第50話
ああ、ついに、このときが来たか。
俺は焦る気持ちを落ち着かせるため外で箒を振っている、勘違いを防ぐために言っておくが掃除をしているのではなくおばあちゃん直伝の箒術の型を繰り返している。
俺はその時を楽しみなような不安なような、何とも言えない気持ちで待っていた。
今はもちろん緊張もしているただそれと同じかそれ以上に楽しみでワクワクもしている。
だがここは冷静になれケイト、あくまでクールだ、ケイト・パルティナはクールに行くぜ。
ある程度汗を流し焦る気持ちが落ち着いた俺は家に戻り風呂へ向かった。
体を清め湯船に浸かった。俺がここに来たばかりのときは浴槽はなかったが『無創魔術師』になり無機物を自由に創り出せるようになった俺は日本人として作らずにはいられなかったんだ。
湯船に浸かり目を閉じる。
これは前世からの癖で湯船に浸かっているとどうしても目を瞑りたくなってしまうんだ。
ごそごそと何が蠢く脱衣場。
さぁ覚悟を決めるんだ俺!
「お待たせケイト!また私が体を洗ってあげるね♪」
今日は一ヶ月に一度のエミリーとの風呂だ。以前までは毎日一緒に入っていたのだが俺の眠っていたネゴシエーターとしての類い稀なる才能によりなんとか月一にまで減らすことができた。ちなみに教育上うんぬん言ってたロリババアはあっさりエミリーの味方についたせいで余計に説得に時間がかかってしまった。
え?なぜ別々にしたのかって?まあ一言で言うなら体が成長したからかな、生物学的に言うと第二次性徴が現れてきたとでも言っておこうか。
ただ一緒に入るのが月一になったからか教育上不適切な変態がいるからか今までは背中の洗いッこをしていたくらいだったのが、じょじょにえっちぃことをエミリーがするようになってしまったのだ。
例えば今までは手で背中を洗ってくれていたのに別の部分を使いだしたり、背中の洗いッこだけだったのが前も洗おうとしてきたり、先月なんか俺の腕に跨がってそのまま腕を洗おうとしだす始末だ。
そしてたちの悪いことにエミリーは恋人同士ならこれが普通だと思い込んでいるためやめさせるのに一苦労なのだ。
確かにえっちぃことは嫌いじゃないよ俺も男の子だし、ただこうなんと言うか、ヤ○ちゃんのダークネスモードも『えっちぃのは嫌いです』って言ういつもとのギャップがあるからこそ際立っているのだと私は思うのですよ。
たださっきも言った通りやめさせるのが一苦労で一番酷かったときは湯船が真紅に染まったからね、まじで死ねないけど死ぬかと思った。
だから今回はエミリーからではなく俺から提案して行こうと思う。
だがその前に、
「エミリー、そんなすっぽんぽんで来ないでタオル巻こ」
「いいじゃんそんなの、それよりほら、お風呂から出てこっちに来て、またおばあちゃんから新しい洗い方を教えてもらったから」
「ちなみにそれはどんな洗い方なの?」
「体中をペロペロするの!」
お前は黒咲芽○か!さっきヤ○ちゃんを例えに使ったからって被らせてきてんじゃねぇよ。
だが問題ない、俺は今日のために秘策を立ててきているからな!
「ねぇエミリー、体をペロペロするのもいいけどバブルバスをやらないかい?」
「バブルバス?なにそれ?」
よし、食いついたな。
「バブルバスって言うのは前世にあるお風呂で、浴槽を泡で満たす入浴方法だよ」
「ふーん、どうやるの?」
「ちょっと待ってて」
ステップ1 タオルを腰に巻き湯船から上がる
ステップ2 浴槽の水を全て窓から捨てる
ステップ3 ミヤビに教えてもらったものすごく泡の立つハクの実を潰し汁を浴槽に適量入れる
ステップ4 ぬるめのお湯を浴槽が壊れない程度の勢いで注ぎ泡を立てて出来上がり♪
「わぁ、アワアワだ!」
「ごめんね待たせて、早く入ろう」
「うん!」
エミリーは泡の中に飛び込みおおはしゃぎ、計画通り(ニヤリ)泡風呂ではしゃがない子供なんてこの世には存在しないのだ!
このまま心行くまま泡風呂を堪能しえっちぃことから思考を逸らすんだ。
俺は勝利を確信し湯船に浸かると泡の中に潜っていたエミリーが飛び出し俺に抱きついてきた。
「あ、ちょっとエミリー」
「ほらほら体を洗わないとダメだよ」
そしてエミリーは俺の体に絡み付き全身を使って俺に体を擦り付けてきた。
「あっ、にゅるにゅるしてて気持ちぃ」
ハクの実の柑橘系の爽やかな香りに包まれぬるま湯の中にあるひんやりとしたエミリーの肌がすごく心地よく今のエミリーの行為はエロさと言うより可愛らしいと言う表現の方が正しいような気がする。しかしエミリーのときおりだす艶っぽい声や真っ白な泡によって装飾された朱色に染まりトロンとした目によりやはりエロさが勝ってしまう。
だが、
「これは、萌えるぞ……!」
今まで決定的に違うのはこの場の雰囲気だ。
これまではお互いの体が見えていたがこれなら泡によって見ることができず布団の中で服を着た状態でイチャイチャしているような感覚になる、そしてなによりこのハクの実の清々しい香りがあたかも自分たちがRに触れてしまいそうなことをしていないように感じてしまう。恐るべし泡風呂!
体に絡み付き足の付け根を俺の足に擦り付けてくるエミリー、
ああ、いとおしい。
「よーし!今度は俺が洗ってあげるよ!」
「ふぇ!?」
形勢逆転と言わんばかりに今度は俺がエミリーの体を洗ってあげた。首も肩も腕も胸も腹も尻も足もつま先も、
「アハハハ!どうだ!気持ちいいか!」
「ちょっ、ケイト」
「ワハハハ!まだまだぁ!ここはどうだ!」
「ひゃっ、しょ、しょこはぁ」
「オラオラ!まだまだ!」
「ん、ら、らめぇぇええ!」
「フハハハ!もっとだ!もっ「いい加減にせい!」ドバア!」
後頭部に降りかかる鉄拳、しまったあまりに洗うことに夢中になりすぎて背後に忍び寄るおばあちゃんに気がつくことができなかった。
「パートナーの状況を見んか!そんな一方的にヤって何が楽しい!」
パートナーの状況を見ろって、俺前にズタボロされて浴槽に沈められたことあるんですけど。
でもまあ俺も理性を失っていたからな、確かにおばあちゃんの言い分も正しいのかもしれない、しかし!
「肉食系ケイト、いい…!」
鼻血を両方の穴から垂らしトリップしながらも俺の腕にしがみつきなんとか風呂で溺れることを防いでいるエミリー。
「案外まんざらでもなさそうだよ」
「う、うむ、わしはエミリーのことをSだと思っとったがまさか隠れMじゃったとは」
まあヤンデレならSもMもどちらにでもなれる気がするけどね。
ぬるま湯だからのぼせる心配はないがもう出た方がいいだろう。
「ほら、エミリー上がるよ、おばあちゃんも出てって」
珍しくおばあちゃんは素直にお風呂から出ていき、俺はエミリーの鼻血を洗い流し『ヒール』で止めてあげた。
そしてそれからは毎日エミリーと一緒に泡風呂に入ることにした。
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