第百十一話 手のひらで踊らされる子ら
「まずは、アル君のステータスを見るか……<ステータス>」
【名前】アルスロット
【種族】日本人
【年齢】8
【レベル】328
【ユニークスキル】
<ニュースサイト>
(タイムシフト/LV4/4min)
(緊急速報/LV2/8min)
(アンサー/LV3)
(最新記事表示/LV2/PT)
(ワイルドカード∞/LV4/ALL80)
<スロット>
(成長/LV2)
(加速/LV1)
(神の目/LV1)
(分神/LV1)
<イージス>(神の盾)
<アブソリュートゼロ>(マイナス273度/液体窒素/ドライアイス)
【スキル】
<基礎魔法>(種火)(集水)(浄化)(微風)(身体強化)
<スラッシュ>(魔力の一刀)
<ラインスラッシュ>(連なる魔力の一刀)
<ライト>(淀みない光)
<ブレイク>(強制開放)
<ライジングスラッシュ>(天より落ちる稲妻)
<フェリンクロウ>(幻獣フェリンの爪)
<コンポジション>(強固な魔力組成)
<リーンフォース>(部分身体強化)
<エクストラクト>(抽出)
やっぱり、アル君は母親似なんだよね~その分、辺境都市オリアのモンスターパレードとか一体多数では無類の強さを見せたけど。
「アルスロット様、緊急の……」
私がアル君のステータスを見ていると、虚栄のドアからヒルダ・トリニテが飛び込んでやってくる。
「ヒルダ、どうしたんだい?」
「えっ……はい、こちらにタナトス様がやってきます。それでその……ご迷惑をかけるかもしれないとトリミアティナ様から伝えるようにと」
「ああ、それは大丈夫だ私が止めるからね」
「あっはい、止めていただきたいとのことですが。実はグリナダス王家の宝剣を持ち出しているみたいで……最悪はトリミアティナ様がご到着されるまで持ちこたえてほしいそうです」
なるほど、トリミアティナには虚栄の指輪は渡されていない。虚栄の指輪のドアは指輪を持たない者は通ることが出来ないのだったな。
さて、どうするか……赤ん坊のアル君を見てみると疲れてしまっていたのかカトラに抱かれてスヤスヤと眠ってしまっていた。
パーティ屋敷の外へと出ると、ピリカの防御しようと上げた腕へとルドガー・ハイドが剣を振り下ろそうとしていた。
「神の盾となり絶対の防御を<イージス>」
左腕に装着されたチャトラシールドが通常の黒から魔力を帯びた青へと変わり私がスキル技の発動を終わらせた時には金色に輝き宙に浮くと防御しようと腕を振り上げるピリカの前へと、理を無視して絶対の防御をしていた。
「なっ!!!」
ルドガーは突然現れた金色の盾によろけた不甲斐ない剣を受け止められると、同じ力で後ろへと弾き飛ばされていた。
「ルドガー、なぜ手を出したっ!!!俺がアルスロット・カイラスに勝負を挑んだ後でなければ……これでは母上が目こぼしはしてくれないじゃないか……」
「もっ申し訳ありません……。あの小娘の言葉に我慢が出来なくなり失態を犯しました……」
この二人は、神の盾を出しルドガーの剣を防いだ私を無視して話始めたのだった。
「くそっ!!どうしたら……勝負事なら母上も多少の事は許してくれるが……弱き者、しかも民に剣を怒りに任せて向けたなんて……どうしてくれるんだっ!!」
「申し訳ありません、この責はこのルドガーがすべて……」
「それが出来たら、苦労はしないっ!!!ああああああああああっダメだこうなったら俺は母上に死んだほうがましだと思うぐらいキツイお仕置きをされる絶対だっ少しでも誤魔化したらさらに痛めつけられる……」
この世の終わりだとばかりに、タナトスはその場で崩れ落ち母上・トリミアティナのお仕置きを想像し絶望の声を上げる。
『緊急速報 聖剣グリナダスの暴走』
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緊急速報 聖剣グリナダスの暴走
グラファルン城の宝物庫より持ち出した聖剣グリナダス、歴代の剣聖の剣技を全て内包する聖剣だが……。
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まったく……VR表示された緊急速報に目を通し終わると、意外と早くやってきたトリミアティナの姿が見える。
「タナトスっ!!!気をしっかりと持ちなさいっ!!!」
「ヒっ!!!母上……ああああああああああああ゛っ!!!!」
緊急速報は8分の猶予があるはずだが、それは緊急速報の元になったタナトスの精神状態という不安定な分岐点の最大の猶予された未来が記事となる……悪いことに今回はトリミアティナを見たとたん8分という猶予ある未来が2分後には聖剣グリナダスを持ち暴走するという未来へと分岐してしまっていた。
「ダメか……今回はついてないね……」
ちらっと、トリミアティナを見るがいかにも心配する母といった体をしてタナトスの名を叫んでいるが……目の奥は鋭く光り抑え込む笑みは能面を作り出していた。
「ぐああああああああああ゛っ」
タナトスの目から光は失われ、自身の意識は無いことが見て取れる……そして叫び声をあげながら手に持っていた聖剣グリナダスを正眼に構えた後、頭上へと高く掲げる。
「さて、何本起動するかな……」
頭上へと掲げられた後には聖剣グリナダスの刀身に煌めく7本のアーティファクトの結晶の内3本が回転をはじめたのだった。
トリミアティナが聖剣グリナダスを見ると7本のアーティファクトが刀身にはまっており……タナトスが頭上へと掲げ終わると3本が薄っすらと輝きながら回転していた。
「ふふふっ、よしっ!!!3本も起動をっ。ジャストラン様の4本には敵いませんが……後はタナトスの正気を……」
「ああ、トリミアティナ様。私はタナトスの正気を取り戻させる当て馬ですか?」
「アルスロット殿っいっいつの間にっ!!」
私はカトラの□魔法の魔法障壁が張られるのを見てから自分の息子が聖剣グリナダスのアーティファクトを何本起動するかに夢中になっているトリミアティナの横へと移動していたのだった。
「トリミアティナ様……少しタナトスがかわいそうではありませんか?このまま、貴方の手のひらの上で踊るのは構いませんが……手のひらは不安定です足を踏み外せば、落ちていくだけ……ですよ?」
「うっそうね……でも、グリナダス王家は力を失くしたわ。この聖剣も初代グリナダス国王はアーティファクト7本すべてを起動し王国の建国と乱立する高ランクダンジョンを攻略したが、今では剣聖と言われる力ある者たちを見つけ出しこの聖剣を持たせ王国民へと平和を約束して王国を保ってきた。でも……今回、エルフィン王国へのモンスターの侵略、辺境都市オリアへのモンスターパレードは表向き剣聖ラングと氷結の魔女ライラが中心となり収めたかのような事になっているけど……。それに剣聖ラングはSSSランクモンスターをエルフィン王国の大森林へと逃がしてしまった責任を負うという形で引退し、今は剣聖の席は空席です……アスハブ陛下は空席もやむを得ないと言われましたが……」
「なるほど、グリナダス王家の者たちかそれに従う者たちの中から聖剣を扱える力あるものを民に示し力を持つ必要があるということですか」
「そうです、アルスロット殿が剣聖となれば我が子にこのようなことをする必要は無かったのですが」
「それは……本当は?自分の息子には剣聖になってほしいと思っているんでしょ?」
「ええ、私も短い間でしたが剣聖をラングの前にしていましたから……息子にも。そしてアルスロット殿が居るこの幸運に今しかないとタナトスへとアルスロット殿が剣聖に選ばれると情報をわざと流してけしかけました」
「アーティファクトは3本起動していたな……無意識下だが剣聖になる才能は有りますね。これを意識下でそしてSランク以上の力をつければいいのですね?」
「ええ、その通りです。聖剣グリナダスを民の前で掲げアーティファクトを起動し力を見せれば剣聖になることが出来ます」
「お話もここまでのようです。不安定ながら聖剣が立ち上がったようなので」
タナトスを見ると、上に掲げて微動だにしなかった聖剣かどうにか動き始め悪いことに正面にいる赤ん坊のアルのほうへと剣先を向けようとしていた。
「アルスロット殿、ばれてしまった今では私は頭を下げるしかありません。どうか……どうか……タナトスをお願いいたします」
うん、いいね~弟の息子の私に真摯に頭を下げる態度……まあ、子供のタナトスは少し気の毒だし私が今からどうこうしてもトリミアティナの考えの手のひらの上に留まれるか分からないけどね~。
「それでは、トリミアティナ様は俺のパーティーの所へ。ある程度、痛めつけ……意識が戻ったら初心者ダンジョンへと行きSランクになることを促しますが」
「ええ、それで……覚悟は出来ています」
私はトリミアティナの覚悟を受け取ると殺さない程度に意識下へと戻るようにタナトスを痛めつけるよう動き始めたのだった。
「<身体強化>全ての攻撃をトレース表示∞。ん~どうしようかな~カーンっ!」
「主……」
「あ~ダメダメっ!私は今はアルスロットだよいつも通りに。それよりも、カーンっ!!魔刃マギアだタナトスが聖剣グリナダスに魔力供給できない程度に痛めつけるぞ」
「主よ了解した」
カーンを引き抜くと鞘となっていた7つのコアが宙に浮きそのうちの一つ銀色の神像のコアが私の呼びかけに答えてカーンの刀身へと取り込まれチラチラと清楚な光を放つ銀色の魔刃が生まれる。
いくつもの見える剣線が赤く空間を塗りつぶすように走ると、また次の剣線が赤く空間を塗りつぶす……。そして、それは幾つも表示されるが分かりやすいようにどの剣線が順番に来るのか1-80のカウントで番号付きで表示され80カウント目でリセットされ1へと戻る。
幅広でグレートソードを思わせる刀身、長さは普通のロングソードよりも少し長めといった聖剣グリナダスは剣速が速く受ければ重いと良いとこどりの剣といったところで、そこからタナトスが繰り出す剣線はラインスラッシュとは違い線では繋がらずスラッシュがほとんど同時にそれもカウントオーバーするほどの速さで私へと襲い掛かってきた。
「ちっ、これは問題ありだな……カウントが重複しすぎてどれが一番最初か分からないではないか。仕方がない……<リーンフォース>」
私は身体強化の上位魔法である部分強化魔法・リーンフォースを心臓へと発動させると一気に流れる血液に全てが早回ししたような感覚にとらわれるが大量の血液を送る強化された心臓のおかげでそれに合わせて体を動かすことが出来るようになり、カウントを無視して片っ端からそれ以上の剣線をぶつけ相殺する。
「うぐぐぐううううううっっ!!」
何千何百もの繰り出される剣を全て撃ち落としながら魔刃マギアがタナトスから魔力を吸収すると苦しくなってきたのか声が漏れ出し……。
「があっ<神鋭>」
相手の虚を突き神のごとく鋭さで剣を振り下ろしてくるが、私にはすべて見えている赤い剣線が正面から左後方へとアーチを描いた後、視覚外からタナトスの聖剣が私へと振り下ろされる。
「……<加速>」
リーンフォースで部分強化された心臓は加速で通常の数百倍の思考を始めた脳に必要な大量の血液を送る。そして通常の数百倍の思考は周りの景色をほぼ止めてしまう中、強化された心臓から送られる大量の血液が体を動かすとタナトスの剣を弾き飛ばし左拳を握りしめ聖剣を弾かれガラ空きになった胸へと軽く殴りつけると加速を解除したのだった。
「あっああ……があっあああ……」
痛みからか、震えるように私が加速の中で軽く殴りつけた胸を触ろうとするがさらに痛みが増しただけで濁った痛みの声を上げるとタナトスの目に意識が戻る。
「タナトス聞こえるか?今から言うことをよく聞くんだ。君は今から初心者ダンジョンへと向かい10Fを攻略するんだ。たぶんSランクのモンスターがボスとしているはずだ……そして、その攻略が君への母上からのお仕置きとなる」
私は、三種の神の宝箱からアルが作り出した回復の魔法薬がぱんぱんに皮袋に詰められたものを渡すと使い方を簡単に伝え立ち上がりタナトスに背を向けスヤスヤと眠る赤ん坊のアルのほうへと戻ったのだった。




