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第百十三話 タナトス

俺は、タナトス・ギルン・グリナダス……現国王アスハブ陛下は俺のお爺様で、そして俺の横にいるのは次期国王になる俺の父上のジェレントだそして……。


「よいですかタナトス、あれが私の弟のラングです。今から聖剣グリナダスを上に掲げます、その光景をしっかりと目に焼き付け日々の糧にするのです」


「はい、母上……」

俺の母上は二代前の剣聖ジャストラン様に師事を受けグリナダス王国史上では初の女性で剣聖の地位を受けていた……。


「輝きは強いが2本か……ラングよ私を超えないでどうする……」


「母上も聖剣グリナダスの刀身にある水晶のようなものが2本輝いたのですか?」


「ええ、そうです。ですが私たち姉弟が師事していたジャストラン様は4本も輝かせたと聞きます」


「母上っ7本あるうちの4本もですか?あの輝きは聖剣を持つことのできる者の力を表しているんですよね?」


「ええ、そうです。歴代のグリナダス王またはその王に忠実に仕える剣聖はあの聖剣を輝かせ民に己の強さを見せモンスターの脅威から守りグリナダス王家の権威を守ってきたのですよ」


「母上っ、俺もっあのように聖剣を輝かせ民から信頼される力を得たいですっ!!」


この時俺は、持つだけで聖剣から力を得る(・・)ことが出来ると小さな子供心に安易な言葉を発していた……聖剣は決して力を与えてはくれないのに……。







「タナトス……宝物庫に勝手に入ったそうですね、何をしていたのですか?」


「そのっ……勝手に入ったことは謝ります」


「私は何をしていた?と聞いたのですが、分かりませんか?」


「はっイっはっ母上……聖剣グリナダスを手に取りました……」

その途端俺は、殴られたのか母上の動きを捉えることなくグラファルン城の冷たい石畳の上にたたきつけられる。


「タナトス……お前の浅はかな行動のせいで、宝物庫を守る兵は涙を流しながら扉を守れなかった事を恥じ自信を無くしてしまっていました。未熟なお前の行動が王国を守る兵の心に影を落としたのですよっ!!」


「あっあの……そのような事になるなんて……それで、その兵は?」


「すっかり自信を無くし、兵をやめるとまで言ってきましたが私がお前が侵入に使った<神鋭>を使い盗賊まがいの事をして誰が守ってもこの扉を死守できなかったと無理やり納得させました」


「あっあの……」


「<神鋭>はジャストラン様から頂いた大切なスキル技の一つ、私たち姉弟が迫りくるモンスターを民たちから守るために血反吐を吐きながら習得したものを……お前は盗賊まがいの事で汚したのですっ!!!」


怒りの声を上げる母上の顔を見ると父上を射止めた美しくそして冷徹で少し切れ長の目が鋭く俺を見下していた。






「ぐあああっ、母上もうっもう無理ですっ!!!腕が折れましたっ!!!」

勝手に聖剣に触れたあの日から俺のへの母上の毎日の稽古は地獄となっていた。


「何を言ってるのですか腕が折れた程度で……剣聖になりたくば最後の瞬間まで諦めぬ心を持ちなさい。それと、腕や足の一本が動かなくなる程度でそんな弱音を吐いていたら何も守れませんよっ!!」


うずくまる俺に母上は容赦なく蹴りを入れ、俺は訓練場の端まで吹き飛んでゆくと気絶しその日の稽古は終わるという日々を過ごすこととなる。




「ベットか……」

折れていた腕は治ってる、気絶している間に貴重な治療魔法を使える魔法士が治してくれたんだな。


「目が覚めましたか……」


横を見ると母上が椅子に座って俺をじっと見ていた……情けないことに俺は小さいころ母上に寝かしつけてもらわなければ寝ることが出来なくて、よくこうして椅子に座る母上を見ながらいつの間にか寝入るという甘えん坊だったのを思い出し顔が赤くなる。


「あの、母上申し訳ありません……稽古の時に情けない姿を見せてしまい」


「ええ、分かっているだけましですが……今からすぐに防具を着用し訓練場まで来なさい」


それを伝えると用は済んだとばかりに母上は椅子から立ち上がりドアを開け俺の部屋から出てゆく。


「あっ……母上」

窓の外を見ると夕日が落ち始めるころか……この時間になると訓練場は兵士が集まり自主訓練をする者たちが沢山いるはずだ……。

また、昼間の様に気絶するまで稽古を兵士たちの前で?また、さっきみたいな醜態を兵たちに見られたら……そんなことが頭をよぎると体が重くなり防具をつけるのにも、もたついてしまっていた。




「タナトスっ!!!なにをもたついていたのですかっ!!!」


訓練場へと重い足取りでゆっくりと到着すると……王国軍最強の剣聖部隊に宝物庫を守っていた兵士が母上と並んで待っていた。



「母上……これは、もしかして俺がこの場で迷惑をかけた兵に謝罪をしろということでしょうか?」


「いえ、違いますよ……あなたには、この宝物庫を守っていたレティアと戦ってもらいます。遠慮はいりません貴方の力をこの未熟者に存分に見せてあげなさい」


「はっ!トリミアティナ様っ!!」


母上は、そのあともレティアという兵に耳打ちをして俺に聞こえないように話した後には後ろに控える剣聖部隊の一人と……たしか、回復魔法士がいたのを思い出し俺がこの兵を叩きのめしても良いように?しかし、この後俺は……。




「宝物庫での事は謝る、だがこの場に立つ以上は本気で叩きのめすぞ」


何時も母上に気絶するまで体も魔力も痛めつけているんだ……そんな一兵士に俺が負けるわけがないと初めて自分よりも弱い者との対戦に心が躍る。


「タナトス様、宝物庫での事はトリミアティナ様直々に私をお許しになってくださいました。そして、私に恥をかかせた貴方を完膚なきまでに叩きのめすチャンスも……」


レティアからは、母上と同じような冷たい冷気を感じさせる目に。俺が恨まれていることは明白だった……。


「はじめよ……」


母上の手が上にあげられ声とともに振り下ろされると……。


「<身体強……があっあっああっ」


レティアが持っていた短剣の代わりの柄以外は円柱の木の棒で作られたものが青い光の矢のように身体強化を掛ける俺の横っ腹に突き刺さる。

そして、腹を抑え前のめりになった後に顔を上げた俺へ冷淡な目をしたレティアの短剣が振り下ろされ一瞬で視界がブラックアウトしたのだった。






あったかい……回復魔法特有の緑のキラキラと光る魔力が俺を包み込み激しく殴られたと思われる顔と腹の痛みが引き傷を癒やすのが分かる……。


「タナトス、すぐに起きなさい」


「あっ……しかし……」


「しかしなんですか?こんなにすぐにやられて気絶、貴方は何も守れませんでしたね」


母上のその言葉に俺は地面に這いつくばったまま上げていた顔を下げそむけてしまう。


「トリミアティナ様、ありがとうございます。このような未熟者に私が侵入を許してしまったのはトリミアティナ様が伝授した神鋭を使えただけなのが良くわかりました」


「その通りですレティアあなたは今まで通りにグリナダス王国の一兵士として尽くしなさい、皆の者も今聞けっ!!!タナトスは私の息子だが剣聖となることが出来るまでは身分をはく奪、お前たちの練習案山子にでも使うことを許す。そしてタナトスお前はこの者たちからのいかなる要請も断ることは許さぬ、それを今回の宝物庫侵入の罰とするっ!!!」



この後も、自己紹介を兼ねた王国軍最強の剣聖部隊総員の訓練が行われるが俺の力は一切通じることなくただの案山子のように立って叩きのめされボロボロになり動けなくなると貴重な回復魔法で回復をし全員の挨拶が終わるまで続けられたのだった。





「タナトスっ!!今日は初心者ダンジョンの踏破だっ冒険者の間ではお手軽ダンジョンなどと言われているが気を抜くんじゃないぞっ!!」


俺は剣聖部隊の荷物持ちを命じられ首都グリナダスの西城門から歩いてすぐの初心者ダンジョンへとやってきてた。


「レティアっお前は荷物持ちの指導だしっかりとしごけっ!!」


「はいっ、ゼルト隊長」


その言葉に、荷物を持つ俺の後ろへと移動しゼルト隊長の出発という掛け声でものすごい速さで初心者ダンジョンへと侵入をしていったのだった。



「おいっ……レティア、こんなに走るような速さでダンジョンを進んでいくのかよっ!」


「そうだ、未熟者。半日が目安だ……無駄口は叩くな」


俺の疑問はどうやらレティアには無駄口と捉えたようで取り付くしまもなく広大な初心者ダンジョン内を走る。



「敵なんかまったくいないじゃないか……しかも、Gランクの食糧モンスターばかり……」


ダンジョンの壁に空いた穴やら崩れた壁の隙間から時たま飛び出してくるGランクモンスターはゼルト隊長の後ろに続く大楯を持った大男のガンダーが一歩前に出て巨大な壁がそこにそびえ立っているかのようにモンスターの突撃を止め弾くと、ジェナス、ロンドの二人が左右からそれぞれ刈り取るように身体強化だけて一刀の元に屠ると砂のように崩れたモンスターからドロップ品を回収する。


「タナトスっドロップ品は残しちゃだめよ?回収後に要らなかったものや持ち切れなかったものはダンジョンの壁際に置くのが決まりだからね」

そして、もう一人のゼルト隊の女性のパナストリーチェは良くしゃべり、不愛想なレティアと幼馴染のようだった。


「パナス。レティアの指導の訓練も兼ねているのを忘れるんじゃないぞ」


「は~い、ごめんなさい隊長」


そんな謝る姿は、結構可愛かった……。


「パナスをじろじろと見るな……けがれる」


「みてっ見てない……可愛いなと思っただけだ。心の中で褒めていたんだ」

母上とそっくりな何でも見透かすかのような鋭い目は俺を緊張させる、そしてレティアは母上の様に美しいなとふと思ってしまうと必ず……。


「ままこん……」


という言葉が必ず帰ってくるのだった。




「ままこんってなんだよ……母上の事なのか?」

そんな疑問をレティアにぶつけるが無視される、そして順調に階段を下っていくと。


「止まれ」

ゼルト隊長が短く指示を出すと俺とレティアを呼ぶ。


「今から、お前たち二人にはFランク冒険者の試験を受けてもらうことになる。このダンジョンは何度も攻略をされている正式にはGランクダンジョンだ。この、GランクダンジョンのボスをCランク以上のベテラン冒険者が監督の元に攻略すればFランク冒険者の資格が与えられる。出現するボスもFランクのゴブリンが多い時で数体だ」


「ゴブリンがボス?ははっ」


「未熟者、笑うな……足元をすくわれる」


「というかレティアが初心者冒険者なのかよ……」

俺は毎日のように、レティアと摸擬戦をしているがスキのない容赦ない強さにいつもボコボコにされていた……そんなやつが?


「私は8歳だ」


「は?俺より2歳も下だったのかよ……えっと、8歳でなんで王国軍の兵士をやっているんだよっ!」


「未熟者には関係ないことだ」


「お前ら……隊長の前でよくもそれだけ無駄口をたたけるものだな……」


「ゼルト隊長、申し訳ありません。すべて未熟者のせいです」


「俺のせいなのかよっ!!」


そんな、俺たちに眩暈がしたのか目じりを抑えるゼルト隊長に無駄話をする俺たちの周りを囲むガンダー、ジェナス、ロンド、パナスは肩をすくめるのだった。




「このGランクダンジョンはランクが低いわりに10層と深い……Cランクダンジョンで3層しかないダンジョンもあるが殆ど人気がないなぜかわかるか?」


「えっ、ランクが高いから?」


「ダンジョンの本当のランクはこのGランクダンジョンの方が高い……見た限りこのダンジョンはじじい」


「冒険者ギルドは出現するモンスターでダンジョンをランク付けしている、Gランクダンジョンでもたぶんグリナダス王国で見つかっているダンジョンの中で最古参のものだ、出てくるモンスターがCランクのダンジョンで新しいものよりも本当のランクは遥かに高いと俺は見ている……」


「だけど、ゼルト隊長。それは隊長の個人的な考えですよね?」


「未熟者、早死にするタイプ」


「一応、Sランク冒険者の俺がお前たち二人のFランク昇格にふさわしいかの見届け役でもある。そんな俺が言うことだ……まあ、これは……頭の片隅にでも留めておけばいいさ。要はGランクダンジョンだろうと気を抜くなと言うことだ。タナトス……特にお前は注意する必要があるな、未熟者だしな」


「そのとおり」


「くっ!だけど、ゴブリンなんかには……さすがに負けないぜ?」


そう、初心者ダンジョンなんか……俺一人でも……。



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