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第六十三話 カルマータ

「アルスロットを魔力枯渇から回復するまで王城にて預かる」そう宣言したアスハブ陛下はヒルダにアルが休める客室への案内を指示していた。

私は……お姫様抱っこで魔力枯渇しているアルを抱え上げると頭手足をだら~んと預けプラプラさせながら広い通路と回廊をいくつも通って歩いていく。さすがにゆっくりと十数分も歩くとヴァルとアリアがアルの事が気になりだし始め顔を覗いたりするが……客室に付きベットに寝かしても起きる気配は全くなかった。



疲れたね……それぞれ、用意された椅子に座りシーンと静まり返る……。まっこの子たちの事だ皆、アルの事を考えてるんだろうね……私も最初はカトラと同じように初心者冒険者を育てるただそれだけ……の関係だったんだけどね……。いつの間にか、ふふ……。それに、アルに助けられた好きだと集まった子たちが私をもいつの間にか巻き込んでくれたのもあるんだろうね……ルーチェも、あの子は道半ばで冒険者をあきらめ激しい咳をしながら宿の布団で泣き通しだったね、それを一瞬で救われたんだ……あの時はびっくりしたねえ。


私は、アルと出会う前の事を徐々にだが思い出していく……巨人族の集落が壊滅して守っていたアーティファクト……盗まれたんだろうね……今回、人造魔族ゾンガを倒した後にはアーティファクトの欠片がドロップしていたからね……。


「あれは・・・どんな形をしていた?」

目を閉じた私はさらに巨人の里が壊滅する前まで記憶を遡る……。









私はカルマータ・ギガンテ、故郷はエルランダ教国を更に南下した先にあるトヴァリス帝国が支配する古代王国都市群の遺跡の中にある巨人族の集落だ。

巨人族と言っても、背が高い者でも2m50cmぐらいだろうか?12歳の子供である私の背も1m70cmと急激に成長しだし少し前から狩りへと出るようになっていた。


「母さんっ! 今日も遺跡に冒険に行ってくるよっ!」


「ああ、ついでにモンスターの肉も狩ってきておくれよ」


「うん、遺跡にGランクモンスターがいるから肉は大丈夫だよ」


「あっあとは……」母さんは私にオデコをくっつけて……。


「怪我をするんじゃないよ、初心者は慣れたころに大怪我をするからね」


「わかってるっ! じゃあ、行ってくるねっ!!」


巨人族は早い年齢から、体は人族の大人に近い成長をし長い間若い強靭な体を維持する特性を持っていた、それに合わせて古代王国都市群の遺跡の中を冒険して食料採取などをするのが巨人族の決まりだった。

もちろん私はそんな事は二の次で、大人たちがたまに深く遺跡に潜り宝を持ち帰る姿にあこがれていた。



「今日こそはっ! やあああああっ」私は1ヵ月ほど前から遺跡へと冒険しに行くことを許されて、冒険者で言えば初心者だった。


ロングソードを力任せに振り回し、気合の声はモンスターを警戒緊張させる時間を与えてしまっていた……。


ガッと地面に突き刺さるロングソードの横を、仕留めそこなった牙ブタが飛び上がるようにすり抜けると私はその勢いに足を取られ体制を簡単に崩され地面へと倒れ込んでいた。


「キャッ!!いたた……」倒れ込んだ私はすぐに仕留めそこなった牙ブタを目で確認するが、すでに目の前まで牙を突き出し突進をかけた所だった。


「いやーーーーーーーーっ!!!」私は力任せにロングソードを振った時には魔力が乗り<スラッシュ>が発動して牙ブタを上下に切り裂く。


「はあっはあっ、やったっ!! やったあああああああっ!!!!」初めてできたスキル技のスラッシュに声が張り裂けるほどの声を上げる。


「あっ、肉に……牙だ……」そしてドロップも通常ドロップの肉に貴重な牙が砂のように崩れる牙ブタが残していた。


肉は専用の袋に入れ腰にぴったりと括り付ける……牙は少し小ぶりだがその分破損も見当たらなくて奇麗だった。


「ふふ、母さんにいいプレゼントが出来たっ!!」この牙があれば母さんがとっても美しいブレスレットやペンダントを掘り出してくれるだろう……。


私は覚えたばかりのスキル技<スラッシュ>をその場で何度も練習をして夢中になってると、食事をとるのも忘れていつの間にかお昼を回ってしまっていた。


「はあはあはあ……もう戻らないと……」ホントはもっと遺跡の中まで入っていく予定だったけど……初めてのスキル技の練習で時間を消費し牙ブタの肉と牙のドロップで体は重くなってしまっていた。








「母さーんっ!!」私は集落の入り口で母さんを見つけるが……。


「なんだってっ?! それは本当なのかい?」


「ああ……遺跡が一部崩れて新しい通路が見つかったんだが、指定された時間になっても進んでいった者たちが戻らない。俺は指示通りに集落に助けを呼びに……」


「母さん……どうしたの? 事故?」


「んっ、カルマータ……良かった。今は遺跡は危険な状態にあるかもしれない……一部の遺跡が崩れ新しい通路が出たそうだよ……古代遺跡は何があるか分からない、当分は冒険は禁止だよ」


「そう……それで、今から母さんたちはその遺跡に行っちゃうの?」

私は、ベテランの大人たちが戻ってこないとの話で母さんが行ってしまうんじゃないかと不安になる。


「助けに行くのは、別の遺跡パーティーだよ。私たちは集落の安全の確保さ」


くしゃっと私の頭をなでて不安な私を安心させる母さんはいつもより厳しいような苦いような顔をしていた。


「集落の門を閉じるよっ!! 櫓からの監視は密にっ!!」


そう指示した後には、母さんは私を置いてそれぞれ集落の東西南北にある門へと行ってしまった。


「ちぇっ……母さんにおみあげがあったのにな……」体は大人に近づいていたが子供の私はつい捻くれた言葉を出してしまう……。









「カルマータ起きるんだよっ! 集落から逃げるんだっ!! いま集落には化け物が入り込んでしまっている……男たちが何とか止めてる間にトヴァリスの帝都に逃げるんだっ!!」


ふてくされた私は……家に帰った後にはベットでいつの間にか眠りこんでいたようだ。


「母さん……逃げるって? 化け物ってなに? 崩れた遺跡の奥からSランクのモンスターでも出たの?」


「ランクは分からない……あれはたぶん神の兵士……魔族だよ……」


「魔族? 魔人族じゃなくて?」私は魔族と言う母さんの顔には恐怖が張り付いているように見えて……早く冒険装備をしなさいと言われてもただただプルプルと震えるばかりだった。







家を出るとすでに門のあたりには火が出ていた……赤く染まる空に、巨人族の集落の終わりを映し出されているような恐怖がこみあげる。


「母さん……トヴァリスに逃げ込めばいいの?」


「そうだ、巨人族は古代都市群の遺跡の管理を任されている母さんの家はねギガンテの家名を持つ帝国の大貴族なんだよ」


「私の家が?帝国の大貴族?」


「いいかい? よく聞くんだ母さんは集落の者たちを最後まで帝都へと避難させなきゃいけない。お前は先頭に立って北門から帝都へと皆を連れて避難するんだ。そして、この紋章を……帝都で大貴族を証明するギガンテ家の紋章だよこれを見せて巨人族の保護の要請と、皇帝陛下への巨人族の集落が遺跡から目覚めた魔族に襲撃されていることを伝えるんだよ?」


私は母さんから紋章の入った短剣を渡される。

「うっうん……でも私みたいな子供で……」


「はは、もう見た目は大人だよっ! 巨人族の女がそんな事でビビッてどうするんだいっ!! それに……カルマータあんたは集落の中でも一番の美女だって男どもが騒いでるんだ知らなかったかい? 帝都の門番なんかカルマータを見たら鼻の下を伸ばして何でもいう事を聞くだろうよっ!!」


母さんの精いっぱいの励ましに、美女?と聞き返しながらすぐに分かれの時が来てしまう。


「カルマータ……しっかりやるんだよ……」


それが、最後に話した……母さん(・・・)との言葉になった……。







目を開けると……ヴァルはアルが寝ている巨大なベットの上で丸まり、その他は絨毯の上に座り上体をベットに突っ伏し寝てしまっていた……。


私はそっとギガンテ家の紋章が入った短剣を取り出すと……柄の紋章をそっと撫でる……母さん……。






あの後私は……。





「私は巨人族のカルマータ・ギガンテ。巨人の里が遺跡から出てきた魔族に襲われているっ!! 避難してくる巨人族の保護と、皇帝陛下へすぐに魔族が出たことを・・・」

あっそうだった……短剣の紋章を見せるのを忘れてたのを慌てて取り出し柄の部分を門番の兵士へと見せる。


「へっ?……あっ! これは失礼いたしましたっ!!」母さんから渡された短剣の紋章は効果抜群で、私をニヤニヤした視線で見ていた兵士は顔面を蒼白にさせながら直立不動のピシッとした姿勢へと変わっていた。


「私はギガンテ家の者です……母さん……母より、この紋章を託され今現在、巨人族の集落が魔族に襲撃されていることを皇帝陛下に。そしてトヴァリスの帝都へ避難してくる巨人族の者たちの保護をお願いしたい」


「はっ!! すぐに皇帝陛下への緊急にご連絡をし、巨人族の皆さまは避難マニュアルに従い帝都中央、王城前の広場にて保護をいたします。すぐに兵士を増員し広場への案内を始めます、それでは私は隊長へ報告いたしますので失礼いたします」


二人いるうちの門番のうち話しかけたほうが隊長へと報告に離れ、もう一人はどうやらとりあえず帝都への入場チェックをしてくれ始めた……。


母さん、この後はどうしたらいいの?


正直このまま門に残り、この後も続くであろう避難してくる巨人族の列をずっと見守るしかなかった。




時間がたつごとに避難してくる巨人族が減って来る……ぽつぽつと数えることが出来るほどになってくると中には大怪我を負っている者も目立ち始める……。

「あっ……腕がっ!! おじさんっ!!! 母さんは?」

その中に、私が知っている集落の大人の一人が腕を血だらけにしてこちらへと歩いてくるのが見えた。


「あっああ……カルマータちゃん……ラメルダ様は……」


蒼白な顔をさらに青くしそう答える言葉に……私はただただその場で信じられないと遠くで空を真っ赤にし燃える集落へと全力で駆けていた。









「はあはあはあ……」もう、あの後には巨人族の避難者は一人も集落までの道で会うことは無かった……。


「母さん……」私はまだ魔族がいるであろう集落を物陰に隠れながら少しずつ進む……。


歩くうちに見える家々はほとんどが燃えながら崩れ落ち何かが通ったような大きな穴と、地面は大きくえぐれて道も無くなっていた……そう巨人族の集落は破壊しつくされ壊滅していた。


「あっあああ……私の家……」母さんと笑いながら暮らした家も破壊され燃えていた。


足に力が入らない……涙があふれ出し前も良く見えないだけど鳴き声は出なかった……呆けたように燃え続ける家を見ながらさらにフラフラと歩き続ける……。


母さん……、倒れている人を見つけると一人ずつ一人ずつしゃがみ込み顔を確認する……中には仲の良かった幼馴染がいたし、とても正視できない状態の死体が何十人も転がっていた。


「違う……、ごめんね……」私は母さんを探すためさまようように事切れて無残な姿になっている皆を見ていくが母さんは見つからなかった。


「母さんはどこに……」数十体と死体を確認し終わるころには涙は止まり、母さんが見つからないことにもしかしたらどこか逃げることが出来ているかもしれないと思い始め心が落ち着き始める。


そうだ、戦闘の後を……私は破壊の力が放たれた中心点を探す……それを見つけて辿れば魔族が向かった方向が分かるはずだった。


あった……。


魔族が進みながら放ったであろう魔法?の後が地面を砕きながら幾重にも伸びている場所を見つける……こっちの方向に伸びてる……。

ひときわ燃え盛る……方を見る……激しく燃える炎の向こうに……母さん?


まだ戦っているのか、金属がぶつかるような音がゴウゴウと噴き出して燃える炎の音と一緒に何度も聞こえてくる……。


「母さん……無事だったんだ……」戦いは続いており私は邪魔をしないように瓦礫の陰からそっと見守る……。


すごい、母さんがこんなに強かったなんて。大剣が何度も魔族に当たり、母さんが魔族を押し込んでいるようにも見えるが。


あっ、母さんの大剣が限界を超えたのか半ばからへし折れる……そして私は見たくない結末を声を張り裂けんばかりに出して否定して無かったことにしたかった。


「あっあああっ……うそっうそだああああああ、ああああああああああああああああ」


母さんは私の目の前で胸を貫かれぐったりした後は、人型の人形の様だった魔族に体を乗っ取られ……大声で泣き叫ぶ私をちらりと見た時には知性のある瞳が私を見据え……羽の様な物を広げどこかへ飛び去ってしまっていた。








「カルマータどうしたんだ~?」


「あっ、んっんん参ったね……」どうやら目をつぶりながらあの時の事を思い出し自分も気が付かず涙があふれた所を……丁度目が覚めたヴァルに見られてしまったようだ。



ヴァルはベットから起き上がってトコトコと椅子に座る私の前に来るとドーンと膝の上に飛び乗り私の胸に顔をうずめギュッと抱き着いてくる。


「なんだい? 心配してくれるのかい?」


「とっても悲しそうだったのじゃ~ヴァルがギュッとしてあげるのじゃ~」


とろ~んとした声でそう言うとヴァルはそのままクウクウと寝てしまう……。


うん、暖かいね……母さんはあの時……死んでしまったのだろうか?あの後の私は全てのモンスターを憎み……そして……。





<<身体強化>>体が赤く(・・)輝く……母さんが飛び去った方へ……行かなきゃ……。


「あああああああああ、母さんをっうわあああああああああああああああっ!!!」


目の前に出てくるものは全て紋章の短剣で切り裂く、<<スラッシュ>><<スラッシュ>><<スラッシュ>><<スラッシュ>><<スラッシュ>>幾度も向かってくるGランクモンスターは一刀ですべて切り裂く。


そして目の前には、古代遺跡群の中では一番高ランクのルーインスパイダーが現れるが……足を潰す……<<ラインスラッシュ>>赤く輝くラインスラッシュはいとも簡単に長い足を細切れに切り刻みながら飛び上がる。


「まだ……死なない……」


「ああああああああああああああっ!!!!!!! <<タイタンディチ>>っ!!!!!!!!!!」暴走する魔力が降りぬいた紋章の短剣から叩きつけられルーインスパイダーを上からグチャッと押し潰していた。


「母さん……母さん……」


この後も、ルーインスパイダーの群れが行く手をさえぎり……。


「あっああ……見えない……母さん……が……見えない……どけ……どけえええええええええええええっ!!!!!!」前方から迫って来るルーインスパイダーの群れに……。


「<<<<ギガンテ>>>>」身体強化の限界を超えた体への魔力供給に耐えられる魔力で出来た繊維が筋肉となって体に纏わり現れる。


赤く輝く鎧、魔力の筋肉を纏った私は軽く手を振りぬく……ドンッと空気が叩きつけられ衝撃波が前方のルーインスパイダーを襲い頑丈な壁にぶつかったようにその場で足を完全に止める……。


「母さんが見えない……」


更に、短剣を持った左手を……<<スラッシュ>>赤い魔力の剣線が空間を切り裂き目に見える範囲をすべて上下に分断、ルーインスパイダーもろとも強大な力の前に古代遺跡群も巻き込まれ……はるか先まで空を見渡すことが出来るようになっていた……。


「ああああああああああああああっっ!!!!!」


いないいないいないいないいないっ!!!! 無茶苦茶にスラッシュを地面へと叩きつけ駄々っ子のように暴れ続け……。


日が昇るころにトヴァリス帝都軍が私を見つけるまで、破壊されつくした古代遺跡群とモンスターの砂の山の中で私は立ち尽くしていたのだった。




私はどう戻ったのか……母さんが飛び去り見失った後からの記憶がすっぽりと抜け落ち、後から聞いた話では魂の抜けた人形の様だったと……。




「私は冒険者となります……そして母さんを、いつか……」私は皇帝陛下に謁見の許しを頂き巨人族の帝都での居住と……大貴族の名を返し冒険者となる事を願い出ていた。


「カルマータ・ギガンテよ、私はあなたに足かせは付けませんよ。そして・・・あなたの母は我がトヴァリス帝国に今まで大きな貢献をしいくつものアーティファクトを見つけ出し封印してきました。そして私は親友でもあったラメルダ・ギガンテを取り戻す旅をお前に与えます。巨人族の帝都での居住は全ての帝都民が歓迎する事でしょう……安心して旅立ちなさい」


「ありがとうございます……、エルティナ・タティス・トヴァリス皇帝陛下……」


巨人族は帝都の民として新しい生活が始まり……それを確認した後には帝都の冒険者ギルドに冒険者登録後、母さんを探す旅へと姿を消した方向……南西へ、魔人族の国アルタナシア魔国へと私は旅立っていた。









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