第15話
「それでは、すぐに帰らないといけないからの、すぐに準備をするのじゃ。」
「準備はもう部屋にまとめておいてから取ってきなさい。」
母さんはもう準備万端といって感じで言っているが、
「帰るとか準備ってどういうこと?」
「どうもこうも、魔法はわしの家で教えるからに決まっておろう。」
決まっておろうって、流石に5歳で親元を離れて暮らせって厳しいんじゃないか、でも昨日父さんが言ってた商会の長をやってる人も6歳から修行を始めたんだっけ、まあ僕は精神年齢20歳越えてるから大丈夫だけど。
「わかった!急いで取ってくるよ!」
僕はリビングをあとにして自分の部屋に荷物を取りに行った。部屋にはリュックサックとカバンが置いてあり、中には衣服等か詰められていた。リュックサックを背負いカバンを持つのは5歳児の小さな体では一苦労だが、これから親元を離れて暮らすのだからこれくらいできなくてはお話にならないな。
僕が部屋から荷物を持ってくると、
「それじゃあお暇しようかの、ほれケイトこっちに来なさい。」
「お師匠様、お昼はもう済ませたしたか?もしまだでしたらぜひうちで食べていってください。」
「気持ちは嬉しいがあいにく今家で子供を待たせているからな、できるだけ早く帰ってやりたいのじゃ。」
「そうでしたか、それじゃあ仕方ないですね。」
母さんは心底残念そうに言った。
「ケイト、辛いこともあるだろうが頑張れよ。」
「うん父さん!一人前の魔法使いになってくるよ!」
「ケイト、いくらお師匠様の教えが厳しいからって抜け出したりしちゃダメよ。」
「そんなことしないよママ。」たぶんね。
「別れの挨拶はもういいかの?」
はいと答えるとリンさんは僕の肩に手を置き、
「それじゃあシリウス、マリーよ息子さんを預からせてもらうぞ。」
「「お師匠様、ケイトのことよろしくお願いします。」」
二人は声を揃えて言った。
「クックック。そんな親子で何度も頭を下げんで良い。子供に魔法を教えるのはわしの趣味みたいなものだからの。ほれケイト、両親に言うことがあるんじゃないのか?」
言うこと、こういう時なんて言えば良いのだろう。「今まで育ててくれてありがとう。」、「すごい魔法使いになって帰ってくるよ。」どれも違う気がする。
「えーと、お父さんお母さん、行ってきます。」
あれこれ考えているといつの間にかこの言葉が口から出ていた。
「「いってらっしゃい、ケイト。」」
「またの、シリウス、マリー『テレポート』!」
リンさんの言葉を最後にパルティナ家からリンとケイトはいなくなった。
「リンさんが気をきかせてすぐに家を出てくれて良かったね。」
「本当ね、あれ以上ケイトが家にいたら私、ケイトに泣いてるところを見せてしまっていたわ。」
マリーは泣きながら言った。
「だってあの子はまだ5歳なのよ。確かに魔法使いになるには幼いうちからの修行が大事だけどそれがどれだけあの子の負担になるか。」
「そうだね、それだけわかっていてリンさんに手紙を出したマリーは偉いよ。大丈夫、ケイトは強い子だ、昨日マリーがさんざん言ってただろあの子は天使だって、きっとここに帰ってくる時にはマリーやメイヤより強い超一流の魔法使いになってるよ。」
「ふふっ、あなたよりは強くなれないのね。」
マリーは少し笑いながら言った。
「当たり前だろ?そう簡単に俺より強くなられたら父親の面子がたたないよ。」
「いいえ、あの子ならきっとあなたより強くなって帰ってくるわ、だって私達の子だもん!私はそう信じるわ。」
マリーは笑いながらそう言った。




