表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

『牛頭の魔王』(ミノタウロス)

 短く刈り上げられた白髪、服の上からでもわかる筋肉。自信たっぷりの笑みを浮かばせ、 身体から発せられる威圧とカリスマ性で新人がビビっている。

 アステリウスーーー【ギルド】《罪禍の涙》のギルドボスだ。

「俺に足を運ばせたんだ。 しょうも無い事だったら、ズタボロにするぞコラ」

「ギャグに聞こえねぇなぁ、てめぇはもう少し他人に興味を持てよ。カイン」

 アステリウスは余裕かまして言いやがる。 相変わらず、自分の〈魔術〉に絶対の自信があるようだ。

 酷くウザいが、何か言っても無駄だろう。 仕方なく奴の話しを聞く。

「てめぇんとこがブッ飛ばしたあの………えー、何だっけ? 」

「ボマーか?」

「そうそいつだ!」

 アステリウスは忘れた事を何とも思ってないかのように、豪快に笑った。

 ……………うるせー。

「あの男はどうやら誰かに雇われたようでな、〈術師〉でも何の理由もなく人を傷つけようなんてしないだろ? 俺たちだって馬鹿じゃない。やったらやられることくらい知ってる」

「なのに攻撃した?」

「そうなんだよ。 俺はどうもそこが引っかかってな、調べてみたんだ」

 そう言いながら、幾つかの書類を投げてくる。 其れを掴んで読んでみる。

「………ふん、どーやらコレに類似した事件が世界中で起きてる。って事か」

「そうなんだよ。 同時多発テロみたいで気味が悪い。 何かあるって考えれるだろ?」

「他にも根拠があんだろ?」

 アステリウスはニカッと笑った。

「実はな、『偽典』の生き残りが行方不明なんだよ」

「ッ‼︎」

 オイオイ、どんだけデカい事件に繋がってんだよ⁉︎ 冷や汗がとまんねぇよ。

 書類を新人に渡し、アステリウスを睨む。

「どーせ犯人は分かってんだろ? 教えろ」

「それは無理だ」

「…………あ?」

 ぶっ殺すぞ、お前?

「今回、人類側が黙ってて欲しいと、たんまり頂いちまったからなぁ。 流石に『誰が』、『如何して』、『如何やって』かは言えないんだ」

 クソがッ。世界が滅ぶかもしれないのに、どーしてそんなつまらんプライドを張るかな、人間は!

 其処まで(人類は未だ〈術師〉を敵視しているのに、金を貢ぐのはさぞ不快だっただろう)して隠したい。 つまり人類側の誰かがやったってことなんだろーが、俺が知ったことじゃねぇんだよ。

「じゃあ、『何で』かは?」

「そこに気付くとはお目が高い」

 アステリウスの側にあった、もう一つの書類が投げられる。

 其処には、一人の男のプロフィールが載っていた。

「そいつが今回の犯人様だよ」

 ………コイツ、思いっきり『誰』か言ってるじゃねぇか。

「あ? 可笑しいか? ま、人類のお偉い様には貸しがあるからな。 それを返すためだよ」

 なるほど、『六・六事件』をまだ恨んでるってことか。

 アステリウスは煙草を咥え、一服する。

「オレ達【ギルド】連盟は傍観しか出来ない。 人類側は必死で隠そうとしてるが、かなりの数の事件が起きてる。もうそろそろ、始まるだろうな」

「《天地創造》………か」

 オレの《魔術》に近い《魔術》だが、その影響が違う。

 さっさと封じないとな。

「………暁信代。 元人類軍将軍か……」

 主犯の男の名を呟きながら、其の男の過去に目を向ける。

「っておい、カイン。何で女がこんなところにいるんだ?」

 読んでる途中なんだが、てか今更気付いたのか。

「何か問題あるのか?」

「問題以外ねぇよ。さっきの会話、どー考えても聞いちゃいけない内容だろ」

「大丈夫だ。新人は口が堅い」

「そういう問題じゃねぇだろ!」

 うるせーなぁ。 別にいいだろ、減るもんじゃない。

「あ、あのぅ……」

 怯えながら新人が口を開いた。

「何ですか? 《天地創造》って? とゆーか一体何が起きてるんですか?」

 アステリウスは苦い顔をして、片手で顔を覆う。

「………教えてやるか?」

「いや、いらん」

 俺はすぐさま新人の手を引いて、ココから出ようとする。

「ちょ、おいカイン⁉︎」

「後は俺がやる。 どーせ動けないんだ、任せるしかないだろ?」

「………ああ、そうだな」

 アステリウスは苦笑いを浮かべながら、座り直した。

 そうそう、其処で大人しくしとけばいいんだよ。



「なら、足止めしますか」



 はっ? コイツ何言ってんの?

 反応が遅れながらも、アステリウスを見る。 すると懐から鉄の仮面を取り出していた。

 角のような部分が捻じ曲がっていて、牛を模したような形をしていたが、人にも見えるせいでより醜悪に見える。

 一目で分かる。 アレは《魔具》だ。

「カイン、やっぱりオレがお前を止めないといけないようだな」

 バカ言うなよ、てめぇが呼んだんだろぉが、カス。

「食い散らかせ、『牛頭の魔王』(ミノタウロス)」

 仮面を被った瞬間に、奴から発せられるオーラが変わった。

 例えるならそう、血に飢えた獣のようだ。



「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼︎‼︎」



 咆哮が響き、危険だと本能が叫ぶ。

「逃げろ、新人!」

 背後に隠れる新人にそう叫ぶと同時に、アステリウスが目の前に移動していた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ