第十二話 甘えるマヨネーズ
「アルちゃ~んっおっはよ~あら~まだおっきしてないかなあ~」
俺は赤ん坊の時のようにお母さまに朝起こされていた。もちろんベットはチャトラさんに服と防具の注文をした後に買いに行った大人用の物に寝ている。
窓とカーテンの布を開けられると外の新鮮な空気がふわっと部屋の中を満たし俺はようやく目を覚ますことが出来ていた。
「お母さま・・・おはようございます・・・」
「アルちゃんはまだ赤ちゃんなんだからっ無理はしなくてもいいのよっ?ママにいつも通りに甘えてねっ?」
うっうーん・・・確かにまだ俺は赤ちゃんなんだけど、精神は転生前の大人でもありこの世界の赤ん坊のアルスロットでもあるんだよね~正直こんな風に自分以外からどちらかを指摘されると不安定な部分が出てきてしまう。
「そうですね・・・」
「もうっどうしたのアルちゃん元気が無いわっママ心配よ?」
「だっ大丈夫ですっ。それより体が大きくなったせいかお腹がすきましたっお母さまの美味しい朝ご飯が食べたいですっ」
「ふふっもうご飯は出来てるわっ一緒に食べましょうっ」
うん、こんな風に自分の言葉が伝えることが出来てこの姿なら行動も容易だ・・・もう、戻ることはできないんだろうけど大きくなって良かったかなと今は思っていた。
「今日はね~蒸し鶏とチーズをパンにはさんだ物と蒸し野菜よっ、体が大きくなったから大人と同じものが食べれると思うんだけど如何かしら?」
ちょっと、食べて見てっとお母さまに勧められながら俺はサンドイッチ?あっつっあっこれ・・・ホットサンドだ・・・。
角からかじり付くと、中からチーズがとろ~ととろけ出し蒸されたサッパリした鳥ととってもマッチしてとてもおいしかった、が・・・うーん。蒸し野菜も食べて見るが野菜本来の味がするだけで何も味が付いてなかった・・・。
「マヨネーズ・・・」
「えっ?マヨネーズ?それは何?アルちゃん」
「あっえっと・・・」しまった・・・俺はお母さまの作ってくれたホットサンドと蒸し野菜に、つい味のパンチがほしくなりマヨネーズがほしいなと口から出てしまっていた・・・。
この世界は塩が高価みたいで濃い味付けというものが無く素材本来の味付けが基本になっているようだった・・・完璧にマズった・・・さすがにマヨネーズは油と卵で作るのは知ってるけど如何したもんか・・・。
「あ~え~、マヨウネ~、ズっとどうしようかと思い悩んでいたんですっ!!ははは・・・」
「アルちゃん・・・ママに嘘は良くないわ・・・それに、アルちゃん嘘つくのへたくそよ・・・」
うぐっ、貴族で揉まれたお母さまは勘が鋭く一瞬で俺が適当な嘘をついてるのがバレてしまった。
「お母さまっごめんなさいっ!!!」
「もうっアルちゃんっママは寂しいわっ。見た目は大きくなってもアルちゃんはまだ赤ちゃんなのよっちゃんとママを頼ってねっ?そのマヨネーズっていうのもどんなものか分からないけどママが作ってあげるわよ?」
「はい、ありがとうございますっ。その、マヨネーズって・・・・・・」
はっ作り方分からないっ!!!その間にもお母さまのお顔がドンドン曇っていく・・・。あ~う~はっそうだった・・・俺はすっかり忘れていた<ニュースサイト>と立ち上げると(アンサー)の子スキルでマヨネーズのレシピが記事になって表示された。
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645 異世界でのマヨネーズの作り方
脅威度Gランクのコケッコ鶏の卵黄と、油草のしぼり油に少量のスパイシーの実を砕いたものとレーモン汁を良くかき混ぜ乳化させること。
材料費も安く、スパイシーな異世界マヨネーズは味に乏しい食卓を豊かにできる。
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うわっ、まじですかっこれは早速お母さまに作ってもら・・・はっ・・・。
「アルちゃん・・・またママに隠し事?・・・ママ悲しいわっうっううう・・・」
「あっちっ違うんですっ。作り方を度忘れしててっ思い出していたんですっ。それで思い出したので・・・お母さまっ一緒にマヨネーズを作ってくださいっ!!!材料費も安くて色んな物に付けて食べるととっても美味しいですっ!!!」
「えっ、本当にっ?!アルちゃんっマヨネーズを早くママに教えてっ!!!」
「え~と作り方はコケッコ鶏の卵黄に、油草のしぼり油、少量のスパイシーの実にレーモン汁を良くかき混ぜて乳化させて作ります」
「あらっ、どれも安い物だわスパイシーの実はピリっとした刺激のお肉の匂い消しとかに使う香辛料だけど入れても大丈夫かしら?レーモンもとっても酸っぱいのよ?」
「ん~正直作ってみないと分かりません・・・」
私はこのレシピを聞いた時、ある疑問が浮かんできていた・・・なんでこんなレシピをアルちゃんが知ってるのか・・・だけど、今なんで?と聞いてしまうとこの子はたぶん、パニックに陥るんじゃないかと私は追及することはしないようにした。
そして、今はアルちゃんと楽しい時間を少しでも多く過ごそうと・・・。
「それじゃっ作りましょうかっ。どの材料もあるからスグに作れるわっ!」
木製のボールに・・・攪拌するうわっどうしよう菜箸みたいな物しか見当たらない・・・。
「お母さま・・・調理道具が足りません作るのに攪拌する道具がいるんですが・・・」
「ん~それなら大丈夫よ混ぜるだけよねっ?材料は全部入れて混ぜるだけかしら?」
「スパイシーの実、レーモン汁、コケッコ鶏の卵黄を入れて混ぜながら少量ずつ油草の油を入れて攪拌して乳化して固くなったら出来上がりです」
「じゃちょっとやってみるわねっ」
お母さまは手際よく、木製のボールに材料を入れていくと「*****」なにやら言葉を紡ぎ・・・一瞬で材料が攪拌され乳化したマヨネーズが出来上がった。
「うわっ、お母さま凄いっ!!!」
「出来上がりかしら?アルちゃん味はどうっ?うまくできてる?」
俺は、お母さまから銀製のスプーンを渡されチョンとすくい上げ味見をすると・・・。
「おいしいっ!!!レーモン汁が酢の代わりに、スパイシーな後味がとってもパンチのあるマヨネーズが出来上がっていた」
「ふうっう、食べ過ぎました~」マヨネーズがとっても美味しくて、蒸した野菜をパクついてしまった俺はお腹がパンパンになり椅子にもたれかかっていた。
「もうっ、アルちゃん食べ過ぎよっ。でもっふふっこれマヨネーズって言ったかしらっパパは絶対に大好きになるわっ今日はびっくりさせてあげるんだからっ」
ふふふっと微笑むお母さまは、お父さまに食べさせた時の事を想像しながら一日中、ふふふっ笑いが止まらずある意味大変だった。
「アルちゃん、ちょっとマジメな話があるんだけどいいかしら?」
俺は、まじめな話があると言われお母さまの方に姿勢を正して座りなおす。
「アルちゃんは、昨日強くなりたいと言ってたけど・・・それはどんな風にかしら?」
どんな風に・・・まずは自分が強くなることだそれぐらいしか今は思いつかない。その強くも正直どんなものかも分かってないけどね・・・。
「昨日は自分が守れて皆も守れるようになりたいと言いましたが・・・良く分かってないんだと思います・・・。どうやったら強くなれるのかも分かりませんしね・・・」
「そうね~、パパは剣聖になる前は冒険者をしていたのよ。もちろんママもチャトラも一緒のパーティーだったわ・・・」
「冒険者ですか・・・それはどんなことをするんですか?モンスターを倒すことでしょうか?」
「ん~そうねー、ラングはモンスターを倒すクエストばかり受けていたわねっおかげで剣聖まで上り詰めることが出来たわ。横で見ていたママが言うのもなんだけど・・・剣聖ラングは最強よっアルちゃんが皆を守りたいと思うのならパパよりも強くならないといけないかな・・・」
「お父さまはそんなにお強いのですか・・・」
「ええ、とっても強いわ・・・前剣聖様の師事も受けていたぐらいだしねっ。その当時はパパは普通の冒険者だったから特別だったと思うわ」
うわーそうなんだ・・・剣聖の師事は基本的には王の近衛を中心に王国貴族や軍関係者だけだそうだ。現剣聖のお父様は毎日朝から晩まで、剣聖として鍛えているそうだ・・・。
「・・・まずは皆を守りたいと言うのは、実現できそうにありませんねと言うかこの言葉を軽々しく出したことを恥ずかしく思います・・・」
「アルちゃんっその心構えは立派な事よっ、もちろん軽々しい道のりではないことは確かだけどねっ。パパも最初から強いわけではなかったわ・・・むしろ弱かったぐらいなのよ?」
「えっ弱かった?剣聖にまでなれたお父さまが?」ますますお父さまの事が分からなくなった俺は聞き返してしまった。
「そうよっ、なんせ小さい時はチャトラには小突かれて泣いていたし。私もいじめちゃったことがあるのよっふふっこれは内緒にしてね?パパが泣いちゃうからっ」
あっ小さい時か・・・という事は何か強くなることが来た転機みたいなきっかけがあったはずだ・・・人それぞれだろうけどお父さまはどうやって皆を守れる強さを手に入れたんだろう・・・。
剣聖ラングの秘密を少しだけ知ること出来た俺は、まずは自分が守れるように強くなろうと・・・。
「お母さまっ、まずは自分を強くしたいと思います。お父さまと同じように冒険者になってみたいと思います」
「うんっ、そうっそうねっ。アルちゃんなら絶対に強くなれるわっ剣聖ラングの血を引いてるんですものっそれにママの息子ですものっ、あっあとチャトラのバトルスーツとアーマーもあるわね。それにっカトラお姉ちゃんもいるわっ、いい?アルちゃんっカトラお姉ちゃんを見つけて一緒にパーティーを組みなさいっ絶対よっ!!!」
なんか、最後はカトラお姉さんとのパーティーの話になってしまいこの日は話を終え、お父さまにお母さまから今日話した俺のこれからの事を夜に相談してくれるそうだ・・・。
残念ながら、まだ赤ちゃんの俺は夜中に起きているのは禁止でお母さまに寝かしつけられて今日が終わった。