第二十九話 鏡
アスハブ陛下より下賜された北城門屋敷はとても大きな屋敷で見た感じ俺の家の10倍はありそうだ。
「んっんっー」ルーチェさんはよっぽどうれしいのか屋敷を見上げてピョン飛びしていた。
「でっかいねえ」カルマータさんも屋敷の大きさに度肝を抜かれていた。
そして俺もカトラお姉さまもつられて屋敷を見上げていた・・・2階建てだけど転生する前の日本の建物の3階建て位の大きさか・・・そして扉もそれに合わせてとても大きかった・・・。
「さっ皆さん、見上げていないで屋敷の中に入りましょう。土足厳禁ですから必ず清浄魔法を掛けて奇麗にしてから入ってくださいね」
カトリナ様に促されて、清浄をかけて体中奇麗にしてから屋敷の中に入る。もちろん土が付いたブーツも新品同様にピカピカだ。
「ようこそいらっしゃいました・・・わたくしはこの北城門屋敷の管理をアスハブ陛下より任されましたメリダと申します」
屋敷の中にはアスハブ陛下より管理を任されたというメリダさんがいた。俺達より年上のピシッとした黒のワンピースを着ていてきちっとした人という印象を受ける感じの大人の女性だった。
「メリダっ!!!良かったあなたがここに来てくれたのねっ!!!」
うれしそうにカトリナ様はメリダさんに抱き着いて喜びを表していた。
「まあっ、カトリナ様・・・いつまでも子供の時の様にされても困ります。ほら皆様もびっくりされていますわよ」
「あっ・・・」
カトリナ様は恥ずかしそうに黙り込んでしまったが、どうやらカトリナ様の側付きで今回の話が出た時にメリダさんがこの屋敷の管理も任されることになったそうだ。
「アル様、北城門屋敷の管理はメリダがすべていたしますのでご安心してこの屋敷をお使いくださいませ。ただ広い屋敷ですので午後の一部の時間は清掃や食料の搬入などの仕事で数人の使用人が出入りいたしますがご容赦くださいませ」
「メリダさんよろしくお願いします。まだ子供なので色々とご迷惑と教えていただくこともあると思います」
俺の後には、カトラお姉さま、カルマータさん、ルーチェさんと挨拶をしていく。
「さっそれでは、お屋敷の事で決めることなどお話ししたいこともございますので。談話室の方に紅茶とお菓子をご用意いたします」
メリダさんは俺たちを談話室へと案内し、紅茶とお菓子を用意するために席を外す。
「パーティーハウスが手に入ったけど・・・まさかここまで凄い屋敷だとは思わなかったですね」
「ああ、そうだね・・・屋敷と言うからある程度の大きさはあるだろうとは思っていたんだがね・・・正直想像以上だよ・・・」
「アル君、将来はここに住むの?」
「んっ」ルーチェさんはその辺にある調度品を物珍しそうに触る・・・壊さないといいけど・・・。
「えっと、住むことは考えていませんでした・・・。パーティーハウスはほしいなと思ったけど・・・それにカルマータさんとルーチェさんが宿暮らしってのが聞こえたので」
「ああ、悪かったよ・・・ルーチェが余計な事を言うもんだから・・・いや、わたしもだったね・・・パーティーハウスは冒険者の夢の一つでもあるからね・・・それで私らはここに住んでいいのかい?」
「あっはい、もちろんですよ。そのあたりもメリダさんが戻ってきたら話し合いましょう。部屋なんかもどこを使うとかも決めないとですし、ここは広そうですからほとんどの部屋は使わないでしょうけど」
「お待たせいたしました」
戻ってきたメリダさんは香り高い紅茶とお菓子を皆に振舞ってゆく。
「メリダさん、この屋敷のなんですが基本的にパーティーハウスとして使って行こうと思います。なので俺のパーティーのカルマータさんとルーチェさんが宿暮らしから引き揚げてここに住むことになりますのでよろしくお願いします」
「アル様っわたくしもここに住みますわ。それとお父様とお母さまもこの後ご挨拶に来る予定です」
ええっカトリナ様の両親が来るってなにしに・・・くるんだろう・・・。
「はい、カルマータ様とルーチェ様のそれは承知しております。それではアル様はご実家から、カトラ様はオーチャコ神孤児院から通いにされるのですね?」
「ええ、私は孤児たちの朝の面倒も見ないといけないからここに住むことはできないかな」
「俺はまだ両親の元を出る気はないので実家から通います」
「それでは、部屋なんですが基本的に2階が皆様のお部屋になります。1階はお客様をお迎えする応接室、小ホール、大ホール、談話室、食堂、キッチン、管理室、空き部屋となっております」
「2階の部屋は自由に使ってもいいという事でしょうか?」
「はいと言いたい所でございますが、出来れば管理の簡素化の為に中央大階段を上がって左側か右側どちらかの棟の部屋を皆様でお使いになってもらえると助かります」
「なるほど、じゃあ中央大階段上がって右側を使う事にしようか」
俺は適当に右側を選択した。
「そうだね、右側の1階に食堂があるしその方がいいね」「んっ」
「左の棟はお客様向けの部屋の作りになっていますので、管理しやすく助かります」
なるほど、左は応接室、小ホール、大ホールがあるのか確かに屋敷の左側は来客用で右側は自分たち様か来客が来るのか分からないけど・・・あっすでにカトリナ様のご両親が挨拶に来るのが決まっていたか・・・。
「んっんっ」「あっルーチェっ!!!あんた皆のお菓子を~~」「あ~私のお菓子~」「ルーチェ様っはしたないですわっ」
ルーチェさんはいつの間にか皆のお菓子を全部食べつくしていて・・・カルマータさんに怒られていた。
そんな、パーティーハウス北城門屋敷の部屋割りとルールや使用人の出入りの事などメリダさんから説明があらかた終わるころには、ドアをノックする音が響きわたっていた。
「お客様のようです、私が応対いたしますので皆様はこのままお待ちください」
「お父さまとお母さまかしら、アル様のご両親にもわたくしをいつかご紹介くださいませね」
カトリナ様の、ご両親か・・・どんな方だろう?とそんな事を考えているうちに応接室にお客様をお通ししたとメリダさんが戻ってきた。
「アル様、来客されたのは・・・」
「「えっ?お母さま|お母さん?」」カトリナ様とカトラお姉さまの驚きの声が重なる・・・。
俺達の屋敷に来客したのは、グリナダス王国軍将軍 ギンド・ファイスにアスハブ陛下の娘 ポメラ・ファイスのカトリナ様のご両親に・・・。
魔法研究所所長 エルトラス・バラスに魔法研究所副所長 パメラ・バラスのカトラお姉さまのご両親だったが・・・。
「「お母さまが・・・お二人!!!|お母さんが・・・二人っ!!!」」
目の前のソファーに座っていたのは全く同じ顔の女性だった。
「ふふっびっくりしちゃってるわ、ポメラ」「もうっ、それはそうよパメラ」
更に声まで全く同じで、さらに混乱する俺達・・・いやカトリナ様とカトラお姉さまだ・・・目が二人を行ったり来たり目まぐるしく動いて声も出ないといった感じだ。
「カトリナ様のお母さまポメラ・ファイス様とカトラ様のお母さまパメラ・バラス様はアスハブ陛下の双子の娘なのです」
メリダさんの説明が衝撃だったが・・・誰も反応が出来ていなかった。
「えっえええええええ???なんでどうして?お母さんどういう事?私はアスハブ陛下の孫?」
「屋敷に来る途中わたくしとカトラ様が似てるとルーチェ様に指摘されましたが・・・空似ではなかったのですか・・・お母さま同士が双子・・・私たちは血がつながっていたのですね」
カトリナ様とカトラお姉さまは顔を見合わせて、うんそっくり~みたいに手を合わせて鏡合わせの様に互いを見ていた。
「そうね、今回私の魔法研究所の失態で、王都民100万の命が危険にさらされちゃったんだけど・・・。この時にね私達夫婦がバラスが表に出てしまったの主に貴族たちの前に・・・それで一部の貴族にバレちゃったせいでカトラの魔法の情報が教国に漏れちゃって、このままカトラに秘密のままにするのは危険と判断して今・・・お母さんたちが集まったの」
えっと、どういうことだ?
「口を挟んで申し訳ありません。それは・・・魔法研究所で起きた失態と言うのは教国の陰謀?策略で、カトラお姉さまの一瞬で治療してしまった魔法の存在が教国にバレてしまったという事でしょうか?それで、カトラお姉さまと、カトリナ様・・・髪型以外はそっくりな二人が教国から狙われ危険が及ぶと?いう事でしょうか?」
「あっそうなのっ!!アル君っとってもいい説明だったわっ」
あははっ陛下~なんかあると思ったら・・・俺にそんな方たちを預けて大丈夫なんですか?教国に狙われてるから危ないよと二人の娘に真実を話した後、俺は二人の父親から末永くヨロシクねとキッチリと念を押され今日この場を終えることが出来たが。
家に帰ってからは、今日の事を食卓で話すとライラお母さまからアルちゃん出ていっちゃうの?と泣かれてぐったりし。ラングお父さまからもアスハブ陛下からパーティーハウスを下賜されたことを聞き、しかもカトリナ様の事もアスハブ陛下からヨロシクと言われたぞと、泣き疲れていたお母さまが飛び起きる一幕もあり。心配な顔をするライラお母さまは、ここに住むと宣言した俺に安心してやっと静かに眠ることが出来た一日だった。




