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いまの世界の過去

共生歴5年。


 それが今の年号だ。

 俺達のような〈術師〉、昔風に言うなら超能力者は、けっこー古い時代からいたらしい。しかし、その数は決して多く無かった。

 数十年前までは。

 

 その年の子供は、不思議な力と体の一部が異形化して産まれて来た。

 原因は不明。治療法も不明。その年の後からも、数は減ったが今までとは比べ物にならない数が産まれた。

 人々はそれを奇跡と呼び、神の子として大切に育てた。 最初の子供達が大きくなり、不自然なほど社会に溶け込んだ。

 そんなハリボテの平和が、25年続いた。



 それは本当に些細な事だった。



 不思議な力を持つ子供を持った親が、職を失った腹いせに、子供を虐待をした。 その子は自身を守るために力を使って、親を殺した。

 何時か起こる様な事を、誰も思っていなかった。起きても仕方ない事を、誰もが思っていなかった。

 そのせいで、世間の認識はすぐに変わった。

 その事件は、世界中に報道された。神の子としてではなく、悪魔の子として。

 産まれたばかりの赤子から、社会に貢献した大人まで。 その存在まで、呪われるようになった。

 当然、親を殺した子は自己防衛と認められず、その短い人生に幕を閉じた。

 力を持つ子は、何かあると処刑された。 ビルから落ちた人を助けるために力を使ったのに処刑。 赤子が偶然力を使っただけで処刑。 交通事故から友人を助けるためなのに処刑。

 処刑。処刑。処刑。

 処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑‼︎‼︎‼︎

 まるで生きてる事が罪の様に、その命は儚く散っていった。

 死んで死んで。 友達が、兄弟が、家族が、隣の家の赤ん坊が、学校で会ったばかりのクラスメートが、同じ会社にいた後輩が、一生一緒にいると約束した恋人が、死んでいった。

 力を持つ子供達はようやく気付いた。



  自分が殺される事に。

 


 子供達は我が身を守るため。 集まり、自分達が生きて行ける場所を求め、世界中を移動した。

 アメリカを、カナダを、ロシアを、中国を、世界中を旅した。 そこで出会った人たちに迫害され、力を持つ子供達はついて来て。

 集まり、迫害され、集まり、迫害され、集まり、迫害されを繰り返した。

 

 何時の間にか……。

 世界中をまわってしまった。

 何時の間にか……。

 世界中に憎まれていた。

 何時の間にか……。

 世界中の力を持つ子供が集まっていた。

 ここまで来てしまった………。

 このまま殺されるか、ここにいる全員で自分達の自由を奪い取るか、その瀬戸際まで。

 

 選択肢などほとんど無かった。 生きるために、子供達は立ち上がり、叛乱を起こした。それが、後に〈術師〉と呼ばれる様になる力を持つ子供と、人類との戦争。



  【人魔戦争】の始まりだった。

 


 ここで少し、備考を入れよう。

 子供達が力を使うには、触媒が必要だった。 それは杖であったり、本であったり、刻印であったり。

 人類はその触媒を〈魔具〉と呼び、 〈魔具〉らしき物を処分したが。 それでも、〈術師〉全員にわたるほどには残っていた。

 魔術による攻撃は千差万別。 人類は対処が追いつかず、負けが続く事になる。

 〈術師〉達には戦術がない。 しかし一人一人の火力が人類とは、比べ物にならない。

 負けて敗けて、やられたい放題になってなお、人類は諦めなかった。

『相手の方が強いのなら、自分達も同じ力を持てばイイ。』と人々がよく考える、コピーによる力の強化を実行した。

 まだ小さな〈術師〉を誘拐し、洗脳。 其れに戦術を覚えさせ、戦う道具にした。

 勝って負けて引き分けて、 長い長い戦いは続き。 10年、20年と時が経って行った。

 どちらも滅ぶと思われた時、1人の少女が現れた。 そして彼女はこう言った。

『いい加減にこんなバカな事やめなさい! 他にやるべき事があるでしょ!』

 彼女が人類と〈術師〉の間に入って、僅か数日で停戦。 公約がされて、争いがなくなってしまった。

 あり得ないと人は言う。 何なんだよと〈術師〉は笑う。

 そんな頭の中がこんがらがってる奴らに、彼女は笑顔でこう言った。



  『さぁ、ガンバって幸せになりなさい!』

 

   


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