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キャラクターズ ストーリー  作者: 七ッ目 うなぎ
2/2

<チョコ・コロネット編> 演習場での勝負

この、キャラクターズストーリーは短編小説のつもりです。

プロローグ、起 承 転 結 エピローグの6話で終わりになるはずです。

では、起をどうぞ。

≪レスタンブール魔法魔術学院≫――――――――――

 魔導王国メルギアの首都中央に存在し首都名をそのまま冠した学院なのである。

いや、順序が逆だ。

最初に学院が創設され、人が住みつき街が繁栄し、そして初代魔導王メルギア一世が国を興したのだ。

そういう国の成り立ちから都の中心に学院があり、王城は学院の北側の立地に築城されている。


 学院は出身国問わず才能があれば(ここでいう才能とはもちろん魔術の)九歳から門の叩く事が出来、入院さえ出来れば在学中は例外なく生活費や研究費用等の費用は全て国が負担してもらえる。

その代わり、院生は魔術研究の成果を国に還元し国はそれを利用。諸外国からその技術で外貨を獲得しその一部をまた学園にまわしている。

そう、魔導国メルギアは、魔導先進国にして魔導産業国なのだ。

余談ではあるが、全世界で使用されている魔導製品のおよそ七十%はメイド イン メルギアだったりする。


 そう云う政策からか、院生は最初の三年間は見習いとして学院からたまに実施されるテストに合格していれば在籍は認められているのだが、四年以降になると一年間ごとに何か魔術研究の成果を上げるか、学院への貢献点をポイントと云う形で一定以上ためなければ退院となってしまう。

役立たずには飯を食わせてやる義務はないとばかりに。

在籍中は様々な点で優遇されるのだが、その反面非常に厳しい処でもあった。


 現在行われている演習場での講習も、見習い魔術師への魔術の教示という学院貢献点を目的とした物だ。もちろん、点がつくのは講習指導者である男性と女性の先輩院生の方だけなのだが、講習を受ける少女達としても何のデメリットもなく魔術を教えて貰えるといういい機会だ。実にうぃんうぃんな関係だね。うん。


 だけれども、私はこの講習に参加するつもりはなかった。眠いし。

そもそも、私の魔術の専門分野とは畑違いの「火のエレメンタル魔法攻撃での射程距離と命中精度の向上について」などという講習は受けてもあまり意味がない。今日は、久しぶりに雲ひとつない快晴に恵まれ猫の獣人族である私には絶好の日向ぼっこ日和だったのだ。

遺伝子レベルに刷り込まれているのかこんな日はすこぶる眠い。だから、昨日今日の天気予報を聞いたときにだらだらと日が暮れるまでだらける予定でいたのだ。


講習募集掲示板の前で、一つの張り紙を凝視している親友のエリーを見つけるまでは・・・

そして、今日と云う日を後ろ髪を引かれながらではあるが、親友の為に費やすことに決めたのである。

でも、直射日光に当たってやっぱり眠いことは眠いのでエリーに付き合いながらも半分意識が飛びながら講習を受けていた。


 ふと、自分が呼ばれたような気がして完全に意識が戻る。

周りをキョロキョロしてみると受講生の十人中、私を除いての九人が百メートル以上離れた所をうろうろしているウッドゴーレムに向かってファイヤーアローを撃っている。

エリーは、ちらちらと心配そうにこちらを見ながらファイヤーアローを撃っているが全然飛んでないね。あれ、十メートル飛んでる?そりゃ、講習受けたくなるよね。

先輩院生の男性の方は、演習場に向かってせわしなくお手製らしいウッドゴーレムを放っている。

さて問題は、目の前にいる赤毛の先輩院生の方だ。


「ちょっと、あなた。チョコさんでしたっけ?白眼向いて気絶してたように寝てたけどやる気あるのかしら?」


フンスカプンスカとかいう擬音がぴったりな感じで詰め寄ってきてます。

どうしましょう。

無いですって素直に答えたら、美人系かつ釣り目がちな風貌なのでキレたらいけない女王様な感じでお仕置きとかされそうです。鞭とか嫌です。似あってはいそうですが。


「まぁ、はい・・・。それなりには・・・。」


やる気があると言いえる状況でもなかったので、結局あいまいな返事になってしまった。


「でしたら、私が先ほど説明したと通りに魔力を働かせれば三百メートル・・・は、無理にしても二百メートル位なら届かせることが出来るはずです。やってもらいましょうか。」


説明を真面目に聞いてたはずのエリーは、二百メートルどころかあの惨状ですよ!?

この女性――最初の方でした自己紹介で確か、デ、デ・・・デービルとか名乗っていた様な気がします。よく覚えてないけれど、きっと合ってますね。そうに違いありません。取りあえず、心の中ではデービル先輩って呼ぶことに決めました。

その、デービル先輩が私の右手を掴みファイヤーアローを撃つように催促します。


 ところで、私。ファイヤーアローという魔法をかなり昔に一回だけしか撃ったことしかありません。先程の、デービル先輩の熱弁も半分意識飛びながらでしたので頭に入ってませんし。

まぁ、炎エレメンタル系の初級魔法ですし何とか成るでしょう。そう思うと、周りの大気中から炎のエレメンタルをかき集め、弓矢の形をした鋳型を頭の中で想像しその中にエレメンタルを詰め込む様にして一本の炎の矢を想像し創造した。後は、これを二百メートル先のウッドゴーレムに当てるだけなのですが・・・

無理そうですね。

手元にある状態でもすでに、形がぶれ始めてます。手元から放したとたん形が保てなくなりそうな気がします。

デービル先輩の顔を横眼でちら見すると、ニヤニヤしています。失敗は確定だと思ってるのでしょう。

ふと、視界の端でエリーが両腕を交差して大きな×を作ってます。きっと、矢の作り方が違うのを必死に教えてるのでしょう。


 まぁ、仕方がありません。魔術分野がそもそも違うのですし、説明を聞いてなかったのも事実ですから失敗後の皮肉位甘んじて受けることにしましょう。

覚悟を決め、私はファイヤーアローを放った。最初は数メートルの所で消失するか地面に落下するかと思っていたのだが、思いのほか六十メートル程まで飛び偶然にもつまずいて倒れていたウッドゴーレムの背中に命中し炎を上げた。

二百メートルまでは全然届かなかった訳ではあるのだけれど、専門でやってきたエリーの距離をあっけなく越えさらに偶然とは云え、的に当たったのだから上出来ではなかろうか?

その証拠に、エリーは自分の手を見て自分の生成の方が間違っているのではないかと思い始めているっぽい。後で、フォローしなければ親友の一生をダメにしてしまいかねない。


さて、デービル先輩はというと一瞬まさかという顔になったが直ぐに自分を取り戻す。


「思ったよりは、飛びましたわね。でも、二百メートルには全然足りませんわ。獣人族の方にしては良くやった方なのかしら?」


 あ、駄目だ。前言撤回。自分だけの事なら皮肉も甘んじで受けようと思っていたのだけれど、種族を持ち出して丸ごと軽蔑されるのは許せる範囲を超えている。確かに、獣人族は体外に魔術を展開することは一般的に不得手な種族ではある。が、魔術的に劣っているわけではないのだ。体内に魔力をめぐらす強化魔術には他のどの種以上に優れているのだ。それなのに、その例だけを切り取って差別をするなど獣人族であるチョコには耐えられなかった。

この場でデービル先輩を相手に暴力沙汰を起こすつもりはないが、獣人族である自分の実力を見せてやらないと気が済まない。


「先輩は、最大何メートルまでの距離を当てた事があるんですか?もちろん百発百中の距離ではなくて、当てたことのある最大の距離はどのくらいなんですか?」


いきなり、話が変わりキョトンとするデービル先輩。


「そ、そうね。最高で一キロ先に当てたことは、ある、わ。」


しどろもどろで答える様子からするっと、きっと嘘だろう。


「では、えっとー、カーウェス先輩?二キロ先に的のゴーレムを放してもらっていいですか?」


「二キロ!?」


今度は、動揺を隠そうとすることも出来なかったデービル先輩でした。


「さて、先輩。私実は、エレメンタル系の魔術はほぼほぼやったこともないんですよ。なので、自分の得意分野で本気を出させて頂きますね!」


そう言ってから、ポケットに入ってた革の巾着袋から一ミリ位の大きさの黒い粒を取りだす。それに手の中で魔力を込めると地面に落とす。


「育て!」


掛け声とともにものすごい勢いで地面から針のびっしり付いた緑色のした植物が姿を現す。

もうこの時点で、チョコを囲むように見ていた人全員、顎が顔から離れんばかりだ。


「魔針サボテンのハリーちゃん!二キロ先の的に攻撃よろしくっ!」


ハリーは、チョコの言葉に応じた雰囲気を見せると、上半身を雑巾のように捻りそれを戻す勢いで一本。

一本だけ針を飛ばす。その勢いは、凄まじく誰の目にも見えなかったがサボテンの表面に不自然な感じで針がない空間が一本分だけあった。


「さぁ、当たってるはずよ。確認してみて。」

「そんなバカな事はあるはずがないわ・・・。」


デービル先輩は懐から双眼鏡を取り出し、二キロ先を見てみる。


「そんな、そんな、そんな、そんな・・・。」


しばらく、確認していたデービル先輩は手に持っていた双眼鏡をガチャリと落とし力が切れたように両膝を地面に落とすように着かせ両手もそれを追う。所謂挫折のポーズだ。

チョコは、完全勝利を確認し大きく胸を張る。うん、胸を張っても張るほどないのは御愛嬌。


「デービル先輩。獣人族を舐めてたら駄目ですよ!」


勝利の宣言の様に、挫折のポーズのデービル先輩に活舌良く言い放ったが、そっと耳元でエリーの訂正が入った。


「チョコちゃん。それじゃぁ、悪魔ですよ。先輩の名前はデーテル先輩です。」

「そう?そんなに変わらないんじゃ!?」

「全然意味がちがいますよぉー」


などという、勝利の高揚感からか親友のエリーとの会話で浮かれてしまっていた。

その時、男性先輩院生、カーウェスが魔針サボテン「ハリー」とチョコの胸のあたりを交互に見ながら密かに目を輝かせていたのに気づいていればこの後の悲劇は避けられたかもしれなかった・・・

最初なので、結構早く投稿しました。

次は少し時間が空くかも。見捨てないでください。

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