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誇りの為に、生きる為に

 



「早速ではあるんだけど、お前等は何に追い掛けているのか教えてくれないか?」

「はイ、我々が終われているのハ、ゴブリン族でス」



 聞くのを忘れていたので先ずはどんな魔物に追われているのかを聞く為に戦えるコボルト達に集まってもらった。

 杖からゴブリン族の情報を聞きながら経緯を話してもらう。元々ゴブリン族は自分達よりも弱いコボルトを狙って襲いに来る事が多いらしい。村を襲ったのもゴブリン族が彼等の食べ物を、コボルトの肉を手に入れる為だという。


 ゴブリン達の足はコボルト達よりも遅いが彼等は狡猾な為人質や目潰し等を使っている。故に逃げにくい状況に陥らせた隙を突いて襲うなんていうのもあるらしい。さらにゴブリン達は森を動き回っているからか足跡や枝の折れ具合などで逃げた獲物を追うとも言われている。

 だがゴブリンには知能があまり高くないという話で罠とかを作ったりする事はないらしい。コボルト達にもしも彼等が追い付くとすればどれくらいか聞いてみた所、約二日くらいだという事が分かった。



「と、なるとそれまでの間に出来る限り戦う事に慣れてもらうしかないか

因みにお前等武器は何を使っているんだ?」

「武器? 弓とカ?」

「この狩りで解体する為の小さな刃物、武器はこれだロ!」

「いやきっとこの木の棒とカ!」



 駄目だこいつら、先ず根本的に武器について分かってない


 争いを好まないとは言え武器の知識くらいはあるかと思っていたが彼等は例えるなら剣を包丁の一つみたいに考えているようだ。さすが穏和な種族と言われるコボルト……なんて感心している場合ではない。

 幾ら何でも二日で彼等が戦いに使えるわけではないのは十分承知しているがそれでも出来るだけの事はしておく必要がある。


 手始めにそれぞれ遠距離で戦う為の弓矢を作ってもらう事から始める。弓矢の作り方やその指導はクーウルに任せてカロルはムニニと共に別の事をやろうとしていた。

 彼等が何をしようとしているのか気になるのか戦いに参加しない子供のコボルト達は興味津々な様子で見ている。



「なぁ、俺も無詠唱で召喚とか出来るのか?」

『一度呼び出した魔物ならば詠唱破棄は可能になります』

「了解……じゃあいくぜ」

「はーい!」



 カロルは召喚でスライムを幾つも呼び出す。そしてその召喚されたスライムをムニニが次々と呑み込むようにしていった。少しずつ大きくなるムニニに驚きながらカロル達が今やっている事に目を丸くさせている子供達。


 カロルが考えたのはこのムニニに出来るだけ自分の召喚したスライムと合体してもらい彼の力を上げていくというものだ。スライム自身は捕食するのではなく合体する、ならば当然分離する事も可能だろうと思い力を身に付けさせながら分離しても魔法が使えるようにさせる効率的な戦力強化を試みたのだ。溜め込まれた魔力をごっそり持ってかれてしまったものの、ムニニはその体を大分大きくさせた。



「わーい! わーい! 大きくなったー!」

「どうだムニニ、これでちょっとは強くなったんじゃないか?」

「なったなった! カロルさまありがとー!」

『現在のスライムのステータスを確認します』




 上手く成功したようでステータスを確認するとレベルがまだ一つしか上がっていないと言うのにかなりの強さになっていた。

 気になったのはスキルにある魔法だが属性によって色の名前が使われるらしい。これだけステータスが上がってもレベルが上がっていないのはやはり戦って倒さなければレベルは上がらないという事なのかもしれない。意外にもスキルについてはレベルが上がらなくても取得出来る事は分かったので練習さえすれば可能ではあるというわけだ。


 しかし、そうなってくるとレベルが上がる事へのメリットというのが大分薄まってしまうのでは?と思ってしまう。無理して上げなくてもこうして鍛えていけば戦えるくらいにはなるし、スキルもその才能があれば取得出来る。



「なぁ、別にこのままレベルを上げる必要性はないんじゃねぇか?」

『それは勘違いですマスター、魔物のレベルが上がる事はステータスは勿論ですが

同時に新たな姿に生まれ変わる可能性もあるのです

さらに、その姿でしか取得出来ないスキルは勿論持っているスキルが強化される事もあります

レベルを上げる行為は決して無駄ではないのです』

「進化か……確かにゲームでもそういうのはあるよなぁ

じゃあやっぱり戦う事でより強くなれるというわけか」



 杖からのアドバイスを聞く事でレベルを上げるメリットを理解したカロル。自分が最低クラスのステータスである以上頼りになるのはクーウルやムニニといった魔物だけ、その彼等を成長させるのはより自分が安全になる可能性に繋がる。

 ムニニはカロルの肩程の大きさにまでなっておりじっと見ているカロルの視線に気付くとその粒羅な瞳をニコニコと笑わせていた。


 大きくなったムニニに興奮して子供のコボルト達も大はしゃぎしながら駆け寄りスライムの冷たい水枕みたいな感触を楽しんでいる。

 数時間すると弓矢を作っていたコボルト達も次々完成し、一先ず今日は寝ようと決めて異世界での初日は終わった。





**********





 朝日が登って森の中も色鮮やかになってくると早速コボルト達の特訓が始まる。

 慣れない洞窟での睡眠は思っていたよりもキツいもので体の節々が痛くてあまり休めた気はしなかった。魔力が回復している感覚もないのでちゃんと睡眠が取れなければ回復も出来ないようだ。

 重い体に鞭を打つようにして立ち上がると既にコボルト達は動いていた。早速戦い方を教えようとしているのでカロルがその前に割って入っていく。


 ゴブリン達がいつやってくるか警戒しておく必要があるので何匹かのコボルトには付近の見張りをしてもらった。戦闘に参加出来ないコボルト達も近くで水や食料の用意をしていてちょっとしたサバイバルを体験しているような感じだった。彼女達に取りに行く前に欲しい食材等も注文しておき、クーウル達がやっている弓矢の練習している姿を見学してみた。



「いいか、弓を引いて、狙い、定める、集中する

矢を打つ、躊躇うな」



 クーウルは冷静にその目で幹にある的に矢を放つ。まだ真ん中に命中は出来ていないがそれでも割りと真ん中に当たるように意識をしている事は分かる。オーガルを含めてその弓の腕に感嘆の声を上げ、彼の言うようにやってみようとするが矢は的とは違う場所に当たるのがほとんどだ。数メートル先で地面に矢が刺さる、なんて物もあった。


 これはクーウルも指導するのが大変そうだと思いながらもこっちはこっちでムニニの魔法の練習をしていく事にする。

 先ずは分離をしてちゃんと分離したスライムも魔法を使えるのかを確認しなければならない。小さなスライムを分離させると、それはムニニの支配下にあるようで彼の好きなように動かせる。



「わぁー! おもしろいおもしろーい!」

「けど、動きが遅いからあまり戦闘方面では使えなさそうだなぁ

魔法……も使えているが見た目通り魔法も小さいし」

「かくれるのはうまそうだよねー!」



 分離しているスライムが小さいとやはりステータスはかなり低いようでそれは魔法にも影響していた。良くて片足を焦がせる程度はありそうだがそれでもこの動きの鈍さも考えるとやはり戦闘向きではない。それでもちゃんと魔法は扱えるという事が分かったので不安の種が一つ消えたのは嬉しい事だ。


 小さなスライムを取り込んでムニニの体に戻ってもらえば、次は同じサイズの大きさで分離する。杖にステータスを確認してもらったがこの場合はやはりステータスが半分になるようだ。それでも魔力は高めだった筈なので十分戦力になるだろう。

 魔法で何が使えるのかと一応聞いてみたがどうやら敵単体に火球をぶつける魔法と単体に爆発させるのが赤魔法、水の刃で鎌鼬のように斬り連続でダメージを与える範囲魔法と地面から攻撃する青魔法と、それなりの強さがある魔法を使えるようだ。



「お前取り込む事で強くなるから一気に頼り甲斐のありそうなスライムになったな」

「えへへー、ムニニもカロルさまのやくにたちたいもんー!」

「おおー、そうかそうか」



 スライムにすら遅れを取っている俺って……


 どんどん差が広がってきているものだからスライムよりも弱いと改めて自覚してみるとかなり落ち込んでしまった。今の自分は唯一の自慢である魔力すらも越されてしまい、さらにはその魔力がまともに回復していないという状態。武器を手にしても攻撃が通るわけがないのは分かりきっている以上彼等の特訓を眺めつつ助言を言うのが精一杯なのだ。


 世の中物語の主人公みたいに最強になれたりあっさり適応出来るわけではないんだなー、と現実の再確認をして肩を落としながらも自分の配下達に目を向けている。まだ一日しか一緒に過ごしていないが彼等は自分の事を大切にしてくれているというのがよく分かる。地球にいた頃はあんな人間達を見た事もなかった。それだけでもこの異世界に来た意味はあったのかもしれない、そう思うと自然と頬が緩んでしまっていた。


 クーウルの弓矢の指導はそれなりに上手くやれているようで少しずつではあるが他のコボルト達も的に当てる事が出来るようになる数が増えてきている。皆初めて的に当たった時はそれはもう嬉しそうに喜んでいたり、飛び跳ねたりしていた。



「カロルさまー! みてみて、コロコロー!」

「うおっ!? あぶね! ちょ、ムニニ俺にぶつかろうとするのはやめてくれよ!?」

「だめー? わかったー、ざんねーん」



 危うく凄くどうでもいい事で第二の人生終了する所だった……


 本人はちょっとしたスキンシップのつもりでカロルに抱き着いてもらうつもりだったのかもしれないが、今のムニニはかなりでかくなっているのでもしぶつかったらまともな防御力もない彼など呆気なく潰されてしまうだろう。残念そうにしているムニニには申し訳ないが紙よりも脆い耐久力させているような自分がよりにもよって第二の人生はスライムのスキンシップで死ぬなんて残念過ぎる死因にはなりたくないのだ。


 不満そうにしているムニニには代わりにこちらから抱き着いてあげる事で機嫌を直してもらい、その冷たくて弾力のある感触を楽しんでいると食材を取りに行っていたコボルト達が帰ってきた。この辺りは結構木の実や食べられる食材が多いらしいので割りと苦労する事はなかったらしい。



「カロル様、言われた物も取り寄せましタ」

「おお、ありがとなー!」



 ゴブリンの知能が低い、というのを考えてコボルト達に取ってきたもらったのはアップリトなど一見ただの食材でもあるそれを使った罠を仕掛けておく。奴等に食べ物の知識があるとは考えにくいし、まさかあのコボルトが自分達に立ち向かうなんて考えてもいないだろうからそれを利用した罠となる。


 弓矢の練習をしている何匹かのコボルトには罠の制作を手伝ってもらい、地球で暮らしてきた知識を披露する事になった。積極的に行動してくれる彼等の働きは昨日まで逃げる事ばかり考えていたとは思えないくらいだ。それだけ彼等も自分達の種族の誇りの為に一生懸命なのかもしれない。



「なぁ、この蔓とかって切ったら千切れやすくなるよなやっぱり」

『当然そうですがそれでも千切るのはかなりの力仕事となります

普通のゴブリンなら千切られてしまう可能性はあまり高くはないと推測します』

「へー、そんなに丈夫なのか……この森の植物って俺のいた所よりも逞しいのか……?」



 コボルト達に罠の作り方を教えながら自分は木に絡み付いている蔓を何とか取ってはそれを細くしていく。着実にゴブリン対策をしていくカロル。

 自分達が生き残る為にこの罠や作戦が何処まで通じるかは分からないがコボルト達とこの二日でやれるだけの事をやっていくのだった。

【ステータス】

ムニニ(スライム)

レベル2

体力    71 [+41]

力     52 [+34]

防     41 [+26]

魔力    92 [+55]

魔防    69 [+42]

速さ    39 [+20]

運     75 [+32]


スキル 『捕食』『赤魔法』『青魔法』『分離』



・赤魔法

火の魔法を使えるようになる。

火力はあるが発動に時間が掛かる。


・青魔法

水魔法が使えるようになる。

威力は低いが発動が速く連続で出しやすい。


・分離

スライムを幾つも取り込む事で習得出来る。

ステータスは劣るが自分より弱いスライムを出せる。

体が小さければそこまで影響はないが自分と同じサイズの場合はステータスも半分になってしまう。

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