第百六話 開かれる門
「じゃアシェル、Fランクダンジョンにボスアタックして夕方までには帰るよ」
「あっ、ウルカさん。このまま何も言わずに談話室へとお願いしますね」
「うん?それはどう……」
「ダメですっ!何も言わずです、とにかく談話室へとお願いします」
ちょっと機嫌が悪くなったSランク冒険者のウルカさんに新しい3つの水晶球の透かしが入った冒険者カードを渡すと、一瞬硬直し私に鋭い目を向けるが私がこくりと首だけを動かすと横を向いて静かに談話室へと入ってゆく。これで、108人目だったかな……バルキリエの10人とガンブルグの6人に後はペアから個人のC~Sランクのベテラン冒険者を談話室へと送り出していた。
「やあ、アシェルそろそろいいかな?」
「はい、イオスギルドマスター大丈夫だと思います。明日以降にも有資格者が出るとは思いますが今日のような人数にはならないと思います」
「ははっ、できれば皆が使えるようになるといいんだがね。下手すると使えない者たちから苦情が来そうだね~ん~~こまったね~」
「イオスギルドマスター……早く説明に行ってください。すぐにアルカ副ギルドマスターを」
「アシェル、私はもう準備できているよ。今日は冒険が広がる記念すべき日だからね、ああっこれはすごいな……」
アルカが自分の3つの水晶球の透かしが入った冒険者カードに触れると、今まで見えなかった冒険者用の虚栄の門が現れていたのだった。
「うわっ!!イオスギルドマスターにアルカ副ギルドマスターにアシェルさんだ……チッタ今から何が始まるんだろうね?」
「ティタお姉ちゃんっ!!しっし~~~私たちもCランクになってベテラン冒険者の仲間入りしたけど皆が静かにしてるからそれに倣ってよ~ほら~皆の視線が痛いよ~」
「バルキリエのリーダー姉妹、お静かにお願いしますね。皆さん今からイオスギルドマスターより説明があります」
一同、静まり返ると少し明るい感じでイオスギルドマスターの話が始まるのだが今この場に集まった者たちは今日という日と今冒険者である事と選ばれた幸運を盛大に喜ぶんだろうな~と、話始める瞬間から皆の顔が見ものだった。
「冒険に出るために急いでいる所を集まってくれて感謝するよっ、今日は君たちに起こった冒険者カードの変化……いや資格ありと選ばれたというべきかな、とりあえずおめでとうっ!!」
その、核心を言わないしゃべり出しに肩透かしを食らった108人の冒険者たちが今度は騒ぎ出す。
「イオスギルドマスター、アシェルの態度からしてただ事じゃないと理解して黙ってここに集まったんだ。いい加減に核心をしゃべってほしいんだが?」
「おうっ、そうだぜっ!」
Sランク冒険者のウルカとゼルトがここに集まる者たちの心の声を代弁すると。
「うんっ、そうだね。では言おうっ!!ここに集まる君たちは虚栄の門を使用するに値する人物と冒険者システムに選ばれたよっ!いや~君たちは幸せ者だね~昔の人たちはこの幸運な瞬間に冒険者でいられなかったなんてなんて不幸なんだっ!!!」
「いやっ……イオスよう、お前の性格が昔っから変わらないのは分かっているが……」
「うっん……ウルカ、私が補足しよう端的に言うとここにいる君たちは虚栄の門という王都グリナダス、辺境都市オリア、農業都市エルヘブン、エルランダ教国を結ぶ虚栄の都市への入場を許可された」
その説明に、集まった冒険者たちはさらに頭の上にはてなが浮かぶほど考え込むが誰一人として答えは出てこない。
「あっあの~アルカ副ギルドマスター」
「なにかな?ティタ」
「その虚栄の都市へ入場することが何か良いことが?そもそも虚栄の都市って何でしょうか?そんな都市の名前は聞いたこともありません……」
「ああ、私も聞いたことがないな。イオスどういうことだ」
「おい、ウルカ……皆の前だちゃんと敬称をつけろ」
「ああ、構わないよ~ウルカが怒っちゃうのもわかるしね~私の説明が悪いのと……う~ん、アルカ副ギルドマスターの説明でも、ははっ分からないよね~」
あっけらかんとしたイオスギルドマスターは、口頭での説明は無理だとあきらめているのか特にそれ以上は説明することはなく……横にいたアシェルにバトンを渡す。
「それでは、皆さんイオスギルドマスターとアルカ副ギルドマスターの指の先を見てください」
私は、虚栄の都市の説明は現地に行かないと理解できないだろうということで、新しくなった冒険者カードの使い方を広い談話室のそれぞれ左側にイオスギルドマスター、右側にアルカ副ギルドマスターを配置してカード説明を始めたのだった。
「特に難しいことはありません、皆さんのカードには三つの水晶球の透かしが入ってるはずです。まずその三つの水晶球の透かしが虚栄の都市へとつながる冒険者用虚栄の門の使用許可が下りたことを示します。皆さんも自分の冒険者カードをそれぞれ確認をお願いします」
すると、それぞれの冒険者たちが一斉に胸元から首に掛けられた冒険者カードを取り出し確認のため見ていく。
「うわ~奇麗……チッタも見てみて~ほらっほらっ!!」
「もうっ、ティタお姉ちゃんっ!!みんな同じだよ~私のも同じように虹色になってるから~」
ぐいぐいと押し付けるように見せつけ合う姉妹に、バルキリエたちの中で笑いが起きる。
「さっき、ちらっと見たときは透明の水晶だったが……今は虹色に色がついて見えるね……アシェルこれはどういうことだい?」
ウルカは先ほど、冒険者カードを返してもらった時と見た目が違うのにアシェルに問う。
「はい、それはですね。このように虹色に三つの水晶球が色づいているときは各都市と国の冒険者ギルドに設置された虚栄の門が使用できることを表しています」
「へ~、なるほどね。そこは便利だが……使いたいときに虹色になっていなきゃ使えないってことだろ?不便なんじゃないか?」
「使用時間は朝の6時から夕方の17時までとなっていますが、多少前後する場合がありますので冒険者カードの透かしの三つの水晶球が虹色に色づいているか確認して利用をお願いします」
「はーいはーい、それじゃあその時間を過ぎて冒険者カードの三つの水晶球が虹色に色づいていないときは虚栄の門っていうのが使えなくて、虚栄の都市に行ってた時に時間切れになっちゃったら帰ってこれないってことですか?」
「テッタさん以外に理解が早いですね。その通りです、虚栄の門が閉まったら次の日の朝6時までは虚栄の門を使用できなくなり、それぞれしまった時点で居る都市で宿をとってもらうなりしてもらう必要があります」
この説明をすると、皆が一斉に静まり中には震えだすものが出始める。
「いっいま……なんて言った?」
「えっ?どの部分ですか?ゼルトさん」
「あっそりゃあ……なあ、なんかその……間違ってるかもしれねえが……その虚栄の門っていうのは、あ~なんていやあいいんだっ!!」
「あっ、ゼルトさんが思うように虚栄の都市にすべてつながっていますよ?ですから虚栄の門が開いてる間は各都市にほぼ一瞬で行くことが出来ますよ?」
「はあっ?なんだってっ!!!イオスそれはホントなのかいっ?!」
「あ~ははっやっと理解してくれた?ねっすごいでしょ?今日という日に思わずおめでとうっ!!!と言っちゃうだろ?」
イオスギルドマスターが肯定することで、一斉にここに集まった108人の冒険者たちに理解が広がり狂喜乱舞の大絶叫を皆があげるのだった。
「すげえっすげえぜっ!!この虚栄の門が使えれば……俺たちは遠くのまだ行ったことも無いダンジョンやフィールドを冒険することが出来るんだっ!!!うおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
「Sランクの認定の為、わざわざ辺境都市オリアまで歩いて行かなくていいんだねっ。ああっなんていうことだい」
「アシェル、質問いいか?」
「はい、何でしょうかガイルさん」
今まで、一切口を開かず黙り込んでいたガンブルクのリーダーのガイルさんから質問が投げかけられる。
「これは、ダンジョンの中でも使えるのか?例えばピンチになった時にその虚栄の門が現れるとか……なんてことは」
「ガイルさんいい質問ですね、残念ながらこの冒険者用虚栄の門は各都市と国の冒険者ギルドに設置される虚栄の門の使用許可です。その他にも商業目的とした巨大な虚栄の門と、虚栄のドアと呼んでいるドアタイプの小さい虚栄の門は使うことはできません」
それを聞くと、ガイルはガクッと肩を落としてしまうが横にいるチッタから逃げる時に使えたら良かったですよねと慰められるとすぐに元気になるのだった。
「んんっ、その虚栄の門には種類があるということだが……私たちが初めて使うことが許されたわけではないんだな?」
「おうっそうだな……商業と言ったら最近、食べ物が安く美味くなったよな……コケッコ鳥の肉しか食べたことがなかったが。最近は新しい何って言ったか忘れちまったが何とも美味い串肉をこの前食ったぜ?もしかして関係があるのか?」
「ええ、関係がありますよ。ほぼ一瞬で各都市に行くことが出来るようになった為に荷運びのコストダウンに、今まで交易さえなかった遥か遠くのエルランダ教国ともつながっていますから、ゼルトさんが食べたという新しい肉はエルランダ教国から来たウルムというGランクモンスターの肉だと思いますよ?」
虚栄の門がもたらす、巨大な特権に冒険者たちの顔がダンジョンの奥底でお宝を見つけたような体の奥底からの笑いと笑顔が止まらなくなっていたのだった。
「それでは、今から冒険者用の虚栄の門を使ってみようか~諸君っ私の後に談話室を出て各々の冒険者カードに触れながら冒険者ギルドの出口の横を見てくれ、そこには3mほどの大きさの虚栄の門が見えるはずだ、そして冒険者カードに触れたままくぐれば虚栄の都市の冒険者ギルドへと入ることが出来るまずはそこへと移動だ」
イオスギルドマスターの声で一斉に動き始めた資格在る冒険者たちは自身の冒険者カードに触れながら談話室を出ると思ったよりも大きく感じる虚栄の門に、そして中には冒険者カードから手を放し。
「うわっうわっすごいよチッタっ!!冒険者カードから手を離すと見えなくなっちゃうっ!!!」
「うっうん、ティタお姉ちゃん見えなくなった……すごい、どうなっているんだろうね?」
「ぱっぱっぱっ、やっぱすごいよっ!!ほらほらっチッタもやってみなよっ!」
「うっんうんティタお姉ちゃん分かったから、ねっ」
遊ぶのはやはりこの姉妹だった。
「おっおい……チッタ大丈夫か?」
「えっ、もしかして~ガイル怖いのかな~?」
「テッタお姉ちゃんっ!!ガイルさんをからかわないでよっ私だって怖いんだもんっ」
「もうっ、チッタ~ちょっとからかっただけだよ~可愛い妹をとられちゃったんだからこれぐらいいいじゃん~ほらほら~」
ティタはチッタを怒らせてしまったと思ったのか、虚栄の門を出たり入ったりを繰り返して大丈夫と不安な二人に見せる。
「あの……後ろが混むので早く虚栄の都市へ行ってください……続く皆さんも止まらずに」
受付嬢のアシェルが注意するまで、未知の門は姉妹渋滞が続いたのだった。




