第十四話 カトラ・バラス
「こらーっ!!!マリアっ!!!あなたもいいお姉ちゃんでしょっ!!!」
「わ~~~~カトラが噴火した~逃げろ~」
3~6歳の子供たちの集団がしかりつける私の前から一目散に逃げていく・・・ふふっ、あの子たちにはこれは遊びの延長線上の事なんだろうな・・・。
「直ぐに、顔を洗ってっ。時間を守れない子は朝ご飯抜きよっ!!!」
はあっ、今日も私は朝からグリナダス王国オーチャコ神の孤児院での騒がしい朝を迎えている・・・。といっても私は半年前に両親が突然に蒸発、身寄りがない私は気が付いた時にはここで暮らすようになっていた。
突然一人になってしまった私に手を差し伸べてくれ正直ありがたかった・・・私は貴族のバラスの名を持っていたがこの名もあと少しで家名をお返しするつもりだ、ただのカトラになって一般市民として生きていくことになる・・・こんな名、私には必要ない・・・。
そして今は魔法学校へ孤児院から通っている、えっ?お金はどうしたかって?それは両親が先に支払いを済ませていたために直ぐにお金が払えなくて退学とはならなかった、ただそれだけのことだ。
「ははっカトラのやつ今日も魔法が使えなかったんだぜっ」
「まあ、次の学年に上がるには魔法が使えるのが条件だし。こりゃだめじゃないか?」
発動しない魔法と同級生からの嫌味にウンザリしながら、王都最大の公園の芝生でため息をつく。ここは赤ん坊のころから両親に連れられてよく遊びに来ていた唯一の場所だ。
現実はそう甘くはなかった・・・魔力は多いに越したことは無い・・・それだけ力強い魔法が使えるし、多いだけ魔法行使の数が増えるからね。
だけど、私にはどんなに努力をしてもどんなに練習をしても魔法の呪文は頭に浮かんでは来なかった・・・通常の人に比べて膨大ともいえる魔力を持っていてしても・・・呪文が浮かばなければ魔法を行使することはできなかった・・・。
「どうしよう・・・」
私はこの先の事を考えていた・・・孤児院は成人まで居ることが出来るが、細やかな仕事の手伝い主に小さな子供の世話係だが・・・と礼拝堂の掃除や毎日のように訪れる人々からの寄付の徴収係りなど(これで私たちは生活が出来る)雑多な事を毎日こなしていた。
もちろん、魔法の練習は以前のようにはできなくこうして学校帰りに両親との思い出の場所に寄ってはしゃがみ込み落ち込んで帰るそんな生活をここ半年ほど続けていた。
だけどっ!私にも運命という日が訪れたっ!!!そう、あれは丁度1週間ほど前この場所で・・・奇跡というしかなかった。
赤ん坊だったアルちゃん・・・可愛かった・・・。
母親のライラさんが森カラスに驚き抱っこしていたアルちゃんを地面へと落としてしまった。私は地面の芝生を落ち込みながらぼ~と見ていたのでライラさんの悲鳴で顔を上げると赤ん坊のアルちゃんが血だらけになっているのが見えライラさんは泣き叫んでいた。
私はすぐに駆け付けると・・・赤ちゃんはピクリとも動かなかった、石畳には赤い血と落ちた時に打ち付けたと思われる所は内出血を起こしていてどう見てもこのままでは助からないそんな状態だった。
この時の事は助けたい・・・ただそれだけ・・・魔法学校には通って回復魔法のレクチャーを受けていたが、もちろん魔法が一つも浮かんできたことが無い私には使えたことが無い・・・。
だけど、違った・・・私は魔法が使えない落ちこぼれじゃなくて。ユニークスキルのため普通の魔法とは違う魔法しか使えなかっただけ・・・それを気づかせてくれたのはこの小さくて可愛くて頬っぺたがプニプニなアルちゃんだった。
「〇っ」体中に魔力を循環させ丸を始点から終点へ結べば回復魔法が発動した。そしてこれは、目の前で血を流し今にも死にそうだった赤ん坊のアルちゃんが教えてくれた奇跡だった。
今も、目をつぶればアルちゃんの事を思い出す・・・あの瞬間私の運命は大きく方向を変えた。そしてこの魔法は〇だけではなく、△に□さらに、特殊な使い方をする×とあり、さらにさらに組み合わせて使えば、普通に使ってもあり得ないような強力なこの魔法が、異質の効果を簡単に表し私を驚かせた・・・。
もっともっと私は高見に登れるかもしれない、そしてそれは突然いなくなってしまった私の両親の思いに応えることが出来る魔法使いの頂点へと・・・。
だけど、それは私の間違いだったよ。さっき気が付いたばかりなんだけどね・・・私は今現在、ダンジョンの中に閉じ込められていた。
最悪な事に・・・私一人だけだ・・・付き添いのCランク冒険者も突然消えた私に面食らってるんだろうな~たぶん、罠にかかった私は助け出されることなくここで朽ちてゆくのだろうか・・・。
ダンジョンの最下層に落ちるような罠にかかった私は体中をあちこちぶつけて痛めていた・・・。痛みをこらえながら自分に囲うように大きく丸を描いて〇魔法を発動していた。
「ふうっ良かった。あんな打撲の痛みじゃ動く事すらままならなかったわ・・・それにしても、一瞬っで直っちゃうなんて凄いわ・・・」
魔法学校で習った回復魔法は手を当てた場所から徐々にゆっくりと治っていくような回復魔法だった。もちろん私の〇魔法みたいに一瞬でなんてことはなかった。
こうして、ピンチの時に一瞬で完全回復する私の魔法は最高だわ・・・アル君ありがとう・・・。
だけど、今の状況は・・・最悪だった。まず場所が分からない、落下してあちこちをぶつけていたのでかなりの下の階層に落とされたのは分かったが・・・。
生活魔法の火種を唱える、これは通常の魔法とは切り離された特殊魔法のため私にも使うことが出来たが、なぜか効果はとても薄かった・・・一番使えないと困る清浄は服が上手く奇麗にできない程度ですんでるので良かったが、火種の効果が特に薄く上手く着火できなくて何時も大変だった。
そう、ダンジョンで困ることの一つに火種が灯せないことだ、私はさっき言ったように灯すことが出来なく火花を散らすことで精いっぱいだった。
「何も見えないわ・・・」ここであきらめても仕方がないので火種を連続発動してチカチカした光の点滅の光源を作り出すと、自分の荷物の点検を始めた。
「あった。良かった~」背負っていたバックからランタンを取り出すと火をつける、こんな時の為に私はランタンを用意していたが無駄にはならなかった・・・。
私のユニ魔法の中に灯になるような魔法って無いのかな・・・。今は、調べてる暇はないし無駄な魔力を使ってしまうわけにはいかなかった・・・地上に無事帰還出来たら・・・。
ホンワリとした暖かな光でダンジョンの地面が映し出される・・・。
「きゃっ・・・」そこにはいくつもの屍が冒険者の装備と一緒に横たわっていた。
これ・・・全部私と同じように罠でここまで落ちてきた人たち・・・私が落ちてきた所からたいしてはなれていない場所に無数の装備と骨が転がっていた・・・。
「この人たち・・・動けなかったのね・・・」さっきまで私も体中を激しく打撲して動けなかったのを思い出していた。
「ひどいっ・・・でもこれがダンジョン・・・モンスターが生まれてくるところってのは知っていたけど・・・」
私は上を見上げてみるがランタンの光では光量が足りなく天井は見えなかった、少なくとも数十メートルはありそうだった、という事は落ちてきた所を登るのは不可能・・・ダンジョンんを地上へ向け登ってゆくしかないわね・・・。
次は・・・装備の点検、うんショートソードに体を上半分を隠す大きさのラウンドシールド、食料の入ったリュックもさっきランタンを出した時にあったし、ロストした荷物は一つもなかった。
この後は、上を目指すために階段を探さなきゃ・・・。私は、きっと上手くいく・・・帰れると気力を振り絞りこの真っ暗なダンジョンの空間を歩き始めた。
「・・・出口が無い・・・」
私は壁に沿ってゆっくりと歩いていくが一向に出口らしい階段が見つかることが無かったそして1時間ほどで最初に落下してきた所へと一周して戻ってきてしまっていた。
いま、一周して分かったがどうやらこの落ちた場所は四角形の広大な空間だという事だ、壁伝いでは上りの階段が無かった・・・。そうなると光の届かない壁から離れた場所に上り階段が?
空間の中心であろう方向へとランタンを向けるが、広がるのは真っ暗な闇・・・飲み込まれそうになる感覚に足が震える・・・私はどうしたらいい?アル君・・・。
震える私は目をつぶる・・・アル君の顔が私の瞼の裏に浮かんでくる・・・いつの間にか×魔法を発動し遠視でアル君を見た、そして・・・。
「□っ」私は咄嗟に□魔法を発動して、□の魔法の壁を横に寝かせランタンの光が届くギリギリの高さまで上げると・・・私の前に大好きな人が・・・心の芯に暖かな灯がともるような安心が目の前にパッと広がっていた。




