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第16話

 リンさんが『テレポート』と唱えると一瞬にして見えていた景色が変わり、家の中から少し大きめのログハウスの目の前に変わった。

 辺りを見回すと360度ログハウス以外に見えるのは気だけだった。

 僕はたまらずリンさんに問いかけた。


「リンさん、ここはどこですか?」


「そういえばまだ言っておらんかったなすまんすまん、ここはエテルリア島じゃ。場所はわかるか。」


「えっ!それって四つの大陸に囲まれている島ですよね?別名森林島の。」


「そうじゃ、よく知っとるのー。」


 よく知っとるのーじゃねぇよ!ハーヴェ大陸の端の方から一回の魔法でエテルリア島に着くって何者だよ!

 僕はリンさんのステータスが気になったので鑑定眼で見ることにした、発動鑑定眼!






 あれ?ステータスが表示されない。おかしいな今までこんなことなかったのに。するとリンさんが


「ん?今何かしたか?」


 ヤバイばれた!この人も直感を持っているのか、いや別にヤバくないかとりあえず正直に告白するか、


「リンさんのステータスが気になったので鑑定眼を使って見ようとしました。」


 リンさんはニヤニヤしながら、


「それで、わしのステータスは見えたのか?」


「いいえ、何にも見えませんでした。」


 何だろう、妨害系のスキルを持っているのかな?


「そうじゃろうな、鑑定眼は自分より圧倒的なレベル差がある相手だとステータスが見れないからの。」


 レベル三桁の父親のステータスが見えてリンさんのステータスが見えないって、リンさんレベルいくつだよ!


「なるほどの、『鑑定眼』のスキルも持っておったか。実に面白い奴じゃの。」


 リンさんは新しいオモチャを買ってもらった子供みたいな笑顔でログハウスの扉を開けた。


「エミリー、ただいま戻ったぞ。」


 すると、ログハウスの奥の方からとてとてとかわいらしい足音がして、


「お帰りなさい、おばあちゃん。」


 奥から走ってきた少女を見て僕は驚いた、その少女が超美少女なのもだが、それ以上にその少女の髪と瞳の色が黒だったからだ。


「ただいまエミリー、今日は新しい家族が増えたぞ、ほれケイト、挨拶しなさい。」


「初めまして、僕の名前はケイト・パルティナ、これからよろしくねエミリーちゃん!」


 僕は爽やかなスマイルと共に自己紹介をした、どれくらい爽やかかって言うと…いやこの説明はやめとこう、それ以上に目の前の少女の反応がひどい。


「私…エミリー、よろしく…。」


 それだけ言うとその少女はログハウスの奥に行ってしまった。


 くそぅ!なんなんだよメシアの時もだけど僕はなぜ初対面の少女にこんなに警戒されるんだよ!実は僕の見た目ってかなりひどいの?もう泣きたいよ。


「すまんの。エミリーは少し人間不信での根は良い子なんじゃが。」


 僕はリンさんに聞きたいことがある、しかしそれを聞いても良いことなのか僕にはわからない。好奇心は猫を殺す、と言うが僕はその好奇心に勝つことが出来なかった。


「魔王だからですか?」

 

「鑑定眼を使ったのか?」


「いえ、家にある本の中で黒い髪と瞳の持ち主は魔王だということが書いてあったので。」


「本当にお主は5歳にしては色々と知っておるの。」


 やはりあの少女、エミリーは魔王だったか、


「それで、お主はどうするのじゃ?」


「どうするとは?」


「ここで魔法を習うにはエミリーと、魔王と一緒に生活しなくてはならんのだぞ、お主が嫌だと言うならわしがお主の家に毎日行き魔法を教えるでも構わんのだぞ?」


「別に一緒に生活するで構いませんよ、何なら相部屋でも構いません。」


「えっ?」


「たしか『魔王』の称号の効果に『多くの種族に忌み嫌われる』が含まれてますよね、恐らくそのせいで両親やその周囲の人たちに蔑まれて人間不信になったんじゃないですか?」


「あ、ああそうじゃ、それで山に捨てられていたエミリーをわしが拾ったんじゃ。」


「どうやら僕はその『多くの種族』のうちに含まれてないみたいで、さっきエミリーちゃんを見たときもすごくかわいい女の子だと思っただけで、他に負の感情は出てきませんでした。」


 実は僕が女神様のところでスキルを選んだ時には『魔導王』にしようか『魔王』にしようか悩んでいたから『魔王』の効果は覚えていた、


 魔王

 魔を統べる者に送られる称号。圧倒的なステータスや強力な魔法と引き換えに本人のレベルが上がり難くなり、多くの種族から忌み嫌われることになる。


 いやー、これと『獲得経験値50倍』が組み合わせれば最強じゃねって思ったけど、やっぱり多くの種族に忌み嫌われるは嫌だから『魔導王』にしたんだよね。


「友達が2人もいる僕がエミリーちゃんの友達になってあげますよ!」


 僕が満面の笑みで言うと、


「クックック、やはりお主は面白いのーケイト、そうか、わし以外にもあの子を嫌わない者がおったか。」


 リンさんはまたニヤニヤしながら言った。


「じゃがあいにく、あの子と相部屋にはできんのー。」


「わかってますよ、それくらい気にしてないって言いたかったんですよ。」


「まあ、あの子が許したら相部屋にしてやっても良いがの。」


「マジっすか!!」


 まだ5歳だし、リンさんもいるからどうこうできないが、やはりあれだけの美少女と同じ部屋になれるかもしれないとなるとやはりテンションが上がってしまう。


「マジじゃマジ、じゃからあの子と仲良くしてやってくれ。」


 その言葉にはおばあちゃんの優しさがにじみ出ていた。見た目少女だけど。


「任せてください!絶対親友になってみせます!」


 何せ僕は1日で友達を2人も作るフレンドメーカーだからな!



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