第四十話 あなたはだれ?
ふうっ、私はシエルハーナここオーチャコ神礼拝堂と孤児院を纏める院長を任されている。基本的には礼拝堂の管理と王都で不幸にも孤児となってしまった子供たちの保護が一番の仕事だが。
少し前に起こった、有害物質の流出事故でマリアを始め小さな子供たちが倒れ、その時にはこの礼拝堂と孤児院は神の奇跡のような魔法を使うカトラの緊急治療を必要とする治療場になったり。
そして、今回は南住民街で起こった火災で家を失った人たちの一時的に保護する場所として機能していた。
そして、昨日の今日でアスハブ陛下の迅速な判断により言が私に伝えられていた。
「皆さんっおはようございます。ただいま王城よりアスハブ陛下の言を使者様から、お言葉で託されました。今から私がお伝えするのは、アスハブ陛下の言です静聴をお願いいたします」
ケホンッ。
「我、アスハブ・ギルン・グリナダスの命により南住民街の焼きだされた者たちへ一人あたり1000000ギルダの見舞金に原状復帰のための日常品の支給と家を下賜する事とする。なお、家の下賜に至ったのは冒険者パーティー・セラフィムによりFランクダンジョン真のボス討伐のドロップ品、巨大なゼレインの魔石の献上によるものである」
以上がアスハブ陛下の言です。なお冒険者パーティー・セラフィムは、アルスロット、カルマータ、ルーチェ、カトラ、カトリナのパーティーで今回の火災の火を消した者たちでもあります。
「あっ、アルおにいちゃまっ!!!わたちたちに、おうちをくれたのは・・・アルおにいちゃまでしゅっ!!!」
「まあっ、ラヴィ・・・またアルお兄ちゃんが助けてくれたわね・・・」
「ああ、ありがたいことだ・・・家をアスハブ陛下から下賜されるなんて・・・言葉が出ないよ」
他に焼きだされた人々も陛下よりの家の下賜に信じられない、幸運だとも喜び始める人たちもいた。
ガンガンガンっ。
「あら、どなたか来たのかしら・・・特に訪問のご連絡はなかったはずだけど・・・」
扉を開いた先には、小さな女の子を抱っこした私の妹ヒルダが立っていた。
「姉さんっどう?新しい職場は?あっそれと外の門でしゃがみ込んで寝込んでいた子が・・・」
「全くあなたは・・・いきなり来て。この子は門の所で?服装からして住民街の子かしらね・・・とにかくそのままにしておくわけにはいかないわ。空き部屋はいくらでもあるからこの子をベットで寝かせましょう」
私は、門で寝込んでいたと言う子をベットに寝かせると、訪ねてきた妹のヒルダに顔を向ける・・・これは何か困ったことが起こったのね・・・。
「それで、どうしたのかしら?アルスロット様のお屋敷まで突然押し掛けてくるんですから、それなりの大事でしょう?」
「うっうん・・・私も頑張って考えたのよ・・・でも、いい案が浮かばなくて。キッチリと何かをこなすのは得意なんだけど・・・」
私の妹、ヒルダは何人ものいる妹の中では一番キッチリとした仕事をこなすのに向いていて今は陛下の言を処理する役目を頂いていた。
「へ~今回はエルランダ教国の食糧支援ね・・・詳しく聞くと、実質はもう猶予が無いほど教国民は飢えていると・・・。しかもアスハブ陛下はそれを知らずに支援の決定をしてしまったのね・・・」
うーん、不味いわね。それに普通なら教国の内部事情も話されなければいけないのに・・・はあっこれは若くしてアスハブ陛下の言を実行する者に選ばれたヒルダに嫉妬した中級貴族たちの嫌がらせなんでしょうね。
「うん、それで・・・メリダ姉さんに相談を・・・」
ふう・・・アル様ならなんとかできるけど・・・それをこの子に言う訳にはいかないし、お帰りになるまで待ってもらうしかないかな・・・。
「そうね・・・私も正直手はないわ、川があれば水上輸送である程度の時間短縮は出来るけど残念だけどグリナダスとエルランダを結ぶ川はないし・・・でもアルスロット様ならなにか案があるかもしれないわね」
「えっアルスロット様が?あっそうだった陛下にもう一つアルスロット様にエルランダ教国で流行っている病の魔法薬を作れないか聞いてくれと言われてたんだった」
「はあっそんな事まで・・・それもアルスロット様に直接聞かないとどうにもならないわね・・・この寝ている子も誰だかわからないし、お帰りになるまで待つしかないわ」
「うん・・・待たせてもらう」
「アル君っ直ぐに家の件は動いてくれるそうで良かったねっ!!」
「はい、ラヴィも喜んでくれるかな・・・」
「そうですわね、あの子の幸せな笑顔がすぐにもどりますわ」
「ああ、大丈夫だ」「んっ」
俺は陛下との謁見と、ゼレインの巨大な魔石も献上も無事に終わり今話していたダルガンの凶行で焼きだされた人たちに直ぐにでも家の割り当てを行う事をアスハブ陛下より言を頂けていた。
「これからの事なんですけど・・・、Fランクダンジョンは攻略しましたけど、今後もFランクダンジョンでモンスター討伐クエストを?」
「ん~そうだねえ、たぶんだがもう少しでアルとカトラはランクが上がると思う。それを考えるとFランクダンジョンで少しの間はG~Fランクのモンスターを討伐するのがいいとは思うよ」「んっ!」
「そうですわね・・・わたくしのCランクは程遠くて・・・アル様とカトラ様と共に強くなってゆきたいと思っていますわ」
「うんっカトリナっ一緒に強くなっていきましょうねっ!!」
「じゃあ、決まりですね。あっそういえばアシェルさんに昨日お昼にはギルドに来てほしいと言われてましたね」
「ああ、そうだったね・・・。何の用かは私は想像がつくけど・・・んー」
「えっ?!何の用か分かるんですか?なんですかっ?」
「まあ、カトラ様そんなにがっつかなくても・・・カルマータ様も言いにくそうですし。そのような時は遠慮するものですわ」
「え~そんな~、そんな言い方されたら気になっちゃうわっねっアル君?」
「えっええ、まあ気にはなりますけど・・・。カルマータさんが想像がつくという事は・・・なにかギルドの行事的な物?ではないですか?」
「ははっアルは鋭いねえ、まあ直ぐにギルドに着くし行ってからのお楽しみにしようじゃないか」
その後は、カトラお姉さまから朝出るときにラヴィが俺に会いたそうにしてたとか。遊んでねと伝言を貰ったとかで、家が割り当てられたら様子を見に行こうと皆で話しながら冒険者ギルドへと到着していた。
「あっ!!!・・・・・・・来ちゃいました」
「えっ・・・?アシェルさんお昼には来てと言ってませんでしたか?」
「あっそのう・・・予定が、ちょ~と悪くて・・・。ハハハハハ」
「じゃあ、出直した方が?」
「あっあっそのう・・・」
「やあっアル君っ、Fランク真ボス討伐達成おめでとうっ!!!」
俺達は後ろを振り向くと、ギルド中の冒険者がこの前知り合いになったティタの掛け声とともにウォオオオオオオオオオオと雄たけびを上げながら冒険者らしい祝福をくれていた。
「本当に、おめでとうっ!!そしてFランクダンジョンを開放してくれて本当にありがとうっ!!私達Fランクを中心に本当に感謝しているよっ!!」
俺はティタさんに肩をバンバン叩かれ感謝をされる。
「それで、俺達はアシェルさんにお昼に来いと言われてギルドに来たんですが・・・もしかしてこのサプライズが?」
「あ~それなんだけどね~、これは担当のアシェルから聞いた方がいいかな~はい~皆ちゅうもく~」
パンパンと手を叩き皆をアシェルの方に注目させる。
「あっえっえっ?!ティタさんずるいっ!!!皆もちゃんと考えてくれないからっ!!!アルさんごめんなさい、アルさんたちのパーティー名がまだ決まりませんでしたっ!!!」
「パーティー名?」「あっそうだったんだっ、パーティー名・・・あっ私達・・・」「なるほど、それで呼び出されていたんですのね」
「あ~そのことなんだが決まっていないみたいで丁度良かったよ。実はね先ほどアスハブ陛下に謁見してパーティー名を賜ったんだよ」
「えっええええええええええええっ!!!!」
ギルド中がええええっと一気に騒がしくなる。
「そうだったんですか・・・アスハブ陛下に、それじゃあ決まらなくて丁度良かったですね」
「ははは、そうですね決まっていたら申し訳なかったですし。とにかく考えてはくれたようでありがとうございます。パーティー名が付くと皆さんから一人前と認められると聞いていたのでうれしいです」
「ふふっ、パーティー名を決められなかったのはザンネンですけど・・・。それでアスハブ陛下に賜ったその、パーティー名は・・・?」
そうだっ!!早く教えろーと皆が一斉にカルマータさんの方を向く。
「あっ?私に聞くのかい?アスハブ陛下より賜ったパーティー名はセラフィムだよ」
セラフィムっ!!セラフィムっ!!!セラフィムっ!!!!セラフィムっ!!!!!とみんな一斉に口々にセラフィムと大合唱をしてその間ギルドは異様な雰囲気に包まれていた。
「うっうるさいですわっ!!」「凄い声っ!!」「うんっ、何にも聞こえないよっ」「んっんっー」
「じゃあ、これからはアルさんたちのパーティーはセラフィムなんですね・・・」
この大合唱は認められたパーティー名を刻む昔からの儀式みたいなものだそうで、たくさんの冒険者にこうして名を刻まれるほど認められたという事だそうだ。
「うん、これからもセラフィムをよろしくねアシェルさん。この先、迷惑をいっぱいかけちゃうかも」
「いいえっ!!私は幸せ者なんですよ・・・。こんな経験をした、Fランクダンジョンの真のボスを攻略し国王陛下よりパーティー名を賜った冒険者を担当した受付嬢は私だけです・・・これは誰にも渡しませんよっ!!ふふっ」
アシェルさんは嬉しそうに微笑みながら俺たちの担当受付だったことを誇りにして、嬉しそうにしていた。




