第36話
オリジンヴァンパイア
名前の通り全てのヴァンパイアの起源とされる始まりのヴァンパイア。
ヴァンパイアは、交尾と吸血によって眷属を作る増やし方をしており、種類は本当はオリジンヴァンパイア、ハイヴァンパイア、ヴァンパイア、ローヴァンパイアであり、同じ位のヴァンパイア同士で子を作るとその子供も同じ位になる、しかし眷属の場合は自分の位から一つ下げた位になり、ローヴァンパイアが作った眷属はローヴァンパイアになる。
オリジンヴァンパイアは吸血鬼の中では神と崇められているが、吸血鬼以外の種族のほとんどが存在すら知らない。だから数多くの本を読んできた俺でさえオリジンヴァンパイアと言う存在を知らなかったのだ。
「えーとつまり、俺は人間をやめるぞ!的なことをしろと。」
「まあそうだね、なんなら『無創魔法』を使って石仮面でも作ってみたら。」
神様なのによくこんなネタ知っているな。
「でもどうやって吸血鬼になるんだよ、本当に石仮面とかあるのか?」
「フッフッフ、僕を誰だと思っているんだい?神様だよ、しかもその辺の崇められるだけで何もしないような、ぐうたらな神とは違い日夜、汗水流して働いている僕に出来ないことなんてほんの少ししかないんだよ!」
人族をオリジンヴァンパイアに変えられるのに何が出来ないって言うんだ。
「とにかく、そのオリジンヴァンパイアになれば俺は復活出来てエミリーを助けることが出来るんだな。」
ただ心配だ、吸血鬼になることによって太陽の下では生活出来ないとかだとかなり生きずらくなるな。やはりあの宝石と石仮面が必要なのか。
「あー、その辺の心配は不要だよ、太陽の光を浴びて灰になるのは眷属の吸血鬼だけで君は最高位であるオリジンヴァンパイアになるんだ、太陽の下だと多少の身体能力が低下するくらいで、その気になれば波紋だって使えるよ。ぶっちゃけ弱点なんてほとんどないからね。」
つまり俺は時間を操れる究極生命体か…もうパーフェクトなチートだなぁ、世界のパワーバランスとか思いっきりブレイクしてるよ、俺が世界征服とか企んだらどうするんだよ。
「そのために勇者を送り込んだから大丈夫だよ。」
「え?勇者?」
「そうそう勇者、魔王討伐のためにさっき40人の勇者を送ったんだよ。」
「ちなみにその魔王って…」
「君の恋人だね。」
『無創魔法』でミカサの周りに無数の矛を向け『神眼』の未来視で次の動きを見て『時空魔法』で強化された『グラプス』でミクロン単位で空間を把握し、そして『覇王』の威圧で動きを阻害した。
「『無詠唱』を使いこなせて瞬時にそこまでできればあのレナドとか言うやつには負けないだろうね。」
「ミカサ、その勇者はお前を殺せば来ないのか?」
「いいや、勇者たちはもう送ったけど向こうの世界に召喚させるのはだいたい10年後くらいかな、まあ僕を殺せるだけの力があれば勇者なんて目でもないだろうけどね。」
つまりこの場でミカサを殺してもなんの意味は無いか。
「来るのは10年後なんだな?」
「そうだよ、君の恋人が正真正銘の魔王になった後に人族のある国によって召喚されるんだよ。」
要するに10年後までに確実に神をも越える力をつけていれば、エミリーのことを守ることが出来るんだ。
「早く俺をオリジンヴァンパイアにして生き返らせてくれ。」
「わかったからこれ退かしてくれない、あとその空間把握魔法と未来視と威圧も切って。」
俺は言われた通り発動している全ての能力を解除した。
「さてと、君は生き返ったときにはもうオリジンヴァンパイアになっている。今更だけどヴァンパイアになったら人族として生きていけないけど良いかい?」
全くもって今更だ、そんなこと聞かれるまでもない。
「エミリーを救えるのならなんでもかまわない。」
「いやー男だねぇ、どうしてそこまであの女の子を気にかけるのかな、『魔王』で多くの者な忌み嫌われる彼女のことが哀れだからかい?」
哀れか、確かに初めはそうだったのかもしれない。身体中にあった傷を見てかわいそうだと思って守るって言ったんだ、けど、
「好きだからだ。」
好きなんだエミリーのことが、3年もの間常に隣にいて修業で辛いときも、出来なかったことが出来るようになって嬉しかったときも、美味しいご飯を食べたときも共に過ごしてきたんだ。
こう言っちゃ悪いが両親よりもエミリーのことは大切な家族だと思っている。世界中の誰よりも大切な人だ、そして世界中の誰よりもエミリーのことが好きだ、大好きだ、likeではなくてloveだ、だから守りたい、もっと長い間一緒にいたい、だから、助けたいんだ。
「なるほどね、青春してるね。」
心の中を読んだミカサの言葉に俺は恥ずかしさを微塵も感じなかった。世界中の誰にだって宣言できる、羞恥心なんて感じない、エミリーが好きだと言う感情は僕の誇りですらある。
「はは、誇りは言い過ぎじゃないかな。まあ君がそこまで想っているのなら早く生き返らせてやらないとな。」
ミカサはスキルを進化させたときと同じく俺に手のひらを向けた。
「腕から体が生えるから生まれたままの姿だと思うから君の近くに服を置いとくよ。」
「色々ありがとうなミカサ、お陰でエミリーを助けられそうだ。」
「はは、そんなチート満載になったんだ、確実に倒せるね。今の君が倒せない相手なんて神を除いたら5人もいないからね。」
以前と同じようにジョジョに俺の周りが光だした。
「蘇りし者よ、二度目となる生に祝福があらんことを。まあ三度目だけどね。」
最後の最後まで神らしくないミカサの声を聞き俺は光の中で意識を失った。
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