第五十二話 なくしたもの
「アル君っ~起きてる~?」
俺の部屋からカトラお姉さまの声が聞こえてくる・・・。
「カトラお姉さまっ!!台所です」
ライラお母さまの美味しい晩御飯を食べていると、カトラお姉さまが俺の部屋にマジックドアで訪ねてきてくれていた。
「良かったっ!!アル君すっかり元気だね顔もしっかり寝た~って顔してるわっ」俺のすっきりとした顔を見たカトラお姉さまはふふっと笑いながら俺のむかえに座るとニコニコと何が嬉しいのか俺のご飯を食べる姿をじっと見ていた。
「それでね~すごいのよっ!マリアの基礎魔法の上達がすごくって・・・それにマヨネーズソースがプロの味っていうのかしら。とってもすごいの、味の種類も私が知らないような味がいっぱいあったわっ、マリアは私に食べさせたのは未だ完成してない試作のマヨネーズソースだって言ってたけどね~。とっても美味しかったわ~思い出したらヨダレがいっぱい出てきちゃった・・・」
カトラお姉さまも孤児院でマリアが作った色々なマヨネーズソースで美味しい晩御飯を食べてきていた。それにしても、すごいな何種類もマヨネーズソースを開発しているのか・・・個人的にはタルタルソースなんか欲しいな~そういえば魚料理がこの世界は無いのか?
「んっ?どうしたのアルちゃん、なにか考え事してたでしょう?」
ママには隠せないわよっと、俺の顔を見たライラお母さまから突っ込まれる。
「えーと、大したことではないんです。魚の料理が食べたことが無いな~と思って・・・」
「魚・・・ん~そうねえ、ママも食べたいけど・・・ダンジョン次第かしらねえ。今は魚が取れるダンジョンが少なくてグリナダスではとても高価な食べ物なのよ。確かエルランダの更に東の国のダンジョンでは魚ばっかり取れるから日常的に食べれるほど安いって聞いたことがあるわ」
ダンジョンでとれる魚って・・・コケッコ鶏の魚版かな・・・、そういえば牛に変わるモンスターっているのか?
この世界はモンスターだよりな所があって、食材が偏りがちなのが残念だが何時かは虚栄の門で虚栄の都市につなげて色々な食材を日常的に購入できるようにしたいな・・・思わぬ目標が出来た俺に何々~とカトラお姉さまが絡みだし今後の冒険で食材探しもと提案して楽しく食事を終えた。
「ザイムさん、お疲れ様です。うまく食料の配布などできてますか?」
「ああ、アルスロット殿もちろんです。屋台でお腹いっぱいになり、その流れで体の清浄と1週間分の食糧の配布をもう完了し終えました。水の方も後でまた補充してくれれば大丈夫ですよ」
あの後も商業ギルドが中心となり、全ての教国民への食糧の配布を無事に終わらせていた。
「今日はザイムさんにこれからもセラフィムと商業的な取引をしていただきたく思っています。そして、俺達がなぜ大量の食糧を短時間で持ってこられたかを話しますね」
「ええ、それは願ってもない事です。エルランダ教国は建国された場所が悪く、なぜ?と思われる土地に教国が出来上がりました。このような飢饉も大昔に何度かあったようなので正直何故この教国が生き残ってるのは分かりません。これも、神のなされる気まぐれなのでしょうか・・・もし今回の様に大量の食糧を持ってこれるなら私は神ではなくセラフィムのアルスロット殿に残りの商人人生を捧げますよ・・・」
「ん~、そこまで言ってくれるのなら俺はザイムさんに出会えたことに神に感謝しないといけませんね」
よしっ・・・この人なら商業関係の事は全部任せられる、この後ザイムはアルスロット達が構築した虚栄の門で繋がれた国と都市に多種多様で安定した食料を供給する中心人物となる。
「アルスロット殿・・・何度も行き来してみましたが信じられません・・・。エルヘイブとの距離は歩きで30日以上はかかる遥か彼方です、それが虚栄の都市を経由してたったの数歩なんて・・・。これなら街中での移動程度の荷馬車のコストで食料などを大量輸送できますし飢饉でも簡単に他国から食料を買い付けできます」
ザイムさんは一瞬で国と都市間を移動できる虚栄の門に、興奮が抑えられなくて門を行ったり来たりを繰り返しまくっていた。
「今の所はヴァンプ族とセラフィムと一部の選ばれた人に今回ザイムさんと、この門は行き来できます」
「なるほど・・・この門は簡単に通れるようにしてはマズいことになりますな・・・商業的に利用するにしてもそれぞれの国の食糧の値段を暴落させるようなことはしませんので、安心してください」
ザイムさんは虚栄の門を食料の値段と安定的な供給の為に、儲けだけを追求しないことを約束してくれていた。
この後は水の補給をしながら、ザイムさんからは基礎魔法の普及が教国の未来を左右するとの意見が出ていた。
「やはりこの基礎魔法はイイです。最悪は周りから水を集めることが出来るとか・・・私は浄化しかまだ出来ませんが訓練を頑張りますよっ」
アリアはあの後、何も無い所から水を出すこともできて。俺が空気中にも水があるんだよと言っただけで俺の魔法で言う<集水>をいとも簡単に成功させていた。
「アリアの能力にはびっくりしますね。魔力も戦闘レベルですし教えたことをすぐに理解し魔法を発動させましたからね。アリアが基礎魔法を教国民に普及させることが本当の意味でこのエルランダ教国を救うことになると思います」
アリアはエへラン教皇陛下により司祭に任じられ基礎魔法を普及させるべく各衛星都市を忙しく回っているそうだった。
水の補給の後は、商業ギルドの倉庫にグリナダス王国からの支援食糧をすべて神の宝箱から放出しこの後の管理は全てザイムさんに任せもう一つの問題を話し合うためにエへラン教皇陛下の元へと向かった。
「エへラン教皇陛下、迅速な謁見のとりなしありがとうございます」
「いや、アルスロット殿こうして私の所に来た言うことは・・・なにか重要な事があってだろう?」
「はいっ、エへラン教皇陛下は神像の事をどれほど知ってらっしゃいますか?」
「神像のことか?そうだな、神像はエルランダ教国の建国より前からここに存在した神の像だと歴代の教皇から口伝が伝わっている。口伝と言ってもこれはほとんどの者は知っているようなことだと思うが・・・後は神像は祈ることにより魔法を授けるそして聖職者になる者には祈る時にその印をくださるんだが・・・それが、どうか?」
・・・・・・センワルス様はこのシステムは壊れていると言った。現に能力がかなり高いアリアがいくら祈っても魔法が与えられなかったという事実がある。普通ならアリアなんかは魔法の天才だグリナダスで冒険者にでもなればその才能は大きく開花していたはずだ・・・。
それと、今日の朝見た大司祭たち・・・大司祭の地位があるのに大したことがなさそうだった俺の迫力に押されて声が出せなかったぐらいだたかが知れている・・・。
「エへラン教皇陛下・・・今から僕はとても不遜な発言をしますお許しください・・・。エルランダ教国の神像ですが壊れていませんか?たぶん神像は神の遺物だと思われますこの教国が存在する前からここにあったという事ですしね。それで壊れているという確信したのはアリアです・・・彼女はとても魔力が強く魔法に関しては天賦の才を持っています、そのアリアが熱心に毎日のように神像にお祈りしても魔法が与えられなかったというのは教国にとっても大きな損害です、そんな損害を出しうる神像が正常なのかと?僕は疑問に思いました」
俺は出来るだけ怒らせないように言葉を選んだつもりだが・・・ここは教国で神像は神様そのもの・・・。
少しの間、厳しい顔で間が開いた後・・・エへラン教皇陛下の重い口が開く。
「あ・・・ああ・・・アルスロット殿の言う通りだと思う・・・。神像とは祈り魔法を与え教国を豊かにすると・・・一番古い教皇が言葉を残しているが・・・今の神像はとてもそうとは思えない、部外者のアルスロット殿に壊れていると言われて更に確信できるほどだよ・・・」
エへラン教皇陛下は俺の言葉に天井を見上げ、はーと息を吐きながら厳しい顔しながら肯定していた。
「それでは、古い教皇の日記などから今とは別のような神像の様子が記されているんですね?」
「ああ、そうだ。少なくとも飢饉が発生するような水不足や、治療できない病、腐りきった・・・大司祭たちが選ばれることは無く、日々教国が大きく前進するそんな様子しか書かれていなかった・・・。それと神像なんだが・・・昔は眩しいほど光り輝いていたそうだ、だが今は・・・くすんだ只の石の像の様にしか見えないのだ」
ああ、センワルス様の言うとおりに壊れているんだな・・・で、聖職者たちは・・・壊れていると分かっていてもそれを教国民に伝えなかったために今の悲劇が教国の衰退が一気に進んだのか・・・。
「それでも、最近まではうっすらと光はあったのだよ・・・それが1年ほど前だろうかスッと光が消えただの石の像のようになってしまった・・・」
1年ほど前まで・・・その言葉に嫌な予感しかしなかった・・・。それが本当だとすると完全に神像の機能を停止させた者がいる・・・。
「それではアリアちゃんを司祭に任じて基礎魔法を広めるべく行動させているのは・・・神像がすでに壊れていると、エへラン教皇陛下は確信されていたからなんですね?」
「そうだ、アルスロット殿から受け継いだ基礎魔法を見たとき・・・私は衝撃を受けたよ神像に見放されたアリアにあれほどの魔法が発動したからね、それはあの場にいた全ての教国民も思ったことだろうな・・・」
「それでは・・・神像に頼らない教国を作り上げるんですか?」
「ああ、私はそう思っているもう少し落ち着いた後に神像ではなくグリナダス王国の様に基礎魔法、親から子へと受け継がれるのだったか。そちらにシフトし冒険者ギルドも誘致し新しいエルランダ教国にするつもりだ」
「では、神も神像ではなくオーチャコ神だと?神像は神の名が分からないから神像とされてきたんですよね?」
「ああ、そうだ神像には名はないこの世界を作り出したのはオーチャコ神ではないからだ。そこは基礎魔法の習得率が上がるほど神像は信仰を無くしオーチャコ神への信仰へと自然と移ってゆくだろうな」
オーチャコ神様の前任者はセンワルス様なんだろうな・・・神も代替わりするんだけどセンワルス様の神像が残ったせいで問題が・・・それで、俺に回収を頼んできたのか・・・。




