エミリーside
私が物心ついた時にはもう両親から殴られ、蹴られ、食事を与えられず、家に入ることができないのが普通だった。
近所の人たちは私を「黒髪黒目」とか「魔王」と罵り石を投げつけてきた。
幸か不幸か、私のステータスはすごく高いため死ぬことはなかった。
この優れたステータスがあれば両親を殺すこともできたかもしれない、いや恐らく殺せただろう、しかし私にはそれができなかった。
当然だどんなに卑劣な親でもそれは自分の親なのだからどうしても殺すことができなかった。
私が5歳だった時である。私がいつも通り外で目を覚ますとそこは山の中だった。
そうか、ついに私は捨てられたのか、むしろ今まで捨てられなかったのが不思議なぐらいだ。きっと私は魔物に襲われるか餓死してしまうのだろう。
私は自分の人生の終わり方を想像してると一人の金髪の少女が現れた
「ふむ、聞いた通り漆黒の髪と瞳を持っとるの。」
そう言い、その少女は地面に這いつくばった私の目線に合わすためにしゃがみ、
「お主、わしの家に来い。わしの孫にしてやる。」
その少女は私に向けて人生初めての笑顔を向けてくれた。
それから2年が経った。
今日、おばあちゃんが一人の少年を連れてきた。
その少年は明るい茶色い髪をしていて、その色と同じ瞳を持っていた。
これまでにも何度かおばあちゃんは子供を連れてきた、しかしその全てが私を見るなり憎悪を私に向けてきた、恐らく今回もいつも通り罵られるのだろうと考えていると、
「はじめまして、僕の名前はケイト・パルティナ、これからよろしくねエミリーちゃん!」
と、笑顔で言われてしまい、どうしたら良いのかわからなくて、まともに挨拶もできず家の奥に逃げてしまった。
その後おばあちゃんに呼ばれてリビングに行くとおばあちゃんはこれから料理をするのでその少年と二人っきりになった。
その少年は私に意味のわからない質問をして、そのあとに『なぞなぞ』と言う遊びをしてくれた。私なんかと遊んで楽しいのだろうか、と思いましたがその少年はまた私に笑顔を向けながら問題を出してくれた。
その途中でおばあちゃんが料理を終えて戻ってくると、意味のわからないことをおばあちゃんが言って、それに対してその少年は狼狽えながら言い返していた。
ご飯を食べているとおばあちゃんがその少年に、自分のことをおばあちゃんと呼ぶように言いました。
私は驚きました。おばあちゃんのことをおばあちゃんと呼んで良いのはこの家に住む家族だけと昔言われたからだ。
私はその少年に私と一緒で嫌じゃないのかと、聞くと、
「別に嫌じゃないよ、むしろ嬉しいくらいだ。」
驚いた、私と一緒にいるのを嬉しいと言ってくれたのはその少年、ケイト君が初めてだった。そして黒い色も好きだと言ってくれた。顔が熱くなってきた、私はそれがなぜだかわからないが、
それを誤魔化すためにご飯を夢中で食べた。するとまたばあちゃんがケイト君をからかっていた。
ご飯を食べ終わるとケイト君のステータスを確認することになった。
おばあちゃんが連れてくる子どもはなんかしらの特別なスキルを持っている、だから私が見ても良いか聞くと、自分も私のステータスを見ちゃったから良いと言ってくれた。
私のステータスをどうやって見たのだろ?
ケイト君のステータスを見て私は驚いた。それは数多くのスキルではなく、全属性の魔法を使えることでもない。
称号の欄に『不動の精神』があったからだ。
私はその称号を見たとたん昔のことを思い出した。親に暴力を振るわれたことを、食べ物を与えられずごみを漁って食べたことを、水溜まりの水をすすったことを。ステータスをどう見たのかなんてもうどうでも良かった。
ただこの少年はそんな私と同じ苦しい過去を持っているのだと考えると私はケイト君に抱き付き何があったのか聞いてしまった。
それがどれだけ辛いことなのか私がよくわかっているはずなのに。
だけどケイト君は話してくれた、どのようにして『不動の精神』を手に入れたかを。
それは私とは異なっていたがきっと私と同じくらい辛い思いをしたのだと思った。それと同時にこの少年なら本当の家族になれるんじゃないかとも思った。
だから私はケイト君が一人だと寂しいだろうからと口実をつけて一緒の部屋にしてもらった。
そのあとはケイト君が魔法についておばあちゃんから少し教わり、後の時間はまた私と一緒に遊んでくれたりしてくれた。
ケイト君は色々な遊びを知っていた『じゃんけん』、『足し棒』、『しりとり』、特に面白かったのが『オセロ』だ。
表と裏で色が違う石を使って、色の違う石を同じ色同士の石で挟んで挟まれた石を裏返して多くの色を残した方の勝ちと言うルールのゲームで、頭を使ってやるからとても面白かった。
そして、遊んでいる時にケイト君の笑っている姿を見れていると何だか心地よかった。
夕御飯を食べ終わると、私はケイト君をお風呂に誘った。
最初は何かに悩んでいたけど、突然ふと何かに気がついたようで一緒に入ることになった。
ケイト君はお風呂に入るときは顔を赤くして可愛かったがお風呂から出るときには何か考えているようで真面目な顔をしていた。
歯磨きを終えて私たちは同じベッドに入って寝ることになった。
おばあちゃんとも一緒に寝たことがないので、私と初めて寝てくれたのはケイト君だ。
ベッドに入って少したつと、突然ケイト君が話しかけてきて私を強く抱きついてきた。
どうやらお風呂に入った時には私の体についた傷を見たようで私のことを心配してくれたようだ。
そしてケイト君は言ってくれた、
「たとえ、世界中人がお姉ちゃんのことを嫌っても、僕だけはずっとお姉ちゃんのこと、守り続けるから!」
だから私もケイト君のことを抱き締めた。するとすぐにケイト君の寝息が聞こえた。
私は嬉しかった、だけどそれと同時にこの嬉しさを失うのが怖かった。
もしかしたら、ケイト君がある日突然私のことを嫌いになるかもしれない。
それはとても突拍子のないことだ、けれど私は不安でならない、だから私はこんなことを言ってしまった。
「汝、我魅力の前に虜となれ。『チャーム』。」
ケイト君の体には黒い靄がかかるとそれがケイト君の体に溶け込んでいった。
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