第五十七話 収束
「アル君・・・遅いね・・・」「んっ・・・」
「避難している教国民たちに説明が大変そうだしね・・・」
「あっ人がきましたわっ!」
カトリナの声に目を向けると、ガヤガヤと騒がしく大通りを埋め尽くすほどに人がこちらへ大聖堂の方へと向かってきていた。
「これで一安心かな?あとはアルとヴァルが・・・」
「みんな~ただいまなのじゃ~~~~」
上からヴァルの元気な声と、アル君がぶら~んと抱えられ降りてきていた。
「時間がかかったね?説明が上手くできなかったのかい?」
うぐ・・・いきなりカルマータさんに突っ込まれるが、出来るだけ早くスマートに伝えないと・・・うじうじすると反対につらくなると思った俺は・・・。
「エへラン教皇陛下と教国民の皆様にはすぐに魔族ガンザギムルを倒したことは報告できました。その後にアリアを俺の所に嫁にと言う話で遅くなりました」
「アリアはわらわの妹になるのじゃ~いつも一緒なのじゃ~」
「は~アル・・・エへラン教皇陛下に無理やりって事じゃないだろうね?」
カルマータさんの冷めた視線に、俺は冷や汗を垂らす・・・うう、すでに地獄だよ・・・。
「いえ・・・エルランダ教国の古いしきたりの一つに、どうやら夫婦となるものがお互いに魔法を掛けあうと言う儀式があったみたいで・・・いや・・・俺がアリアに嫁に来て欲しいと最終的にはお願いをしました」
「アル様・・・儀式はただのきっかけですわ。アリアを大切にされたいと思うのなら私は何も言いませんわ」
「そうねっアル君っアリアちゃんのこと大事なら構わないよっ!だけど、周りから言われてなら反対っ!」
「んっんっ!!」
「うん、それは無いよ。確かにエへラン教皇陛下には焚き付けはされたけど・・・きっかけであってアリアちゃんを嫁にするにのを決めたのは俺だから」
「それでアル君っ・・・アリアちゃんは?」
この場に帰ってきたのは俺とヴァル様にカトラお姉さまは、アリアちゃんがいないと首をキョロキョロさせる。
「わらわは一人ずつしか飛んで運べないのじゃ~、アリアは今から迎えに行くのじゃ~」
「あっそうだったのねっ!!迎えに行くのを止めてしまっちゃったみたいでごめんっ!!アリアちゃんを直ぐに迎えに行ってあげて」
「うんっ行ってくるのじゃ~」ばびゅーんと飛び上がったヴァル様はとんでもないスピードでアリアちゃんをぶら~んとぶら下げて帰って来た。
「あっあのっ!!私もアルお兄ちゃんのお嫁さんに・・・皆さんこれからよろしくお願いしますっ!!」
俺が0歳だという事を知らないアリアちゃんの突然の挨拶に皆から訂正の嵐が起こり、アリアちゃんは俺を見て混乱をしてしまっていた。
「えっえっ?アルお兄ちゃんが・・・0歳?でも私よりも年上に見えます・・・」
「あ~、まあ見た目は8歳ぐらいだからねえ。この後、アルを生んだ人に会えばウソじゃないことは証明できるかね?」
「いえっ嘘なんて・・・アルお兄ちゃんって呼んでたので今更・・・」
「あらっ、でもアル君が体の年齢は8歳なのは確かだしアリアちゃん呼び方は変えなくてもいいと思うっ」
「そうですわね、アリア様これからも一緒にアル様を支えていきましょう」
「んっ!!!」ルーチェ様はぺったんこの胸同士と言わんばかりに並んで胸を張りあう・・・ちなみに、胸がふくよかで大人の魅力があふれ出しているのはカルマータさんだけだ・・・。
「そうだ、アリアちゃんの親は?挨拶をしないと・・・」
「アルお兄ちゃん、私は孤児なんです親は居ません・・・。なのでお兄ちゃんたちが私の初めての家族なんです・・・」
「そっか・・・これから結婚式はまだだけど夫婦・・・家族になるね・・・アリアちゃんこれからずっとよろしくね」
「うん?アルお兄ちゃんっ!!でも結婚式ってなに?」
「あれ?結婚式・・・」この異世界じゃ結婚式って言わないのか・・・。
「アル君っもしかして、神婚式のことかな?グリナダス王国ではオーチャコ神の前で伴侶の誓いの報告をするのだけど・・・」
「そっそう、神婚式のことだよっ!まだ、もう少し先だと思うけど皆でオーチャコ神の前で伴侶の誓いをしよう」
「そうだね、アルがもうちょっと成長したらだね」「んっ!」「伴侶の誓いなのじゃ~」「たのしみですわ~」
皆それぞれ神婚式の光景を思い描いているようで少しの間、ポヤ~とした空気が漂っていた。
「ガンザギムルはどうしましょう・・・カトラお姉さまの〇魔法もかけたので、あとは目が覚めるだけで元気にはなると思いますが・・・」
マズったな・・・ガンザギムルをどうするかと特にエへラン教皇陛下と話していなかった・・・。
「そうだね、すぐに聖教徒騎士軍が来ると思うがね・・・」
すでに、大広場は俺たちを囲んで教国民の人たちが口々にお礼と魔族ガンザギムルが倒された確認をしに順番に見ては、お祭り騒ぎになっていた。
「どうやら、はじめるようだね・・・」カルマータさんの言葉に振り向くと・・・エへラン教皇陛下が聖衣を着飾り大聖堂の大広場を見渡すことのできるバルコニーへと姿を現していた。
「エルランダ教国民よ今日、ガンザギムルにより魔族が生まれかつてない脅威に皆震えた。しかし我らは見放されてはいなかったっ!!それは神より遣わされた英雄がこの場にいたからだ。その者はグリナダス王国民でありながら飢饉で苦しむエルランダ教国民に笑顔になるほどの食べ物を与え、正しき神像の姿と神の魔法を教国民に伝え、ガンザギムルという魔族の脅威から我がエルランダ教国を救ってくれたっ!!!」
その言葉の後、大聖堂から出てきた聖教徒騎士軍が俺たちが囲って警戒していたガンザギムルを大聖堂地下牢へと連れていく。
「アルスロット殿、こちらへ。皆さまはアルスロット殿の横に並んで前に出てきて欲しい」
エへラン教皇陛下から指示された通りに並ぶと・・・バルコニーから見た大広場には、いや大通りにも・・・ぎっしりとエルランダ教国民が一斉にこちらを凝視しているのが見えていた。
「この者が先ほど我々を安全な場所へ避難させ魔族を倒した英雄アルスロット・カイラス殿とそれを助けた冒険者パーティー・セラフィムだっ!!」
その紹介だけで、大広場に集まる群衆からは地響きのような歓声が上がる。そして、食料に避難と魔族の討伐と成し遂げた偉業にエルランダ教国の英雄として俺は紹介されてしまっていた・・・。
「アル君っすごいねっ!!みんなアルスロットってっ!!!」
「ふふ、カトラ様当然ですわっ魔族を倒したんですものっ!!」
「んっ!!!」「すごいのじゃ~!!」「うん、アルお兄ちゃんはすごいっ!!」
「そうだね、アルがいなかったら・・・私達だけではどうにもならなかったんだろうね」
魔人剣のおかげで魔族ガンザギムルは無力化できたようなものだし・・・ニュースサイトの記事通りの能力の魔族・・・魔人剣無しでも俺がいたら倒せたのか?と疑問でしかなかった。
「なんだい、アルそんな顔をしてまさか魔人剣のおかげで倒せたとでも思っているのかい?」
うぐっカルマータさんの見透かすような洞察力の前には俺の心の中は筒抜けだった・・・。
「そうですね・・・正直言うと魔人剣の力・・・・・・」
「はははっ、分かったようだね。アルその力はお前だけのものだ、ルーチェでも私でもないよ。それにその魔人剣は魔族の国を捨ててグリナダス王国で眠っていたんだ、それも何十年もあんたに会うためにねっ!!」
名も知らぬ魔人剣は俺だけの魔剣・・・カルマータさんに言われたことは自分の運命と手に入れた力を再認識させてくれていた。
この後、英雄誕生の宣言に乗じて神像の神がオーチャコ神だという事が発表される、そして大聖堂の神像はオーチャコ神として今後は祈りが捧げられることとなり。虚栄の門も設置されたままになり緊急時の避難場所と商業と冒険での利用をして行くことが決まり、商業ギルドが虚栄の門の利用申請場所となった。
「アルスロット殿、本当にありがとう・・・」
「いえ、これは俺の我がままでもあったので。いまこうして何事もなくエルランダの人々が笑顔でいられるのはエへラン教皇陛下の決断のおかげだと思います」
「うむ、そうか・・・アルスロット殿たちは英雄だいつでもエルランダ教国に来てくれ、それに我が教国民のアリアを嫁に迎えてくれるようだしな」
俺の手をギュッと握りしめるエへラン教皇陛下からは、言葉以上の思いが手から伝わってきていた。
「今後も、商業ギルドのザイムが虚栄の門を使いグリナダス王国とエルランダ教国を行き来して安定した食料などの供給が出来るようになります。そして虚栄の門は商業ギルドが管理し冒険者も申請すると使えますので冒険者の行き来が出来るようになりGランク食材のクエストを中心としたモンスターの討伐が活発になるはずです」
「ああ、素晴らしいなっ!!これからも飢饉は起こるかもしれないと思っていた所だったんだ。ほんとうに・・・ありがとう」
「アル君~もう飢饉は起こらないよ~神像はコアを無くしシステムは機能を完全に停止したからね~。変に魔力を吸い取って飢饉や体の具合が悪くする人もいなくなるはずだよ~」
「センワルス様・・・エルランダの今までの不自然は全て神像のシステムが壊れていたせいなんですね?」
「そうなんだよ~いや~アル君のおかげだねっ!!じゃっそういう事だから~じゃあのん~」
「アルスロット殿・・・何度もだか今・・・」
「えーと、神様が言うにはひどい飢饉と体の調子が悪くなる病気は今後起こらないそうですよ」
今回、エルランダ教国に来るに至った問題は全て解決したことをエへラン教皇陛下に伝える。
「原因不明の病気も・・・神像が原因だったとは、アルスロット殿が来ていなかったら我がエルランダ教国は本当に終わりを告げていたんだろうな」
この後は、エへラン教皇陛下からアリアが大司祭の聖衣を貰い。といっても白の聖衣の上に色で階位が表される小さなマントを下賜されていた。
「アリアよ・・・基礎魔法を広める役を見事に成し遂げた、その功績により大司祭に任ずる。今後はエルランダ教国を代表して英雄アルスロットを助けるための活動をせよ」
エへラン教皇陛下はアリアの思いとは別に俺と一緒に行動させる為にエルランダ教国の大司祭としての英雄の助けをせよとのお言葉を頂き、グリナダスの俺の家へと帰宅の途へと就いた。




