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第28話

 キス?キス…きす、鱚、あ!キスしてって鱚の物まねをしてってことか!

 残念だけど僕はそんなマニアックな動物の物まねなんてできないんだ、宴会芸の神さまにでも頼みなさいきっと蜘蛛の機動する要塞の物まねをしてくれるから。

 違うよね知ってますよそんなこと。


「ど、どうして?」


「最近ねケイト君抜きでおばあちゃんと勉強を始めたんだ。それでねキスをした二人はずっと家族だっておばあちゃんがいってたんだ。だからね、キスして欲しいの。」


 くっ!ダメだ、ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメなの?いんじゃね?

 だってこれから先もお姉ちゃんは『魔王』のせいで人や獣人から忌み嫌われる訳だから今ここでもらってしまうのも、ってダメだろ!お姉ちゃんのこれは恋ではなく家族として離れたくないからキスしようとしているのだからやっぱりダメだ。


「お、お姉ちゃん、キスをするのは普通愛し合った恋人同士でするもので家族同士ではやらないことだよ。」


「うん、知ってるよ。結婚する二人がすることなんだよね、だから私、ケイト君と結婚したい。結婚して私の本当の家族になってください!」


 この世界には結婚が何歳からだという法律はない、ただ二人が結婚した言えばそれは結婚したことになる。


「ごめん。それはできない。」


 するとお姉ちゃんの顔から表情が抜け落ちた。


「何で…」


「あのね、お姉ちゃ…」


「何でよ!」


 お姉ちゃんは僕の腰にまわしていた手で僕の首を締めた。

 ヤバイと感じた僕は急いで気道と頸動脈に『シールド』を張った。


「ねぇ何で?何でそんなこと言うのケイト君は私の嫌がるようなことは決して言わなかったのにどうしてそんなことを言うの?ねぇどうして、お姉ちゃんの悪いところがあるなら言ってすぐに直すから、ケイト君好みの女の子になるから、ね、結婚してよ。」


 お姉ちゃんの手に込める力が弱まった、どうやら僕の答えを待っているようだ。それでも、


「は、話を聞いて、今はまだ結婚できないだけで…。」


 すると今度は僕を絞め殺す勢いで首を握りしめてきた、これはヤバイ、攻撃の値が一万近い力で握られたら首が潰れる。


「はは、そっかじゃあもう良いや、ケイト君と一緒に居られないくらいならもうこんな世界どうでもいい、あっそうだ!ケイト君を殺した後に私も死ねば二人でずっと一緒だね。ふふふっ、人生なんて短い間じゃなくて永遠に一緒だね。」


 ヤバイヤバイヤバイ!このままだとマジで殺される、今までにヤンデレ良いなって思ってたけど直接相手をするとこれほど怖いものはないな。仕方ない、少し手荒にいくか。


 僕はお姉ちゃんのおでこに手をあてて、


「な、汝、わ、が魅力の前に虜となれ。『チャーム』」


 お姉ちゃんの体に黒い靄がかかりそれがお姉ちゃんに溶け込んで言った。するとお姉ちゃんの手の力が弱まり手を払い除け、お姉ちゃんにキスをした。

 それは唇が触れるだけの初々しく、可愛らしいファーストキスだった。

 顔を真っ赤にするお姉ちゃん、そしてきっとそれ以上に顔の赤い僕、

 突然の出来事にあたふたするお姉ちゃんに言った。


「僕はね、お姉ちゃんと結婚したくない訳じゃないんだむしろ今すぐにでも結婚したいと思ってる。」


「うそ、さっきしたくないって。」



「これは僕のわがままなんだけど、結婚は親元を離れて自立出来るようにならないと嫌なんだ。それに、」


 そして僕はお姉ちゃんから目を逸らして。


「『私の家族になってください』は僕が言いたいんだ。」


 これは前世から僕が思っていたことで、告白とかプロポーズとかは男がするものだと思っている。まあ僕は一度も告白もプロポーズもしたことがないし、もちろんされたこともないんだけどね。


「だから悪いけどまだ結婚できない。自分勝手だと思うけど僕からプロポーズするまで待ってて欲しい。」


 お姉ちゃんは黙って聞いていると、おもむろにまた手を僕の首に伸ばした。問題ない今度は首の血管、気道など、ほぼ全てを『シールド』で保護している、お姉ちゃんの力でも堪えられるはず!多分…

 僕が身構えているとお姉ちゃんは優しく僕の首を撫でてくれた。


「そうだったんだ。ごめんねお姉ちゃんの早とちりで首絞めちゃって。」


「大丈夫だよ、僕も紛らわしいことを言ったからね。」


 僕はお姉ちゃんの手を退けてもらい座りかたを胡座から正座にかえた。


「お姉ちゃん、大事な話がある。」


 僕の真剣な眼差しと姿勢の感化されたのかお姉ちゃんも正座して聞いてきた。


「なに?」


 カラカラになる喉、どんどん早くなる動悸、じょじょに熱くなっていく顔。

 どれも前世では味わったことのない感覚だ。だがこれもすぐに終わる。


「僕と付き合ってください。」


 僕は地面に顔をぶつける勢いで頭を下げた。

 僕は地面とキスをしているのだが一向に答えが返ってこない。

 押し寄せる緊張感が半端じゃない、全身から汗が吹き出てくる。経過している時間は10秒かそこらだろうが体感的には5、6分くらいに感じた。

 そんな時間も彼女の意外な一言によって幕を閉じた。


「そ、そんな、まだ早いよ。『突き合う』なんて。」


 あれれー、おかしいなー。『付き合う』の漢字が違う気がするぞー。


「お姉ちゃん?付き合うってなんだか知ってる?」


 お姉ちゃんはモジモジしながらもしっかり答えてくれた。


「えっと、赤ちゃんを作るために男性のペ「はいストープ!それ以上言ってはいけない、言うのダメ、ゼッタイ!」ケイト君がきいてきたんでしょ。」


 確かにそうだけどそんな恐ろしい言葉が素直にお姉ちゃんの口から出てくるとは思いませんもの。


「お姉ちゃん、付き合うって言うのは交際するって意味なんだよ。決してそのような生々しいことじゃないからね。」


「結婚とどう違うの?」


「…やっぱりおばあちゃんから教わってないの?」


 あの人にもきっと人並みにとは言わないがまともなことを教えてるよね?お姉ちゃんがたまたま忘れてるだけだよね。


「おばあちゃんからは、結婚と赤ちゃんの作り方とケイト君の喜ばせ方しか習ってないよ。」


 はー、そうだよねわかっていたよそんなこと、もう怒鳴る気にもならないよ。僕が説明するから別に良いし。


「えーと、付き合うって言うのはさっき言った通り交際するって意味で、結婚の前の過程のことだよ。」


「?」


「普通結婚するのは、お互いのことを好きになって付き合って、それでお互いの愛をを育んでそれから結婚するんだよ。」


 愛を育むなんてセリフ、口に出すのはすごく恥ずかしいな。


「ケイト君と付き合ったら結婚してくれるの?」


 こんな質問ラノベでも見ないぞ。


「うん、僕が自立できたと思った時に必ずプロポーズする。だから何度も言うけど少し待っていて欲しい。」


 そしてお姉ちゃんは正座を解いて僕に近づき、


「じゃあ付き合ってあげるから早く自立してね。」


 僕の彼女は頬にキスをしてくれた。

読んでいただきありがとうございました。

2週間ほど忙しくなるので投稿するのが遅くなります。

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