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第29話

 おばあちゃんに山に飛ばされてからだいたい1年が経過した。

 飛ばされてからは毎日魔法の訓練をしたり、箒で戦う練習の代わりにレベル上げにせいを出している。

 ちなみに現在僕はLV236、お姉ちゃんはLV69になった。僕はともかくベテランの冒険者のレベルが70前後くらいなのでお姉ちゃんがここまで上がれたのはなかなかすごいことだろう。


 実は最近新しくペットが増えた、名前がポンペイウス・チャベルリン、略してポチだ。

 ポチは、オルウルフと呼ばれる種族の狼で体長3mくらいある。そしてレベルは82とこの辺りじゃ群を抜いて強い。

 こいつとの出会いは、ある日の暮れがたにハロモンキーの大きなわめき声を上げていた時だった。レベルを上げるためにただひたすらに魔物を狩っていた僕たちは、そこ声を聞くとすぐにそこに向かった。

 そこでは大きな狼と10匹近くのハロモンキーがいた。ハロモンキーは多く集まるほど手強くなり、10匹もいるとあのときの僕たちでも苦戦するほど強い力を持っている。しかしその狼は数の差をものともせず一方的にハロモンキーを蹂躙していた。

 ハロモンキーたちはかなわないと考えたのか半分くらいやられたときに僕たちの方に逃げてきた、そのときにはもうレベルが150を越えていた僕が5、6匹の怪我をしたハロモンキー程度に苦戦するはずもなく、虫を払うかのようにさくっと倒したのだがそれを狼は気に入らなかったらしく今度は僕に攻撃を仕掛けてきた。

 この狼との戦いはかなり壮絶なものとなった、『障壁乱舞』は避けられるし、一人じゃ勝てるか危ないからお姉ちゃんにも手伝ってもらったが剣がなかなか当たらず相当苦戦した。どうもこの狼は無属性の『ブースト』が使えるようだったから狼の魔力がある程度減ったら毎度お馴染みの『吸収バインド』で気絶させることでこの戦いに終止符を打った。

 そんな気を失った狼改めポチが何故僕たちのペットになったかと言うと、『記憶操作』でポチの記憶をいじったからです。

 え?倫理?なにそれおいしいの?


 まあそんなわけでポチの記憶は、ハロモンキーたちに返り討ちにされたポチを僕たちが華麗に助け、それに感動したポチが僕たちに忠義を誓うという風に塗り替えた。

 そして『記憶操作』のレベルもめでたく上限に達しました、拍手!ぱちぱちぱちぱち。

 恐らく他者の記憶を操作することがレベル9~10への『壁』だったのだと思う。

 そしてそれと同時に称号『達成者』も獲得した。効果は、


 達成者

 5つのスキルをレベルMAXにした者に送られる称号。レベルMAXになったスキルや魔法も使い続ければ更なる進化をすることがある。


 うーん、これは恐らく効果がある訳ではなく進化することもあるよっていうお知らせなのかな。それとも『達成者』の称号を持っている人だけが進化するのかわからない。あー、早く家に帰っておばあちゃんに聞きたい。



 今日もまたいつも通り魔物を狩るために森に入ると『サーチ』に今までに無いものが引っ掛かった。

 それは一人の人が複数の魔物に囲まれているものだった。

 助けに行こうと口に出かけたがもしお姉ちゃんと助けに行って助けたのにお姉ちゃんの『魔王』のせいでまたお姉ちゃんが嫌な思いをするかもしれないと思いすぐには声が出なかった。だが、


「ケイト君、向こうで誰かが襲われているみたいだから助けに行こう」


 と、お姉ちゃんの方から言ってきたのだ。さすがにお姉ちゃんが嫌な思いをするかもしれないからダメとは言えず助けに行くことになった。


 そこでは一人の少女と7匹のハロモンキーが戦っていた。少女はブロンドヘアーに長い耳を持っている、恐らくエルフだろう。その少女は風属性の魔法が使えるようだがハロモンキー7匹を相手にするには力不足のようでかなり劣勢だった。

 お姉ちゃんはハロモンキーと少女の間に入り、


「助太刀するわ。『シャドウイーター』」


 お姉ちゃんが唱えるとお姉ちゃんの影がハロモンキーの影に伸び、影の腕を喰らった。

 するとハロモンキーの本体は影同様に腕が消えた。

『シャドウイーター』は闇属性の最高位に位置する影系魔法で自分の影を操り相手の影または肉体を喰らう。そして喰らった量と質により体力を回復することもできる。


 ハロモンキーたちは突然仲間の腕がなくなったことに驚き一瞬動きを止め仲間に意識を割いてしまった。一瞬でも意識が僕たちから離れればハロモンキー程度瞬殺できる。

 僕は『ストーンバレット』でお姉ちゃんから離れたところにいる5匹のハロモンキーの眉間を的確に撃ち抜き、お姉ちゃんは近くにいる2匹に片方は肋骨の間を通して心臓を貫き、もう一方は首をはねた。

 僕たちが助けに入ってから10秒もせずハロモンキーたちは倒された。


 エミリーは襲われていた少女に近づき、


「大丈夫だった?」


 と言いながら笑顔で地面に尻を着けた少女に手を差し出した。


「あ、はい。大丈夫です。」


 少女はエミリーの手を取らず自分で立ち上がりそっけなく言った。

 はー、やっぱりか。


「ねぇきみ、命の恩人に対してその反応はどうなの?お礼くらい言ったらどうだ。」


 確かに『魔王』のせいでエミリーのことを嫌っているのかもしれない、しかしだとしても命の恩人に対してお礼くらいは言わなきゃダメだろ。

 そのときに始めて少女は僕のことを見た、すると目を大きく開け口もポカンと開いている。いったいどうしたのかと聞こうとしたらその少女は流れるような動作で地面に頭を擦り付けた。


「大変申し訳ありませんでした!」


「と、突然どうした?」


 さっきまでの態度と変わりすぎて僕もエミリーも理解が追い付いていない。


「まさか世界樹に認められた方とは知らず無礼な真似をしてしまったことをどうかお許しください」


「良いから顔をあげて、それに世界樹に認められたってどういうこと?」


 少女は顔をあげて僕の手に持つ箒見て言った、


「その箒は世界樹からできていますのね?」


「ああ、そうだけど」


「世界樹に触れることができるのは世界樹に認められたお方のみでそれ以外の者は触ることもできないのです」


 へー、そんな効果があったんだ、おばあちゃんと僕しか触ったことがなかったから知らなかった。


「世界樹に触れるのってそんなにすごいことなの?」


「はい、今までは世界樹に触れることができるのはリン様だけでして、世界樹に触れると言うことは世界樹が同格だと認めた方のみですので我々エルフは敬意を払わなくてはならないのです」


 その少女はおでこに土をつけ、きらきらとアイドルにでも会ったかのような眼差しで見つめてくる。

 世界樹と同格か、特別なにかをした訳じゃないし生まれ持った才能なのかな。ってそう言えば、


「きみの名前をまだ聞いてなかったよね?」


「はい、私はミクと言います」


 別に名前を聞かなくてもステータスを見ればよかったか、鑑定眼発動。


  ステータス

 名前 ミク・カロボ/13歳/LV42

 種族 エルフ

 体力 30000/30000

 魔力 53200/150000

 攻撃 5200

 防御 4800

 素早さ 7800


  スキル

 夜目 LV4

 弓術 LV6

 採集 LV6


  魔法

 風属性 LV7

 水属性 LV6


  称号



 へー、エルフだから見た目とは違って高齢だと思ったけど僕たちと対して変わらないんだな。


「あのよろしければ是非うちの村に来てくださいませんか、助けていただいたお礼がしたいので。」


 それも嬉しいのだが、


「なぁきみいや、ミクさん。」


「私など呼び捨てで構いません、それでどうかされましたか。」


「村に招待とかはいいからお姉ちゃんにお礼を言ってくれないか、ハロモンキーの攻撃からミクを助けたのはお姉ちゃんなんだから。」


「お礼ってこれにですか?」


 ミクはさも不思議だと言いたい表情をしている。

 これは僕の激おこ1分前の出来事だ。

読んでいただきありがとうございました。

来週の終わりくらいには元のペースに戻れると思います。

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