第二十一話 アルスロット・カイラスの価値
グリナダス王国の王都では、密かに動くはずの影が必死で動いていた・・・影と言っても暗殺とかの暗い部分ではなくアスハブ王の表だって動けない案件を処理するそんな影が動いていた。
「それでは・・・今の所は混乱は無いのだな・・・、バラスよ・・・それで特効薬はどうなっている?」
「はっ・・・妻とともに最善を尽くしていますが・・・今だ効果のある薬は出来ておりません・・・」
「ふむ・・・今回の事故で飛散してしまった魔法兵器の有害物質はどのような被害を出すか予想は出来ておるか?」
「はっそれは出来ております・・・これは開発前に、紙の上での試算ですが・・・100万の王都に拡散した場合では子供と女性はほぼ全滅・・・男性は全体の3割ほどの被害になるかと・・・実験段階の物では人にも作用してしまう・・・モノでした」
「ワシは・・・自分の王国を滅ぼす兵器を作れとバラスに指示をしてしまったのだな・・・。最後まで希望を捨てず、特効薬をなんとしても作ってくれ頼んだぞ・・・」
「はっ・・・私は事故とはいえ王国の存続を揺るがす兵器、有害物質を作り出したことを恥じております、王命とはいえ作り出したのは私です・・・もしもの時は・・・私達夫婦が全責任を被り処刑台の上でさらし者になる覚悟です。娘には申し訳ないことをしましたがこの命を懸け特効薬を完成させて見せます」
私達夫婦はこの飛散事故が起きた時から娘の事は忘れた・・・特効薬が出来なければ子供と女性はほぼ死んでしまう。私達夫婦にはもう娘を育てる時間は許されなかったし完成しなければ未来は無い。
孤児院の院長には保護を頼んであるから大丈夫だし、王から影がちゃんと手配をしたとのお言葉も頂けた・・・あとは、この有害物質を無毒化する特効薬を作り出すだけだ・・・。
「あなた・・・、頑張りましょう・・・最後まで・・・」
「ああ、カトラの未来を閉ざさないように・・・」
「アルっちゃ~ん、おっきしてるかな~朝ですよ~」
何時ものようにお母さまのおはようコールで目が覚める俺・・・あれ、カトラお姉さまが来ていないのか?
「お母さま、おはようございます。あの、カトラお姉さまはまだ?」
「う~ん、それがまだ来ていないのよね~。昨日はとっくに来てた時間なんだけど・・・カトラちゃんもお寝坊してるのかもねっ、さっ今のうちに朝ご飯を食べましょう」
「う~ん」カトラお姉さまが寝坊はするのか?確か孤児院では、朝早く起きて掃除のあと子供たちを起こして朝ご飯まで世話をしていると聞いていた・・・。
うん、こんな時は・・・カトラお姉さんは今何してる?<ニュースサイト>
「636 カトラの今は」
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636 カトラの今は
昨日の夜から孤児院の子供たちの調子が悪く中でもマリアの高熱が下がらなく一生懸命看病中である・・・。
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ん?子供たち?何かの病気の集団感染か?カトラお姉さまは大丈夫だろうな・・・?F5で再読み込みをする。
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637 魔法兵器の有害物質による汚染
魔法兵器の有害物質に体が反応した拒否反応である、子供たちは早い段階で色々な症状が出始めている。
王都中の人間が有毒物質を取り込んでおり、体の拒否反応で色々な障害が起こるのは時間の問題だ。
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はああっ???という事は、最悪この王都に住んでいる人間は全員死ぬのか?F5っ!!!
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639 今の時点では
有害物質が拡散、体を徐々に蝕む情報のみ分かっている。
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そうか・・・最大1分先までが記事になるそれ以上の未来の結末までは分からないという事か・・・だけど王都中に広がってるのは分かっている・・・最悪だ・・・。
俺はお母さまに今すぐにカトラお姉さまの元に行くことを伝える・・・のと、お母さまの体の調子を聞く・・・。
「えっええ、たまに咳が出るようになったけど大したことは無いわ・・・?それがどうかしたの?アルちゃん」
「その、もしですが・・・それ以上体の調子が悪くなったら必ず教えてください、今はそれしか言えることはありませんが・・・」
「うんっ分かったわアルちゃん。ママの事心配してくれてありがとうねっ」
「それで・・・カトラお姉さまがいる孤児院は何処にあるのでしょうか?」
「それは、王都の中心よっ。王城が中心と思われがちだけど実はオーチャコ神の礼拝堂がこの王都の中心なの、だからここからなら大通りを王城の方へ向かって進むだけでオーチャコ神の巨大な礼拝堂に孤児院が一緒になった建物があるはずよ、とても目立つから行くだけで分かると思うわ」
「分かりました、時間がありません朝食を食べずに申し訳ありませんっ」
俺はすぐにお母さまに背を向けカトラお姉さまがいるオーチャコ神の礼拝堂孤児院へと走って向かっていった。
「おいっ!アルっどうしたんだ?待ち合わせの冒険者ギルドは逆だぞ?」
冒険者ギルドを通り過ぎさらに中心へ向かっていく途中で冒険者ギルドへと向かうカルマータさんと出会うことが出来た。
「あっ、カルマータさんお早うございます。実はカトラお姉さまが来ないので様子を見に・・・」有害物質で孤児院の子供たちが調子を崩していることを隠して向かっている理由を伝える。
「んっ?そうなのか?カトラが・・・まだ数日だがあの子が寝坊とかするような感じではなかったけど・・・なんか心配だな、私も行こう・・・なんかざわつく・・・こんな時は後で行かなかったことを必ず後悔した・・・」
うっ、カルマータさん鋭い・・・やはり冒険を積み重ねた高ランクは違うな・・・。
「カトラお姉さまは孤児院に住んでいます。このまま進んだ大通りにあるそうですから一緒に行きましょうっ」
「ああ、もちろん孤児院は知ってるよ。オーチャコ神の礼拝堂に並んで併設されているからね」
カルマータさんは俺の前に出て走り出すと・・・くっ速いっ・・・俺が付いてこれるギリギリの速さで走り出した。
「カトラいるかいっ?カルマータだよっ!」
巨大な礼拝堂横の孤児院に入り、少し大きめの声で呼び出すと直ぐにカトラお姉さまが出てきた。
「あっ、おはようございます・・・すいません、昨日から立て込んでいて冒険に行けないことを連絡するのをすっかり忘れてました・・・」
てへっと首をかしげながらなんでも無さそうに言うが、目は充血していて子供たちの容体が良くないことを物語っていた・・・。
「カトラ・・・どうしたんだい?私たちは仲間だ・・・遠慮しないでいいんだよ?」
「かる・・まーた・・・さん・・・こどもたちが・・・あうっうっうっううううううっ」
カトラお姉さまはカルマータさんの言葉に泣き出してしまって、その場で崩れ落ちていた・・・。
「すみません、取り乱してしまいました。昨日の夕飯後から子供たちが調子を崩して・・・中には立てない子や・・・なかでもマリアが高熱を出して、全く熱が下がらなくてっ」
「うんうんっ、つらいね。何か原因は分かったのかい?子供たちと言うならなにか集団感染する病気とか?」
「それが全然分からないんです・・・マリアには熱さましを飲ませましたが全然効き目が無くて・・・一向に熱が下がりません。他の子たちも咳と体のだるさを訴えています・・・」
「うーん、風邪?ではないのか・・・症状は良く引く風邪の様にも見えるが・・・」
「それならいいのですけど・・・熱さましが効かないマリアが心配で・・・」
薬が効かないか・・・やはりニュースサイトの情報通り有害物質で体が拒否反応を起こし高熱が出ているんだな・・・。
何か、これを直す方法は無いか?頼むっ<ニュースサイト>
「723 魔法兵器の有害物質を無効化する方法」
「やったっ!!!!!!」
俺は思わず大声で叫んでしまっていた。
「えっ?アル君どうしたの?やったって?」
「ん、アルっいくら何でも不謹慎だぞ・・・子供たちは皆ふせっているんだ、場所をわきまえなさい」
「あっ申し訳ありません・・・そんなつもりじゃないんです・・・その、思わず叫んでしまったのは・・・」
弁解しながら俺は記事を開く。
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723 魔法兵器の有害物質を無効化する方法
カトラの〇魔法と△魔法を合成した、状態異常解除魔法で瞬時に治療可能だがそれまでに失った体力は休息で回復するしかない。
薬で治療する場合は、薬草を毒消しの通常魔法をかけながら粉末状にしたものをお湯に溶かして飲めば体から有害物質が排泄される。
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よしっ!!!!!ニュースサイト最高っ!!!!!!!
「この子たちを、いえ・・・皆を助ける方法が分かったので思わず叫んだんです」
「アル君っ!!!!ホントにっ?!!どうやったら治るのっ?ねえっ!!!」
「うわっ、はいっその・・・カトラお姉さまの魔法で一瞬で治ります・・・」
「・・・・・・私の魔法で?」
「はいっカトラお姉さまの魔法です。俺を救ってくれたカトラお姉さまの魔法で皆を治すことが出来ます」
「でも、〇魔法は使ってみたんだけど・・・あれは怪我を治す魔法だった・・・あっあああもしかして組み合わせっ?!!この子たちを治せる魔法の組み合わせがあるのね?アル君っ!!!!!」
「はい、その通りです。その組み合わせは・・・」
「〇っ△っ」カトラお姉さんの〇と△の魔法が重なりマリアの体に吸い込まれていく・・・。
「あっ・・・熱が一瞬で・・・苦しそうなマリアの呼吸が・・・」
額に手を当てマリアの容体を確認するカトラお姉さまの顔が徐々に喜びで満たされ唇を震わせながら「良かった」と繰り返し呟いて何度も孤児の妹の頭を優しくなでていた・・・。
「あーよかったっ、アル君ありがとうねっ。皆が治ったのはアル君のおかげよっ!!」
「うむ、さっきはすまなかった・・・。私の早とちりでアルを侮辱してしまった・・・」
「いえっ、先ほど叫んだ言葉はカルマータさんの指摘通りです。思わず出てしまったこととはいえ・・・あの場では出してはいけない言葉だったのは確かです」
「うん、いいねー青春だよ~。おお可愛いっこの子がカトラの思い人のアル君かい?おっと失礼っ私はこの孤児院の院長のシエルハーナだよっ」
パチッとウィンクをするシエルハーナさんは・・・美女だった・・・妖艶の美女・・・ぼ~と見とれてた俺はカルマータさんにトントンと肩を人差し指で叩かれて正気に戻る・・・。
あっカトラお姉さんが・・・ぷくっとホホを膨らませパッと見て分かるぐらい不機嫌になっていた・・・。
「いや~ありがとうね。子供たちがかかった病が全く分からなくてね・・・正直途方に暮れていたんだ。いやっほんとに神様っはいらっしゃるっ、ダメだと祈ったとたんにアル君が来てあっという間に子供たちは治ってしまった。ははっいいねっ神様バンザイっ」
ははっ、シエルハーナさんはなんというか軽い感じの人だった。孤児院の院長といったらもっとお淑やかな・・・まあ、こんな感じの人じゃないと元気いっぱいな孤児たちを育てることは無理なんだろうな・・・。
この後は、シエルハーナ院長のお礼といつでも遊びに来てほしいとの、子供の面倒を見るのを手伝ってくれと言う常套句を贈られながら今日は家路へと戻った。
「アスハブ陛下、緊急のご報告があります」
「どうした?もうせ」
「はっ、本日深夜より孤児院にて高熱を出した子供が出ました・・・」
「なにっ?それはまことかっ!!!それでそれは・・・一人だけか・・・?」
「いえ、孤児院の子供たち一番の年上の子、一人を除いて全員です・・・」
「なんてことだ・・・はじまってしまったか・・・わしはどうしたら・・・おおっ神よっ!!!」
「申し訳ありません・・・続きがございます・・・。喜ばしいことにその一番年上の孤児はカトラ」
「んっ、カトラ・・・エルトラス・バラスの娘か?その娘がどうしたのだ」
「はっ、その娘が症状を出し倒れた孤児たち全員を魔法で治療、一瞬で完治させました」
「なんじゃとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」
この時ほどワシは神に感謝したことは無い・・・そしてそれはバラスの娘が騒ぎになる前に魔法治療をしていなければ今回の魔法兵器事故の全責任を押し付け処刑をしなければならなかったであろう両親の窮地を救った瞬間でもあった。




