第五十四話 ガンザギムル
「ガンザギムル様ありがとうございます」
今日の私が担当する奉仕活動は・・・神像へお祈りに来る教国民たちの案内と神像へのお祈りの補助だ、と言っても神像様の横に付き教国民が神像様にする祈りのマナーをいちいち監視するという物だった・・・。
こんな奉仕活動でも下っ端の助祭が負担する者の中ではマシな奉仕の一つだった・・・。
「ガンザギムルっ!!ちっお前の名前は呼びにくいなっガンザっ早く便所の掃除と馬屋の掃除を終わらせろっ!!その後は、俺達の聖衣の洗濯だっ奇麗に洗って真っ白にするんだぞっ!!」
神像へのお祈りは毎日朝晩欠かさず行うが・・・魔法はまだ授かっていない、だが何故か聖職者としての助祭の印を貰い、私は毎日奴隷の様に忙しく奉仕活動に忙しく過ごしていた・・・。そう、奉仕活動で神像様のお体を御拭きするという運命の日を迎えるまでは・・・。
「ガンザっ!!!今日は忙しいお前だけしか暇な奴はいない神像様をしっかりときれいに磨いて差し上げるんだぞっ!!」
何故かいつも怒りまくる一つ上の司祭の男は、ちっと嫌な舌打ちをしながら私の前から直ぐに姿を消していた。
「私が何をしたんだ・・・」私は言われたとおりに丁寧にやさしく神像様を拭き・・・なんだ?全体的にうっすらと光るだけの神像様は今にも消えそうだったが裏に回り汚れがこびり付き真っ黒だった部分を拭き取ると・・・私の中に何かが入り込みホワホワした後には、手の甲には枢機卿を表す印が浮き出ていた・・・。
「ははは・・・私は選ばれたのか・・・そうだ私は神像様に神に選ばれたのだっ!!」
それからの私は、最低から最高の一歩手前の枢機卿の地位を手に入れる事となった・・・。だが・・・「ゼウ教皇の後継者が現れたぞっ!!」
そんな、頂点まであと一歩という時にエへランという青年が次期教皇として神像様より教皇の御印を頂いていた・・・。
「あんな若者が・・・」確かあのじぶんの私は・・・必死に神像様に祈り、そして助祭の御印を頂くまで朝から晩まで畑仕事を手伝っていた。
「すごいぞっ!!次期教皇のエへラン様は神像様より魔法をすでに授かったそうだぞっ!!!」大声でしゃべり散らす下級の者たちが更に私のみじめな記憶を引き出す・・・。
魔法・・・神の御業をこの世に体現する、それを見た物は敬い憧れ崇拝する・・・だが、枢機卿となった私でさえ魔法は神像様よりいまだに授かってはいない・・・私は枢機卿だ・・・下級の者たちとは違うっ!!
だが、私の声にならない心の声は神像様に届くことは無かった・・・。
ゼウ教皇陛下がお亡くなりになった・・・神の御許へと旅立っていったのだ・・・。
「私がゼウ教皇陛下の身辺整理をする・・・」皆の者たちが沈み込む中、私がゼウ教皇陛下の私物などを整理する・・・。
「んっ?鍵・・・かぎ・・・一か所鍵のある場所が大聖堂にあったな・・・」
「ガンザギムル枢機卿っ!!いらっしゃいませんかっ!?」私はびっくりし咄嗟にゼウ教皇陛下の私物であろう鍵を自分のポケットへと仕舞う・・・。
「どうした?私はまだ片付けの作業が終わっていないのだが?」
「申し訳ございません・・・エへラン教皇陛下からこの部屋の物は一切触るなとの通達が・・・」
「そうか・・・まだまだ片付けないといけないが、エへラン教皇陛下の御言葉なら仕方がない・・・」
私は咄嗟にポケットに入れてしまっていた鍵を聖衣の上から確かめる・・・この鍵を持ったのはエへラン教皇陛下が通達する前だ・・・関係ない・・・。
長年最下級の助祭を経験してきた私は、大聖堂の隅々まで床も天井も壁も扉もすべてを知り尽くすしているがどうしても一か所だけ入れない場所があった・・・。
あの、鍵穴だ・・・隠された秘密の場所に違いない、鍵はゼウ教皇陛下やもっと前の教皇が受け継いで持っていたかもしれないが、鍵穴の汚れ具合と・・・あの場所ではもう忘れ去られているはずだ・・・そして私が忘れ去られた秘密を解き明かすのだ・・・。
ゼウ教皇陛下は無事に神の御許へと旅立っていった・・・素晴らしい生涯だったに違いない教皇という最高の権力者・・・。
私は、例の忘れ去られた鍵穴の前まで来ていた・・・ここだ、鍵穴は巧妙に隠され・・・丁寧な掃除を日々経験しなけらば目にも入らない場所にあった・・・。
その場所は、扉があるような大きさの凹みがあるが押しても無理やり横にずらそうとしても動くことは無かった・・・が数十年と掃除をしつくした時についに鍵穴を見つけることが出来ていた・・・が、鍵が無ければ開くことは無かった。
そして、今日・・・鍵を差し込み長年の秘密だった扉が開き、数百年と淀んでいたであろう空気が急激に入れ替わる・・・。
暗い・・・私は一切魔法が使うことが出来ない、近くにかけてあるランプを手に取り前方を照らしながら歩く・・・下っている?それはちょうど神像の下にもぐるように秘密の部屋に通路が続いていたのだった。
数十メートル進んだ先には大きな部屋が広がっていた・・・場所的には神像の下だ。長年大聖堂を掃除してきた私には目をつぶってでも大聖堂内を歩くことが出来ていたのだ・・・歩く歩数から今は大聖堂のどのあたりなのかは手に取るように分かった。
なんだ?あれは・・・ちょうど神像の下と思われる天井には突き出した光る棘がいくつも突き出していた・・・。
そして、テーブルの上には・・・文字が掘られている、なんだ?この文字は・・・全く読むことはできなかったが・・・絵が描かれており。
町の絵に神像が真ん中に大きなものが1体・・・そしてその周りに小さめの物が6体・・・エルランダ教国?を表しているのか?
神像の下には・・・おそらく魔法陣?とよばれる魔法と陣が記された物が描かれていた・・・。何なんだ?神像とは・・・よく見るとそれぞれに水滴・・・水か?後は風のようなマークに火のマーク・・・や、その他にもそれぞれの場所にマークが描かれていた・・・が中心には黄色の何故か胸を締め付けるような見てると不安にさせるそんなマークがあった。
私は夢中になった・・・どんなに枢機卿の奉仕活動で疲れ果てても毎日のように例の鍵を使い秘密の部屋へ入り浸っていたのだ。
素晴らしい・・・この部屋は歴代の教皇だけの秘密の部屋だったに違いない・・・ここには神像の秘密がすべて詰まっているはずだ・・・。私がすべて手に入れて見せるぞ・・・地位も名誉も、魔法と言う力もっ!!!
ふははは、どの代かは分からないがこの秘密の部屋の口伝を途切れさせてくれた教皇には感謝する・・・私のエルランダがここから始まるのだっ!!!
「ガンザギムル様・・・ここはいったい・・・」私は手駒になる大司祭たちを秘密の部屋へと神像に選ばれた者しか入ることが出来ない秘密の部屋だと気分を高揚させ私の言いなりになりやすいように言葉を掛ける・・・。
「どうだ、素晴らしいだろう。この秘密の部屋は神像様より選ばれた者しか入ることは出来ぬ、そしてお前たちも私の様に選ばれたのだよ」威厳たっぷりに神像に選ばれたと言葉を添えるだけでこやつらは私の前に膝をつき首を垂れる、はははっ!!!私は神像様に認められたのだ。そしてエルランダ教国のトップになる資格があるのだっ!!!
「それにしても、この天井の突起物と・・・机に掘られたエルランダ教国を表していると思われる魔法陣は何でしょうか?見ているだけで・・・吸い込まれるような心臓が早鐘の様に打ち付けますな・・・」
「ポルタペルよこれはそれぞれ神のユニーク魔法が収められているのだよ、見てみよ・・・魔法陣に水や風に火などの模様があるだろう、これはそれぞれ魔法の効果を表してるものに違いないぞ」
私は、毎日のように秘密の部屋に通い自分なりにこの机に描かれた魔法陣を分析をしていた。
「それでは・・・これを取り込めは私たちは神の魔法を授かるのでは・・・ユニーク魔法を・・・」
ポルタペルは火のマークが入った小さな神像をいとおしそうに優しくなでていた・・・。
「勝手に触るでないっ!!!」次の瞬間には天井にあった突起物が落下し・・・ポルタペルの胸へと深く突き刺さっていたのだった・・・。
「あっああああああああ!」ポルタペルは天を仰ぎ膝をつくと、手のひらから黒い炎が上がり聖衣を燃やし尽くす・・・。
私はその光景をただただ見守るだけしかできなかった・・・。
「ポルタペル・・・なんだ?」すでに聖衣は燃やし尽くされポルタペルの醜いでっぷりとした体が私の目を汚すが・・・いまだに体中に黒い炎がまとわりつき・・・。
「ガンザギムル様・・・私は神像様よりユニーク魔法を授かりましたっ!!!!あははははははっ素晴らしいです体の奥底から炎が沸き上がってきますそして、特別な呪文もっ!!!!!!」
なんだと・・・死んだと思ったポルタペルは醜い姿をさらしつつも神のユニーク魔法を授かっていたのだった。
「さあ、ガンザギムル様もっ!!!神像様より神よりユニーク魔法を授かりましょうっ!!!」
「ああ・・・私に相応しい、この中心にそびえる神像の欠片を我が体に受け入れてみせるぞ・・・」
中心のひときわ大きな神像のミニチュアをポルタペルがやったように撫でると・・・うっ!!!私の体は宙に浮き胸のあたりが神像の真下に来ると・・・ゆっくりと一番大きな突起が心臓に向かって降りてきたのだった・・・。
「あっぐううううああああああああああああああっ」私の心臓は一度破裂し神像の欠片が代わりに私の心臓となり再構築される・・・刹那の出来事だが、痛みは衝撃の様に伝播し脳に焼き付けると代わりの心臓が出来上がった後も幻覚の痛みが私を蝕んでいた・・・。
「あががが・・・はあっああああああっ・・・・」私はこの苦しみ、神の試練を・・・乗り越えて見せる・・・。
「はははははっ凄いぞっあがっはははっ」脳に刻まれた痛みが続く中、私の奥底からは今までに経験したことの無いような力が魔法が沸き上がってきたのだった。




