第十七話 みえないもの
俺たちが無事に帰還した後、この初心者ダンジョンは10階層まではCランク、それ以降の特殊階層はAランクに指定され高ランクダンジョンとなり。後の初心者研修と試験は、今回の事故を受け地上で行われるように規定される事となる。
「もうっアルちゃんっママとっても心配したわっ、パパのいう事を守らないなんてっもうっ」
ううっ、お母さまはとってもご立腹で・・・げんこつの後もなかなか許してくれなかったよ・・・。
「ごめんなさい、お母さま・・・」
「ライラ・・・もうそのぐらいで、なっ・・・アルも反省しているし」
「ふふっ、ラングの小さい時とそっくりね・・・とっても心配したわ・・・」
最後は、ぎゅぎゅっと抱きしめながらお母さまは許してくれました・・・。
「あっあの、今回は助けていただきありがとうございました。アル君とラングさんが来てくれなかったら私は・・・」
「今回の事で、冒険者ギルドの初心者の規定が変わるだろうね・・・」
「カトラお姉さんが無事で本当に良かったです・・・。あっそうだっカトラお姉さんは何処に住んでいるんですか?この前、救出してもらったお礼をしに行こうとしたんですが・・・住んでる所を知らなくて・・・」
「そうなのっ、カトラちゃんっどこに住んでるの?これからはもっともっと親密にしたいわっ」
「あっ、その・・・私はオーチャコ神孤児院で暮らしています・・・」
「そうっだったの・・・御両親は?もう?」
「生きているのか死んでいるのか分かりません、半年前に姿を消しました・・・途方に暮れていた私を孤児院のシスターが保護してくれたんです」
「そう、つらかったわね・・・これからは遠慮なく毎日・・・あっいっそのこと家に来てもいいのよ?どうかしら?」
「えっ、えっとでも、この先どうなるか分からないし私は冒険者です・・・し」
「あらっ、それなら大丈夫よっ。アルちゃんも冒険者になったのよっ」
「ふぇ?!アル君が・・・?まだ赤ん坊・・・なのに」
「カトラお姉さん、本当です。俺の冒険者カードです」
俺は魔力を通して冒険者カードを見せる。
「うわっ、うそっ魔力っ?ええええっアル君っ魔力が扱えるの?ちょっと前まで赤ん坊だったのに・・・すごい・・・」
目をカッと見開き驚くカトラお姉さまのお顔は凛々しく美しくて・・・見とれてしまった・・・。
「はいはい、という事でカトラちゃん本当に遠慮しなくてもいいのよ・・・それにね勝手だと思うけど私は運命だと思ってるのよ・・・アルちゃんを初めて助けてくれた時から何度も」
「はい・・・・・・・・・・・」
結局、カトラお姉さんはこのまま孤児院で暮らしながら冒険者を続けることにするそうだ。孤児院にお世話になり小さな孤児たちはもう自分の家族で成人まではここを出る事は気が引けるそうだ・・・。
「じゃあ、アル君またねっ」
「はい、これから冒険者・・・あっああ、カトラお姉さんっ俺とパーティーを組んでくださいっ」
「ふふっアルちゃん忘れてなくてよかったわっ、カトラちゃん良かったらアルちゃんと冒険者のパーティーを組んであげてほしいの」
「はいっもちろんっ!!私もアル君とパーティーを是非組みたいですっ」
この後、軽く打ち合わせをしてカトラお姉さんが俺の家に訪ねてから冒険者ギルドに行こうと約束をしてくれた。
「じゃっ私達も帰りましょうかっ・・・ケホッケホッ。もうっ怒りすぎたのか喉がおかしいわっ」
「はいっお母さまっ」
「ああ、帰ろう」
「あっ!!!お父さま・・・剣がほしいです、明日から冒険者ギルドでカトラお姉さんと研修を受けるし・・・防具はチャトラお姉さんに頼んであるけど・・・」
「うーん、そうだったな・・・どうするか・・・よしっ武器屋に寄ってから帰るかっ疲れてるだろうけどアルっ大丈夫か?」
うおおおっ俺はお父さまと武器選びができる事に嬉しくてたまらなくなってしまい疲れは一瞬で吹き飛んでいた。
「はいっ、是非お父さまに武器を選んでもらいたいですっ」
ふふっ剣聖のお父さまにっ俺は浮かれすぎて笑みが止まらなかった・・・。
「もうっアルちゃん、ほんとにラングそっくりなんだから・・・昔を思い出すわ・・・」
「お父さまも、えーとおじい様?から選んで買ってもらったのですか?」
「んっんんっ、そうだなあ。そのっパパの時は買ってもらったというよりも・・・強制だった・・・」
あわわっお父さまは話していくうちにどんどんと顔が曇って・・・。
「こんな風に楽しく剣を買いに行った記憶は無いよ・・・だけど、今は楽しいぞっなんたって息子が俺と同じように剣の道に興味を持とうとしてるんだしなっこんなうれしいことは無いぞっ」
お父さまは、すぐに笑みを浮かべて俺が剣に興味を持っていることにとても喜んでくれた。
「さっここが武器屋だ冒険者ギルドの息がかかってる所だから安心して買えるぞ」
「うわ~すごい」一歩足を踏み入れると、壁一面に高そうな剣、槍、棘のついたフレイルなど隙間が無いほどに展示されていた。
「いらっしゃいませ・・・ラング様。お久しぶりでございます、今日はどのような御用でしょうか・・・」
「ああっ久しいね、ガイルグ。今日は俺の息子の剣を探しに来たんだ」
「ほほっそれはありがとうございます。おおこの子がっふむふむ、8歳ぐらいですかな?体はまだできていませんなこれから鍛えるのですな?」
「ははっまあそんな所だ、質の良い癖のない剣を今日はこの子に贈ろうと思ってるんだが・・・そうだな・・・ショートソードでいいものはあるかい?」
「えーと少しお待ちください、質の良い物はここには展示しておりませんので・・・」
そう言うと店主らしきお爺さんは店の奥へと消えてしまった。
「あのっお父さまこの辺に出ている普通の剣はダメでしょうか?」
「ん~そうだなあ、まずは体に合ったものを選び剣を学ぶ覚えるのが良いんだけど・・・よし、アルっこの中から自分でも選んでみなさい、パパが選んだ1本と自分の目で見て選んだ一本を今日はアルに贈るよっ」
「やったっ!!!ありがとございますっ!!!」
よしっ!!!最高の剣を探すぞ・・・。
まずは壁際の物を見てみる・・・んーどれも大きくて俺には持てそうにないな、どれも宝石も散りばめたような剣で・・・これはダメだな壁に飾ってあるものはたぶん見た目だけの飾り剣だ。
次に、立てかけるように展示されている物を見る・・・あっこれは実用的な物みたいだ、どれも最低限の機能美のみの形をした剣がずらっと所狭しと並べられていた。
んーどれも幅広で長いブロードソード?ていうのかな、持ってみるとずっしりと重く俺には振ることが出来ない感じだった・・・。
ある程度の大小はあるけど、どれも成人の大人に合わせているのか俺から見たら巨大な剣だった・・・んっ?
「すいません、隅っこにあるあれはなんですか?」
「ん、ああ。あれはね折れてしまった剣だよ、高ランクの先輩たちが折れてしまった剣をこうやって駆け出しの初心者の為に買い替えるときにここに置いていくんだよ・・・もちろん折れているからメインの剣としては使えないけど、ナイフとして使うことが出来るからお金のない初心者冒険者に先輩からプレゼントしてるんだよ」
「えっじゃあ、俺もこの中から一本いただいてもいいですか?」
「ああ、もちろん初心者冒険者ならその中から1本、相棒を選んで大事に使ってください」
俺の目についたのは山のように重なって置かれた折れた剣の山だった・・・。一本一本上からどかして丁寧に見ていくが・・・うーん、基本的にここに立てかけてあるブロードソードの折れた物だな・・・あっでも1本だけ・・・片刃だ・・・。
無造作に置かれた物の中に1本だけぽつんと寂しそうに置かれた剣はなぜか俺の目を引き付け離さなかった。
「じゃあ、この片刃の剣がほしいですっ」
「ああっそいつか、やっといいご主人様が現れたようだ・・・」
「んっやっとなんですか?」
「ああ、そいつは何故かずっと誰にも見向きもされない剣でね、まあ折れてるから見向きもされないのは当たり前なんだけど、それでも私がここを親父から任された時からあるからね・・・ある意味、可哀そうな剣だったよ」
「えっそんなに長い間?、この剣はここに置いてあったんですか?」
「ああ、なぜかね・・・もしかしたらそいつは今までここに来た剣士を気に入らなかったのかもしれませんな」
「じゃ、俺はこの剣に好かれたんでしょうか?」
「アルっそうかもしれないぞ~いままで誰にも見向きもされなかった剣がお前の所に来たというのなら、一応好かれてはいるんだとは思うぞ?うん、折れてはいるけど死んではいない・・・なんか不思議な感じだ、大事に使ってやりなさい」
お父さまに見せると悪くないなと、ほうほう言いながら眺めた後に俺に返してくれた。
「はいっ、大事にしますっ」
俺は自分で見つけたこの折れた剣を大事に大事に手に持つとガイルグさんに冒険者カードを提示して武器登録をした後、剣を見つめながらニマニマと微妙な笑みが止まらなかった。
あっお父様が選んでくださったショートソードはとってもすごい剣だったよ。魔力が流れやすい質の良いミスリルが使われたショートソードで、スキル技を使う時にとっても効率よく魔力が流れてとても使いやすい剣なんだそうだ。
こちらも、冒険者カードに武器登録をしてもらって、家に帰ると俺は嬉しくてお母さまに見せびらかしてしまった。
「わっ、アルちゃん良い剣を贈ってもらったわねっ。明日からカトラちゃんと冒険者研修頑張ってやらないとねっ」
「はいっ!お母さまっ!!!。お父さまっとても素晴らしい剣を贈って頂きありがとうございますっ!!!」
「ははっいい笑顔だ、アルっ頑張るんだよ」




