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第百三話 つけるでちゅ

エルランダ教国で魔族だったピリカをどうにか人族に戻すことに成功し、カルマータさんの母であるラメルダさんも元に戻すことが出来るだろうと先が見えたせいかカルマータさんが俺にくっ付いて離れない……。


「んっ、・・・・・・・・・・カルマータくっつきむし

カルマータさんのそんな姿にムスッとした顔でグイッと手を伸ばし俺の手を取るルーチェさん。


「ちょちょっと待ってください、俺はピリカさんをおぶっているんですから。これ以上、くっついたり手をうわあっ!」

俺は片手をカルマータさんに腕を絡まれ、もう一方の手はルーチェさんに対抗だと言わんばかりに手を握られ、背負うピリカさんを前傾姿勢になり何とか俺の背中に乗せていたのだったが。


「ちょっと~ちゃんと背負ってよ~ピリカちゃんは人族に戻ったばかりで体がまだ動かないんだもん~アルスロット、ちゃんとこんな体にした責任は取りなさいよ~」


「あっあの、ピリカお姉ちゃん……責任って?」


「ん~、とりあえず私をベットまで運ぶことね~」


「ちょっと、貴方……さっきまでは敵でしたのに馴れ馴れしいですわね。アル様はあなたのモノではありませんよ」


「ふ~ん、この子って剣聖ラング様の息子でしょ? 顔がそっくりだしちょっと柔らかい感じだけどまだ8歳ぐらいなの? ピリカちゃんを倒しちゃうなんて将来はお婿さんにしてあげるわよ?」


「はわわわっピリカお姉ちゃん何を言ってるんですかっ。アルお兄ちゃんのお嫁さんはもう沢山いるんです」


「え~ピリカちゃんも仲間に入りたいな~」


「んっ、・・・・・・(あなたはダメ)


「ピリカちゃんは剣聖ラングにあこがれていたんじゃないのっ?」


「ん~そうだった、剣聖ラング様に合わせてくれたら許してあげるわ」


パーティー屋敷に戻り一つ部屋をピリカちゃんに提供してベットに寝かせた後はメリダさんにお世話を頼み、俺は冒険者ギルドへと向かったのだった。







「ラヴィちゃんっ! おはよう、お話ししに来たよ」


「アルおにいちゃまっでちゅ!!」


俺の声を聞き留めたラヴィちゃんは朝の混雑する冒険者ギルドのホールの中を駆け寄ってくるが。


「あっっ!!」


甲高い驚きの声の後には俺の方へと思いっきりヘッドスライディングをするように転んでしまっていた。


「「「ラヴィちゃん!!!」」」


大勢の冒険者がその転ぶ姿にラヴィの心配をする異様な光景が広がり……一人の女性冒険者が助け起こすとその周りは心配する冒険者で輪が出来たのであった。


「ラヴィちゃん大丈夫かな? 怪我は?」


「うっうっ、転んじゃったでちゅ……おひざがいたいでちゅ……グスッ」


その言葉に膝を見ると丸く皮がめくれじんわりと血が出てきており、それを見た女性冒険者が声を上げる。


「ちょっとっ!! 誰か回復魔法士はいないの? っているわけないか……」


「回復魔法が使えてりゃ、ラヴィちゃんのケガならここに居る奴は皆喜んで治すぜ……使えればだがな」


「仕方がないわね、清浄系の基礎魔法で傷口を洗うしかないか……ラヴィちゃんはもう自分で出来るかな?」


「はいっできまちゅよ、<クリーン>っ……うっう~しみるでちゅ、いたいでちゅ」


むーと、顔を歪めながら基礎魔法で傷口を洗う……。


「だれか、薬草をだしてっ!!」


「ほっほら、さっき取ってきたやつだ。朝露の薬草だから効果は高いはずだ」


「おっないすっ! よしっ奇麗になった。ラヴィちゃんちょっと苦いけど薬草の葉っぱを1枚食べておくんだよ、これで数日(・・)で治るはずだ」


「はいでちゅ、おねえちゃま、おじちゃま……ありがとうでちゅ。うっとっても苦いでちゅ……おいしくないでちゅ。うえっうえっ……」


モグモグと小さな口でかなり大きな薬草の葉っぱを1枚だが食べ始めるが、あまりの苦さと不味さに途中で吐き出してしまう。


「あっ! やっぱまだラヴィちゃんにはきつかったか~ごめんね……飲みやすい薬草紅茶なんかあるといいけど……あんな高いものは手が出ないからね。少しでも口にするだけでも違うから無理はしなくていいんだよ」


「はいでちゅ、ぜんぶ食べれなくてごめんなさいでちゅ……」


「いいんだぜっ! 俺なんかラヴィちゃん位の時は一口も食べれなくてな、後で熱を出したりして大変だったぜ。わはははっ」


「ふふ、お姉ちゃんもラヴィちゃんよりも食べれなかったわっ」


「みなちゃまも、薬草は苦手でちゅか?」


「ああ、こんなおじさんになっても未だに薬草は苦手だっ」


なるほど……そういえば薬草は飲むものだったな……カトラお姉さまのバラス家の存続を脅かしたあの流出事故の時は毒消しの魔法を掛けながら煎じて飲ませたんだっけ……やってみるか。


俺は、胸の青いボタンに触れながら神の宝箱の中に大量にしまってある薬草と食材の一つをそっと手の中に出すと……。


「<浄化><アブソリュートゼロ>」神の宝箱に入れた時点で汚れなどはクリーニングされているはずだが念のため浄化で奇麗にし、アブソリュートゼロで凍り付いた薬草と食材は手の中でサラサラと崩れ始めるが……これじゃまだ足りないだろうな。


理想は、高濃度でクリーンであることと薬草と食材が魔力で強固に結びつく事……手の中にそんな思いを形にするため魔力を集中する。


「<コンポジション>……出来たか?」


失敗する事は出来ないからな……ニュースサイトにアンサーを渡すと……。


@@@@@@@@@@@

アルスロットの魔法薬


従来は、食べることによりケガや病などの経過を改善する薬草だったが。味は苦く噛むほどにえぐみが噴き出し大人でも食べるのは困難だった。

その為、乾燥発酵させ赤いお茶としたものが開発されたが高価であり一般の民が口にできるようなものではなく、さらに効果が薄れており普段から飲む必要があるため貴族専用の薬草茶となっている。


今回開発した物は、アルスロット・カイラスが瞬間凍結粉砕させた薬草と甘草を強固に組成制御をし精製された新しい魔法薬で低コストで作成でき大量生産後は永久的に効力が薄れないため冒険に持ち出すのにも適する。

従来のように飲めば体の中から、傷口を覆うように塗りこめば瞬時に傷を塞ぎ止血をする。

@@@@@@@@@@@@


「うん……なんかすごい魔法薬になっちゃったみたいだ……」


「アルおにいちゃま、どうしたんでちゅか?」


俺が手をギュッと握りしめ、戦闘魔力を手に集中してたのが周りに集まる冒険者にもバレており中には青い顔をしてガタガタと震える者たちも見ることが出来ていた。


「あんた、何をしてたんだい……その魔力、私達を殺す気なの?」


「ごかいなんでちゅ、アルおにいちゃまはそんな事をしないでちゅっ!!」


「ラヴィちゃんがそういうのなら……だけど何をしてたんだい?そんな戦闘魔力を手に集中させて……」


俺は、作り出した魔法薬を手のひらを開き見せる。

「ラヴィちゃんが薬草をそのまま食べるのが辛そうなのと、回復魔法士は怪我をした時に必ずいるわけでもないので……」


「それで、この真っ白で輝く粉は何だい?」


「即効性のある回復薬です。魔法薬ですので効果は時間がたっても薄れることはありませんので携帯にも優れています」


「なんだって?それはホントなのか?」


輪になる冒険者たちの間からも、即効性のある回復薬と聞きざわつく……。


「わははっ、即効性のある回復薬だと? それでは回復魔法士が回復魔法を使うように短時間で傷がふさがり治るという事なのか?」


「はい、そうなりますね。ただし、回復魔法士の回復魔法は重症の傷をも治しますので同じと言う訳ではありません。重症ではない傷の回復や、重症でも回復魔法と併用することで生存率を劇的に上げることが出来ると思われます」


「だけどよう……ラヴィちゃんにそんな見たこともない魔法薬なんか、大丈夫なのか?」


「そうね……悪いけど、君……セラフィムのアルスロットだったかしらね? カルマータさんとルーチェさんはベテラン冒険者で私は駆け出しのころにお世話になった事があるわ……」


女性冒険者が向ける視線は、怪しい魔法薬を小さなラヴィに使おうとする不審者を見る目であった。


「アルおにいちゃまは、いいひとでちゅよ? ラヴィの為におくすりをつくってくれまちゅた」


くいくいと背の高い女性冒険者に、俺の事を信じるに足る人物だと訴えかけてくれる。


「まあ、私達もラヴィちゃんが心配で……やはり魔法薬は何かあっては、だしね……」


「そうだな、魔法薬はろくな効果も無い物が以前に出回った事があるからな……その時は腹を下しただけで済んだが」


一人のベテランらしき冒険者がそんな経験談を皆に聞こえるように話す。なるほど……まあ、当たり前だよなその場ですっと作った魔法薬なんて信用できるはずがない。


「ラヴィはアルおにいちゃまを信じていまちゅから、アルおにいちゃまの魔法薬をつけてみたいでちゅよ」


「ラヴィちゃん、いいの? 魔法薬って作るのがとっても難しくって。さっき、あそこのおじちゃんが言ったように偽物や効果が無かったりお腹が痛くなっちゃうものも出回った事があるのよ?」


「だいじょうぶでちゅっ!!」


我慢できなくなったのか俺の手のひらから輝く白い粉を手に取り、ペロッと舐めると……ぷるぷると震え始める。


「あっま~~~~~~いでちゅっ!!! アルおにいちゃま、とってもおいしいでちゅよっ。あとキズにもぬればいいんでちゅか?」


「あっうん、たぶん瞬時に傷がふさがるはずだよ。もう舐めちゃったけど少し舐めるだけでその後の経過も良くなると思う」


さらに、ラヴィちゃんは俺の手から魔法薬の粉を取ると自分ですりむいて血がじんわりと出る膝に被せるように手を置く。


「うっ!!」


「どうしたのっ? 痛いの? やっぱり……」


「くっくすぐったいでちゅっ!!! なんかむずむずくすぐったいでちゅっ!!! …………すごいでちゅ、治ってまちゅよ……」


ラヴィちゃんはむずむずくすぐったいのが収まると小さな手をどける、にじみ出る血は消え丸く縦に擦り切れていた傷も少し肌の色がキラキラと光っているように見えるだけで元の転ぶ前の状態に治っていたのだった。


「なんだ……これは……おい……擦り傷が治ってるじゃないか……」


「うきゃあーすごいでちゅ、けがが治りまちゅたっ!!!」


呆然とラヴィの治った膝を見る冒険者達の輪の中心で喜び叫ぶラヴィであった。




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