第25話
「『グラスプ』」
僕が短く唱えると空気が変わった。
いや、正確には空気ではなくこの空間の気配が変わった。
それを察知した猿は原因と思われる僕に襲い掛かりその長い腕を降り下ろした、だかもう遅い。
「『シールド』」
僕が箒を振って唱えると五枚の『シールド』が現れた。
一枚の『シールド』で猿の腕を防ぎ、残りの『シールド』は、
「舞え『障壁乱舞』」
高速で回転しはじめ、猿に襲い掛かった。
猿はサイドステップで避けようとするが、四枚の『シールド』はあたかも猿の避ける方向がわかっていたかのように曲がり、猿の両足に深々と突き刺さった。
「グギャ!」
切断とまではいかなかったが猿の動きを奪うのには十分だった。
そして僕の十八番!
「捕らえろ『吸収バインド』」
この『吸収バインド』だが以前のものとは比べ物にならないくらい強くなっている。
まずはバインドの強度が無属性LV MAXとなり一度捕まるとお姉ちゃんでも壊すことができないくらい強くなっている。
魔力の吸収率は『魔力吸収』のレベルが上限に達し、毎秒500ずつ奪うことができるようになった。
そして名前は、以前は決めてなかったから(仮)がついていたが、名前を考えるのも面倒だからこのままにした。
「ぐ、ぎぎゃ…」
30秒ほど経つと猿は倒れて気絶した。止めに筒状にして先を尖らせた『シールド』改め『スピア』を猿の心臓辺りに突き立て猿との戦いは終わった。
ふぅ、と一息つくと
「すごい、本当に3分もかからなかった。その猿弱くはないよね?」
「うん、レベル67だからね、実家にいるメイドさんよりステータスだけで言えば強いよ。」
「そのメイドさんを知らないんだけど…。」
「お姉ちゃんのステータスの2、3倍くらいだね。」
するとお姉ちゃんは僕もあまり見たことのない不機嫌な顔をした。
「もしかして、いつもしている模擬戦で手抜いてない?あの『障壁乱舞』とか初めて見たんだけど。」
うっ、
「そ、そんなことないよ。」
実はお姉ちゃんとの模擬戦では『障壁乱舞』のように危険な魔法は使わないようにしている。だってかわいいお姉ちゃんにそんな危ない魔法向けられる訳がないじゃないか!
「ふーん、そう言えばさっきなんでも言うこと聞くって言ったよね。」
「うん言ったよ。何がして欲しい?マッサージでもしようか?」
クックック、これでお姉ちゃんの体を思う存分まさぐるぞ。
「家に帰ったら本気で模擬戦して。」
お姉ちゃんは真剣な顔で言うもんだからあんなことを考えていた自分が恥ずかしい。
「わかった、次からの模擬戦では僕の108のオリジナル魔法を使って戦うよ。」
マッサージはまたの機会にするか。
「そう言えばお猿さんが避ける方向、何でわかったの?あのとき猿が動くと同時に曲がったよね。」
「あれは最初に使った『グラスプ』の効果だよ。『グラスプ』は空間魔法で指定した範囲の空間に存在する物質の動きを完璧に把握できるんだよ。それであのとき猿がミリ以下の単位で重心がずれたタイミングで『シールド』を操作して猿の避ける方向に曲げたんだよ。」
我ながらなかなかすごいと思う、いくら『グラスプ』の効果で猿の動きがわかったからってそれに瞬時に反応できた自分を褒め称えたい。いや褒めよう、いいぞいいぞケイト!いいぞいいぞケイト!わぁぁぁ。むなし!
「へー、そんなこともできるんだ。それで、レベルはどれくらい上がったの?」
そう言えばまだ見てなかったな、
「今から見て見るよ。」
ステータスを開くと
ステータス
名前 ケイト・パルティナ/7歳/LV56
種族 人族
体力 56000/56000
魔力 180000/180000
攻撃 11000
防御 16000
素早さ 19000
スキル
鑑定眼 LV MAX
獲得経験値50倍 LV MAX
魔力吸収 LV MAX
記憶操作 LV9
全言語理解 LV MAX
魔力制御 LV8
魔法
火属性 LV8
水属性 LV9
風属性 LV9
土属性 LV8
闇属性 LV7
光属性 LV8
空間属性 LV8
無属性 LV MAX
称号
不動の精神
魔導王
ヤヴァイなやっぱ『獲得経験値50倍』は、モンキーを一匹倒しただけでママンを越えちゃったよ。
「今のでレベルが56になったよ。あと、もう周囲に魔物がいないしおばあちゃんからの手紙を見てみよ。」
僕はかばんから手紙を取りだし封を切り中にある手紙を読み上げた、
『拝啓、この手紙。読んでいるあなたは、どこで何をして、いるのでしょう。』
「お前が飛ばしたんだろ!てか、何でそれ知っているの!?」
『これはアキトがわしに宛てて書いた恋文に書いてあったものでの、なかなかロマンチックじゃろ。』
アキトよラブレターくらい自分の言葉で書けよ。
呆れている僕の隣で「かっこいいなー」って呟いてる少女もいるがとりあえず無視して、
『この手紙を読んでいると言うことはわしはもうこの世にいないじゃろう、仮にいたとしてもそう長くは持たんじゃろうな。』
えっ?突然僕たちを森に飛ばしたのって、もしかして何か事件が起きて僕たちを逃がすためにやったことなのか?
『って言うのを一度手紙に書いてみたかったのじゃ。』
「てめぇマジでぶっとばすぞコラ!心配した損したわ!」
切れる僕の隣で「よかった」と安心するやさしいエミリーちゃん、もうそろそろ本題に入ろうぜ。
『では改めて本題に入るぞ。まずお主らを『テレポート』で転移させたのは新しい修業のためじゃ。そこでお主らはレベルをあげ、我が家に帰ってくるのじゃ。今回は特別にケイトはレベル500、エミリーはレベル100に達して帰って来たらお主らに良いことを教えてやろう。死なないように頑張るのじゃぞ。
追記 わしがいないからってテントの中でハッスルすると魔物が近寄って来るため止しといた方が良いぞ。』
僕は息を大きく吸い込み、
「だぁれがそんなことするか、ボケェェい!!」
いつかのようにキョトンとするお姉ちゃんの隣で僕は叫ぶのであった。
そう言えばお姉ちゃんの性教育はどうなっているのだろう?
戦闘シーンは難しいですね。
読んでいただきありがとうございました。




