと整列するのであった。


「んっんっんんっ!!」ルーチェはなれたようにジェスチャーで隊長らしき男に何しにここへと来たのか説明をすると。


「ルーチェ様自ら……分かりました。今の所われわれの部隊は1Fのみ攻略を完了していますが……どうやら先行してこのダンジョンへ潜っている者がいるらしく……床に多数のアーティファクトが散らばっているという状況を確認しておりますっ!!」


「んっ!!!」ご苦労と言う感じで、兵士たちを元の作業へと戻らせる……。


「へ~大したもんだね、ルーチェの”ん”で通じるものだね~」カルマータがルーチェの”ん”の翻訳マスターになるのはこのすぐ後の事だ。






「<鬼火>…………広いな……生まれたばかりでこの広さ、やばそ~」

幾つもの浮遊する火の玉をイオスが出し広いダンジョンの内部がくっきりと浮かび上がると、土がむき出しで所々に下から生えるように成型された石が突き出し始めていた……いつもの軽い感じの声もアーティファクトダンジョンの前に来てから少しずつ固くなり始めていた。


「私も古代遺跡群のダンジョンの中を見て来たけど……ここはそれ以上の大きさだね」


「んっ!」ルーチェが指をさす先には……。


「やけに早いね……ちっ、しかも一体だけ変に……赤くて、私がアーティファクトを使った時の雰囲気にそっくりだ……アーティファクトを飲み込んだモンスターがいるよっ!!! みんな気を付けなっ!!」


「ん~いきなり、アレですか……まさかカルマータの暴走モードより強いなんてことは無いだろうな……」


「んっ!!」そんな、無駄口をたたいている暇はないとばかりにルーチェが警告の声を上げた時には……。


「がっ!! はっ」

イオスは思いっきりモンスターのタックルを受けて仰向けに転ばされていた。


「何やってるんだいっ!! 死ぬつもりかい!?」

すぐに、カルマータの大剣で横から殴るようにモンスターを引きはがす。


「んっんんんんんんんんんんっ」魔力を乗せてとんでもない速さでルーチェの銀の細剣がモンスターを串刺し穴だらけになり、地面に落ちるころにはパサッと砂へと帰る。


どうやらGランクモンスターのケーブルスパイダーがでかくなったビックスパイダーが、クモみたいな形をした多足歩行のモンスターは巨大な体に似合わず早い動きと狙いを付けた獲物に飛びついてくるようだった。

そして、赤く光る一体の動きは……。


「やばいよっ!! 赤い奴が動きがまともに見えないっ!! ルーチェあんたは捉えることが出来るかい?」


「んっ!」ぐいっと親指を突き出すルーチェは任せろと……身体強化の魔力を纏いドンっとけり出した地面を爆発させ前傾姿勢になり銀の細剣を構えながら十数匹のビックスパイダーの中へと突っ込んでゆく。


「なっ! イオスっ!!!」


「任せろっ!! <落火>っ」先に明かりとして浮遊していた無数の鬼火から炎の塊が落下し、ルーチェが赤い奴だけに集中できるように援護する。


「<タイタンディチ>っ!!」ボコッと地面へと溝を作りルーチェへと迫ることが出来ないようにするが……。


ルーチェから借りた大剣に経験値が浅いタイタンディチはたいして深い溝が出来ず……逆にピョンと飛び上がり、ルーチェへと空中から襲い掛かる形となってしまった。



「ルーチェっ!!!!!!」


ルーチェへと山なりに飛び込んでいくモンスターにカルマータは思わず名前を叫び、どうにかしたい気持ちが手を前に突き出させるが。



「んっ!!!」カッ!!と爆発的な魔力がルーチェから噴き出すと……銀色の細剣を振り抜きシャンッと耳が痛くなる甲高い音がした後には飛び込んできたビックスパイダーが一瞬で砂となりパラパラと地面に落ちる。そして目をルーチェへと追いかけさせるころには赤いアーティファクトを飲み込んだビックスパイダーへ何度も何度も銀の細剣を突き刺してあっけなく全滅させていた。




「ルーチェ……あんたとんでもない力を持ってるんだね……」ルーチェのちんちくりんな姿からはとても想像が出来ない攻撃力にスピード……強大な魔力を見せていた。


「ルーチェちゃん……俺へのパンチはものすごく手加減していたんだね……」イオスはさっきの腹パンを思い出したのか腹を押え青くなっていた。


「んっ!」と美しく細剣を掲げるルーチェは、そのまま前へとずんずん進んでいく……。


「あっと……イオス、赤い奴からアーティファクトの回収を……また他のモンスターが飲み込んであんな強化された奴が出たらたまらないからね」


「まったく……俺が回収係かよ……。おっおお? 真っ赤な魔石……アーティファクトが融合してるのか?」中には欠片の様な物が取り込まれ魔石が赤く輝いていた。


「やけに奇麗だね……あ……これ……」母さんからもらった短剣の柄……ギガンテ家の紋章になっているが……これって魔石に取り込まれたアーティファクト?

しっかりと見比べることはできないが……私の家はアーティファクトの力を手に入れた事によって興された?。


「どうしたんだ? 確かに奇麗だが……」


イオスはこのアーティファクトの魔石を見たとたんに黙り込んでしまった私に心配の声をかける。


「私の家の事だ……なんでもない……」


「まっいいけどさっ、ルーチェちゃん……だいぶ先にいってるぜ?」


イオスに指摘されて前方を見ると浮遊する鬼火に照らされルーチェがだいぶ先へと進んでいたのだった。








「おわっ、これもアーティファクト?」


地面にはぱっと目を移すだけでアーティファクトらしい小さな欠片が無数に落ちていた。


「見た感じ、わざと細かく破壊したような感じだね……」


カルマータが言う通りどれも割れたようにバラバラになっており形も様々だった。


「んっ!!」パッと粉状に……指でつまみ上げたアーティファクトの欠片を押し潰す……。


「くっ!! 固いね……」どうにか形を崩せたが、ルーチェの様に砂にはならなかった。


「御二人とも……どれだけ力があるんですか……こんなの身体強化の力でもびくともしませんよ?」


「どうやら、こいつを粉々に砕いてまき散らした奴はルーチェと並ぶ強さだって事だね」


入り口でモンスターに襲われた以外は特に何事もなくルーチェを先頭にズンズン歩いていく。



「まいったね、ここまで広いと……私らだけでは……全部見るには骨が折れるよ」


「う~ん、成長途中だから更にダンジョンが広がるしな~」


「んっ!」またルーチェが指をさす方向には、巨大な穴がぽっかりと開いていた……。


「はあ、もしかしてこれが下の階層に行く階段かい? ただの大きな穴だねこりゃ……」


「この真っ暗な……ホントにここ降りるの?」


鬼火で照らされても穴の奥は闇が広がっており……階段が出来るまでは斜めに滑り落ちるしかない巨大な穴だった。


「イオスっ鬼火を先行させて2Fの地面の確認だよ」


幾つもの浮遊する鬼火を巨大な2Fへの穴へと先行させる……が……。


「おい……冗談だろ……真っ赤だぜあいつら……」


鬼火に照らされた先には無数のアーティファクトを飲み込んだモンスターの群れがあふれ返っていた。








「んっ!!!!」シャンッと魔力の剣線が飛び赤い犬型アーティファクトモンスターを切り刻む。


「属性は分からないけどウルフだっ!! こいつらは足が速いから逃げるのは厳しい、ここで迎え撃つよっ!! イオスはぶっ倒れない程度に魔法を撃ち込みなっ!!」


「今度は上を取ってるからなっ!! さっきみたいな無様をさらさないぜっ<残火>っ!!」

イオスの鬼火から落ちた火が地面に落ちると炎が吹き上がり壁となる……。


「あっバカっ!!!」階段が出来上がる予定の斜めに2Fへと下っている穴に炎の壁を持続的に吹上させると、壁に突っ込んだモンスターの焼けこげる匂いと熱気が上昇気流となり上方に陣取っている私たちに襲い掛かる。


「うっ!!! げほっえほっえほっ!!」


「イオスっ直ぐに魔法を解除しなっ!! <ランドエレベイション>!!!」

あまり得意ではない魔法を唱える……この魔法は自分の体を中心に土の地面(・・・・)に干渉し土を盛り上げて壁を作り出す魔法だった。


「はあっはあっ、イオスっ!! 火の魔法が得意だからってっ特性を把握してないって言うのはどういう事だいっ!!!」


「んっ!!!」ルーチェもみょ~んと指で目を吊り上げ怒りを表す……。


「悪いっ!! すぐ風魔法に切り替えるカルマータは壁の魔法を解除してくれっ! <爆風><刃風>」ゴーと不気味な音をさせ爆風が吹き荒れ、パーンパーンと目に見える風の刃が吹き荒れると今度は耳が痛くなる騒音がダンジョンに響き渡る……。


「イ~オ~ス~あんたの魔法は……どれもこれも……」


「あっなんだっ?? 風の音で良く聞こえないっ!!!」


「んっんっ!!!」イオスの前でルーチェは相変わらず目じりを吊り上げ怒りを表していた。






「はっ! だあああああああっ!」イオスの爆風が収まった後も、赤く染まったモンスターたちが階段の斜面をよじ登り押し寄せる。

身体強化を軸に、魔力の消費を抑え出来る限り剣の技量だけでモンスターを上から下へと叩き切る……。前方を見ると相変わらずルーチェは「んっんっんん~~~~~~んっ」と底なしの魔力を使いモンスターたちを軽く切り裂き穴だらけにしている……。

イオスは……逃げるときの為に魔力を温存させ私の後ろで2本のショートソードを振り私が漏らしたモンスターを何とか倒し切っていた。



「マジかよ……」


ようやく赤ウルフを倒し終わった私たちの前には、赤く3つの巨大な頭が付いた犬型のモンスターが姿を現していた……。


「あの頭3つあるけど……元になってるのはCランクのガルムだね……アーティファクトでどれだけ強くなってるか……」あの巨大な頭に口の中には無数の牙が鋭く突き出るように生えており、ハッハッハッと荒い息を吐くごとに覗いてみることが出来ていた。


「俺……腹が痛くなってきた……後は頼んだ……」


「イオス……あんたこんな時でも冗談を……すでにルーチェが突撃したよ。まったくあの子は怖いもの知らずだね……」

はは、足が笑ってるよ……3つ首のガルムに、赤黒い筋肉質の巨大な頭と体に震えが止まらなかった……。



「ん~~~~~んっ!!!」魔力を銀の細剣へと乗せて3つ首へと切りつけ、迫る牙には左右へと大きく避ける。


………………(ダメージが通らない)」魔族化すればすぐだけど……その場合は一度、魔人剣のある王城へと戻らないといけない……でも、頃合い……かも。ちらっと後ろを見るとカルマータとイオスは疲弊しきって此方へと戦闘に加わろうと向かってきているが、体に流れる魔力に力が無いように見える。



「あぶねえっ!!!」イオスの声が響き終わる前にはルーチェに激しい炎が三つ首全ての頭から無茶苦茶に噴き出していた。


「カルリダーナよ全てを飲み込み散らしなさい……<クロス・トルネード>」膨大な魔力を銀の細剣・カルリダーナにつぎ込み……十字に細剣を振るうと竜巻状に空気が渦巻き三つ首が吐き出す炎をすべて飲み込み跳ね返す。


「すげええ……」


「あれだけの炎を……」


炎が激しく渦巻ながら三つ首のガルムが無数の風の刃に切り刻まれ、吐き出した炎はゴウゴウと凄まじい音をさせながら自身を飲み込んでいた。


「カルリダーナよ幻を現実に……すべてを貫け……<ファンタズム・ピアッシング>」魔族化したルーチェがその場で刺し貫く構えを取ると……質量を持った幻が三つ首へと殺到しカルリダーナを赤黒い筋肉の奥深くまで差し込んでは消えるを繰り返す……。


「反撃しても無駄……」いくつかの幻に噛みつき炎を吐き出すが全てが幻のように掻き消えながら深い深い刺し傷を確実に与えていく……。


ギュギャアアアアアア、グワンッ…………。


「これで最後……我が魔力を糧に真の姿を見せなさい……<カルリダーナ>」カルリダーナはルーチェから膨大な魔力をこれでもかと要求した後には……ルーチェの手から離れ頭上に撃ちあがると激しく真っ白に光り輝き、三つ首のガルムは天から差し込むこぼれ日のような幾筋もの光に刺し貫かれると、ビクンと震えた後には力を無くしそのまま砂になって崩れ落ちていた。


「…………ルーチェちゃん。グリナダスの剣聖といい勝負が出来るよ……」


「イオス……そんな事になったらグリナダスは焦土と化すよ……それよりも、モンスターはアイツで最後だろうね……?」


砂の山と化したダンジョンを見渡すがさっきまでの激しい戦闘が嘘のように静まり返って、ダンジョンに響き渡る微かな唸りが聞こえてくるのみであった。





「そこにいるのは…………だれ?」



「やれやれ普通は見つからないんだけど……同族が邪魔するとはねえ……せっかく作り出した駒を砂にしちまって……」


「あなただれ? 私の許可なくこのダンジョンには入るのは禁止している……」


「そうなのかい? ダンジョンに入るのに許可がいるなんて知らなかったんだよ。それに私はあんたに従う気はないけどねえ」


「それでは、あなたをアーティファクトダンジョンへの侵入とアーティファクトを使って危険なモンスターを作り出した疑いで拘束します……」


「やるのかい? 魔族同士がぶつかればこの国は只では済まないよ?」


「母さんっ!!」

カルマータの突然の声に驚く三人……。


「……あんたは……ああ、あの時の……私を追いかけてここに来たのかい?」目を細めカルマータを見る……魔族と化したラメルダ・ギガンテはやはり……。


「ルーチェっ!! 魔人剣をっ……あっ……」そう、魔人剣は管理が厳しく簡単には持ち出せない……。


「王城にある……だけど、あの子じゃ無理……目の前の魔族は私より強い……」


「私としてはこれ以上邪魔をしなければどうこうするつもりはないよ……ただし、二度目は無いそれを肝に銘じて今すぐ背を向けて出ていきな」


ルーチェは首を振り……イオスは足が震えながら首をコクコクと小刻みに振りながらすでに背を向けて歩き出していた……。


「カルマータ……話が出来ただけでも……今は逃がしてくれるのを幸運に思った方がいい……」


「ああ………………(母さんまたね)












「いったかい……はあ、まさか私を追いかけてくるなんてねえ……。センワルス神様……私を使った事を、あの子との生活を奪ったことを恨みますよ……」


『あれ~ひどいな~、君の命はホントならもう消えていたんだよ?私の後始末をする手伝いをする代わりにその後のカルマータを見たいと言うラメルダの願いを叶えたんだけどな~』


「それは、そうですが……なぜ?私はあの子と敵対をしなければ、それに知らない記憶が無くなったふりなんて……」


『ん~それは、こちらの都合だね……あの子たちは必要に迫らせる必要があるからちょっとね……まあ、最後は悪いようにしないからそれだけは信じてっ!じゃっ色々いそがしいからアーティファクトの発掘と新しい神の世界に邪魔な人間に配布をよろしく~じゃあのん~』










「くそっ!! なんで、目の前に母さんがいたのに何もできないなんてっ!!!」


「ありゃあ無理だぜ? 静かにしていたけど……とても歯向かえる気はしなかった。あれで少しでも力を俺たちに向けられていたら死んでたな」


「…………魔族、カルマータのお母さんだけど力の底が見えなかった。私たちは強くなる必要がある」


「ああ、そうだね……ルーチェはともかく私はまだペーペーだよ……」


「大丈夫……カルマータはすぐに強くなれる、私も一緒について行く……このまま、アーティファクトダンジョンで何をやるのか分からないけど今の力では何もすることが出来ない……」


この後、アーティファクトダンジョンの探索は中止、遠くからこの若いダンジョンのモンスターが溢れないか監視するのみとなる。











「なるほどな、そんなことがあったのか……あやつは厳重に管理されてるのが災いして魔剣ルビアンテはルーチェ嬢ちゃんの力をサポートできなかったわけだ」


「んっ!!!」目をぱっちりと開けると……魔剣カーンがカルマータとルーチェの夢に干渉していたようだった……。


「あっんん? ……変な夢の見方をしたと思ったらあんたが干渉したのかい……、そうさ……私たちはアルスロットを利用してもいる……」


「んっ!」その言葉にポカポカと殴って来るルーチェ……。


「悪い……アルスロットの事はもちろん大好きだよ……だけど、ルーチェの力を引き出し魔族化した母を助けるには魔人剣が魔剣カーンを所有するアルスロット・カイラスが……」


「我の力か……主が望むのならいくらでも貸そう、ルーチェ嬢ちゃんの魔族の力もいくらでも使えるだろう……」


「ん~~~~~っ!!」ルーチェは魔剣カーンに抱き着きほおずりして喜びを表していた。


「主が目覚める様だ、ルーチェ嬢ちゃん魔族の力を使う時は我がアルスロットが側にいるときにするのだぞ?」


そうルーチェとカルマータに言うとアルスロットが目覚め……魔剣カーンは逆に眠りについたのだった。









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