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第47話

 食後俺たちはさっそく実家に向かう準備を始めた、とは言っても泊まったりするつもりはないのでおばあちゃんから実家の位置を確認するだけだ。


「ケイトって大陸と大陸を転移することもできるの?」


「もちろん!その気になればハーヴェ大陸の最南端からディア大陸の最北端まで転移できるよ」


 ん?そう言えば地図の向こう側って何があるのだろう?


「海ですよ、地図の向こう側にはどれだけ行っても海しかありません」


「ふーん、ちなみに話は変わるけどなんでミヤビは男の姿をしてるの?」


 ミヤビはダンジョンで会ったときと同じ角の生えた男の姿だった、違うとすると今は執事の格好をしている。


「ケイト様を止めるなら女の体では力不足だからですよ」


「だから実の親に手を出したりしないよ」


「ケイト様、この話をしているといつまで経っても出発できないのでやめましょう」


「それもそうだな、じゃあ位置もわかったし行こうか、二人とも俺にさわって」


 エミリーは手を握り、ミヤビは肩に手を置いた、


「行ってくるよ、おばあちゃん」


「うむ、気を付けるのじゃぞ」


 そして俺は五年ぶりの実家に彼女と従魔を連れて転移した。

 流石に家の中に転移するのは非常識なので我が家の門の前に転移先を微調整してある。


「ケイトの家って大きいね」


「そうですね、たしか『剣鬼』は爵位をもらっていなかったと思うのですが」


「この家は王様からもらったんだよ、あとメイドさんも付けてくれてたな」


 俺たちは扉の前に行きドアノッカーを叩いた、ちなみにドアノッカーとは第二次世界大戦でナチス・ドイツが使用した対戦車砲ではなくてあのライオンとかの形をしたやつだ。


 しばらくすると一人のメイドさんが出てきた。


「どちら様でしょうか?」


 物凄く不審者を見るような目で見られた、いやーメイヤさんでもわからないくらいに男前に成長しちゃったかな。


「ケイト様、もしかしてこのメイドがさっき言っていたメイドですか?」


「ああそうだよ、メイヤさんって言うんだよ」


 するとミヤビは満面の笑みを浮かべ、


「この国の国王もなかなか粋なことをしますね、まさか自身の仕える家の長男の顔すら忘れるような者を寄越すとは」


 そう言えばもともとこいつって皮肉とか嫌みとか言うの大好きなんだよな、


「いや、流石に一目見て俺だってわからないだろ、目の色とか髪の色なんかも変わってるし、なにより最後にあったのは五年も前だよ」


「ケイト様、なのですか?」


「そうだよメイヤさん、父さんや母さんは家にいる?」


「旦那様は書斎でお仕事をされていますが、奥様はシャーロット様と一緒にお買い物に出掛けております」


「仕えるべき相手に買い物をさせ、メイドである自分は家にいるとは流石は国王様から頂いたメイドですね」


「いい加減にしろミヤビ、メイヤさんは『凄腕メイド長』の称号を持つ一流のメイドだ、きっと母さんが我が儘を言ったんだろう、ちなみにメイヤさん、シャーロットって言うのは俺の妹かな?」


「はいそうです、ところでケイト様、その者とはどういったご関係で?」


 一応表情には出ていないがメイヤさんの言葉からは隠しきれない怒りが感じられた。


「どうもはじめまして、私はケイト様に仕えるメイド兼執事のミヤビと申します、以後お見知りおきを『凄腕メイド長』さん」


 ミヤビは右手を胸に当て流れるような動作で優雅に頭を下げた、だがその表情はやはり相手を小バカにしたようなものだ。


「ご丁寧にどうも、私はパルティナ家に仕えるメイドのメイヤと申します。ところでメイド兼執事とはどういう意味でしょう?」


「こういうことです」


 ミヤビはその場でくるりと回転すると執事の格好をしていたはずがいつの間にかメイド服を着た女性パージョンのミヤビに変身していた。


「こ、これは…」


「ミヤビは俺の従魔で人の姿に化けているんだよ、それより家に上がらせてもらっても良いかな?エトルリア島に比べてこっちは暑いからね、喉が乾いたよ」


「申し訳ありませんでした、さあどうぞ中へ、飲み物はアイスティーで良いですか?」


 俺はかまわない告げ、未だに手を繋いだままのエミリーと家に入ろうとしたが、


「ケイト様、今手を繋いでいるそれはなんですか?」


「ケイト様、私の方で説明いたしますので先に入っていていただけますか?」


「悪いねミヤビ、その気持ちはとても嬉しいよ、ただそこまで時間のかかることでもないから俺の方から言わせてもらうよ」


 だが俺と手を繋いでいるエミリーが俺が紹介するより早くメイヤさんの方へ一歩前に出た。


「はじめまして、ケイトの恋人のエミリーと言います」


 エミリーはぺこりと可愛らしくお辞儀をした。

 成長したなぁ、初対面の時は名前とよろしくだけ言って家の奥に逃げていたのに今となっては自分から前に出て挨拶をするようになったのだから大したもんだ。


「はは、死に物狂いで修行をしているのかと思ったらかわいい女の子にうつつを抜かしていたのかお前は」


 家の中から笑い声と共にそんな声が聞こえた、


「おかえりケイト、ずいぶんとイメチェンをしたようだがちゃんと一流の魔法使いになったのか?」


 はぁー、やっと言ってくれたか。やっぱりメイヤさんはダメか。


「ただいま父さん、流石に目の色が変わっているのをイメチェンって表すのはおかしいんじゃないかな、まあ深く突っ込まれると俺も大変だから良いけどね」


「まあ何がともあれ生きて帰ってきてくれて良かったよ、いや、吸血鬼ってことは死んでるのかな?」


 驚いたな、まさか一発で見抜くとは。


「よく吸血鬼だってわかったね」


「まあな、それより早く入れ、話したいことはたくさんあるだろうからな」


 そしてようやく俺は五年ぶりの実家に足を踏み入れた。 

読んでいただきありがとうございました。

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