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第百話 天より落ちる者

「ピリカ……食事が終わったかい?お前にはエルランダ教国へ飛んでもらうよ」


アーティファクトの力を引き出す素養があるものは魔族となり、体は青く背中には魔力で生成される羽が生え空を自由に飛ぶことができ、また魔力炉からアーティファクトを引き抜き見た目には通常の人族の姿を保つことができていた。


「え~~~~、ラメルダ様~ひっど~いピリカは疲れちゃったし食後はお腹いっぱいで動けないもんっ」

プリプリとホホを膨らませ、嫌々をするが内心はラメルダに逆らったことに後悔し足が震えているのを粗暴なダルガンに見られる。


「へっ、飛ぶのが怖いのか?足が震えてるぜっふひゃひゃひゃっ」


「ちっちがうもんっピリカは……思わずラメルダ様の言いつけに反抗しちゃったから……あれを思い出して怖くなっちゃったんだもんっ!!」


ピリカのアレとは、出発時にラメルダが少し魔力を解放した時の圧力に3人とも逆らう気力を無くした時の事である。


「それならば、すぐにエルランダ教国へと偵察に飛ぶんだな……」


「ふ~んだ、分かってますよ~だ。ピリカはラメルダ様の言うことはちゃんと実行するも~ん」


「いいかい?ピリカ……くれぐれもやりすぎるんじゃないよ?分かっているね?」


「は~い、ピリカは良い子ちゃんですもの~・・・・・・・・・(わかってますよ~だ)


ラメルダからの尋常じゃない魔力の乗った眼力に、軽い言葉とは裏腹に体の震えが止まらない。


「けっ、俺達はまた馬車を担ぐのかよっ。ラメルダ様、あんたには逆らうつもりはないがストレスがたまるぜ、クソッ」


「クケケケ、仕方がありませんよさすがに怪しまれないように各国に入るにはそのグリナダスの貴族の紋章が入った馬車が必要ですからね。もっとも早馬で私のマンド家を犯罪貴族として手配されていたら逆に面倒ですがね」


「ウング殿それは無い、どの国も連絡がいきわたるには相当な時間がかかる。今向かっているエルランダ教国には我らを追い越し手配は回っていることは無いはずだ」


「ふっ、そうだといいがね。それを今からピリカには見てきてもらうよ」


「ケケケッ、ラメルダ様それはもう大丈夫でございます。今のエルランダは死の国となっているはずですヒヒヒッ」毎回、気持ち悪い笑い声をあげるウングは色々と貴族たちを裏からそそのかし動かしていた人物で、見えるのは死の香りを放つ教国だと断言する。


「そうだといいがね。ピリカっしっかりと偵察してくるんだよっ分かったね?」


「はいはい~ピリカちゃんにお任せ~と~うっ!!」


体の奥底に有るアーティファクトに魔力を流し自身の魔力炉へと融合すると瞬時に体は青く変化し背中からは羽が生え、ぴょんと飛び上がるようにジャンプした後にはふわりと浮き上がり一羽ばたきすると瞬く間に上空へと飛び上がったのだった。



「……さて、どうなるかね」その様子を最後まで見送ったラメルダの呟きはウング、ダルカン兄弟には聞き取られることなくエルランダ教国の手前で体を休めるのだった。





「びゅ~ん、はやいはやい~い。健康な体ってすっご~い、グース・ブヒクの怪しい薬を飲まないでも私はこんなに元気~で、体の奥底からあふれ出す魔力でつっよ~いっ!!!うふふっ、こんどラメルダ様にお休みを貰ったら剣聖ラング様に決闘を申し込まなくっちゃっ!!こんなに強くなったピリカちゃんを見たら絶対にびっくりするよね~っ!」

天高く飛び上がった後には、東のエルランダ教国へと体を向ける……高く上がりすぎたのか前方ではなく遥か先に見下ろすかたちで六つの頂点がある星のような形のエルランダ教国が見えていた。


「う~ん、あれがそうだよね~こんなに高く飛びすぎたら大きな国もこんなに小っちゃくなっちゃうのね~きゃははっすっご~い、指でつまめちゃうぐらいちっちゃ~い!」


そんな、指でつまめるほどの小さく見えるエルランダ教国を見て遊んでいると……。チカッと眩しく光り少しすると教国全体が霧がかかったように真っ白く見え、そしてスッと霧が晴れると……今度は緑の煌めく光がエルランダ教国からあふれ出し、それはコップから溢れ出る水のように放射状に大地へと広がり消えて行く。


「なになに~いまの~?あれれ~おかしいな~ちょ~キモキモ~ウングは、エルランダ教国は死の国だっていってたじゃ~ん。これは、早速見に行ったかいがあったかも~」



羽を大きく広げ天高くからエルランダ教国に向かい降りるにはただ風にその身を任せればいいだけなのだが……。


「ウキャッ!眩しっ!!もうっさっきから何なのよ~はえっ?ひょええええっ!!!体が言うことを聞かない~うぐぐぐっなんでっ!!*@あldw@」


ドンッと体を思いっきり地面に叩きつけられるような衝撃と共に大きく風を受ける為に開いた羽は衝撃で穴が開き……荒れ狂う魔法の風に捕らえられ、きりもみ状態となってしまったピリカはエルランダ教国へと落ちていったのだった。





「はわわわっ、お空から人が落ちてきました……」

エルランダ教国民へと<かぜのこえ>を使い大聖堂の前に立ち大事な基礎魔法を教えるアリアの目の前には突然空から落ちてきた者が血を大量に流し横たわっていた。


『ふふっ、どうやら覗きをしていた悪い子ちゃんがいたようですね』


「オーチャコ神様……この方は、覗いていたのですか?」


『ええ、まさかエルランダ教国が見事に復活し毎朝、アリアの指導で基礎魔法を使いこのエルランダ教国の大地を豊かにする朝の教国民のお勤めが、この者に罰を与えたようですね』


「えええっ、じゃっ皆の基礎魔法のせいでお空を飛んでいたこの女の人が……はっ!!空気を温めて、水蒸気を出して、散らすために微風を吹かせたけど……」


『どうやら、基礎魔法から塵も積もれば超大規模魔法となったようですね。素晴らしいですね、これほどの威力の魔法がアリアの声一つで実現するとは』


「はわわわっ、どっどうしよう……このままじゃこの女の人死んじゃいます。血がさっきからあふれて血だまりに、腕と足も変な方向むいちゃってます……」


はわわっはわわわっと右往左往するアリアは基礎魔法の朝のお勤めの最後を締めくくったばかりの、空からの墜落であった。


『ここまでの大ケガでは、アリアの魔法ではどうにもなりません。あなたの魔法は深い傷などには向いていませんからね』


「そっそれじゃ、この人は死んじゃいますっ!!」


『アリアはこの者を助けたいのですか?』


「もちろんですっ!!私のせいでこの人はこんな大怪我をしちゃったし……」


『ふふっ、良いでしょう。簡単な事ですカトラとアルスロットを呼びなさい』


「ふえっ?カトラお姉ちゃんとアルお兄ちゃんを呼ぶんですか?でも……いくら<かぜのこえ>でもここからグリナダス王国までは……」


『はあっ、何を言ってるのですか……あなたは虚栄の指輪を持っているのでしょ?今ここでドアを開きすぐに連れてくるのですよ』


「えっそうでしたっ!でも、呼んでるうちに死んだりは……」

ちらりと目を向けるとやはり血は……あふれ出てる……。


『ほらほら、そんな事を言っているうちに時間はどんどん過ぎて行ってしまいますよ。この者は魔族ですから簡単には死にませんから安心しなさい。ただし、このまま放置してはいつかは力尽きますよ』


その言葉にやっとアリアは虚栄のドアを目の前に出しアルスロットとカトラを呼びに行くのだった。






「アルお兄ちゃんっ!!起きてっ!!!」


アルお兄ちゃんのお部屋は1階の専用の虚栄のドア設置部屋から、中央のエントランスにそびえる豪奢な階段を上がった奥にある部屋で、扉は左右に二つありどちらの階段から上がってもいいような作りとなっている、そんなドアを私は相当焦っていたのかバンッと爆発するかのように乱暴に開け放ってしまっていた。


「アリア~ば~んなのじゃ~」


「あえ?ヴァルお姉ちゃんっ!!何やってるの?」


「ん~わらわはもう寝る時間なのじゃ~昨日からアルと変わりっこでここで寝てるのじゃ~」


「え~ヴァルお姉ちゃんここで寝てるの~?・・・・(いいな~)

ベットを見ると、まだ起きないアルスロットの寝顔をジーと見ていたらしいヴァルが巨大なベットの淵に頬杖をついて見つめているという……アリアからしたらとても羨ましい光景が広がっていたのだった。



「それで、どうしたのじゃ~?アルはもうちょっとしないといつもは起きないのじゃ~」


「えっうっそうなんだ……どうしよう……、すぐに起こさないとあの女の人死んじゃうかもしれません」


「それなら、起こせばいいのじゃ~。ヴァルの大人の魅力で起こすのじゃ~」


ババッと服を脱ぎ棄て、裸になると体がうっすらと光を放ちながらヴァルが大人の女性の姿へと変わって……あまりの変わりように私はただずっとその変化を見つめるしかなかったのだった。




「はわわわっ!ヴァルお姉ちゃん大人の魅力を出しすぎですっ!!」

ちみっこかったヴァルお姉ちゃんは背が170cm近くに伸び、出るところは出て……る。うわ~~~~うわ~~~~ヴァルお姉ちゃんのあまりの変わりように頭の中は叫び声が木霊して何をするでもなく直立不動の私がいた。


「ふふっアル……アル起きるのじゃ。アリアがあなた様の目覚めを待っているのじゃ、さあ深い眠りの底から目覚めるのじゃ」

長く伸びた、真っ白で美しい指がアルスロットの額から目じり、ホホ骨をつつっとそってホホをさわさわとさすると……。


「んっんっ……あれ、ヴァル様……もう朝なんですね。ふわあ~良くね……え?うわっぷ、ヴァル様っ!!!なんで大人バージョンにっ!!!」


「どうじゃ、アル?わらわのふっかふっかの枕はよいだろう?」


「うっ……ハイ……」


「アルお兄ちゃん……昨日からヴァルお姉ちゃんにこんな事をしてもらっているんですか?」


その言葉に、今まで私がいることを気が付かなかったらしくアルお兄ちゃんは万歳をしながらベットから転げ落ちていたのだった。



「アルお兄ちゃんっ!!」


「はいっ!ごめんアリアちゃん」


「あっえっ、何で謝るんですか?それよりも早くエルランダ教国にっ!!基礎魔法のお勤めが終わったとたん空から魔族が落ちてきて……死んじゃいそうなのっ」


ばつの悪そうにしょぼくれるアルお兄ちゃんに、しかりつけるような形で伝えた言葉はさらにアルお兄ちゃんをビックリさせ。


「アルっ!アリア?それに……ヴァルかい?いったいどうしたんだいっ!!」


「んっ……ヴァルが大人の姿になってる」


「アル様……ああっ、何という事でしょう」


何事かと駆けつけたカルマータお姉ちゃん、ルーチェお姉ちゃん、カトリナお姉ちゃんを前にしてさらに小さくなるアルお兄ちゃんと、はわはわする私はこの状況にカトラお姉ちゃんっと叫ぶのが精いっぱいだったのだった。










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