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第23話

 模擬戦の行く末を見ていたおばあちゃんが、


「確かにケイトの勝ちじゃな、せこいけどの。」


 おばあちゃんは苦虫を噛み潰したような顔で言った。


「僕だってできるなら正攻法で勝ちたかったけど今はまだお姉ちゃんに勝つためにはこれしか思い浮かばなかったんだよ。」


「だからと言って乙女の恥ずかしい過ちを告白するのはどうなのじゃ?」


「聞こえたの?」


 ちゃんとお姉ちゃんにしか聞こえないように小さな声で言ったはずなのに。


「クックック、この長い耳も伊達ではないからの。」


 おばあちゃんは長い耳をいじりながら言った。

 へー、エルフって耳が良いんだ。まあ森の民って呼ばれるくらいだからな、五感は良いのだろう。


「それじゃあ、腹も減ったじゃろ、お昼にするぞ。」


 そしておばあちゃんは言い忘れてたと


「午後からは約束通りわしの使っていた武器の練習をするぞ。約束じゃからの。」


 おばあちゃんはいつもとは違うニヤニヤとした表情で言った。

 もしかしたおばあちゃんは僕が負けず嫌いなことも勝負に勝つこともわかっていたのかもしれない。



 昼食を食べ終わると少し食休みに遊んでから僕は新しい武器の練習、お姉ちゃんは剣の練習を始める。

 にしてもおばあちゃんが使っていた武器ってなんだろう?やっぱり王道の杖かな、それとも剣で魔法剣士とかだったのかな。

 僕はワクワクしながら庭でおばあちゃんを待っていると、


「待たせたのケイト、これがわしが昔魔王討伐の際に使っていた魔法職最強の武器じゃ!」


 そう言いながらおばあちゃんが出したのは、年季の入った竹箒だった。

 こちらの世界に竹があるのかわからないが特別な装飾が施されている訳でもない普通の竹箒だ。

 魔法職最強の武器とまで言っていたから単に僕が知らないだけで箒はメジャーな武器なのかと思ったが、一緒にいたお姉ちゃんもポカンとしているのでそれはないだろう、となると


「わかったよおばあちゃん!練習は庭の掃除をしてからだね!だから箒を持ってきたのかてっきりそれがおばあちゃんの言っていた武器にと思ったよ。」


 だがしかし、


「いんや、これがわしの言っておった最強の武器じゃ。」


「マジで?」


「マジじゃよ、信じられんなら一度使ってみろ。」


 そう言いながらおばあちゃんは僕に箒を渡してきた、

 僕は言われた通り庭の掃除を始めた。


「誰が掃除をしろと言った。魔法を使える魔法を。」


 箒を渡されて使ってみろなんて言われたら普通掃除をするだろ、 と心の中で毒づき言われた通り今度は魔法を使った。


「『ファイヤーボール』」


 僕はいつも通りの『ファイヤーボール』を使ったはずなのだが、できた『ファイヤーボール』の大きさはいつもの5、6倍はあった、


「「ええっーー!!」」


 僕とお姉ちゃんは声をあげて驚いた。

 まさか僕があの有名な台詞と同じことができるとは!


「どうじゃ、すごいじゃろ。その箒は芯の部分に雷天龍の角が使われていてのまわりの部分にはわしがこっそり取ってきた世界樹が使われておるのじゃ。」


「えっ!雷天龍ってあの雷天龍?しかも世界樹ってこの箒そんなに凄かったの!?」


 雷天龍とは、またの名を『サンダーフェニックス』と言い強力な竜種の上位互換である龍種の中でもさらに上位の強さを持っており、その名の通り不死鳥で倒すのはほぼ不可能と言われる。

 ちなみに豆知識でサンダーフェニックスは鳥なのになぜ龍種に種族が位置しているかと言うと、鳥でありながら龍種となんら変わらない力を持っており神が本来龍として造り出すはずだったのが何らかの手違いで不死鳥にしてしまったからだとされる。

 その雷天龍の戦闘スタイルが頭から生えた一本の角から雷や四大属性の魔法をを発生させ、その魔法を戦場に雨のように降らし、その朽ちることのない肉体に雷を纏わせ敵を駆逐する。

 過去の文献にはたった一匹で大陸を丸々ひとつ荒野にしたことすらあったらしい。


 世界樹だが、これはこの島エテルリア島の中心にある巨大な樹で、それを見ることができるのは世界樹を守るエルフの中のごく一部のみとされていてそのエルフですら世界樹に触れることはできないとされている。


 な、なんて贅沢な箒だこれは!


「どうじゃ、理解できたか?これが魔法職最強の武器だと。」


「うん、ただこれ凄すぎるよ、本当にもらって良いの?」


「うむ、約束じゃからの、それに老人が持つより未来ある若者が持つべきじゃよ。」


「わかった、大事にするよおばあちゃん!」


 するとおばあちゃんはいつもの意地悪な笑みを見せて


「それに、それならいままでみたいなことは、起こらんじゃろうしな。」


「いままでみたいなって?」


「まあやればわかるのじゃ。」


 そして午後の訓練が始めると本当にすぐにおかしなことに気がついた。


 箒の武術系のスキルがなかったのだ。


 流石に僕も『箒術』なんかがあるとは思っていなくて、恐らく『棒術』なんかで代用されると思っていたが、まさかスキルなしとは。


「クックック。これならお主の『獲得経験値50倍』も使えまい。」


 くそー、さっき言ってたのはこういうことか、確かにスキルじゃないと『獲得経験値50倍』は発動されない。


「これでようやくお主にも色々と教えられるの!」


 おばあちゃんはいままでで一番嬉しそうな笑顔で言った。



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