第13話
僕たちがお風呂から出るとリビングに父さん母さんがいた。
「おかえりケイト、そしていらっしゃいメスト君。二人が俺に話があるって聞いたけど何?」
するとメストは父さんの前まで行き、
「俺に剣術を教えてください!」
と頭を下げた。きっとこれから父さんが「お前にとって剣とは何だ?」とか「剣とは人を斬るためのものではなく、大切な人を守るためのものだ。」的なかっこいい名言を披露してかれるんだろうな。英雄だし、剣術のレベル最大値の達人だし。
「ああ、良いぞ。じゃあさっそく午後から始めるか。」
「あ、ありがとうございます!」
あれれーおかしいぞー
「ねぇ父さん、もっとなんと言うか、『人を殺す道具である剣を扱うとはどういうことだかわかっているのか?』的なかっこいいセリフはなかったの?」
「はっはっはっ。今どきそんなこと言う人なんているわけないだろ。昔話の英雄じゃないんだから。」
「ケイト、物語と現実は別なんだから、ちゃんと区別しないと大人になって大変なことになっちゃうよ!」
うわっ!母さんまで僕を馬鹿にしてきた、しかもこんな世界で現実見ろなんて言われるとは思わなかったよ。 大変なことって何だろう?ニートとかこの世界にもいるのかな?
「それで、ケイトはどうするんだ?」
これはニートじゃなくて剣術の方だよな、
「僕はいいや、やめとくよ。」
そう言うとメストが、
「何でだよ、一緒に剣術やろうぜ!」
そんな神の手とか熱血的なパンチでサッカーボールを止める中学生みたいなこと言われてもなー。
「僕には剣術よりもやりたいことがあるんだよ。」
そう言うと僕は、母さんの方を向いて、
「ママ、僕に魔法を教えてください!」
「ケイト、あなたにとって魔法とはなんなのかしら?」
お前は聞くのかよ!
はっ!いけない、心の中とはいえ大切な母さんのことをお前なんて呼んじゃった。
「えーと、まだ僕には魔法がなんなのかはわからないけど、昔僕は『能力のある者はそれを行使する義務がある』って言われたことがあるんだ、だから僕は『魔導王』って称号の力で全ての魔法の適性があるのだから僕は、魔法を覚えなくてはいけないんだと思う。」
どうだ!まさにラノベなんかの主人公が言いそうなセリフだろ!
「そう、それは素晴らしい考え方ね。確かに『力ある者は力なき者を助けなくてはならない』って教えは王国騎士たちのスローガンみたいなものだからね、5歳でそう言えるのはすごいことだと思うよ。」
そうだろ、そうだろ!精神年齢的には母さんより年上だけどね。
「僕のはただの受け売りだよ。」
「それでもすごいわ、それで本音はどうなの?」
「魔法って何かかっこいいから使ってみたい!」
「正直でよろしい!」
なっ、なぜだ突然本音がするりと出てきたぞ、いつの間にか魔法でもかけられたのか?
「ママ的には、最初の答えより後の答えの方が好きだな。」
「ケイト、お前はまだ子供なんだからそんな大人っぽくしなくて良いんだぞ。」
「わかったよ、それでママ、僕に魔法を教えてくれる?」
僕が聞くと母さんは、
「ごめんなさい、今の私にはできないわ。」
え?
「母さん、何で魔法を教えてくれないの?」
すると母さんは嬉しそうに、
「できちゃったから!」
「ええっ!」
やったね父さん、家族が増えるよ!




